味わいバリエーションの全体像を知ることは、好みや気分でワインを選ぶ大きな助けになります。
大まかな味わい分類とその由来が分かれば、飲まずともだいたいの風味を想像できるからです。
風味の違いを頭で理解して飲むことで、鼻と舌で感じる解像度が上がりより特徴を捉えられます。
白ワインについての味わい分類を知れば、ワインの飲み比べがより楽しくなることでしょう。
初心者のための白ワイン味わい分類フローチャート
白ワインを味わいのタイプで分類する一例がこちらです。
本来はきっちり境界があるものではありませんし、この分類法に違和感を感じる方もいるでしょう。
しかしワイン初心者にとっては、まずは単純化してグループ分けすることで、共通点と相違点を明確にするメリットがあります。
頭で理解して鼻と舌で感じる
中にはウンチク抜きにワインを飲んだだけで、本質を理解できる鋭敏な人もいます。
一方で大多数の方にとっては、知識はワインの解像度を上げる助けになります。どういう違いがあるかを頭で予測することで、鼻と舌がそこに集中して、より明確に差を感じ取ることができるのです。
知っているから違いが分かる
例えばチリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインを飲むとします。
何の予備知識もなく飲めば、「美味しい/あんまり」といった単純なコメント以外、なかなか語れるものではありません。
品種を知って飲むならどうでしょうか。「カベルネ・ソーヴィニヨンだから、ベリー系の果実香にピーマンのような香り。渋味や酸味は強めだろう」と予想します。そうすると「おや?このワインはピーマン系の香りは弱く、ベリーでも良く熟したブラックベリーのような印象。それに土っぽい香りもあるぞ」とより詳細に香りを分解できるかもしれません。
さらに「チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンなら、土っぽい香りもありボディ豊かなものが多い」という典型例を知っているなら、もっと深堀りできるでしょう。
「こういうスペック・情報を持つワインは、典型的なものはこういう風味だ」
それは先入観と紙一重で、時に風味の感じ方を変えてしまう危険性もあります。
その一方で、知っている味は当然あるものとするからこそ、目の前のワインの特徴に集中できる面もあるはずです。
全体像が分かれば好みの現在地が分かる
例えば「このワインは高い酸味を持つ」という判別をするには、酸味が低いものから高いものまでの全体像を知る必要があります。経験が必要なのです。
甘味が強いのか弱いのか、コクが豊かなのか軽いのか、樽香が強いのか弱いのか。ワインの風味には様々なパラメータがあります。
全体像を知って自分の中でおおよその物差しをつくる。そうすれば「自分は酸味がやや高いくらいが好きそうだ」という風に好みのポジションが分かるようになります。
そのためにはまず、ワインにはどんな風味があるのか。特に味わいにおける重要なパラメータを知ることが大切です。
そのパラメータこそ、先述のフローチャートの分岐ポイントです。この記事ではまず白ワインに絞ってご紹介します。
甘口ワインをより詳細に知る
白ワインには甘口の白ワインと、甘くない辛口白ワインがあります。
一口に「甘口」と言っても様々な幅があります。ただしワインの流通量から言うと、大多数は辛口です。
白ワインはまず甘いか甘くないかで大きく分けられます。その上で自分好みの甘口度合いを知り、ラベルから読み取れるようになれば、ワイン選びの助けになります。
ワインの「残糖」とは
ワインに含まれる糖分の量を「残糖値」「残糖量」と呼びます。
「残糖」というのは、もともとブドウが持っていた糖分がアルコール発酵しきらずに残るものだから。厳密に0ではないのですが、微量なら人間の舌には感じません。「残糖のない辛口ワイン」と判断します。
糖類の種類はいろいろありますが、甘味の尺度として表すときは1Lの液体中に溶けているショ糖換算のグラム数として「g/L」で表します。
辛口ワインの定義とは
ドイツの基準に従うなら、4g/L以下なら完全辛口です。4~9g/Lの範囲でも酸度の値を2以上上回らなければ辛口と判断されます。ややこしいですが、「ほんの少し甘みがあっても、酸味が高ければ感じにくいから辛口」ということです。
ドイツには辛口ワインであることを表す「Trocken トロッケン」という表記がありますが、これは市場に甘口ワインが多いからこそ。他の多くの国では大半が辛口であるため、表記がなければ辛口というところが多いです。
やや辛口~やや甘口~甘口
明確な定義がないことを前提に、あえて言葉で表すなら次の通りです。
- やや辛口:冷やして飲んでもほんのり甘味を感じる
- やや甘口:口に含めばまず甘味が強く出るので、酸味は弱く感じる。食事と一緒でも気にならない
- 甘口:しっかりと強い甘みを感じるから、食事と一緒にはあまり気が進まない、でもグラス1杯美味しく飲める
それぞれ酸味が高いか低いかで甘味の感じ方は違います。やや辛口とやや甘口をまとめ、それぞれ酸味の高低で分類して言葉で表現しております。典型的なワインとあわせてご紹介します。
スッキリとした味わいにほのかな甘さ
みずみずしくやさしい甘味
ピュアな甘みとキレのいい後味
フルーツにかぶりつくようなジューシーな甘味
この辺りの糖度のワインが最も「ちょうどいい」を選ぶのが難しいです。
明確な定義はなく、表記のゆれもあり、糖度以外の影響もあるからです。
たとえば「やや甘口」と「半甘口」のどちらが甘いか聞かれても答えられません。言葉を使う人によるからです。
また酸味の強さにも影響を受けます。酸味が低いワインなら実際の糖度よりまろやかに甘く感じます。一方で酸味が高いワインだと甘味は控えめでスッキリと感じます。同じ糖度でも品種が違えば感じ方は異なります。
極甘口
貴腐ワインやアイスワインなどのデザートワインを「極甘口」と表現しています。(※)
味わいはもちろん香りにも強い甘みを感じます。糖度100g/Lを大きく超えてくると、個人差もありますがワイングラス1杯100mlは多すぎると感じるでしょう。小さなグラスに30~50mlくらいがちょうどいいはずです。
味わいが非常に強いので、よほど濃い味付けの料理でない限り、ワインが味を覆い隠してしまいます。なのでデザートやチーズと一緒に食後酒として楽しまれることが多いです。
極甘口ワインは製法により風味の質が大きく異なります。特に「貴腐ワインか否か」で大きく違います。
貴腐菌のついていないブドウからつくるものは、よりピュアなフルーツ感やハチミツのような風味を感じます。貴腐ワインはより香りが複雑で、スパイスのような香りも感じます。
たくさんは飲めないワインなので、ハーフボトルのみで展開されることが多いです。
濃密な甘味のデザートワイン
複雑で濃密な風味を伴う芳醇な甘さ
極甘口の定義
当店を始めある程度一般的だと感じている表記です。ただしWSETという国際的なワイン教育機関の基準では、上記のようなものも「甘口」。残糖度が500g/Lもあるような、シェリーのペドロ・ヒメネスですとか、トカイのエッセンシアに「極甘口」と使うそうです。これらのワインがあまり一般的ではないため、上記のような分類としています。
甘口ワインの製法と見分け方
やや辛口・やや甘口のワインは、アルコール発酵を途中で止めてつくることが多いです。
甘口のワインはブドウの時点で糖度が高くないとなかなかつくれません。ブドウを遅摘みしたり、収穫後に乾燥させたりなどして、果汁糖度を高めます。
極甘口は上記の製法をさらに進めます。貴腐ワインかアイスワイン、収穫後のブドウを感想させる方法などです。
詳しくは甘口ワインの製法を解説したこちらの記事で▼
甘口ワインの目印となるラベル表記は、その生産地により非常に多種多様です。そしてこの表に当てはまらないからといって、辛口とは限らないのがややこしいところ。見分け方は簡単ではありません。
樽香を感じる白ワインを詳しく知る
辛口白ワイン3つに大別するその一つを、その一つを「樽熟成の香りを感じるタイプ」とします。
ブドウ品種由来の香りに樽香が加わるため、複雑でボリューム豊かな香りを持つ傾向です。さらに口当たりが滑らかで厚みがあるものが多く、飲みごたえがあるものが多い。
「リッチな」という表現が当てはまる風味豊かなものが多いため、当店では人気の高いタイプです。
樽香感じる白ワインをつくるには
アルコール発酵が終わったワインをオーク樽に入れ、数か月~2年ほど保管します。こうして樽熟成すると樽材に由来する風味が添加されます。顕著なものだと、ヴァニラやココナッツ、アーモンドのような香りを感じます。
ワインのオーク樽熟成についてはこちらの記事で詳しく▼
樽香のあるワインのほとんどは樽熟成をしています。
しかし樽熟成をしているからといって、必ず樽香を感じるわけではありません。
オーク樽は一度使っただけでは捨てません。洗浄して何度も使います。そのうちワインに香りを付与する能力は失われます。
古いオーク樽で熟成してもほとんど樽香はつきません。ワインの量に対して接触面積が小さくなる大きなオーク樽なら、なおさら影響は小さくなります。
樽香を感じる白ワイン代表、シャルドネ
このタイプの白ワインは、シャルドネでつくられるものが圧倒的多数です。
シャルドネは「ニュートラルな品種」だと言われます。ブドウ品種自体の香りがあまり主張せず、栽培環境や醸造法の影響を大きく受ける。それもあって樽香との親和性が高く、高級なものはかなりの割合で樽熟成してつくられます。
逆に低価格帯、2000円以下のシャルドネの多くはステンレスタンク発酵・ステンレスタンク熟成でつくられます。ステンレスはワインの成分に影響を与えず、空気も通しません。比べるならシンプルな香りでフレッシュな味わいに仕上がります。
樽熟成をしているもの/していないもので飲み比べれば、白ワインの『樽香』というものをしっかり理解できるでしょう。
フランス産オーク樽で発酵・熟成
ステンレスタンクで発酵・熟成
「アンオーク」「アンウッディッド」などと表記されることもたまにあります。でも表記されていないことの方が多いので、メーカーHPなどで醸造法の確認が必要です。
樽香があるのはリッチなワイン?
「リッチな」と表現されるワインの特徴は、風味が複雑で強く感じられたり、味わいに凝縮感やボリュームがあったりというもの。
樽香のある白ワインの中に「リッチな」ワインが多いのは事実ですが、イコールではありません。逆に樽香をつけるならリッチなワインである必要があるのです。
原料としてのグレードが低いため、風味に乏しく個性のないワイン。それに特徴をつけるため樽熟成しても、なかなかいいワインにはなりません。
ブドウの収穫時期を遅くして過熟気味で収穫すれば、フルーツの風味もある程度伴い、アルコールが高くなるのでボリューム感があります。そうした方が樽香とよく調和します。
結果として手頃な価格で樽香の強い白ワインは、酸味が控えめなものが多いです。それは限られたコストで樽香とそれに見合ったボリュームのある味わいに仕上げる工夫で、リッチな味わいになるのです。
樽香豊かでピシっと上品な酸のある白ワインもあります。ブドウ自体に豊かな風味があるから、無理に遅摘みしなくていいのです。だいたいそういうワインは平気で5000円を超えていきます。
樽香がしっかりと感じるワインであっても、酸味の高さで印象は変わります。次のように言葉で分類しています。
豊かな樽香と熟した果実感
樽香と酸味が醸し出す高級感
選び方の重要パラメータは熟成法と酸味
一口に「樽香を感じる」といっても強さがあります。ほのかに木材のニュアンスがあるものから、ヴァニラの甘い香りが前に出てくるものまで。また果実味と酸味のバランス感も様々です。
あくまで大雑把にですが、ワインのスペックから樽香のある白ワインの風味は次のように予想できます。
スペックから読み取れること
- 熟成の新樽比率が高いものは樽香が強い
- 同じ新樽比率でも高価なものは樽香控えめに感じる
- フレンチオークよりアメリカンオークを使用しているものが、香りに甘い印象が強い
- 発酵容器は樽よりステンレスタンクの方が樽香は強い
- 価格が上がると酸味が高めになる傾向
- 緯度の高い冷涼産地の方が酸味は高くスッキリ
- 冷涼産地の方が香りの甘い印象は弱い
- 風味表現に「パイナップル」「マンゴー」「トロピカルフルーツ」などがあると酸味穏やか
- 風味表現に「レモン」「リンゴ」「白い花」などがあると酸味が高い
これらの情報はどのワインでも得られるものではありません。なので情報と自分の感じ方をリンクさせるには経験が必要です。
経験を積めば情報からワインの風味をある程度予測できるようになり、目当ての樽香のある白ワインを選びやすくなります。
樽香があるワインはパーティーや単体で活躍
樽香豊かでリッチなワインは、一口、グラス一杯での満足度が高いです。
そういった味わいは、1本を5人以上くらいで分けて飲むパーティーで魅力を発揮します。一人当たりの量が少なくなってしまっても、満足度が高く記憶に残りやすいのです。
また風味の豊かさと口当たりの重量感は、料理なしでワインだけで飲み続けても物足りなさを感じにくいでしょう。食後にワイン単体で飲むときなどにチョイスするのをおすすめします。
一方で樽香と相性の悪い料理・食材もたくさん存在します。夕食時に開けてみて相性が悪ければ、「これはあとで飲もう」とするのも一手です。
味わい分類の難しさ
白ワインの大まかな味わい分類を、「樽香のある/なし」ではなく「リッチ系/エレガント系」に分ける考え方もあり迷いました。エレガント系を定義するなら、酸味が高くアルコールは控えめで細身なタイプ。例えば辛口リースリングのような白ワインです。
しかしブルゴーニュのシャルドネのように、酸味が高くエレガントでアルコール13%程度、それでいて新樽を使って熟成していて風味豊か。そんなものもたくさんあるため、この分類を採用しています。
スッキリ系のタイプを詳しく知る
便宜的に「スッキリ系」としていますが、正直言葉のチョイスとして納得はしていません。先の「樽香のあるタイプ」と次に紹介する「香り系品種」に当てはまらないものすべて。そう考えてください。
樽香ではなくブドウ品種由来のフルーツや花などの香りを感じる。
中程度から高めの酸味を持ち、後味のキレがいい。
こんな特徴を持つワインです。この多くはステンレスタンクによる発酵・熟成でつくられます。
スッキリ系タイプの2分類
スッキリ系タイプは醸造法により品種個性が出やすいとはいえ、そもそもあまり個性的でないブドウ品種もあります。
- 品種特性がハッキリしているもの
- 品種個性が穏やかなもの
品種に特有と言っていい香りがある。酸味の質に特徴がある。糖度の上がり方やボディ感に傾向がある。特有の苦みが出やすい。
個性的な品種が多い一方で、「これ、ブラインドテイスティングで出題しても誰もわからないよ」というような品種もあります。
個性的なスッキリ系タイプは多様性を楽しむ
このタイプの魅力は、ブドウ品種の個性と生産地の個性がピュアに現れることです。
だからこそ飲み比べる楽しさを最も味わいやすいのがこのタイプでしょう。ブドウ品種ごとにワインの風味が全く違う!同じブドウ品種でも生産地が違えば味わいのバランスが大きく違う。その上できちんと共通点もある。
例えばソーヴィニヨン・ブランという品種には、高い酸味のほか「グレープフルーツや青草、ハーブのような」と表現される特徴香があります。その強弱は産地や製法によって違いますが、ある程度共通点は感じられます。
ソーヴィニヨン・ブランについてはこちらの記事で詳しく▼
一つのタイプに収めるのが難しいほど、品種によってその風味は様々です。初めて飲むブドウ品種なら、プロとてスペックから風味を予測することはできません。そして世界に商業的に栽培されているワイン用ブドウは1400種類ほどあると言われます。当然飲んだことのない品種なんてたくさんあります。
ここからさらに分類するポイントは酸味でしょう。酸味が高く柑橘系の風味がよく表れたもの、酸味が穏やかでトロピカルフルーツ系の風味が表れるもの。大まかにはこの2つに分類できるでしょう。
上品さの中にフルーツ香る
凝縮感のある果実味
白ワインの他のタイプ、赤ワインでも詳しく見ていけばそれぞれに多様性があります。しかしそれほど味覚・嗅覚が鋭敏でない方にとって最もワインの多様性を感じやすいのは、このスッキリ系タイプでしょう。
「お気に入りの品種・産地を見つける」というのも大事ですが、「見慣れないものがあればとりあえず飲んでみる」の精神をおすすめします。
酸味が高いタイプで高級品となると、若いうちはあまりフルーツ感は前に出てきません。「ミネラル感」と呼ばれる鉱物的な風味が先行しがちです。
上品さと硬質なミネラル感
個性穏やかなスッキリ系タイプは食中酒の有力候補
オーク樽の風味がなくフレッシュな酸味を持つものが多いこのタイプは、食中酒として使いやすいものが多いです。
決して「どんな料理にも合う」とは言いません。
品種の個性が出ているものは、その個性にあわせて選ぶ必要があります。でも樽香のあるタイプに比べると大崩れはしにくい。
一方で特徴が穏やかなタイプは、濃い味の料理と一緒だとワインが負けてしまいます。でも「食を進めてくれて、酔っていい気持ちになれればいい」くらいの期待値なら問題ないでしょう。
このタイプも品種や産地に応じて酸味の高低があります。低いというよりは「高くない」ですが、キリっとした印象は薄まり、やさしく親しみやすい味わいとなります。
フレッシュで後味のキレがいい
みずみずしく柔らかいフルーツ感
トレッビアーノ、ミュスカデ、ピノグリージョなどの品種がその典型例。特別な美味しさもない代わりに嫌われにくく、リーズナブルなワインが多いのが魅力です。夕食時のワインとして便利なタイプと思ってください。
一方で丁寧につくっても極端には風味豊かなワインにはなりません。それもあってこのタイプは高級ワインは非常に少ないです。
香り系品種を詳しく知る
「アロマティック品種」と分類されるいくつかの品種があります。厳密な定義はありませんが、特徴的なフルーツの香りが非常に豊かなのが共通点。手頃な価格のワインでも、高級ワインに負けない香りの強さがあります。
アロマティック品種のワインは全体的にはそう多くはありませんが、それでも結構な種類があります。このグループで選ぶなら、注目すべきはブドウ品種と甘辛度合いです。
香り系品種の選び方1 ブドウ品種
香り系品種の中でワインを選ぶポイントは、まずはブドウ品種。品種ごとに特徴香を持ちます。
代表的なアロマティック品種の特徴香を挙げます。
ブドウ品種 | 典型的な香り |
---|---|
ゲヴュルツトラミネール | ライチ、マンゴー、バラ |
ヴィオニエ | 黄桃、アプリコット、黄色い花 |
リースリング | 白桃、レモン |
ミュスカ(※1) | マスカット、麝香 |
マラグジア | ライチ、パイナップル |
※1 マスカット系品種の一つで、正式には「ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン」。「モスカート」「モスカテル」「ジビッポ」などたくさんの別名を持ちます。
セミアロマティック品種とは
もともと定義があいまいなアロマティック品種。対義語としてはシャルドネのような「ニュートラルな品種」ですが、その中間として「セミアロマティック品種」と分類する方法もあります。文献により分類が異なります。
ソーヴィニヨン・ブランやアルバリーニョ、ピノ・グリなどはここに分類されることがあります。
香り系品種の選び方2 甘口/辛口
アロマティック品種の白ワインは甘いフルーツの香りを持つものが多いため、その香りのイメージ通りに甘味を残して仕上げるものも多いです。それでも「やや甘口」程度のものが多い傾向。
一方で完全発酵させてドライな味わいに仕上げるものもあります。
例えばこのゲヴュルツトラミネールは「やや甘口」くらいの糖度。香りのイメージ通りの甘味を感じます。
同じように香りが華やかながら、完全辛口のこちら。フルーツの香りに感じる甘さは控えめです。
甘口/辛口をよく確認せずに購入すると「思ってたのと違う」となり得ます。甘辛度合いはつくる人次第なのです。
なおデザートワインに分類されるような極甘口は、上記のものだとリースリングやミュスカくらいでしょう。他はあまり見かけません。
香り系品種は飲み方に工夫を
例えばゲヴュルツトラミネールのフルーティーな香りは、ワインを飲み始めて1か月の人でも「他の白ワインと全然違う!」と感じるでしょう。レストランなどで口にして気に入り、品種を頼りに探して自宅で飲む。最初はいいでしょうが、割とすぐに『飽き』が来てしまうでしょう。
品種の香りが強すぎるのです。
いろいろなゲヴュルツトラミネールを飲み比べても、糖度の違いはありますが、あまり産地による違いは感じられない。そして酸味も低い傾向にあるため、少し『飲み疲れ』しやすいタイプです。1杯は美味しいけど、1本は多いと感じちゃうかも。
ワイン仲間と一緒に飲めたらベストですが、そんな機会はそう多くないはず。
また香りが魅力なだけあって、抜栓後の劣化のスピードは他のタイプに比べて早いです。2日目、3日目に飲んだとき「開けたてのほうが美味しかったな・・・」と感じてしまうとテンション下がりますよね。
完全に劣化を止めることはできませんが、アルゴンガスを注入するなどで対策する効果は大きいです。
分類できないタイプも魅力的
ここまで白ワインをいくつかのグループに細分化してきました。
まず甘口か辛口か。甘口ならやや辛口~やや甘口、甘口、極甘口の3段階に。
辛口なら樽香を感じるタイプ、スッキリタイプ、香り系品種。それぞれのグループでもさらに細分化できます。
その上で、このグループ分類に当てはめられない白ワインもたくさんあります。
ちょっとだけ樽香のあるスッキリタイプ
「ヴァニラの甘い香り」と言われてもピンと来ない。ほのかにフルーツ類とは違う香りがする。
ブドウ本来の香りを主体に、樽香でほんの少し複雑さを増している。その程度の樽のかけ方をしたワインも最近は増えています。
そのタイプを次のように分類しています。
上品な果実味に控えめな樽香
こういうタイプはたいてい、割と酸味は高めにつくられるため、味筋としては「スッキリ系」に分類したくなります。飲み方としても単体より食中酒を想定されているでしょう。
「中途半端」とも言えますが「ちょうどいい」とも言える。「分類して全体像を理解する」というプロセスの弱点とも言えるワインです。
樽なしリッチ系白ワイン
ステンレスタンク発酵・熟成ながら、温暖産地でブドウの熟度が高いため、樽香のあるタイプに負けないほどリッチな味わいのワインもあります。先ほどの「凝縮感のある果実味」というタイプです。
先の例のほか、コート・デュ・ローヌの一部の白いワインです。(高級品は樽熟成されている場合が多いです)
ステンレスタンク発酵・熟成で樽香はありません。でもアルコール14%に迫ることもあり、パワフルな味わいで口当たりに厚みがあります。「スッキリ系タイプ」と分類するには少し無理があるかなと感じています。
カリフォルニア産のアルコール14%超えソーヴィニヨン・ブランも、分類に困ります。
こういったワインにも適したシーンや相性のいい料理があります。
味わい分類を知ればレストランでいい恰好できるかも?
冒頭のフローチャートが頭に入っていると、仲間とレストランに入ってワインを選ぶシーンで、かっこつけられるかもしれません。
最近ワイン勉強しているから、注文はまかせてよ
とワインリストを開く。そこで自分の好きなワインを注文するのはダサいです。
ボトルで注文する白ワイン、ちょっと甘いのと辛口ならどっちがいい?
(甘口なら飲み足りないときの1本に)
甘くない方がいいかな
じゃあ、オーク樽の香りがあってリッチなタイプと、スッキリ爽やかなタイプならどっちがいい?香りが個性的なものもあるよ
う~ん、じゃあリッチなものが美味しそうだし、それにしようか
OK、でも魚料理も注文したから、樽香は控えめのものにしておくね
そうやってスムーズにみんなの意見をまとめられたら、ちょっとだけ尊敬を集められるはずです。
そこからワインリストのどのワインが条件に当てはまるかを判断するのは、また別の知識が求められます。でもそこはソムリエに相談するのもありでしょう。
樽香が控えめに効いたリッチな白ワインをください
もちろんこの知識が役立つのはレストランシーンだけではありません。
何か飲むワインが欲しくてワインショップに入ったとき。買いだめしていたワインから今日の1本を選ぶときなども有用です。
そしてタイプで区切るからこそ気づく風味の違いもあるでしょう。
ワイン初心者が中級者に一歩踏み出す道しるべにしていただけると幸いです。