ワインのできるところ

脱初心者のためのフランスワイン概要

2024年8月25日

 
「ワインと言えばフランス」というイメージは多くの方がお持ちでしょうが、「フランスワイン」というイメージ像はあまりないはず。
10の産地がそれぞれ独立した特徴を持っており、産地ごとのブランド化が進んでいるからです。
ワインに関するフランスの概要に加え、10の産地の特徴とその典型的なワインをご紹介します。
これからワインを飲んで勉強していく方にとっての、入門ガイドとして読んでいただけたら幸いです。
 
 

目次

ワイン大国フランスの概要

 
ワインの生産国を理解する上で、ワインのことを抜きにその国の全体像をとらえることは重要です。
フランスについては、「ワインにとってフランスは重要」であると同時に「フランスにとってワインは重要」と言えるのが大きな特徴です。
 
 

フランスの概要と貿易

 
フランスに関する基本事項は下記の通り
 
フランス共和国
人口 約6,800万人(日本の約57%)
面積 約55万㎢(日本の約1.5倍)
首都 パリ
原語 フランス語
宗教 カトリック、イスラム、プロテスタント、ユダヤ教など
一人当たりのGDP 4.4万ドル
失業率 7.4%
 
※外務省による2023年のデータ
 
税金や社会保障費は高く、各種の規制も厳しい傾向にあります。保障が手厚いことも失業率が高めであることと関係しているようです。
日本と比べるなら人口密度が低く、それもあってワインのみならず農業にも注力しており、農作物は主要輸出品目に数えられます
 
 

フランスワインのデータ

 
フランスのワイン生産量は、イタリアと並んで世界No.1です。
「並んで」というのは頻繁に順位が入れ替わるから。ワインも農作物なので、豊作・凶作があります。ヴィンテージの作柄により入れ替わるほどの差なのです。
 
生産量 4800万hl(世界第1位)
消費量 2400万hl(世界第2位)
栽培面積 79万ha(世界第2位)
輸出量 1270万hl(世界第3位)
輸出額 120億ユーロ(世界第1位)
輸入量 600万hl(世界第4位)
輸入額 9.5億ユーロ(バルクで74%)
  
※OIVの2023年のデータにもとづく いずれも概数
※hl(ヘクトリットル)=100L ワインの統計ではよく使われる単位です。
 
ワイン大国として有名なフランスですが、ワイン消費国としてもかなり上位です。たくさんつくって国内でも消費し、特に高級品をたくさん輸出している国と言えます。
 
これほどたくさんワインをつくって輸出しているのに、輸入量もかなり多いことを不思議に思うかもしれません。
一つはフランス人だってたまには他の国のワインを飲みたいから。なにせ一人当たりの消費量が年間35L(47本くらい)と、日本の10倍以上ですから。これでも最盛期に比べるとワインを飲まなくなってきているというのです。
もう一つの理由として挙げられるだろうものは、国内製造ワイン。日本のスーパーで見かけるパックワインのようなもので、国内よりもっと安い輸入原料でつくるワインが数字に含まれているのでしょう。
 
 

フランスの代表ブドウ品種

 
フランスで栽培面積の多い白ブドウ、黒ブドウの上位5つをピックアップします。
 

白ブドウ
1位 ユニ・ブラン 9.2万ha
2位 シャルドネ 5.4万ha
3位 ソーヴィニヨン・ブラン 3.2万ha
4位 コロンバール 1.2万ha
5位 シュナン・ブラン 1.0万ha

黒ブドウ
1位 メルロー 11万ha
2位 グルナッシュ 8.5万ha
3位 シラー 6.7万ha
4位 カベルネ・ソーヴィニヨン 4.7万ha
5位 ピノ・ノワール 3.2万ha
 
※いずれも概数 ソムリエ教本2024年 2019/20年栽培面積のデータによる
 
世界各地で栽培され高級ワインがつくられる「国際品種」の多くは、フランスで生まれたものです。それゆえフランスワインをあまり飲まない方でも、親しみのある品種が多いでしょう。
 
 

フレンチパラドックスとは

 
フランス人は相対的に喫煙率が高く、飽和脂肪酸が多く含まれる食事をしているのに、冠状動脈性心臓病にかかる割合が有為に低い。その理由として赤ワインの摂取量が多いことが関係しているだろう
かつてそのような研究結果が発表され、「フレンチパラドックス」と名付けられました。
 
この研究は日本でも話題となり、第5次ワインブームを後押し。ワインの消費が日本で一般的になっていく原動力の一つとなりました。
赤ワインに含まれる「レスベラトロール」という成分が、動脈硬化の進行を防ぐこともわかっています。
 
 
ただしこの研究結果をもとに「健康のために赤ワインをたくさん飲もう」なんて考えてはいけません。
もともと日本人は脂肪の摂取量が少なく、心臓病のリスクもかなり低い方です。その上フランス人とはアルコール代謝のスペックが違います。人種も食生活も違うのに、同じ結果を期待するのは愚かです。
 
お酒は美味しく適量に
 
 

基本だけおさえるフランスのワイン法

 
ワインの生産国を理解する上で、その国のワイン法を触りだけでも知っておくことは助けになります。
特に初めて見るワインについて、ラベルから情報を読み取ることに役立ちます。特にヨーロッパの伝統生産国は独自のルールが多いので、知っているかどうかで大違いです。
 
 

「AOC」「AOP」は産地のブランド

 
フランスの中級以上のワインにはほとんど、次のどちらかの表記があります。
 
AOC Appellation d’Origine Controlee
 アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ 原産地呼称統制
AOP Appellation d’Origine Protegee
 アペラシオン・ドリジーヌ・プロテジェ 原産地呼称保護

 

 
難しいワインの試験にチャレンジする方以外は、言葉を憶える必要はありません。なんとなくの意味だけ知っておいてください。
この2つが意味するところはほぼ同じ。1935年に制定された「AOC」を、EUの統一規格に合わせて名称変更したものが「AOP」で、どちらの表記も可能です。
この「Origine」のところに産地名が入り、「Appellation d’Alsace Controlee」のように表記されることもあります。
 
  
表記される産地の規則に則ったワインである
この産地の名称は、他の地域では使えない
 
大きくこの2つの意味があります。
 
例えば「AOC Chablis」と表記されていれば、ブルゴーニュ地方の中のシャブリ地区で栽培されるシャルドネをつかった白ワインであることが読み取れます。実際は栽培法や醸造法にも細かい規定があるでしょう。
ブドウ品種は決まっているのですから、「Chablis Chardonnay」と表記されることはありません。
 
 
産地を見ればワインの味わいがだいたい想像できる。AOCの名称をヒントに自分好みのワインを選べる
それはいわば「産地としてのブランド」と言えるでしょう。だからこそ、他の地域で勝手に使われないように「保護」するのです。
 
 

「IGP」と「VDF」とは

 
AOCの下のクラスに相当する「IGP」だと、その規定はゆるくなります。ワインの生産地域を表すだけで、品種や製法は指定されません
 
IGP Indication Geographique Protegee
 アンティカシオン・ジェオグラフィック・プロテジェ 地理的表示保護

 

 
だからラングドックなどのワインには、ブドウ品種名が表記されていることが多いのです。
 
生産地域を跨いでブドウをブレンドすると、その地域名すら名乗れません。
その場合はVDF(Vin de France)というカテゴリーになります。フランス国内で製造されていることだけを示します。基本的には大量生産・大量消費用の安ワインのカテゴリーなので、あまり日本で見かけることはありません。
 
ただし中には隣接する生産地域の境でつくっているからVDFだというものもあります。
 
 
ロワール地方の東端とブルゴーニュの西端は隣接しており、その両方のソーヴィニヨン・ブランを使うから産地を名乗れません。しかしそれは品質が低いこととは違います。
 
 

「フランスワイン」ではなく「〇〇ワイン」

 
「私はフランスワインが好きです」という方には、私はまだ会ったことがありません。
「フランス」という国の単位ではなく、「ボルドー」「ブルゴーニュ」といった地方の単位で捉えているからです。それほど地方が違えばブドウ品種もワインのスタイルも違います。
 
ただ違うだけではありません。それぞれのブランドが確立され日本で認知されています。きっと他の多くの消費国においてもそうでしょう。
それは日本におけるワイン消費の黎明期からたくさん輸入されたという「先行者利益」もあるでしょう。加えて生産者団体、地方ごとの協会によるプロモーション活動の成果とも言えるはずです。
これほど地域単位の個性を認知できている生産国は他にありません。
 
「フランスワインは~~~だ」と語るには、主語が大きすぎるんです。地方の単位で特徴を捉えられたら、脱初心者の第1歩です。
 
 

フランス10のワイン産地概要

 
この章ではフランスの産地を9つに分けて紹介します。ただし詳しく説明しようとすれば、それぞれ一記事まるごとでも収まりません。
なのでこの記事では、ワインに興味を持ち始めた方にまず知っておいていただきたいことに絞って、単純化してご紹介します。そのため「嘘ではないが正確とは言えない」ということもあることをご承知ください。
 
 
※以下の数値は全て概数で、ソムリエ教本2024年のデータに基づく
 

ボルドー地方概要

 
栽培面積 11万ha
生産量 490万hl
赤:白:ロゼ比率 85:11:4
価格帯 幅広く
気候 海洋性気候
土壌 砂利質や粘土石灰質など
 

主要ブドウ品種

黒)カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン
白)ソーヴィニヨン・ブラン、マルベック

 

 

特徴1 「シャトー」のワイン

ボルドーの生産者名の多くには「シャトー」とつきます。直訳すれば「城」。
シャトーがその建物のまわりに所有する大きな畑に複数の品種を植え、そこから2、3種類程度のワインをつくることが多いです。赤ワインが中心な産地です。
複数品種をブレンドするのが通常で、その比率を調整することで品質を保ちます。
これは次に紹介するブルゴーニュ地方とは対照的です。
 
 

特徴2 左岸と右岸

ボルドー地方を貫く大きな川が3つ。南のガロンヌ川と北のドルドーニュ川がメドック地区で合流しジロンド川と名前を変えます。
ガロンヌ川・ジロンド川の南側、流れる方を向いて左側である「左岸」
ドルドーニュ川・ジロンド川の北側を「右岸」と呼びます。土壌とワインが違います。
左岸は砂質土壌で保水性が低くブドウの成熟を助けるので、カベルネ・ソーヴィニヨンに適しています。
右岸は粘土石灰質で水を貯える冷たい土壌なので、熟しやすいメルローやカベルネ・フランに向いています。
 
この左岸と右岸の違いを知ることが、ボルドーワインの第一歩でしょう。
 

左岸 カベルネ・ソーヴィニヨン主体

 

右岸 カベルネ・フラン主体

 

ワインのスタイル

カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランが親戚関係にあるブドウであることもあり、ワインのスタイルに共通点が多くあります。
熟したフルーツの印象は控えめで、引き締まったベリー香にピーマンなどのグリーンノート。そこに樽熟成由来の香り。酸味・渋味ともに豊かで、上品かつ力強い味わいが特徴です。それゆえ熟成ポテンシャルの高いワインが多くあります。
 
 
「五大シャトー」をはじめとした高級ワインもあります。一方で1000円前後からの低価格ワインも大量につくられており、その層は非常に厚いです。
一つの銘柄の生産量が多いのと、ワインのスタイルが熟成向きなのもあり、10年~20年前のワインがたくさん流通しています。
 
 

ブルゴーニュ地方概要

 
栽培面積 3万ha
生産量 150万hl
赤&ロゼ:白:泡比率 29:60:11
価格帯 中価格帯~超高価格帯
気候 大陸性気候
土壌 粘土石灰質など
(ボジョレーを除く)
 
ボジョレー地方概要
栽培面積 1.5万ha
生産量 80万hl
土壌 花崗岩質など
 

主要ブドウ品種

黒)ピノ・ノワール、ガメイ
白)シャルドネ、アリゴテ
 

特徴1 ドメーヌとメゾン

自社で所有する畑のブドウのみからワインをつくる生産者を「ドメーヌ」と呼びます。一方で、契約農家や他のドメーヌのブドウも使う「ネゴシアン」による生産も無視できません。必ず表記されるわけではありませんが、「メゾン~」とはネゴシアンであることを示します。
一般的にはドメーヌものの方が高品質とされますが、近年は品質を徹底追及した「ミクロネゴス」も話題です。
 

特徴2 畑の分割所有と銘柄数

ブルゴーニュではほとんどの畑を複数の生産者・農家が分割所有しています。また一つのドメーヌは複数の村にいくつもの畑を所有していることが多いです。
上級のワインは単一畑でワインとすることが多いため、一つの生産者がときに30種類を超えるワインをつくることがあります。そのほとんどは生産量数百本~2,3千本程度です。
生産者と畑の掛け算で、ブルゴーニュワインの銘柄数は膨大。ボルドーに比べて圧倒的に多いです
少量・多種類の生産がボルドーとは対照的な特徴で、ブルゴーニュワインがややこしい要因の一つです。
 
 

特徴3 畑が違えば風味が違う

ワインは基本単一品種でつくられます。赤はピノ・ノワール、白はシャルドネのみ
だからこそワインは畑の特徴が際立ちます。道一本挟めば同じ生産者でも風味が違う。違う生産者でも同じ畑なら共通点がある。
それが生産者がやたらと口にする「テロワール」という概念の肝です。
 

ブルゴーニュワインを知るには

「ブルゴーニュのシャルドネ」「ブルゴーニュのピノ・ノワール」の特徴を知りたいなら、大手のネゴシアンがつくるスタンダードの「Bourgogne」を飲むといいでしょう。全域のブドウが使われているので、産地全体の特徴が捉えらえます。
当店には取り扱いがありませんが、「ルイ・ジャド」「メゾン・ジョセフ・ドルーアン」などが候補でしょう。1本4000円前後です。
 
一方でブルゴーニュの「同じ品種でも畑で味が違う」を体験したければ、最低でも村名格で飲み比べる必要があります
「シャンボール・ミュジニー」「ジュヴレ・シャンベルタン」などの人気の村で比較するなら、1本1万円程度は覚悟が必要です。
 

繊細で細身な口当たり

 

鉄分を想わせる風味と力強さ

 
マシャール・ド・グラモンはリリースしたてから親しみやすい味わいなので、違いを感じやすいでしょう。本来ならヴィンテージも揃えられるとベターです。
 
 

シャンパーニュ地方概要

 
栽培面積 3.3万ha
生産量 200万hl
タイプ 90%近くはスパークリングワイン
価格帯 中価格帯~高価格帯
気候 大陸性気候と海洋性気候
土壌 白亜質の石灰土壌、粘土質など
 

主要ブドウ品種

ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネ

 
 

特徴1 スパークリングワインに特化

シャンパーニュ地方は世界最高のスパークリングワインであるシャンパンの産地。ほとんどスパークリングワインしかつくられていません。フランスのAOC法の例外として、単に「Champagne」と表記すればAOCワインであることが示されます。
年産約3億本という数字は量でいえばイタリアの「プロセッコ」に次ぐ第2位。しかし金額では断トツNo.1です。
 
 

特徴2 大手メゾンの有名シャンパン

シャンパーニュはブルゴーニュ以上に栽培と製造の分業体制。大手のメゾンが多くの農家からブドウを購入しシャンパンをつくります。その割合はなんと7割。残りの3割が協同組合や自社畑からシャンパンをつくる生産者です。
 

大手生産者の万人受けを狙った味

 

小規模生産者の個性的な味

 
 
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ローヌ地方概要

 
栽培面積 6.6万ha
生産量 250万hl
赤:白:ロゼ比率 76:14:10
価格帯 低価格帯~一部高価格帯
気候 大陸性気候と地中海性気候
土壌 花崗岩、片岩、石灰質、粘土質、砂質など様々
 

主要ブドウ品種

黒)シラー、グルナッシュ、ムールヴェードル、サンソー
白)ヴィオニエ、マルサンヌ、ルーサンヌ、グルナッシュ・ブラン
 
 

特徴1 北ローヌと南ローヌ

ローヌ地方は「ヴァランセ」という街を境に南北に分けられます。
北部はシラー100%ないし主体とした赤ワインと、ヴィオニエによる白ワインが中心。中から高価格帯のワインが多い傾向です。
AOCコート・ロティやAOCエルミタージュの赤ワインは、シラーの野性的な力強さとどっしりとしたボディ感、それに上品さと熟成ポテンシャルを兼ね備えており高級感があります。
 
それに対して生産量としては南が多く、こちらはグルナッシュが主役ですがブレンドが基本です。特に南部の銘醸ワインである「シャトーヌフ・デュ・パプ」は、13もの品種がブレンド可能です。豊満な果実感と口当たりのしなやかさが特徴でしょう。
 

シャトーヌフ・デュ・パプの畑

 

特徴2 AOCコート・デュ・ローヌで半分

ローヌの広域で生産可能なスタンダードクラス、「AOCコート・デュ・ローヌ」は、赤・白・ロゼともに生産可能。128万hlとローヌ地方のほぼ半分がこのワインです。赤・白・ロゼともに果実感豊かで酸味おだやか、リッチなスタイル。手頃に濃厚なワインを飲みたければ、まずローヌから探すのがいいでしょう。
 

ローヌ全域でワインをつくる大手生産者の一つ

 

プロヴァンス・コルス概要

 
ローヌ地方に隣接するプロヴァンス地方、およびその南西に浮かぶコルシカ島のエリアです。
 

プロヴァンス概要

 
栽培面積 4万ha
生産量 200万hl
赤:白:ロゼ比率 6.5:4.5:89
価格帯 中価格帯~一部高価格帯
気候 地中海性気候
土壌 石灰質、粘土石灰質、シストなど
 

主要ブドウ品種

黒)シラー、グルナッシュ、サンソー、ムールヴェードル
白)ロール(ヴェルメンティーノ)、ユニ・ブラン、クレレット
 
 

プロヴァンスの特徴 世界最大のロゼワインの産地

この地方の特徴は何といってもAOCワインの89%を占めるロゼワイン。世界中で消費されるロゼワインの5%を生産しているといいます。
主要なAOCとしてはコート・ド・プロヴァンス。地中海性の温暖な気候により、果実味豊かでボリューミーな味わいのロゼワインがつくらえます。
 
 
一方でプロヴァンスの中心としであるマルセイユは、フランス第2位の経済都市であり観光地。結構なワイン生産量があるのですが、消費量もまた莫大。輸出されるワインはそう多くないそうで、価格はロゼワインとしてはやや高めです。
 
 

コルシカ島概要

 
栽培面積 6000ha
生産量 37万hl
赤:白:ロゼ比率 28:16:56
価格帯 低価格帯~中価格帯
気候 地中海性気候
土壌 花崗岩、シスト、石灰質など
 
主に島の沿岸部にブドウ畑があります。かつてローマ人の手によりワインづくりが持ち込まれたため、その歴史はかなり古いもの。ただし日本の市場でワインを見かけることはあまりありません。
 

コルシカ島の特徴 イタリアと共通点

距離としてはフランスのプロヴァンスよりイタリアのサルディーニャ島の方がずっと近いです。それもあってブドウ品種はイタリアと共通するものが多いです。ヴェルメンティーノや、サンジョヴェーゼの別名である「ニエルッチョ」などが主要品種です。
年間の日照時間が非常に長く、明るい果実味を持ったワインがつくられます。

 

  

アルザス地方概要

 
栽培面積 1.6万ha
生産量 100万hl
赤:白:ロゼ比率 1:90:9
価格帯 やや低価格帯~やや高価格帯
気候 乾燥した大陸性気候
土壌 「モザイク」と評されるほど多種多様
 

主要ブドウ品種

白)リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカ、シルヴァネール、ピノ・ブランなど
黒)ピノ・ノワール
 
 

特徴1 品種名表記

AOCワインでありながら、品種名表記が一般的である地域です。単一品種でつくられることも多いため、品種の好みでワインを選べる地域です。
一方で「ジャンティ」「エデルツヴィッカー」のようなブレンドしてつくる手頃なワインのスタイルもあります。
ただ手頃と言っても、ボルドーやローヌに比べると1000円台のワインはあまりありません。逆に3万円以上のワインもかなり少なく、価格帯の幅が狭い産地です。
 

特徴2 意外と温暖

南北に広がるアルザス地方の西側にはヴォージュ山脈があります。これが西からの風を遮るので、暖かく乾燥した気候となります。リースリングやピノ・グリなどは隣接するドイツにもよく見られる品種ですが、アルザスの方がよく熟した風味を持ち、特に上級クラスはアルコール度数高めな傾向があります
シャンパーニュとあまり変わらない緯度でありながら、それほど冷涼とは言えない産地なのです。
 

2015年は暖かかった年ということもあり、アルコール14.5%

 
アルザスのワインはフランスの中でというより、他の生産国と同じ品種で比較して理解していくのがいいでしょう。
 
 

ロワール地方概要

 
栽培面積 5.8万ha
生産量 320万hl
赤:白:ロゼ比率 20:53:27
価格帯 低価格帯~やや高価格帯
気候 主に海洋性気候で一部半大陸性気候
土壌 片麻岩、片岩、花崗岩、石灰岩、火山岩など様々
 
ロワール川に沿って東西に長く広がるロワール地方は、エリアでなら最も広い産地でしょう。その特徴は東西で4つのブロックに分けられます。西から順に紹介します。
 

ペイ・ナンテ地区

ミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)という品種をつかった白ワインが大半を占めます。控えめな香りとスッキリとした風味を持つ白ワインです。
 
 
 

アンジュー&ソミュール地区、およびトゥーレーヌ地区

 
ロワール地方の中央に位置するこの2地区は、簡単に特徴を挙げることのできない、混沌とした地区です。
 

主要ブドウ品種

黒)カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、ガメイ、グロローなど
白)シュナン、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ
 
これら様々なブドウ品種から、赤、白、ロゼ、スパークリング、甘口すべてつくられています。「造ることができる」というだけでなく、世界的に名の通った銘醸といえる村がいくつもあります。
ワイン初心者を脱する段階では、一旦理解を放棄していい地区だと私は考えます。
 
一つ挙げるなら、シュナン・ブランの銘醸地と言えるのはフランスでこのエリアだけ。辛口~甘口・スパークリングと様々に姿を変える品種で、その繊細さとスマートなボディは魅力的です。
 

辛口でスマートな味わいの典型的なヴーヴレ・セック

 
 

サントル・ニヴェルネ地区

  

主要ブドウ品種

白)ソーヴィニヨン・ブラン、シャスラ
黒)ピノ・ノワール、ガメイ
 
 
この地区の主役はなんといってもソーヴィニヨン・ブランです。
特に「AOCプイィ・フュメ」「AOCサンセール」の2つの地区は高品質。土壌によって風味の感じ方が異なるので、探求心が刺激されるエリアでもあります。
 

この品種に火打石のアロマは他の地域ではあまり感じないでしょう。

 
 

ラングドック・ルーション地方概要

 
栽培面積 20万ha
生産量 1150万hl
赤:白:ロゼ比率 不明
価格帯 低価格帯が大部分
気候 地中海性気候
土壌 砂質、石灰質、粘土質、シストなど
 

主要ブドウ品種

白)グルナッシュ・ブラン、ブールブーラン、ピクプール、クレレット
黒)グルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、カリニャン
 
 

特徴1 IGPワインの産地

フランス最大のワイン産地であるラングドック=ルーション地方。隣接する2つの地域をまとめて扱うのは、ワインの性質が共通するからです。
ここはIGPワイン、つまりAOCほどブランドが確立していないワインの一大産地。全生産量の70%がIGPワインであり、フランス全土でつくられるIGPワインの80%がこの地域でつくられます。
それゆえAOCほど細かな統計がとられていないのでしょう。資料にはワインのタイプ比率について、AOCワインの分しか載っていませんでした。ブドウ品種の統計も、AOCワインのみなのでしょう。
 

特徴2 フランスの中のニューワールド

これほどIGPワインが多いのは、ブドウ品種名表記の廉価ワインで大成功したからです。
カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、シラー、メルロー、ソーヴィニヨン・ブラン・・・・・そういった人気のブドウ品種名を全面に打ち出したワインこそ、日本でよく見かけるもの地方のワインです。「Pay d'Oc ペイ・ドック」という名称がそれにあたります。
それを可能とするのが、生育期にほとんど雨が降らない安定した地中海性気候。ブドウの病気が少ないので生産コストが下がりオーガニックもやりやすい。2.2万haの畑で有機栽培が行われています。
スタイルや価格としてチリやオーストラリアに対抗できるようなワインが多いので、「フランスの中のニューワールド」とも呼ばれるそうです。
 
この地方全域に様々なブランドを展開する「ポール・マス」グループは、まさにラングドック=ルーション地方を象徴する生産者と言えるでしょう。
 
 

ジュラ・サヴォワ地方概要

 
フランス東部、スイス国境付近に位置するジュラ地方とサヴォワ地方。生産規模の少なさからまとめて扱われますが、ワインとしては全く別物です。
 

ジュラ地方概要

 
栽培面積 2200ha
生産量 9万hl
赤:白:ロゼ比率 20:78:2(※)
価格帯 中価格帯~やや高価格帯
気候 半大陸性気候
土壌 灰色泥灰岩、粘土石灰質など
 

主要ブドウ品種

白)サヴァニャン、シャルドネ
黒)プールサール、トゥルソー、ピノ・ノワール
 

ジュラ地方の特徴 ヴァン・ジョーヌ

ワインは樽熟成の際に常に満タンにしないといけません。空いた空間に空気が入り、フロール(産膜酵母)が発生して欠陥臭が生まれるリスクがあるからです。
そのフロールを意図的に発生させ熟成した「ヴァン・ジョーヌ」と呼ばれる白ワインの亜種が、ジュラ地方の特産です。サヴァニャンの白ワインを産膜酵母の下で長期熟成させ、Clavelin クラヴランと呼ばれる620mlのボトルに詰められます。
ヘーゼルナッツやキャラメル、シナモンなどと表現される非常に複雑で独特な風味を持ったワインになります。色が濃い黄色になることから「黄ワイン」と呼ばれます。
 
 
ジュラのワインには他にも高品質なものはいろいろありますが、世界的に見て他にないワインとなるとやはりまずはヴァン・ジョーヌ。だから僅か2200haの産地が認知されているのです。
 
 

サヴォワ地方概要

 
栽培面積 2100ha
生産量 12万hl
赤:白:ロゼ比率 23:71:6(※)
価格帯 低価格帯~中価格帯
気候 海洋性気候 日照時間が短い
土壌 様々
 

主要ブドウ品種

白)ジャケール、アルテス、シャスラ
黒)モンドゥース、ガメイ、ピノ・ノワール
 

サヴォワ地方の特徴1 流通の少なさ

上記のとおりサヴォワワインの生産量は多くありません。しかも観光はサヴォワの主要産業であるため、全体の5%程度しか輸出されないそうです。
そういう点では、生産者としては地元消費でも賄えるのにわざわざ輸出に回すわけです。輸入元としてもあまり輸出に積極的でないサヴォワのワインをあえて探してきたのです。
日本に入ってくるからには、ある程度期待していいはずです。
 

特徴2 目立たない控えめなフルーツ感

山々に囲まれたある程度標高のある斜面に畑があります。その割には冷涼というわけではないそうです。しかし日照時間が年間1600時間程度と短い
それゆえか白ワインも赤ワインもあまり明確なフルーツの風味を感じない傾向にあります。
 
 
ワイン単体で飲んだときの印象は強くありません。その分食卓の脇役として使いやすい。料理を活かすワインとして、レストランで愛されてそうです。
 
 

南西地方概要

 
ボルドーを流れるガロンヌ川、ドルドーニュ川の上流地域から、スペイン国境にあるピレネー山脈近くの地域までに点在する産地。ここも「小さな地域を無理やりまとめました」という印象はあります。
ワインの特徴も様々で良く言えば「多様性がある」となるでしょう。裏返せば地域としてワインの特徴を語ることができないので、消費者に対して強くブランディングができません
 
栽培面積 5.5万ha
生産量 110万hl
赤:白:ロゼ比率 57:26:17(※)
価格帯 低価格帯~中価格帯
気候 海洋性気候、大陸性気候、地中海性気候
土壌 堆積土壌、沖積土壌
※生産量の1/3にあたるAOCワインのみの内訳
 

主要ブドウ品種

白)セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデル、モーザック
黒)カベルネ・フラン、マルベック、ネグレット、タナ
 

特徴 他と比べられない特徴を探求する

先述の通りワインを勉強し始めの方にとってはとっつきにくい産地でしょう。ワインを1本2本飲んでこの地域を理解することは決してできません。裏を返せばこの地域でしか出会えない面白いワインがたくさんあるということ。加えてブランディングが進んでないので、そう高くない価格で高品質なワインが見つかるということを意味します。
例えばタンニンの語源となっている「タナ」というブドウ品種。何十年も熟成可能な渋味の強いワインをつくりますが、そう高価ではありません。
 
 
 

勉強し始めるならフランスは後回し推奨の理由

 
ワインをもっとよく知りたい。その気持ちには様々な原動力が考えられます。
その一つとして、自宅でワインを楽しむ時間をより充実させたいというのがメインであれば、フランスワインの勉強は後回しにされることをおすすめします。
 
 

有名産地は高すぎる

 
本記事で触れた内容は本当に触りだけです。一つの地方ずつ詳しく理解していく必要があります。
その地方にはどんな地区があるのか。そこのAOCワインはどんなもので、他の地区とはどう違うのか。その地区を代表する生産者はだれか
 
その経験値を積む上で、フランスの有名産地のワインは高すぎます。特にブルゴーニュワイン!先述のとおり飲み比べてこそ価値があるのに、飲み比べのハードルが高いのです。
 
 
またロワール地方の中央部や南西地方のように、細々と特徴的な産地がある場合は面白くもあるのですが、情報がなかなか手に入りません。ネットで探して飲んだとて、地域の特徴なのか品種の特徴なのか、それとも生産者の特徴なのかがわからないことがあります
 
もう少し入りやすいワイン産地もたくさんあります。興味をもったところだけを少しつまんで、本格的に学ぶのは後回しにするのをおすすめします。
 
 

コミュニケーションツールと捉えるなら必須

 
一方で世界中の有名高級ワイン全体の中で、フランスワインの占める割合は大きいです。
ワインをステータスが高い人と交流する際の共通言語と捉えたとき、フランスワインは必須です。特にシャンパーニュ、ブルゴーニュ、ボルドーは力を入れるべきでしょう。
 
 
「力」というより「投資」と言った方がいいかもしれません。経験を積むのにかなりお金がかかります。ワインを購入する費用だけではありません。ワイングラスやワインセラーなども整える必要があります。
その分、「あの銘柄を持っている」「こないだあのワインを飲んだ」が、大いに話のネタになり得ます。どこで手に入れたか、飲み頃度合いはどうだったかなど、同じワインを飲んだことがある人にとっても興味ある情報だからです。
 
単に美味しいワインを飲みたいだけでなく、それを経験として活かしたい。そう考える方は、地域の特徴を知ったうえで有名な銘柄を経験するべきでしょう。
 
 

それでもやっぱり美味しいフランスワイン

 
美味しいワインは世界中にあります。「ワインと言えばフランス」のイメージが強いとはいえ、風味の面でフランスワインが圧倒的に優位とは、私は思いません。
 
一方でディープなワイン愛好家が何百本とコレクションしているワインの中に、フランスワインのウエイトはかなり大きい。SNSなどで見る限りそう感じています。そういった方は他の国のワインもたくさん飲んだことがあるでしょう。その上で夢中になる魅力が、特にブルゴーニュやシャンパーニュのワインにはあるのです。
 
 
人を引き付けるワインとは、味と値段だけではありません。「伝統のワイン」というものがAOCとして確立しているフランスは、ワインと地域の文化との結びつきも強いです
「どこのワインが安くて美味しいか」だけではつまらない。どうせいろいろなワインを飲むなら、その歴史や文化とともに味わうべく、知見を広げてみませんか?





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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