ワインの選び方

ボジョレー・ヌーヴォー好きのためのワイン選びガイド:初心者向けおすすめのアプローチ

2023年11月5日

ボジョレー・ヌーヴォー好きのためのワイン選びガイド:初心者向けおすすめのアプローチ 
 
11月は全国でボジョレー・ヌーヴォーが盛り上がる季節ですが、それはワインのほんの一部です。
普段ワインを飲まない方にはこの時期だけでも飲んでほしい。でもこの時期だけなのはもったいない。
ボジョレー・ヌーヴォーを「美味しい!」と感じた方に、次に飲んでほしいワインをご紹介します。
このイベントをきっかけとして、たまにワインを嗜む大人へとレベルアップしませんか?
 
 

ボジョレー・ヌーヴォーの味わいとは

 
ボジョレー・ヌーヴォーとは、フランスのボジョレー地方でつくられる新酒のこと。毎年11月の第3木曜日、現地時間の午前0時に抜栓・販売が開始されます。
日本では30年以上にわたって最も多くの人がワインを楽しむイベントとして親しまれてきました。
 
ボジョレー・ヌーヴォーについて詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
 
 
 

典型的なボジョレー・ヌーヴォーの味わい

 
いくら同じ産地・同じブドウ品種・大まかには同じ製法であるとはいえ、1000円くらいから高いものだと5000円くらいで販売されるワインです。全部が同じ味ということはありませんし、その年の作柄によっても味わいは変わります。
とはいえおおよその傾向はあります。
 

典型的な味わい

イチゴをはじめとした赤いベリーのようなフルーツ感あふれる香り。バナナの香りを感じることも多い。
渋味はほとんどなく、軽い口当たり。程よいフレッシュな酸味が全体をイキイキとさせる。

  
  

赤ワイン全体に対するボジョレー・ヌーヴォーの味わい

 
世の中には多種多様なワインがあります。赤ワインに限ってもとてつもない種類がつくられており、その味わいは多様です。
ワインの基本的な風味において、ボジョレー・ヌーヴォーの立ち位置は次の通りです
香りのボリューム やや大きい
香りの複雑さ(※1) シンプル
味わいのコク 軽い
酸味 年によるがやや高い
渋味 弱い
余韻の長さ 銘柄によるが短め
値段 安くもないが高級品ではない
 
※1フルーツやスパイスなどに例えられる香りの性質について、いろいろな要素を持つのか、2~3個しか挙がらないのか
 
 
つまりボジョレー・ヌーヴォーと同じくらいの値段で、もっとコクと飲みごたえのある赤ワインや、もっと酸味が控えめなワイン、渋いワインも香りが複雑なワインもあるということです。
香りのボリュームはよく香るほどいいし、余韻は長いほど美味しさが続きます。でも酸味や渋味、コクなどは好みです。強ければいいというものではありません。
 
これらを踏まえて、ボジョレー・ヌーヴォーが口にあった方に次におすすめするワインを提案します。
 
 

新酒じゃないボジョレーを味わう

 
ボジョレー地方では新酒じゃないワインも当然つくられています。
 
ワインの味わいを最も左右するものはブドウ品種と産地。それらが共通する「新酒じゃないボジョレー」が、ボジョレー・ヌーヴォーに似たワインの最有力候補と考えるのが普通。
しかし実は味わいの傾向が大きく違うワインも多いんです。
 
 

ボジョレーの産地区分

 
ボジョレー地方のワインはその畑のエリアによって3つのグレードに分類されます。ボジョレー、ボジョレー・ヴィラージュ、クリュ・ボジョレーです。
ボジョレーよりもボジョレー・ヴィラージュの方がより上質とされるエリアです。ただしボジョレー地方全体の4割ほども大きさがあるので、そう価格差はありません。
 
 
クリュ・ボジョレーはボジョレー・ヴィラージュの中にあるより高品質なワインを産出する10個のエリアです。「Cru Beaujolais」と表記されるわけではなく、「Morgon モルゴン」「Moulin A Vent ムーラン・ナヴァン」のようにクリュの名前が表記されます。
 
クリュ・ボジョレーは新酒としてリリースすることはできません。なので通常は生産年の翌々年くらいから日本に輸入され始めます。
 
 

ガメイというブドウ品種の特徴は?

 
フランス全土でおよそ3万haの栽培面積があるガメイ。そのうち2万haほどがボジョレー地方です。
熟すのが早いため、コート・ドールでも日当たりが悪くピノ・ノワールに向かない畑に少量植えられていることもあります。
ロワール川中流域でも盛んに栽培されているのも、寒い環境でもよく熟すからです。
 
 
ボジョレー・ヌーヴォーの豊かな果実味というのは品種の特徴ですが、渋味がなくて軽やかというのはワインのつくり方から来る特徴です。
 
 

マセラシオン・カルボニックとは

 
ボジョレー・ヌーヴォーがタンニンが穏やかなのは、「マセラシオン・カルボニック」という手法で醸造しているからです。
 
ブドウをつぶさずに房ごと密閉容器に入れます。酸素が遮断されることでブドウが「細胞内発酵」というものを起こし、果皮の組織が壊れます。それで果皮が破れて色素や風味がよく抽出されます。果皮が破れて果汁が染み出し、通常のアルコール発酵が始まります。
まだアルコール発酵が十分進んでいない段階で、プレス機にかけて果汁を絞って果皮と分け、果汁のみで最後まで発酵させます。
 
 
タンニンは水に溶けにくくアルコールに溶けやすい性質を持ちます。果皮に含まれるタンニンは、アルコールが低い段階ではあまり抽出されません。
マセラシオン・カルボニックではアルコールの低い段階で果皮を分離するので、タンニンが少ないワインが出来上がるのです。
 
「ボジョレー・ヌーヴォーに使われる製法」のイメージが強いですが、例えばテンプラニーリョのようなタンニンの多いブドウから渋味の穏やかなワインをつくる際にも用いられます。
 
 

マセラシオン・カルボニックを使うボジョレー

 
現在ボジョレー・ヌーヴォーと全く同じマセラシオン・カルボニック法を使ってつくるボジョレーは扱っておりませんが、それを部分的に取り入れた手法でつくるのがこの2本です。
 
特にこちらの「トクシック・ガメンジャー」がフルーティーかつ軽やかで、ボジョレー・ヌーヴォーに近い味わいです。
 

 
※メーカー欠品中のため終売の際はご了承ください。
 
こちらもメーカー情報では製法は似ているのですが、もう少し果実味に凝縮感があり落ち着いた雰囲気です。
 

 
 

果実味主体の手頃なボジョレー

 
一番よく見かけるのは、ガメイの果実感を前面に引き出したスタイルです。樽熟成の風味は控えめで、それほどタンニンは強くありません。部分的にマセラシオン・カルボニックを用いる場合もあります。
おそらくはボジョレー・ヌーヴォーとは航空便か船便かの違いがそのまま価格差に表れています。熟成期間の分だけ、フレッシュさはなくなって落ち着いた口当たりです。
 

 

 
フルーティーで親しみやすい味わいなので、とっておきのワインというよりは何もない日のいつものワインといった使い方がベターでしょう。
ボジョレー・ヌーヴォーに似ているかというとまあまあ違いがあります。とはいえ価格が手ごろなので、まずは試してみてもいいかも。
 
 

長期熟成型の高級ボジョレー

 
ボジョレー・ヌーヴォーは熟成させずに買ったらすぐ飲むべきワインですが、それはガメイの特徴ではありません。むしろ上級のクリュ・ボジョレーは、ピノ・ノワールに負けない熟成能力を持ちます
 
中には収穫から3~4年で飲んでも渋味が強く、あまり香りが上がってこないものも。
ティボー・リジェ・ベレールはその典型で、熟成してからリリースされます
 

 
シャトー・カンボンはもう少し若いうちから楽しめるスタイルですが、10年待ってみる価値があるワインでもあります。
 

 
この2本はボジョレー・ヌーヴォーの味わいとはハッキリと違います。地域が同じだけで別物のワインと考えた方がいいでしょう。
 
 

味わいの方向性別:ボジョレー・ヌーヴォーに似たワイン

ボジョレー・ヌーヴォーの味わいでどの部分が気に入ったか。
それがわかれば部分的に似た味わいのワインをご提案することができます。
 
 

渋味の少なさを魅力に感じたなら

 
赤ワインの渋味が苦手という人は少なくありません。だからボジョレー・ヌーヴォーのように渋味をほとんど感じないワインは世界各地でつくられています。
 
渋味が弱いワインをつくるにはどうすればいいか。そもそもタンニンをあまり含まないブドウ品種を使うか、ボジョレー・ヌーヴォーのように渋味を出さないつくり方をするかです。
 
 
渋味がもともと少ない品種からは、生産国地元消費用の手頃なワインがつくられていることが多いです。熟成を必要とせずすぐ飲める/すぐお金になるからです。
 
ドイツのポルトギーザーという品種がまさにそれ。
 

 
 
ちょっと気軽に飲める価格ではありませんが、こちらは製法で渋みをなくしたピノ・ノワール。マセラシオン・カルボニックのように、色素や風味を抽出したジュースだけで発酵させるから渋味がないのです。
 

 
 

親しみやすいフルーツ感を魅力に感じたなら

 
熟したフルーツの風味は、暖かい産地でつくられたワインに強く感じる傾向があります。加えてヨーロッパよりも「ニューワールド」と呼ばれるそれ以外の産地の方が、ハッキリと感じるものが多く見つかります。
 
よく赤ワインの果実味はベリーに例えられますが、ボジョレー・ヌーヴォーの場合はイチゴの方が違いでしょう。
イチゴのような風味を感じるワインとしては、カリフォルニアのジンファンデルをおすすめします。渋味も穏やかなワインです。ジンファンデルにもいろいろなタイプがありますが、比較的酸味高めのものの方が似た味わいと感じやすいでしょう。
 

 

 
 

軽やかな味わいを魅力に感じたなら

 
ボジョレー・ヌーヴォーは口当たりが非常に軽いことから、普段は白ワインしか飲まない方も楽しみやすいワインです。
その軽やかさを求めるなら、手頃な価格帯のピノ・ノワールのほとんどが条件に当てはまります
 
温暖な地域でつくられるピノ・ノワールの中には、果実感がしっかりあってあまり「軽やか」という表現が当てはまらないものもあります。それでもカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーのような力強い味わいにはなりません。
 
それこそ膨大な種類がありますので一つだけ挙げるならばこちら。
 

 
ボジョレー・ヌーヴォーが初心者にも親しみやすいと言われる要素。それらをしっかりと備えたピノ・ノワールです。
 
3000円以下で美味しい銘柄を探すならこちらの記事もご参考に。
 
 
 

多様性こそワインの魅力

 
ワインは『慣れ』で感じ方が変わってくる飲み物です
  
最初は渋味のある赤ワインが飲めなかった。辛口ワインよりも甘いワインの方が美味しいと思ってそればかり飲んでいた。
でもそのうちふとしたきっかけで飲んでみた赤ワインが美味しかった。すると前は苦手だったようなタイプのワインも美味しさがわかるようになっていた。
 
 
メディアやSNSで絶賛されているワインをあなたが美味しく感じなくたっていいんです。
高価なワインが必ずしもあなたを喜ばせてくれるわけではありません。
 
ワインは膨大な種類があります。多種多様な味わいがあることがワインの魅力です
まずは自分の口に合うものだけを飲む。それでいながら他のタイプへの興味を持ち続けることをおすすめします。
だってあなたが苦手とするワインも、美味しいと思う人がいるから流通しているのですから。いつか好きになるかもしれないのですから。
 
ボジョレー・ヌーヴォーをきっかけとして、自分好みのワインを探し始める方が一人でも増えたらうれしいです。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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