ワインの選び方

価格高騰の救世主!?お手頃価格の代替シャブリ特集

2022年9月5日

価格高騰の救世主!?お手頃価格の代替シャブリ特集
 
シャブリの代わりとなるワイン、その需要がかつてなく高まっています。
続く凶作と物価高により、いつものシャブリが大幅値上げ。その上すぐ欠品するからです。
ここはひとつ、シャブリの味わいに大切なものを整理して、代替ワインを探してみましょう。
ブランドネームさえ気にしなければ、今までと同じような価格で辛口白ワインを楽しめます。
 
 

そもそもシャブリはどんなワイン?

 
日本人はシャブリが大好きです。
ブルゴーニュから日本に輸出される白ワインのうち、2本に1本はシャブリ
その人気の理由は、「シャブリならこういう味」というイメージが裏切られないからでしょう。
 
 

「シャブリ」とは

 
シャブリは広い意味でのブルゴーニュ地方の一つの地区の名前そこでつくられるワインもまた「シャブリ」と呼びます。
ブルゴーニュワインなので、村名格・一級畑・特級畑といった格付けがあります。中でも今危機に瀕していると言えるのが、スタンダードの「シャブリ」。2000円ちょっとからせいぜい3000円台前半で手に入る、手ごろなシャブリです。
 
 
ここでは断りがない限り、「シャブリ」は手ごろなスタンダードクラスの白ワインのことを指すものとして扱います。
 
 

典型的なシャブリの味わい

 
当然シャブリにもたくさんの造り手がおり、それぞれ個性を持ったワインをつくっています。
なので「標準的なシャブリの味わい」といっても難しいので、ブルゴーニュワイン委員会の説明を引用します。
 
色調は澄んだ淡い黄金色または緑を帯びた黄金色。非常にフレッシュで生き生きとしたミネラル感が際立つ火打石、青りんご、レモン、さらに森の下草、茸(ハラタケ)の香り。菩提樹、ミント、しばしばアカシアや甘草、刈った干草の香りを伴う。年とともに、より黄金色が濃くなり、スパイスのニュアンスが高まる。口に含むと溌剌とした香りが長く残る。アタックはワインの香気が華やかに立ち昇り、余韻は長く、穏やかで甘美な心地よさを残す。非常に辛口で、完璧な繊細さをもつシャブリ/Chablisは他に類を見ない特質を有し、すぐにそれと分かる。
 
 
短くまとめるなら、火打石・青りんご・レモンなどの溌溂とした香りを持つ、ミネラル感際立つ繊細な辛口白ワイン。それがシャブリです。
スタンダードクラスのシャブリは、あまりオーク樽熟成されません。樽熟成したとしても古い樽が多く、オークの香りは控えめです。この点がプルミエクリュ・グランクリュの高級ワインとの相違点。
フレッシュな高い酸味を持ったスタイルなのが、一般的なシャブリです。
 
詳しくはシャブリについて詳しく述べたこちらの記事をご覧ください。
【初心者必見】いまさら聞けない「シャブリ」とは?
 
グレードによって全く別物!?「シャブリ」のいろいろ
 
 

日本でシャブリが人気な理由

 
シャブリがこれほどたくさん飲まれている理由はいくつも考えられます。
 
まずは「シャブリ」という名前が覚えやすい。
ワイン売り場に行ったとき、たくさん種類がありすぎて選ぶのに困ったこと、多くの方が経験されているでしょう。そんなとき、「シャブリ」なら知っている。安心して買える
 
 
レストランでもそうです。「シャブリ」なら多くのお客様が知っているから、おすすめしなくても売れていく
そういった“ネームバリュー”が重要なのは否めない。でもそれだけじゃない。
 
シャブリは日本の食卓に合うんです
ミネラル感のあるキリっと辛口の白ワイン。それはワインが苦手としがちな生魚や貝類などと合わせても、生臭みを強調しない。それほど濃厚でない繊細な味わいも、脂質の少ない和食とボリューム感のバランスが取れています。
 
 
晩酌に飲んで美味しいから。
これがみんながシャブリが大好きでたくさん消費している大きな理由でしょう。
 
 

シャブリの人気ポイントを整理

 
以上のことから、シャブリの代わりとなるワインを探す上での欠かせない要素は次の通り。
 
  • フルボディではない繊細な味わい
  • 高い酸味
  • ミネラル感
  • 魚介と相性がいい
  • 2000円台の手ごろな価格

 
「シャブリっぽい香り」というのは確かに存在しますが、それほどハッキリしたものではありません。
おそらく香りの要素だけでシャブリが好きな方は少ないだろうと考え、今回は味わいを優先します。
 
 

いったいシャブリに何が起こった!?

 
そもそも何でシャブリの代わりを探さないといけないのか。
それは今まで飲んでいたシャブリがこれから大幅な値上がりが予想されるから。さらに高い上に数量が十分でなく、値段に寄らず買えなくなりそうだからです。
 
 

ベースとなる全世界的な値上げ

 
2022年、当店と取引のあるワインの輸入元は、大半の商品を値上げしました。
その主な理由は
 
〇資材の高騰によるワイナリー価格の上昇
〇輸送コストの上昇
〇円安

 
WINEREPORTの記事によると、生産コストは13%の値上がりをしているそうです。
 
ワインの価格は上昇傾向にあるのですが、シャブリの値上がり率はそれ以上です。
 
 

3年続いた凶作

 
2019、2020、2021年。シャブリのワイン生産量は大幅に減少しました。
その主な原因は霜害です。
 
霜害とは春の遅霜でブドウの新芽が壊死してしまうこと。2~3月の気温が高くてブドウの木が早く活動を開始。発芽した後に4月~5月に氷点下まで気温が下がると、新芽が凍ってしまいます。その氷が溶けるときに細胞を破壊してしまうのです。
霜害が起こるとブドウが実をつけないわけではありません。その後からまた芽が出てきますが、収穫量は大幅に減少します。
 
 
2021年の4月3~4日。フランス全土を史上まれにみる霜害が襲いました。大統領が視察に出向き支援を検討するレベルのとてつもなく大きな被害です。なのでブルゴーニュの2021年は生産量が劇的に少ない、一説には通常の半分ほどになるそうです。
 
ブルゴーニュ全域で量がかなり少ないのは2021年だけですが、シャブリでは同様のことが2019、2020年も起こっています。3年連続で凶作だったのです。
 
 

とてつもない値上がり

 
当店で扱っていたとあるワイン。
2017年ヴィンテージで2400円ほどで販売していたものが、2021年を仮に仕入れるとすれば3800円程度になる試算となり、仕入れを見送っています。
これは極端な例としても、2000円台前半のものが3000円台に値上がりするのは十分考えられます。
それでいて、2021年の方が美味しいとは決して言い切れないのです。
 
リーズナブルなワインの値上がりの方が、飲み手にとっての影響は大きいでしょう。1万円のシャブリが1万3千円になるより2000円のワインが3000円になる方が痛いはず
 
 
「こんなの晩酌ワインの値段じゃない!」
「ここまで出してシャブリ飲まないといけないの?」
そう感じるのが普通の感覚だと思います。
 
 

さらに、数がない

 
高いのに日本への入荷量は少ない
今年ブルゴーニュの視察にいった輸入元のバイヤーさんから聞きました。ワイナリーの貯蔵庫がすっからかん。目に見えてワインがないと。
 
だから「それでもシャブリが欲しい」と探しても、目当ての銘柄は早々に売り切れとなるかもしれません
「楽天で探してもシャブリが一つも出てこない」なんてことにはさすがにならないでしょうが、残るのは人気のない銘柄です。
 
 
格安のシャブリがまず供給が途絶えるでしょう。ブルゴーニュでは自社畑のワインより買いブドウでつくるワインが下に見られ安く取引されます。「値段が合わなさすぎて、今年はつくれない」なんてこともあり得るからです。
 
こんな状況だからこそ、今代替シャブリをご提案します。
 
 

シャブリに似たワインの探し方

 
先ほど述べたシャブリのポイント
 
  • フルボディではない繊細な味わい
  • 高い酸味
  • ミネラル感
  • 魚介と相性がいい
  • 2000円台の手ごろな価格

 
これを満たすワインを探す上で、まず考えること。
それはブドウ品種はシャルドネに限るか否かです。
 
 

冷涼産地産のシャルドネは多くない

 
シャブリ地区はブルゴーニュの北端に位置する、冷涼な大陸性気候。
フランスでシャブリよりも緯度が高い産地は、シャンパーニュしかありません。世界的にもかなり高緯度に位置する冷涼な産地です。これはシャブリの味わいに大きな影響を与えています。
 
 
南半球でシャブリと同じくらいの緯度には、ほとんど陸地がありません。中央~東アジアのこの緯度帯ではあまりワインがつくられておらず、カナダにもそれほど畑は拓かれていません。
他にシャブリと同緯度帯にあるワイン産地は、オーストリアやハンガリー、ルーマニアなど中央~東ヨーロッパ諸国。この辺りはあまりシャルドネの栽培は盛んではありません。
つまり「シャブリと同じような気候でワインをつくれるシャルドネの産地」というのは、ほとんど存在しないのです。
 
あるとすれば標高が高かったり海からの冷却効果を受けたりして涼しい環境にある畑。
このことから「シャブリはシャルドネでつくられているんだから、同じシャルドネのワインを探せばいいや」と思ってもなかなか見つからないことが予想されます。
 
 

ブドウ品種のこだわりを捨ててみる

 
シャルドネを暖かい地域で育てれば、シャブリらしい高い酸味は期待できません。ではシャルドネでなければ
 
温暖な産地のワインだからといって、酸味が低いとは限りません。
その土地に応じた酸味を保つブドウ品種が栽培されてきました。
 
 
ブドウ品種が違えば香りの方向性は異なります。でも今回は味わい重視でシャブリの代わりを探したい。
フレッシュで高い酸味がありミネラル感を感じる。そういったタイプのワインは、たいてい魚介料理と好相性です。その中で香りの主張が強くないものを選ぶ。
酸味が高い2000円台のワインで、フルボディといえるほど風味が強いものはまずありません。まずミディアムボディです。
 
ミネラル感を感じ、酸味高め。そんなワインを探せば、案外シャブリっぽいワインは見つかります
 
 

シャルドネから見つけるシャブリ代替ワイン

 
まずはシャブリと同じシャルドネ種からつくる辛口白ワインから。
シャルドネが栽培されている地域は多いですが、高い酸味を持つワインをつくれる冷涼な産地で、ステンレスタンクで発酵・熟成を行ったものを選びました。
 
 

同じ冷涼産地から

 
ブルゴーニュよりさらに北にある産地として、ドイツが挙げられます。シャルドネは主要品種ではないものの、南の方から徐々に栽培面積が増加中。
シャブリの代わりを探すなら、特に南ファルツに注目。ここには「ムッシェルカルク」と呼ばれる貝殻石灰質土壌があります。シャブリの土壌として有名な「キンメリジャン」は、小さな牡蠣の化石を含む貝殻石灰質土壌の一つ。形成された年代が違います。
 
このステンレスタンク醸造のシャルドネは、全てはムッシェルカルク土壌ではありませんが、キリっとした酸味で繊細な香りはシャブリと共通点がたくさんあります。
 
 
ただ、ドイツでシャルドネを植えるときは、ブルゴーニュのような高級ワインをつくるべく植えることが多いです。だから安い価格のドイツのシャルドネがあんまり作られていないんです。このワインは生産者がいくつかシャルドネを作る中のバリューワインという位置づけなのでお手頃なのです。
 
 

南アフリカの「シャブリ」

 
輸入元情報で、「南アフリカのシャブリ」と例えられるのがこのワイン。
 
 
南アフリカで2000円台のシャルドネはほぼほぼ樽熟成されているものですが、これはステンレスタンク熟成。
ワイナリーのあるロバートソン地区は割と内陸部。全体として温暖なはずです。このワインは確かにブドウの熟度の高さは感じるものの、ちゃんとフレッシュな酸味が全体をキュッと引き締めます。詳しい情報はないのですが、おそらく標高の高い涼しい畑を選んで植えているのと、ある程度早摘みをしているのでしょう。
 
岩石を含む石灰質土壌であることもあって、硬質なイメージを感じます。フルーツ爆弾的な温暖産地のシャルドネとは全く別物です。
 
 

ブドウ品種にこだわらないシャブリに似たワイン

 
シャルドネ以外のブドウ品種でシャブリに似たワインを探すなら、どんな手掛かりがあるでしょうか。
 
一つはまずシャルドネの親戚筋を当たること。
 
 
もう一つはミネラル感を感じやすいと言われるワインを当たる
「海辺の産地で土壌に塩分を含むからミネラル感を感じる」なんてそんな単純な話はありません。でも実際、海に近い産地のワインの多くで「ミネラル感」という表現は使われます。
 
 

シャルドネの親戚、ピノ・ブラン

 
シャルドネはピノ・ノワールやピノ・ブランなどのピノ系品種と、「グーエ・ブラン」というブドウの交配で生まれたと考えられています。
つまりシャルドネはピノ・ブランの子供。風味に共通点があるのも頷けます。
 
 
ピノ・ブランもシャルドネと同様、「この品種はこの香りが特徴」というのがあまり言えません。あまり派手ではない、繊細な香りなのです。
ドイツのピノ・ブランは樽発酵・樽熟成して、1万円クラスの高級ワインになることもあります。ブルゴーニュにもピノ・ブランからつくられる1級畑の高級ワインもあります。
ただ、それはごく一部の例外的なワイン。その多くはリーズナブルな価格で楽しめます
 
 
詳細な醸造情報は不明ですが、おそらく樽発酵・樽熟成しています。しかしその風味はほぼ感じません。
フリッツ・ハークはモーゼルの中で、酸味抑えめにつくる傾向があります。それゆえシャブリと比べると一段丸い印象を受けますが、晩酌での使い勝手の良さは負けてないでしょう。
 
 

完全辛口のヴィーニョ・ヴェルデ

 
ポルトガル北部の名産「ヴィーニョ・ヴェルデ」は、少し甘さのある微発泡ワインのイメージが強いです。
しかし中にはブドウがしっかり熟してから収穫し辛口に仕上げる生産者もいます。
 
規定によりアルコール12.5%は「ヴィーニョ・ヴェルデ」を名乗ることはできませんが、ワインの雰囲気は共通。シャブリよりも少し香りの方向は柑橘系フルーツ寄りですが、スッキリ高い酸味とミネラル感は共通項です。
 
 
輸入元様いわく、この生産者はシャブリが大好きで、確実に意識してワインをつくっているとのこと。
沿岸部でつくられるワインだけあり、魚介との相性は鉄板です。
 
 

主産地でないゆえのリーズナブルさ

 
海のワインといえばギリシャの「アシルティコ」という品種も、近年注目を集めています。
有名な産地はサントリーニ島。この写真のとおり、芸術的な美しさのある島です。
ここのアシルティコは、島に吹く強風に耐えられるつくりをするので、畑の面積に対してつくれるワインが少なく高級品。
 
 
それに対してミロナス・ワイナリーがあるのはアテネ近郊。おなじ品種とはいえ栽培はやりやすく、その分価格はリーズナブルです。
 
 
これまた高い酸味とミネラル感が特徴の品種であり、魚介料理のよきパートナーです。
 
 

ミネラル感と食事の相性に特化して

 
正直、風味としてシャブリに似ているかといわれると、それほどでもない。
でも「繊細な香りで酸味が(やや)高く、ミネラル感がある辛口白ワイン」ですので、文字の上ではドイツのジルヴァーナーもシャブリの代わりとなりそうです。
 
 
ドイツワインとして酸味はさほど高くないジルヴァーナーですが、温暖化の影響が現れているシャブリの2018年あたりと比べるなら、特に酸味の低さは感じません。
ジルヴァーナーはほとんどが甘くない辛口ワインに仕上げられますが、中でもキリッキリの辛口の方がより幅広い料理の邪魔をしないでしょう。
「今日は何飲もうかな~、これでいいや!」と開けて間違いないのが便利なところです。
 
 

いつものおうちワインにブランド名は要らない

 
ワインをプレゼントする。ワイン好きが集まる場に持っていく。そんな時は「みんなが知っているワインかどうか」という、ブランドネームが必要なこともあります。
家飲みする場合でも、たまのご褒美になら「有名なワインを飲んでいる」という満足感は決して無意味じゃない。
でも自宅で普段の晩酌に飲むなら、極論美味しければいいですよね
 
 
「シャブリ」が好きな方が普段飲みワインにそれを買うのは、失敗しない安心感からじゃないでしょうか。
お金に余裕があるなら、値上がりしてもシャブリを買い続けることを止めるつもりはありません。
でもこの値上がりについていけないと感じているなら、ちょっとだけその安心感を捨てて、代替シャブリに冒険してみてはいかがでしょう。
 
もしかしたらあなたのお家の定番ワインになる1本が見つかるかもしれません。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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