ワインの選び方

自宅で熟成させたいおすすめワイン ワインセラーに入れるべき12本と選び方【5000円以下】

2024年4月5日

自宅で熟成させたいおすすめワイン ワインセラーに入れるべき12本と選び方【5000円以下】
自宅のワインセラーで熟成させてこそ味わえるワインの美味しさも、確かに存在します。
世の中のワインの大半は最も新しいヴィンテージしか手に入らないからです。
ワインに絶対はなくとも、どうせなら美味しくなると期待を持って熟成させたいもの。
ワインセラーに入れるべきワインのおすすめを、5000円以下でご紹介します。
 
※執筆時に5000円以下のワインから選んでおりますが、公開後にワインが値上がりすることも多々ございます。ご了承ください。
 

ワインセラーの目的

  
ワインセラーを購入してダイニングなどに設置すれば、一気にワイン愛好家としてステップアップした気分になります。
逆にワインに詳しくないころは、私は「ワインセラーを自宅に持つ」なんてハードルが高いと思っていました。
 
 
ワインセラーを購入してワインを保管する意味を簡単に整理します。
 
 

ワインセラーの目的

 
ワインセラーでワインを保管する目的は大きく次の3つです。
 
  • ワインの熱劣化を防止する
  • ワインの温度を調整する
  • ワインを熟成させる

 
ワインは高温や急激な温度変化に弱い飲み物です。夏場に室温保管すると劣化して、香りが悪くなったり果実味の減退や苦みが出るなどの恐れがあります。ワインセラーで保管すればそれを防ぎ、ワインを健全な状態で保管できます
 
赤ワインの飲み頃温度はざっくり15℃前後。室温では高すぎ、冷蔵庫の野菜室でも低すぎます。ワインセラーは設定温度に保ってくれるので、赤ワインをちょうどいい温度にキープできます。出してすぐ飲んで美味しい!
 
この2つの目的は短期的なものです。冷蔵庫に保管したり、冷蔵庫から出したあとの時間で温度調整したりと、手間ではありますが代用は効きます。(冷蔵庫で年単位の長期保管はあまりおすすめしません)
しかしワインを熟成させるならばワインセラーがほぼ必須です。「ほぼ」と述べたのは「一部屋まるごと冷房管理してセラールームにする」とか「ワイン貯蔵用の地下室や洞窟を構える」とか極端なもので、ワインセラーが最も現実的です。
 
ワインセラー選びのポイントはこちらの記事で▼
 

熟成でワインはどう変わる?

 
ワインは温度変化の少ないやや涼しい環境で保管すれば、風味が変わっていきます。年単位で現れる変化が好ましいものなら、それを「熟成」と呼びます。不味くなるのであれば「劣化」です。
だから「熟成」かどうかは非常に主観的なものです。同じワインを飲んで「熟成した」か「劣化した」の判断が分かれる場合もあるでしょう。ワインを保管すれば必ず熟成するわけではありません。
  
その上で熟成ワインをありがたがる人が多いのは、心理的な満足もあるからです。
  
  

熟成することによるワインの風味変化

 
その風味変化や変化するスピードはワインに寄りけりで、一概には言えません。その上でタイプごとに大まかな特徴を挙げるなら次の通りです。
 

赤ワインの熟成による変化

  • 色合いはレンガ色のニュアンスが現れ、やや薄くなる
  • 香りはフルーツのアロマが減退し、腐葉土や比較、紅茶などの要素が現れ複雑になる
  • 味わいは果実味が減退し、口当たりが軽くなる
  • タンニンはきめ細やかで穏やかになり、酸味は丸い印象になる
 

白ワインの熟成による変化

  • 色合いは黄色が濃くなる
  • 香りはキャラメルやハチミツ、様々なスパイスやナッツのアロマが現れる
  • 酸味の印象は丸くなり、甘口ワインの甘味は上品で控えめになる
 

スパークリングワインの熟成による変化

  • 色合いは黄色やオレンジ色が濃くなる
  • ブリオッシュやクレームブリュレ、カラメルなどの香りが豊かになる
  • 泡感は繊細に弱くなる
 
全てのワインが程度の差こそあれ時間で風味が変化します。しかしそれで品質が上がるかというと「ワインに寄る」ですし、あなたがそれを美味しいと感じるか否かは別問題です。
 
参考記事▼
熟成によるワインの風味変化についてご紹介しております。
 
 

ワインを熟成ささることによる心理的変化

 
純粋にワインの風味だけで良し悪しを判断できる優れたテイスターなんて稀です。
我々はどうしてもワインの"ありがたみ"に影響を受けます。「フランスで修行してきたミシュラン星付きレストランのシェフがつくるから美味しく感じる」みたいなもの。プラシーボ効果のようなものです。
 
 
希少性もその一つで、なかなか手に入らないレアなワインならプラスの補正がかかっているはず。熟成ワインはそれがわかりやすい。10年、20年も前のヴィンテージのワインなんてそうそう手に入らないと思うから、「この1本だけ」の気持ちで期待する。期待して飲んで期待通りなら、より満足度が高まるのです。
 
最近手に入れたヴィンテージワインでもそうですが、自分が何年も前に買って保管していたワインならなおさら気持ちがこもるでしょう。
ワインは五感だけでなく脳でも楽しむもの。心理的効果はバカにできません。
 
 

自宅で熟成させるべきワインとは

 
あなたがもし最近初めてのワインセラーを購入したとしたなら、ついセラーをいっぱいにしたくなるもの。まるで「セラーの隙間は心の隙間」と言わんばかりに。
そこに入るのがすぐ飲むべきデイリーワインばかりでは物足りないはず。「我が家のセラー熟成ワイン」をつくりたいのでは?
 
自宅で熟成させるべきワインを選ぶポイントは2つです。
熟成ポテンシャルがある、つまり数年後により美味しくなっていると期待できるもの 
飲み頃の古いヴィンテージのワインがなかなか手に入らないもの 
 
 

流通する熟成ワインの偏り

 
現在流通している最新のヴィンテージを「現行ヴィンテージ」、それより古いものを「バックヴィンテージ」と呼びます。
バックヴィンテージはワイナリーや流通業者が保管していたから、リリースから数年後、数十年後に流通します。どんな産地のワインでも手に入るわけではありません。圧倒的にフランスのボルドーとブルゴーニュ産が多いです。次いでフランスの他の産地やイタリア、スペイン、ドイツの高級銘柄でしょう。
 
逆にそのほかの地域で10年前のワインは、そう簡単に見つかりません。高級銘柄は多少流通しますが、手頃なワインほどまず手に入らないのです。
 
 
せっかく自宅で何年も保管したのに、同じヴィンテージのワインが多少割高なくらいで手に入るなら、飲むのを我慢した甲斐がないというもの。どうせならバックヴィンテージが流通しないものを選びませんか
 
 

熟成ポテンシャルの条件とは

 
まずどうして一部のワインだけが熟成で美味しくなるのか、その条件とは何かは科学的にはまだはっきりしていないそうです。
経験則として語られるのは、タンニン、酸、ミネラル。それらの要素が強いワインの方が、10年後に美味しい可能性が高まります。「熟成ワイン」としてまず赤ワインを思い浮かべがなのはそれが理由です。
 
 
もっとわかりやすい指標は価格です。高価なワインのほとんどは高い熟成ポテンシャルを持ちます。リリースから数年以内に消費すべき2万円のワインはめったにありません。
とはいえ高級ワインばかりストックするのも難しいし、気軽に開けられなくなっちゃいます。
 
なので今回は5000円以下に絞ります。熟成ポテンシャルがあり、バックヴィンテージを見たことのない銘柄だけをご紹介します。
 
 

自宅でワインを保管するリスク

 
メリットだけでなくデメリットも示さないと公平ではありません。
 
一番のデメリットは、支払ったお金に対して得られる満足が数年~数十年後という点でしょう。投資をされる方なら、「そのお金と時間があればもっと増やせたのに・・・」と思われるかも。
年齢と共に収入が上がっていく前提に立つなら、今の10万円と10年後の10万円の価値は違うはずです。
 
 
また飲み頃の判断も必要です。
ワインは古いほど美味しいというものではなく、飲み頃のピークがあってその後はゆるやかに劣化していきます。熟成させすぎて美味しくなくなってしまった、もったいないということもあり得ます。
 
さらにワインセラーの故障も大きなリスクです。
構造としては冷蔵庫と同じですから、10年を超えて使用すれば壊れる可能性は十分。もし普段使いと熟成用ワインセラーが別であるなら、ワインセラーの温度を見る機会は頻繁にはありません。「気づいたら故障して温度が上がっていた」なんてこともあり得ます。
 
私はSwitch Botの温湿度計をワインセラーに入れて、もしもセラー温度が20℃を超えたらスマートフォンに通知が届くようにしています。
 
 
 

熟成に向かないワインとは

 
それが熟成しないタイプのワインであるならば、買って1、2年のうちに飲み切る方がベターです。無理に数年保管しても、美化された思い出とのギャップが大きくなるだけ。
概ね2000円以下くらいの手頃なワインは基本的にリリース時が飲み頃であるようにつくられています。それ以上の価格でも、熟成しないワインもあります。
 
 

アロマティックワインは早く飲むべし

 
明確なフルーツの香りがボリューム豊かに広がるアロマティック品種のワイン。それらは基本的に熟成しません
フレッシュなフルーツ感がぼやけてきて、魅力が失われていく一方です。代表格であるゲヴュルツトラミネールなどは、早く飲むべきワインの典型でしょう。(一部の高級甘口ワインは除く)
 
アロマティック品種に関する参考記事▼
 
フレッシュな風味のソーヴィニヨン・ブランも熟成しないけど良質なワインの代表格です。ニュージーランドのマールボロ産のスタイルは、フルーティーな果実香とキリっとした酸味が命。スクリューキャップで酸素を通さないようにして、その状態を長くキープできるようにしています。
 
「早く」といっても2年3年は問題ないでしょうが、セラーで蓄える価値はないでしょう。
 
 

果実味主体の赤ワインも熟成に向かない

 
凝縮した果実感がありつつ酸やタンニンが穏やかなワイン。例えば低価格帯のジンファンデルやプリミティーヴォ、モンテプルチアーノなどは、親しみやすいワインです。ただしそのワインを気に入ったからといって、「5年後もこのヴィンテージを飲みたいから」ととっておくのはやめた方がいいでしょう。
なかなか「飲み頃を過ぎたワイン」というのは飲む機会がないのですが、それに当たるとどこか悲しくなる雰囲気があります。果実味がやせ衰えて酸っぱさが目だったり、「いい香り」とは感じづらかったり。
 
 
 
手頃なワインの中にも熟成で美味しくなるものはあります。でもそれはヴィンテージの良さとタイミングがピッタリあってこそ美味しく感じるもの。半ばギャンブルと思って試すのはいいですが、確実性を期待してはいけません
 
 

自宅で熟成させたい5000円以下のワイン 5年コース

 
せっかく家で熟成させるのだから、若いうちに飲むのとは大きく違う風味を感じたい
そう考えるなら、熟成ポテンシャルが高すぎるワインは避けるべきです。5年程度じゃ大して変わらなくて、我慢した甲斐がない。
比較的早く熟成の風味が現れそうな、それでいていい方向に変化しそうなワインをご紹介します。ぜひとも今の状態の感想を記録しておき、5年後に見返せるようにしましょう。
※あくまで筆者の予想です。
 

コルクかスクリューキャップか

栓の種類が何であれ、熟成ポテンシャルのあるワインは熟成します。スクリューキャップのワインも風味が変化していきますが、そのスピードはコルクよりゆっくりな傾向があります。だから今回はコルクのワインを優先して選んでいます。
スクリューキャップのワインはより安定してきれいな熟成が期待できます。もし少ない本数を20年キープしたいのなら、スクリューキャップを選ぶのがベターかもしれません。
 
 

シラーが野性的な複雑味をもたらす

(執筆時2020VT)
 
ナパ・ヴァレーのワインでも、カベルネ・ソーヴィニヨンなら5年程度ではそこまで有意に変化しないかも。だからこそあえてのシラー主体のブレンドを選びました。
 
シラーと言えばフランスのローヌ産で素晴らしい熟成ワインがたくさんあります。動物の革を思わせるようなワイルドで複雑な風味が、ワインに奥深さをもたらします
フランスのシラーなら熟成にもっと時間を要しますし、熟成したものが手に入ることもあります。だからこそナパ・ヴァレーのシラーブレンド。売れ残りが奇跡的に美味しくなってない限り、バックヴィンテージは手に入りません。比較的渋味が穏やかなワインですので、大きな変化が期待できます
 
 

過去に熟成したのを飲んでいるからこそ

(執筆時2017VT)
 
3年くらい前に飲んだこのワインの2010年が非常に良かったんです。
サンジョヴェーゼは本来タンニンが豊富でポテンシャルのある品種です。それが熟成によってなめらかになり、果実味が減退して旨味感が増す。典型的な熟成した赤ワインの味になっていました。
執筆時の2024年から5年後ならヴィンテージ+12年で、私が飲んだ時とほぼ同じ条件。
 
キアンティはバックヴィンテージが出てくることもありますが、3000円以下で10年以上というものはめったにないはずです。
 
 

樽の"溶け込んだ"風味の調和を実感して

(執筆時2022VT)
 
ブルゴーニュワインは古いヴィンテージもたくさん見つかりますが、マコンの手頃なクラスはわざわざ熟成に回しません。コート・ドールのものより少し酸味が穏やかな分だけ、熟成ポテンシャルで劣るということもあるでしょうか。
 
若いうちは「フルーツ + 樽香」というふうに香りを分解して感じることができます。でもその香りが熟成で調和します。「なんとなく甘い香りだけど例えが見つからない」という調和して混然一体な香りとなるのです。
 
 
今現在の状態と比べて、あるいは5年後の現行ヴィンテージと比べて違いを感じてみてはいかがでしょうか。
 
 

熟成年数にゲタをはかせて

(執筆時2016VT)
 
ボルドータイプのワインは熟成させてこそ」という考えのオーナーのもと、フラッグシップの「レディ・メイ」とこの「エステート・リザーヴ」はワイナリーである程度熟成させてからリリースされます。それでいてまだまだ伸びそう。
同じ5年熟成させるのでも、2022VTと2016VTでは5年後に見た目の希少価値が違います。随分長く蓄えていた印象になるのではないでしょうか。
 
先ほどのカズッチョ・タルレッティと違い、ヴィンテージは確実に1つずつ進んでいきます。なので買い足すこともしやすいです。
 
現在の適度に引き締まった味わいが、もっと親しみやすいものとなっていることでしょう。
 
 

メイラード反応の旨味を

(執筆時2021VT)
 
スパークリングワインを熟成させるなら、どうせならヴィンテージ表記のあるものを選んだ方がいいでしょう。「いつ買ったか」がだいたいわかります。ノンヴィンテージのものもワインによっては熟成するのですが、やっぱり「●年熟成」が分かった方が面白い。
 
このワインも4年前くらいに2015VTを飲んだ記憶があります。改装前の実店舗、低温ルームの外で長く売れ残っていたもので、メイラード反応が進んでい色合いが濃くなっていました。香ばしく甘い風味と重たみのあるコクがあり、絶妙に高級感のある味わいにビックリしました。ただし劣化するギリギリだったと思われます。
 
ワインセラーで5年熟成では少し物足りないかもしれませんが、その分ハズレが少ないはずです。
 
 

ともかく熟成の効果を感じたいなら

 
5年も待てない!もっと早くワインセラーを買ったメリットを感じたい!」というのであれば、おすすめする銘柄はボジョレー・ヌーヴォーです。
 
ボジョレー・ヌーヴォーは解禁の11月第3木曜日から3か月もすれば、ほとんど入手できません。だからバックヴィンテージを見つけるのは困難で、自分で寝かせる甲斐がある。
そして本来なら熟成ポテンシャルの高いガメイをすぐに美味しく飲むため、渋味穏やかで早く飲み頃を迎えるための製法をとっています。だからこそ風味の変化が早い
 
私の経験では半年ほどでも風味の違いを感じました。何本か試して複雑味が増した銘柄もあれば、味が抜けたようなイマイチなバランスになったものもありました。
11月から半年の熟成ならワインセラーがなくても寒い季節なので問題ありません。どうせなら1年待って、翌年のボジョレー・ヌーヴォーと比較するのも面白いでしょう
 
 

自宅で熟成させたい5000円以下のワイン 10年コース

 
10年も熟成させれば、5000円以下ならおおよそのワインは大きく風味が変化します。だからこそ既に下り坂に入ってしまっているワインも増えてきます
古酒に慣れてきた方なら「飲み頃のギリギリを狙う」というのも楽しいでしょうが、初めてワインセラーを買ったような方にとってはリスキー。がっかりすることが少なそうな、比較的安全なワインをご紹介します。
 
 

ネッビオーロと似ているからこそ・・・

(執筆時2020VT)
 
ギリシャの固有品種「クシノマグロ」が「ネッビオーロに似ている」と言われる要因は、上品な酸味とタンニンの豊富さ。なので10年程度なら余裕で熟成できると見込めます。
 
しかしギリシャワインの知名度が日本で広まったのは、せいぜいここ5年程。ゆえに「本当にネッビオーロのように熟成するのか」を確認した日本人はほとんどいないはずです。
同じように熟成するとしたら、豊富なタンニンとは裏腹に上品で軽やかな口当たりと、キノコのような複雑な熟成香が期待できます。
 
2020VTは未評価ですが、2017VTはワインアドヴォケイトでパーカーポイント90+点を獲得。2023-2040年の飲み頃予想でした。これを踏まえてもあと10年はそれほどのリスクとは言えないでしょう。
 
 

まだ知る人の少ない味を求めて

(執筆時2021VT)
 
シュナン・ブランは酸味が高く熟成ポテンシャルが十分に期待できる品種です。フランスのロワール地方では熟成したシュナン・ブランはある程度見かけます。しかし南アフリカ産ではあまり記憶にありません。
きっと熟成しないからではなく、純粋にまだその文化がないのでしょう。だからこそステレンボッシュの樽熟成してボリューミーなスタイルが熟成した味を知る人は極わずか。
 
私も正直飲んだことはありません。しかし5年程度の熟成したシュナン・ブランから未来を推測すると、シャルドネのような複雑さと厚みを獲得しそうだと予想できます
 
 

既に少し古いからこそあと10年で・・・

(執筆時2017VT)
 
フランス南西地方で栽培される「タナ」は、様々なブドウ品種の中でも特にタンニンなどのポリフェノールが多いブドウ。力強く強烈なタンニンは、若いうちは近づきがたいものです。だからこそモンテュスではある程度熟成させてのリリース。それでもまだまだ伸びる余地があります。
 
この2017VTはワインアドヴォケイト未評価ですが、次の2018VTはパーカーポイント94点、飲み頃予想2023-2043年という評価。10年後においてもまだ熟成が期待できます。
 
タンニン豊富なワインが熟成すると、タンニン穏やかなワインにはないベルベットのような厚みのある質感が舌を包みます。この心地よさは時間がもたらすものです。
 
 

この価格で10年持つのか?と思いきや・・・

(執筆時2022VT)
 
1000円台半ばのワインを普通は10年寝かせようとは思わないはずです。「10年間美味しく飲める」ならともかく、「10年かけて美味しくなる」なんて期待する人はかなりマニアックな古酒好きでしょう。
きっと生産者もそんな古酒好きです。このワインについても、10年以上の熟成が可能だと言います。
 
この銘柄ではありませんが、10年ちょっと熟成したミュスカデを飲んだ経験があります。
若いうちは軽い口当たりでスッキリとした酸味を持ち、風味の特徴に乏しいワインです。しかし10年熟成したそれは、ナッツのような香ばしい香りと、厚みのあるマットな口当たりを持つ飲みごたえのある白ワインでした。
 
熟成したものが見つからないので、個人的に蓄えて実験中です。
 
 

20年熟成が狙える5000円以下のワイン

 
古酒が好きな人にとって20年後に美味しく飲める5000円以下のワインは、ある程度はあるでしょう。
しかし10年後より明らかに良くなる見込みがあるものはわずかです。20年後に飲みたいのであれば、本来はもっと予算をかけるべき。
一般的に熟成能力が高いとされるカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールでもまだ弱い。「ここまで待たなくてもよかった」となりそうです。
 
その数少ない例外がバローロと甘口。ただし似たような熟成ワインが見当たらないとは言えません。なのでこの銘柄にこだわらないのであれば、バックヴィンテージを探す方がいいかもしれません。
20年を超える長期熟成が狙えるタイプとして参考にしてください。
 
 

長熟ワインと言えばバローロ

(執筆時2018VT )
 
タンニンが豊富で酸味も高いバローロは、世界的にも特に熟成ポテンシャルの高いワインです。長い時間によってシルキーになったタンニンと複雑な風味の広がりは何物にも代えがたい
なるべく早く飲みやすいつくりをしているものは10年程度で十分。でもこのワインのようにクラシックなつくりをしているものは、10年でもまだ短くて、20年待つ価値があるでしょう。
 
ただ、バローロの古酒は比較的入手しやすいものです。5000円以下ではまずありませんが、1万円の予算があればいくつかあり、2万円まで許容できるならいろいろな種類が選べます。
並行インポーターのワインリストをあたれば、バローロであれば1970年代、ときに1960年代のものすら見かけます。この銘柄のバックヴィンテージを見かけたことはありませんが、「バローロならなんでもいい」というのであれば20年我慢する甲斐は薄いでしょう。
 
 

飲み頃予想は2070年まで!

(執筆時2020VT)
 
ワインアドヴォケイト誌においてはドイツで最も高いポイントを獲得するマーカス・モリトール。
「最新ヴィンテージを飲んでも時にイマイチ。熟成させてこそ美味しい」ワインの典型であり、寝かせ甲斐があります。このワインは5000円以下だというのに、飲み頃予想はなんと2070年まで!さらにレビュー時点で「3年は待って飲んだ方がいいよ」と示唆されています。
熟成により甘味がより上品でキレのいいものになり、強烈なミネラル感が深いコクに変わるんじゃないかと予想します
 
ファーストヴィンテージが1985年で、注目されだしたのが2000年過ぎからなので、古いヴィンテージは出回っていません。なので古いものがひょっこり出てくることは少なそうなのですが、ワイナリー自身がストックを抱えている可能性はあります。
 
 

南アフリカの熟成貴腐ワインはまず入手不可!

(執筆時2021VT)
 
貴腐ワインは熟成によって風味の複雑さを増していきます。ただし赤ワインや白ワインの熟成よりもスピードが非常にゆっくり。10年程度ではあまり違いを感じないこともあり得ます。だから20年待つ甲斐があります。
 
ボルドーのソーテルヌ地区のものであれば、豊富に市場に出回っていますし、当店でもある程度の数を揃えています。
ただ南アフリカ産は見たことがない。それは南アフリカが高品質ワインに舵を切ってからの歴史が浅いことが大きいのでしょう。今後は分かりませんが、南アフリカワインに思い入れがあるなら寝かせてみる価値はあるでしょう。
 
この2021VTはパーカーポイントで95点を獲得。飲み頃予想は2060年までなので、20年熟成は余裕です。
 
 

思い入れのあるヴィンテージを蓄えて飲んでいく

 
例えば結婚した。
例えば子供が生まれた。
例えば会社を設立した。
 
そういった人生の節目となった年に思い入れのある方は、そのヴィンテージのワインをゆっくり消費していくという楽しみ方もできるでしょう。これもワインセラーを持っているからこそできることです。
 
 
例えば同じ銘柄を数十本蓄えて、毎年の記念日に飲むのを習慣にする。自分とどうようにワインも年をとっていきます。だんだん美味しくなっていく一方通行ではありません。調子の悪いタイミングがあるのは、ワインも人間も同じです。
 
同じヴィンテージで様々な銘柄を蓄えておくのも面白いでしょう。生産者や品種・産地が違えば風味は全然違って当たり前。でもその中になにか共通点を見出せるとすれば、自分にとって特別な年の特徴です。
 
「〇年後に飲む」というだけでなく、蓄えたワインをゆっくり消費していくのも、ワインセラーあってこその楽しみです。
 

今年のワインがリリースされる時期

ワインセラーで寝かせたいワインが発売されるのは、そのヴィンテージのおよそ2~4年後です。2024年春現在なら、2022年ヴィンテージの上級ワインが出回り始めたころ。ようやく2020年が発売というワインもあります。
その年のワインが手に入るのはボジョレー・ヌーヴォーのような長期熟成に向かないワインだけ。だから今年お子様が生まれたからといって、焦ってワインを手に入れる必要はありません。おもちゃにお金を使ってあげてください。
 
 

「今」と「未来」の楽しみのバランスを

 
「タイパ」という言葉が生まれ、限られた時間でいかに満足や幸せを得るかに注目される現代。
今購入したワインを十数年後に飲むというのは、「タイパ」が格別に悪い楽しみ方です。だからこそワインの他にはなかなか例のない楽しみ方。『時間の魔法』を味わうような熟成ワインに夢中になる人が多いのも頷けます
 
 
一方で限られた軍資金のなかで楽しむには、今飲むワインとのバランスが難しいのも事実。ワインセラーに収まりきらないワインががあるのに「今日飲むワインがない」なんて嘆いているのは愛好家あるあるです。きっとお酒を飲まない人には一生理解されないでしょう。
 
20年かけて美味しくなっていくわけではなくとも、素晴らしいワインは世界で日々つくられています。今美味しいワインと美味しくなったワイン、両方をバランスよく楽しんでもらいたいと私は考えます





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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