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甘口ワインの誘惑 貴腐ワイン、アイスワインって何?

2019年11月3日

前回のブログでは、甘く感じるワインの種類、どうして甘く感じるのかについてご紹介しました。
その理由の一つは、ワインに残糖、アルコールになりきらなかった糖分が残っているからでした。

一口に甘口ワインと言っても、その甘さの度合いは様々です。
中にははちみつのように濃厚に甘いものもあります。

その違いは何から生まれるのでしょうか?
時々耳にする「アイスワイン」「貴腐ワイン」はどうやって作られるのでしょうか。

今回は皆様を、魅惑の甘口ワインの世界にご案内します。

甘口ワインの基礎知識

ワインの甘さを表すには、「ワイン1Lあたりに糖分がショ糖換算で何グラム残っているか」で表します。
単位はg/lです。

目安として9g/l以下はほぼ甘さを感じません。
15g/l前後で「温度が上がるとちょっと甘いかな~」程度。
ハッキリ誰もが「甘口」と認識するのは、40g/lくらいからでしょう。

ちなみにこの方法で一般的な清涼飲料水を表したみた表が下記のとおりです。

身近な飲料の残留糖度               

コカ・コーラ … 108g/リットル

三ツ矢サイダー … 99 g/リットル

アクエリアス … 53 g/リットル

ポカリスエット … 32.8 g/リットル

オレンジジュース … 120 g/リットル

ヤクルト … 181.5 g/リットル

一般的なワインの甘さは、ジュースなどと比べると思いのほか強くはないのです。

なお、ワインの甘さの感じ方は、酸の強さに大きく影響を受けます。
同じ糖度でも、酸が弱いとよりはっきり甘さを感じ、酸が強いと甘さはスッキリ、上品に感じるのです。

スッキリとした甘口の定番であり最高のものは、ドイツのリースリングです。
ドイツは甘口ワインの割合が全体の3割を占めています。
そのためか、消費者が選びやすいようにと糖度や酸度の分析結果をしっかり情報提供してくれます。

逆に酸味のすくない親しみやすい甘口の代表格が、「モスカート」という品種を使ったスパークリングワインです。
イタリアのピエモンテ州特産である「モスカート・ダスティ」がとても有名です。

どちらにもそれぞれの魅力があります。
そんな甘口ワインはどうやって作るのでしょうか。

甘口ワインの作り方① 発酵を止める

カジュアルな価格帯の甘口ワインに多いのがこの作り方。
収穫時のブドウの糖度は普通か、若干高い程度。
もともとの甘味が残っているうちに、冷却や亜硫酸の添加で発酵を止めます。

こうして出来上がったワインは、比較的控えめなさらっとした甘さになります。
途中で発酵を止めるので、アルコールもやや低めになります。

 
例えばこのドイツワインは糖度が45g/lほどある代わりに、アルコールが9.0%です。

ドイツはブドウ栽培の北限にある産地です。
その中でもリースリングという品種は晩熟で、収穫は早くとも10月上旬。
今ほど地球温暖化の進んでいなかった時代は、発酵がまだ終わってない段階で冬になってしまい、発酵が自然と止まってしまうことがあったのでしょう。

加えて、甘い食べ物が庶民に至るまで一般的となったのはここ50年やそこらの話。
甘味が貴重だった時代には、その甘口ワインがもてはやされます。

ドイツで甘口が盛んにつくられるようになったのは、自然環境と時代背景の2つの要因が重なってのことと考えらえれます。

先述のモスカート・ダスティも甘味を残して発酵を止める形で作られます。
アルコールは7%前後のものもあり、お酒に強くない方でもチューハイ感覚で楽しむことができます。

甘口ワインの作り方② レイトハーベスト

ワインとしてもしっかりアルコール度数があり、かつ甘口のワインを作ろうと思えば、もとのブドウの糖度を高める必要があります。
通常よりも収穫を遅くすることで、ブドウの糖度が高くなるのを待ちます。

十分糖度が高くなったブドウを、樹になったままにしておくのですから、リスクがあります。
鳥に食べられる恐れもありますし、雨に打たれてカビが生えるリスクもあります。
なので収穫期の天候が安定している地域でしか、つくるのは難しいです。

例えばアルゼンチンのこのワイン。
そのほか、ドイツワインで「シュペトレーゼ」というクラスのものは、遅摘みです。
「Spat」=遅い 「lese」=収穫 という意味です。

ただ、「シュペトレーゼ=甘口」かというとそうではなく、「トロッケン」とついていれば完全発酵の辛口です。

甘口ワインの作り方③ アイスワイン

18世紀の末、ドイツのフランコニア地方というところを、いつもより早い寒波が襲います。
結果、まだ収穫していなかった完熟ブドウが凍ってしまいました。

凍ったブドウでは通常のワインは作れないので、廃棄しなければなりません。
しかしそれを「もったいない」と感じ、試しに凍ったブドウを絞って醸造してみると、濃厚な甘さのワインになっていました。
ブドウの水分が部分的に凍結し、残った果汁は非常に甘みの凝縮した、濃厚なものとなったのです。

そうして偶然から、アイスワインは生まれたのです。

『アイスワイン』というのは登録商標であり、ドイツ、カナダ、オーストリアでしか生産することはできません。
そのほかの地域で同じ方法で作っても、『アイスワイン』は名乗れないのです。

また、ドイツでは「アイスワインを製造してもいい最低気温」が決められています。
ブドウがたとえ凍っていたとしても、-7℃を下回らないとアイスワインとしてリリースすることはできません。

当然、冷凍庫でブドウを凍らせても、アイスワインは名乗れません。

地球温暖化が進む今日、アイスワインはますます希少になってきています。
もともと凍結した水分の量だけ収穫量が減るので、アイスワインは高価です。

中でもリースリングを使ったアイスワインが、品質No.1で、価格も相応です。
リースリングのワイスワインは、ハーフボトルで1万円前後が相場です。

そんな中、相場の半額以下というとてもお買い得なアイスワインがこちら。

極めてピュアで濃厚な極甘口ワインです。
150g/l近い糖度に目が行きがちですが、酸度が10.8g/lもあることに注目。

酸度は辛口のワインだと、「酸味が強い」ワインで7g/lほど。
甘いだけでなく酸味もしっかりあるので、飲んだ後もさっぱりとした後味なのです。

甘口ワインの作り方④ 貴腐ワイン

「貴腐」というのはワイン以外では聞いたことのない用語です。
英語では「Noble rot」。それを直訳した造語のようです。

川のそばの畑などで、朝夕に霧が発生しやすい地域。
そこで収穫期の白ブドウに「ボトリティス・シネリア」という菌がついてカビが発生。
そのカビは果皮に穴を開けて水分を蒸発させ、ブドウを干しブドウみたいにしてしまいます。

一見腐敗しただけのブドウに見えますが、これを圧搾して発酵すると、素晴らしい極甘口のワインが生まれるのです。
これが貴腐ワインです。

このボトリティス・シネリア菌、黒ブドウについたら「灰色カビ病」という病気で、ブドウをダメにしてしまいます。
カビが発生するのが早すぎてもダメ。

貴腐ワインは、奇跡のように自然条件がかみ合ったときのみ作ることができるのです。

 

世界3大貴腐ワイン

貴腐ワインの生産地域は各地にありますが、その中でも特に高品質とされているものが、下記の3つです。
①ボルドーのソーテルヌ地区のシャトー・ディケム
②ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ
③ハンガリーのトカイ・アスー・エッセンシア
 
①については、最高のヴィンテージのものを取り扱っております。
 
②のトロッケンベーレンアウスレーゼは貴腐ワインということ。ドイツ全域で生産可能ですが、モーゼルやラインガウのものが特に高品質とされます。
 
特に評価が高い生産者がエゴン・ミュラー。
エゴン・ミュラーが作るトロッケンベーレンアウスレーゼは、その希少さもあり1本100万円を超えることもあります。
世界一高価な白ワインです。
 
③のエッセンシアはトカイの中でも非常に希少。

余談ですが、ゲームのファイナル・ファンタジーに登場する回復アイテム「エリクサー」。
その語源はこの「エッセンシア」だと言います。

甘口ワインの作り方⑤ アパッシメント

アパッシメントというのはいわば干しブドウ。
主にイタリアで用いられる製法で、収穫したブドウを風通しのよいところで1,2か月乾燥させます。
そうして糖分を凝縮させて甘口ワインを作るのです。

当店では取り扱いがございませんが、「ヴィン・サント」や「レチョート・ディ・ソアーヴェ」が有名です。

甘口ワインの楽しみ方

甘口ワインは、ワイン初心者には歓迎されても、ワインをよく飲む方には敬遠されがち。
その大きな理由が、食事と合わせにくいからでしょう。
確かに、はっきり甘さを感じるワインは、料理の味を覆い隠してしまいますし、糖分でお腹いっぱいになってしまいます。

しかし、ワインの楽しみ方は食事と合わせるだけではありません。

甘口ワインはチーズと

チーズとはちみつって、相性いいですよね。
レストランで食後にチーズを注文すると、ゴルゴンゾーラのようなブルーチーズには、はちみつが添えられていることも多いです。

それはブルーチーズの強烈なにおいと塩辛さを、甘いはちみつが中和してくれるから。

はちみつのように濃厚な、極甘口のアイスワインや貴腐ワインを合わせても、見事に中和してくれます。
それどころか、チーズの風味・旨味を引き立てます。

デザートワインは臭いチーズと。
一度は試していただきたいマリアージュです。

甘口ワイン単体で楽しむ

極甘口とまではいかない甘口ワインは、それ単体で非常にバランスのいいワインです。
そういったものは、おつまみナシでワインだけ飲むとき向いています。

ご飯を食べた後、読書をしながら、テレビを見ながら、リラックスしてワインを楽しむ。
辛口ワインだとついついアテがほしくなりますが、いい甘口ワインはそれだけで満足できます。

かといって料理と合わないわけではありません。
デザートの甘いものと合わせるなら、似た者同士の甘口ワインが無難。
また、やや甘口くらいのリースリングは、和食とあわせてもみごとに調和します。

冷蔵庫に保管しながらちびちびと

実は甘口ワイン、極甘口ワインは辛口のワインに比べて、抜栓後の味の変化がゆっくりです。
なので、通常のワインは3日程度で酸化した味わいが出てくるものが多いですが、デザートワインは数週間、1か月にわたって楽しむことができます。

ナイトキャップ。就寝前に1口ずつ飲という楽しみ方もアリでしょう。

人生に寄り添うバースデーヴィンテージのワイン。

ワイン好きなら、自分のバースデーヴィンテージのものは、なにか特別なワインに思えるでしょう。

しかし、ワインを手に入れやすい20代のころはお金がなく、お金に余裕ができてきた40代くらいになると、今度は40年前のワインなんてなかなか見つからない。
そして見つかったとしても飲み頃が過ぎていてあまり美味しくない。

その点、デザートワインは熟成の進み方が非常にゆっくり。
高品質なものだと、飲み頃予想が50年後までというものも。
もちろん飲み頃を過ぎたからといって即座に飲めなくなるものではありません。

甘口ワインは、どういう訳か熟成すると甘味が上品になってきます。
良質なアイスワイン、貴腐ワインは熟成させるほど美味しくなっていきますが、そのスピードは赤ワインに比べてもさらにゆっくり。
自分のバースデーヴィンテージのワインを、老後の楽しみにとっておく、なんて楽しみ方もありです。もちろん、保管状態は完璧でないといけませんが。

日常使いから人生最後の酒まで、甘口ワインの活躍の場は様々です。
ワイン通の方も、初心者向けだと敬遠せず、改めてその誘惑にのせられてみては?

 

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