《手ごろなナパ・カベに渋みは必要?》
ナパ・ヴァレー産のカベルネ・ソーヴィニヨンは当店の稼ぎ頭の一つであり、たくさんのレビューをいただきます。それに目を通していると、気に入って高評価をつける方が着目するポイントは「甘い風味」や「香りの豊かさ」「フルボディであること」など。「しっかりとした渋みが心地よい」というコメントは見つけられませんでした。
高級なナパワインに渋みは必須です。そうしないと10年20年と熟成していきません。でも5000円前後のすぐ飲むナパ・カベにとって、タンニンってそんなに求められてないのでは?
そうなるとそもそも、カベルネ・ソーヴィニヨンである必要性に疑問が出ます。もちろん名前が有名なので安心感はあります。でもカベルネ・ソーヴィニヨンはブドウの取引単価が高いので、必然ワインの値段も高めです。
「フルボディで香りが甘く豊かであれば、カベルネじゃなくてもいいんじゃない!?」
カベルネは全く入ってないこの秀逸なブレンドワインを飲めば、そう思ってしまうことでしょう。
《生産者について》
トルシャードはナパ・ヴァレーの南部、カーネロス地区にある家族経営のワイナリー。1973年に創業し畑を広げてきて、現在は113haも所有しています。生産量の7割は大手の生産者にブドウを出荷しているため、「トルシャード」ブランドでつくられるワインはそう多くありません。ブドウ販売で十分な利益が得られるからか、ワインはなかなか手ごろ。「本物の上質さ」を知る顧客によってすぐに完売するといいます。
《テイスティングノート》
熟したプラムやカシスのアロマに、ヴァニラや杉のようなニュアンス。シラーやテンプラニーリョの果実感の強さが表れています。品種特有の香りはあまり感じないので、「これカベルネだよ」と言われると信じ込んでしまうかも。口に含んでも香りどおりのまったり濃厚な味わいで、渋みも酸味もまろやか。
だからかカベルネ・ソーヴィニヨン100%よりは1段階軽く感じるかもしれません。4000円台とは思えない風味の複雑さで、満足度の高いワインです。
Truchard Shepherd Estate Red