多種多様な味わいの全体像を知ることは、好みのワインをハズレなく選ぶ助けになります。
味わいの要素からタイプに分類することで、違いをより明確に認識できるからです。
ワインの多様性をもっと感じられるようになれば、好き嫌いを超えてワインが面白くなるはずです。赤ワインについて味の重要パラメータを挙げ、相関図にてその違いを整理します。
同じテーマの白ワインに関する記事はこちら▼
赤ワインのタイプと味わい相関図
赤ワインの味わいについて、果実味・タンニン・酸味・重量感・樽香に注目して、味わいのタイプを10個+1に分類。その相関図をつくりました。
この分類名称はCOCOSオリジナルのものですので、決して業界スタンダードというわけではありません。具体的なワインをどのグループと判断するかはブレがあります。どの味わいも定量化できるものではないからです。
一方で「タンニンの強く感じるのはなぜか」「ワインスペックの何から判断できるか」「それぞれの味わい要素の関係」などは、ワインに普遍的なものです。分類名称はあくまで目安として、その理由を知ることがワイン選びを助けます。
赤ワインの味わいを決める重要パラメーター
赤ワインの風味を構成する要素は本当に多いです。とくに香りの質を挙げていけば、ブドウ品種や醸造法などにより様々でキリがありません。
その重要な要素を、私は次の10個だと考えます。
赤ワインの重要なポイント
- 香りのボリューム
- 香りの複雑さ
- ☆果実味の強さ(≒凝縮感)
- ☆タンニンの強さ(=渋味の強さ)
- タンニンの質(≒口当たりの滑らかさ)
- ☆酸味の高さ
- ☆味わいの重量感(≒ボディ≒アルコール度数)
- ☆樽香
- 余韻の長さ
- ☆熟成感
このうち星印をつけた6つが、ワイン全体の印象である「バランス」を考える上で非常に重要です。
一方で香りは複雑で豊かな方がいいですし、口当たりが滑らかなのを嫌う人はいないでしょう。余韻も長い方が優れています。これらは概ねワインの価格に比例する要素。重要なポイントではありますが、あまり好みには影響しません。
だからこそ☆印の6つに注目して、ワインの味わいを捉えてみましょう。これらは独立した要素であると同時に、相関関係もあります。具体的なワインを挙げてご紹介します。
好みを最も二分する「タンニン」
ワインに感じる渋味のもとであるタンニン。その強さの好みは人それぞれです。
ワインを飲み始めたばかりのころは苦手としていたけど、最近は慣れてきた。そんな人もいる一方で、ずっと飲んでいるけれどやっぱりタンニン穏やかな赤ワインが好きという人もいます。
これは舌の上にある味を感じる器官である「味蕾」の密度に関係するという研究もあるそうです。(※)
「タンニン」とは様々な成分に結合しやすい性質を持つ水溶性の成分の総称です。タンニンを持つワインを口に含むと、口内粘膜にタンニンがくっついて洗い流します。そうすると口の中が乾いたような刺激を受けます。
タンニンの強いワインを飲んで、歯茎が引っ張られたりざらざらしたような印象を受けるのは、これが原因です。ワインの渋味は実は味ではなく、痛覚などで感じる刺激なのです。
同時にタンニンはワインに引き締まった印象を与えます。果実味の強さともあわさると「力強い」という表現にもなるでしょう。それが飲みごたえにつながり、少量でも満足度の高いワインになります。
タンニンの多いワインの典型として、イタリアの「バローロ」が有名です。ネッビオーロというブドウ品種が豊富にタンニンを持つからです。
上品で力強く筋肉質
※ジェイミー・グッド著「新しいワインの科学」より
高級ワインは持つ高い「酸味」
ワインの酸味については、「酸っぱさ」というよりは「後味のキレの良さ」と捉えた方が適切です。
もちろん中にはバランス感に欠け、「酸っぱい」と不快に感じるワインもあります。しかし果実味や重量感など他の要素とバランスをとったうえでの高い酸味は、誰しも心地よく感じるものです。
酸味が低すぎるワインはもったりとくどい印象に感じがち。酸味があることで風味の焦点があった、上品でメリハリのある味わいに感じます。
酸味の質や個人差もありますが、酸味の強弱を舌の付け根の両脇で感じる人もいます。ワインを口にする際、意識して口全体に広げてみると感じ方が変わるでしょう。
そして酸味はワインの熟成において必要不可欠なものです。酸味があるからこそ、ワインは整った風味を保ったまま何十年とその複雑さを増していきます。
ブドウ品種に大きく依存する「重量感」
味わいの重量感とは舌の上で感じる感触、コクのようなものです。これはあまり一般的に語られる味わいの要素ではありませんが、私は好みに関わると考えます。
「フルボディ」「ミディアムボディ」などの「ボディ」にも近いですが、もっと意味を限定したもの。例えばアルコール12.5%でも風味豊かなシャンパンを「フルボディ」と述べることはありますが、重量感は感じません。
そしてこれはブドウ品種によって傾向があると感じています。
重量感があるワインの例として、オーストラリアのシラーズ(バロッサ・ヴァレーなど)や、イタリアのアリアニコ(カンパーニャ州)などが挙げられます。
どっしり力強く飲みごたえあり
アルコール度数や渋味の強さの影響ももちろんありますが、どっしり重たく力強い印象です。
重量感をあまり感じさせない品種としては、例えばピノ・ノワールとネッビオーロでしょう。
ネッビオーロでつくるバローロやバルバレスコはアルコール14%超えのものも珍しくはありません。渋味が強いので力強い印象に引っ張られがちですが、実は重量感はそれほどでもないはずです。
ピノ・ノワールもアルコール14%を超えた濃厚なものであっても、どっしりと重たい感じにはなりません。
フルーツ感を酸味が支える
意外や苦手とする人もいる「果実味」
「果実味」という言葉の解釈については少し揺れがあると感じていますが、ここでは「フルーツを想わせる風味」とします。
香りの性質としてはっきりとフルーツを想わせるものを感じる。口に含んだ時に果物を丸かじりしたような風味が豊かに広がる。そういったものは間違いなく「果実味の強いワイン」です。
熟したフルーツを想わせる果実味を持つワインは、甘い印象を受けます。数値としての糖度は0に近いのに、香りに印象が引っ張られるのです。
その甘いニュアンスを「親しみやすい」「飲みやすい」と感じる人も多いでしょう。一方で「甘いのが嫌い」という人もいます。経験的に、様々なワインを飲みなれた通な方に多いです。
例えばイタリアのプーリア州特産「プリミティーヴォ」種でつくる赤ワインは、果実味豊かなワインの典型。
親しみやすい果実味主体
当店でも非常によく売れているワインですが、決して万人受けはしません。
似たような言葉で「凝縮感」というものがあります。風味がち密に詰まっているかと考えていいでしょう。
果実味の強いワインは凝縮感があります。でも逆に、凝縮感が高いワインは全て果実味が強いかというと、そうではありません。
例えば上質なボルドーワインなどは、凝縮感は高いもののあまりフルーツの印象は前に出てきません。
上品で力強く筋肉質
甘く豪華な印象にする「樽香」
オーク樽に由来するヴァニラやココナッツのような香りは、白ワインにおいては違いを感じやすいのですが、赤ワインにおいてはあまり単純化することはできません。
というのもスペック上は同じように樽熟成していても、産地や品種が違えば全く違う印象のワインになるからです。
例えば低価格ナパ・ヴァレー産カベルネ・ソーヴィニヨンは、芳醇で豪華な樽香が人気の理由の一つです。果実味の影響もあわせて甘い印象を受けます。穏やかなタンニンには、樽熟成によるまろやかさもあるでしょう。
甘濃く親しみやすい
しかしスペインの中級以上の赤ワインはどうでしょうか。タンニンは豊富ですし、甘いニュアンスが出やすいアメリカンオークを使っていても、その印象はあまり強くありません。
厚みのある口当たりとボリューム
「しっかり樽熟成しているから香りが甘い」とか「新樽を使っているからタンニンなめらか」というのは嘘ではありませんが、全くあてにならない。
樽熟成の方法は上質な赤ワインをつくるうえでとても重要です。しかし赤ワインを選ぶ指標になるかというと、不確定要素が多すぎて使えないというのが私の考えです。
全ての要素に影響する「熟成感」
熟成感とは、ワインを数年~数十年にわたって保管することで現れる風味の中で、飲み手にとって好ましく感じるものを言います。(好ましく感じなければ「熟成」ではなく「劣化」です。違いは紙一重)
香りの質はより複雑になり、皮革や枯れ葉、紅茶、キノコなどを想わせるものが表れます。
若いうちは刺激の強かったタンニンは穏やかに、滑らかな印象になります。
味わいの重量感は軽くなっていく傾向です。
酸味は劇的な変化はしませんが、丸い印象になることが多いです。
果実味は減退して、フレッシュなフルーツは感じられなくなります。
これらの変化を総合して「熟成感」と呼びます。
文字に起こしたとき、あまり魅力的には感じませんよね。言葉に表しずらいところで美味しさを訴えかけてくるのも、熟成ワイン・古酒の魅力です。
どのタイプのワインを保管しても、やがて上記の変化は現れます。中でも
華やかアロマで上品
どっしり力強く飲みごたえあり
上品で力強く筋肉質
これらのタイプは長期熟成により美味しさが増すことが期待できます。
熟成ワインの風味の変化はこちらの記事を参照▼
味わいパラメータの相関と原因を知る
タンニン、酸味、重量感、果実味、熟成感。これらの要素は単独で増減するものではありません。
「果実味が増せば酸味が減る」のような、正負の相関関係があります。それを完全に理解するには、ブドウの栽培や醸造も含めた全体像を把握する必要があります。とてもブログ一記事では語り切れません。
ここではワイン選びに役立つポイントに絞ってご紹介します。
果実味のカギは畑の暖かさと日照
同じ品種で比較するなら、暖かい気候の方がブドウが熟しやすく果実味豊かな傾向です。ただし畑の「気温」というのは簡単ではありません。一般に昼夜の寒暖差が大きい方が酸味が高くなると言われます。
また日照量も重要です。
ブドウの生育期にほとんど雨が降らない地中海性気候のエリアでは、よりハッキリした果実味を感じます。一方で年間を通して雨が降る気候の場合は、日照量が少ないのかフルーツの印象は控えめです。
例えばブルゴーニュのピノ・ノワールは、香りのボリュームが高く華やかなのですが、あまりフルーツの印象が出てこないものもあります。特に高価格帯の熟成を見越してつくっているような生産者ならなおさらです。
若いうちは少し厳しさを感じるような高い酸味を持つものも多いです。
上華やかアロマで上品
一方で中堅どころの生産者や生産量の多いワインなどは、すぐ飲んで美味しい方がやはり販売しやすいです。それもあってかもう少し酸味穏やか、果実味も感じます。
他の産地で上品につくっているピノ・ノワールもこのグループでしょう。
上品ながら果実味リッチ
ある程度温暖な産地で緯度も低いピノ・ノワールとなると、甘い印象を持つ果実味を感じるようになり、タンニン穏やか。一方で酸味は価格に左右される傾向があります。中~高価格帯のものは、甘い果実味を持ちながらも上品な酸味を持ち、後味がきゅっと締まります。
フルーツ感を酸味が支える
ピノ・ノワールにおいて産地が温暖で低価格帯となると、酸味が低いものが少なくありません。果実や樽の甘いニュアンスが全面的に出ます。タンニンはほとんど感じないので、渋味を苦手とする初心者には親しみやすいかもしれません。
果実味豊かでスムース
この味わいには樽熟成も関係します。果実味豊かで樽熟成によりタンニン穏やか。低めの酸味によるまったりとした口当たりは、寒い季節に飲むとほっとするような味わいでしょう。
果実味豊かでスムース
タンニンの強弱はまずブドウ品種
白ワインでは感じないタンニンを赤ワインに感じるのは、アルコール発酵の際に果汁に果皮や種を漬けこむからです。特に種から多くタンニンが抽出されます。
赤ワインと白ワインの違いについてはこちらで詳しく▼
その上でブドウ品種により大きく差があります。明確な基準はないのであくまで筆者の意見としてまとめると次の通り。
タンニンの強さ | ブドウ品種の例 |
---|---|
極めて強い | タナ、サグランティーノ、ネッビオーロ |
強い | カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、テンプラニーリョ、アリアニコ、サンジョヴェーゼなど |
やや強い | メルロー、カベルネ・フラン、ガメイなど |
中程度 | グルナッシュ、ジンファンデル、マルベックなど |
穏やか | サンソー、マスカット・ベーリーA、ポルトギーザーなど |
幅が大きい | ピノ・ノワール |
もちろん栽培法や醸造法によっても変わります。
ブドウの実に直射日光が当たると、光から実を守るべく果皮を厚くする傾向があります。タンニンが含まれる果皮が厚くなると、ワインのタンニンも豊富になります。
例えばドイツのフリードリッヒ・ベッカーという生産者は、長期熟成するワインをつくるべく積極的に除葉を行っています。ピノ・ノワールは一般的にはタンニンが控えめなブドウですが、ベッカーの上級ワインは結構渋いです。
上品ながら果実味リッチ
また醸造テクニックによりタンニンの抽出を穏やかにすることもできます。醸造家がどんなワインを目指すかでもタンニンの量は変わります。
タンニンと酸味の強弱は比例する
実はタンニンによる刺激は酸が高いほど強く感じると分かっています。
例えばシラー/シラーズで比較してみましょう。
フランスのローヌ地方北部とオーストラリアのバロッサ・ヴァレー。それぞれを同じ価格帯で比べたとき、ローヌの方がタンニンを強く感じることが多いはずです。
アルコール度数は全体的にはバロッサ・ヴァレーの方が高い傾向があります。それもあって「濃厚」という印象はバロッサの方が強く受けますが、渋味の強さで言うとローヌの方が目立つでしょう。
上品で力強く筋肉質
どっしり力強く飲みごたえあり
※分かりやすさのため別々に分類していますが、この差は微妙。同じ分類とする場合もあります。
ブドウは成熟が進み糖を蓄えるほどリンゴ酸を分解します。極端に言えば甘いブドウ・アルコール度数の高いワインほど酸味が低くなります。
もちろん品種や産地の特徴も関わってくるのでこんな単純化はできません。とはいえアルコール度数と価格は酸味とタンニンを予想するヒントの一つにはなるでしょう。
タンニンに概ね反比例する「甘い香り」
タンニンが豊富なもので香りに甘いニュアンスが強くでるものはほとんどありません。
例えば先述のナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン。およそ1万円以下の低価格帯のものは(※)、熟した果実と樽の甘い香りを持ち、酸味とタンニンが穏やかです。
甘濃く親しみやすい
※高級産地であるナパ・ヴァレーでは、6000円前後はエントリークラスです。
上記のような特徴を持ったままスケールアップするワインもあります。
一方で中級~上級のものになると、しっかり芯の通った酸味があり豊富なタンニンを感じさせるものが増えてきます。そういったものは樽香が前に出すぎず、甘い印象は控えめです。
上品で力強く筋肉質
エアポケットのように当てはまる言葉がない
ここまで紹介した味わいのタイプは、何かしら強いパラメータがあるものです。
それが何もない場合。
タンニンは穏やか。酸味はやや高めだが特徴的ではない。果実味や樽香は控えめ。重量感や熟成感はない。
思い浮かべたのは手頃なボルドーワインです。手頃なサンジュヴェーゼもそのタイプでしょう。
フレッシュな果実味と適度な渋味
正直この言葉で分類するのが適切かは自信がありません。
悩んだ末に「ちょうどいい」という分かるような分からないような言葉をあてはめたのが、この特集です。
あなたならどんな言葉で分類しますか?
「熟成感」と熟成期間とワインの価格
「このワインは熟成しています」
こう言う場合は、ワイン醸造時のステンレスタンクやオーク樽による熟成は指しません。ワインを瓶詰したあと、ワイナリーなり流通業者なり消費者の自宅で何年も保管されていたことを意味します。
では何年経過したら「熟成している」と言えるのか。
一つは「飲んでみて若いころの風味と比べて明らかに変化していて美味しければ」と言えるでしょう。でも開ける前に知りたいこともあるはず。
「ヴィンテージから+〇年たったら」というのは、実は言えません。熟成感が出てくるスピードはワインによって違うからです。その傾向は次の通り。
熟成感に影響するもの
- 高価なワインほど熟成はゆっくり
- 酸味が高いものは熟成がゆっくり
- 極甘口の貴腐ワインは熟成がとてもゆっくり
- 国際品種は長命なものが多い
- 蔵出し(※)は経過年数に比して若い印象
さらに保管環境の影響もあります。例えば12℃より15℃で保管した方が熟成は早いです。
「熟成期間」と「熟成感」はイコールではないので注意が必要です。
※ワイナリーが現地で保管し最近出荷されたものを「蔵出し」と呼びます。
赤ワインのマイナー要素
全体からするとあまりに少ないため、あえて省略した要素があります。
それは白ワインでは重要だったもの。「甘さ」と「香り系品種」です。
甘口赤ワインは少ない
ブドウ由来の糖分が残っている甘口赤ワインは、甘口白ワインほど多く流通していません。ほんのわずかです。
その理由の一つは、赤ワインのタンニンの刺激があまり糖分と相性が良くないから。バニラアイスを食べた後に赤ワインを飲めば、それを嫌というほど体感できます。
ゆえにタンニンの穏やかなブドウ品種を使って甘口赤ワインがつくられることはあります。ドイツのドルンフェルダーなどがその例です。
一般に赤ワインの酸味は白ワインより低いです。それもあって「甘くてスッキリ」という赤ワインはほぼ無く、甘くまったりとした印象です。
「赤ワインには甘口と辛口があります」というにはあまりに割合が少ない。9:1どころの話ではなく、1%以下でしょう。なので白ワインのようにタイプ別の選択肢にはしませんでした。
赤ワインのアロマティック品種
白ワインのゲヴュルツトラミネールのようなアロマティックな香りを持つブドウ品種は、赤ワインにはあまりありません。
というより私は一つしか知りません。イタリア・ピエモンテ州の「ルケ」です。
バラやハーブのような非常に華やかな香りを持ちます。他の赤ワインとは香りの雰囲気が明らかに違うと感じていただけるでしょう。
ただこれは例外中の例外みたいなものなので、風味のグループとはしませんでした。
白ワインより判別が難しい理由
ワインのスペックや風味でグループ分けするのは、白ワインより赤ワインの方が困難です。明確に線を引ける要素が少ないからというのが一つ。先述のマイナー要素のような明確な基準で分けられるものが少なすぎるというのが一つです。
明確に線を引けない理由は、「有無」ではなく「程度」の問題であるからです。
醸造法で区切りにくい理由
例えば白ワインは樽熟成による樽香を効かせているかを一つの基準としました。
しかし赤ワインは低価格帯なものと特殊なものを除き、ほとんどすべてオーク樽熟成してつくられます。新樽の使用比率や熟成期間で違いは出ますが、それも「新樽を使っているか否か」というYes/Noではないのです。
また酸味の感じ方に影響を与えるマロラクティック発酵。リンゴ酸を乳酸に変える反応を、白ワインは行わないものもたくさんありますが、赤ワインはほぼ全てに行います。これも醸造による差が小さい理由です。
マロラクティック発酵についてはこちらの記事で▼
決して全ての生産者が同じように醸造しているというのではありません。ワインの味わいに大きく影響を与える工夫もあるでしょう。でもそういったテクニックは醸造家のメシの種であり秘密にするもの。ワイン選びに役立つスペックとしてはなかなか現れません。
ブドウ品種でワインは決まらない、だから面白い
赤ワインの味わい分類は、フローチャートにできるような明確なものではありません。だからこそ重要パラメータをもとに相関図にしました。冒頭のものを再掲します。
明確に区別できないとはいえ、赤ワインの味わいのタイプに名前を付けることは意味があるはずです。自分が好き/苦手と感じたワイン。それはどのあたりのポジションなのか。もっと好みのワインを探すなら、どんなタイプから探せばいいのか。
風味の違いには原因があります。
もちろん、その原因が分かるものと分からないもの、スペックとして見て取れるものと言葉に現れないものなど不確定要素はあります。それでも「飲んでみなければ全くわからない」という博打のようなものではないのです。
自分が好きと感じるワイン。その「好き」の原因を探る。その原因とは、ブドウ品種だけで決まるような単純なものではありません。正直、ややこしいです。ワイン業界で10年以上働いても、まだまだ全容はわかりません。
それでも部分的に理解すれば原因が共通するものを探すことで、「好き」という結果にたどり着きやすくなります。そしてより違いを認識できるので、いろいろなワインを飲むのが楽しみになります。
きっとワインという趣味にもっとのめりこむようになることでしょう。