品種のお話

【品種のおはなし】ソーヴィニヨン・ブランとは

2023年5月20日

ソーヴィニヨン・ブラン 
 
ソーヴィニヨン・ブラン。白ワインで2番目に人気でありながら、実は苦手とする方の多い品種です。
「スッキリ辛口の白ワイン」というだけでは不十分。今回は4つの味わいに分類してご紹介します。
同じブドウ品種なのに、生産地と醸造方法でこんなにも風味が違う!
好みの方もそうでない方も、いつもと違うこの品種のワインに出会ってみてください。
 
 
ショートバージョンはYouTubeでもご紹介しております。
 
 

ソーヴィニヨン・ブラン 概要

 
まずはちょっとだけ教科書的なことをご紹介しましょう。
 
ソーヴィニヨン・ブランは18世紀初頭にはボルドーで栽培されていた記録が残っているそうですが、遺伝子解析によるとその起源はおそらくロワール
その片親は「サヴァニャン」という、現在主にフランスのジュラ地方で栽培されている品種です。
ロワールで多く栽培されているシュナン・ブランと兄弟の関係にあり、グリューナー・フェルトリーナーやシルヴァネールとも関係が深いことがわかっています。
※『The Grapes』ジャンシス・ロビンソンMWより

国別栽培面積

OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)の2015年の統計による国別の栽培面積は下記の通り。
1位
フランス
3万ha
2位
ニュージーランド
2万ha
3位
チリ
1万5千ha
4位
南アフリカ
9千ha
5位
モルドバ
8千ha
全世界計 13万ha
原産国であるフランスが多いのは想定内として、ワイン生産国として然程畑の面積が大きくないニュージーランド、比較的温暖な地域が多い南アフリカがランクインしているのが特筆すべき点です。
この他には日本ではカリフォルニア産のソーヴィニヨン・ブランも多く、カリフォルニアでは稀に「フュメ・ブラン」の名で呼ばれることもあります。

栽培面での特徴

ブドウの樹の特徴として、樹勢が強い、つまり生育期に枝がニョキニョキ伸びるという特徴があります。
この何が問題かというと、樹の成長ばかりに栄養を使い、ブドウの実を育てるのに当てる量が少なくなることです。
なので程よく痩せた土地に栽培したり、樹勢を抑制できる台木に植える(※)必要があります。

台木とは

(※)ソーヴィニヨン・ブランをはじめとしたヨーロッパ系のブドウは、アメリカ系のブドウに接ぎ木して栽培されます。フィロキセラと呼ばれる樹の根に住むアブラムシの一種と共存できるアメリカ系ブドウの台木に、その耐性がないが品質の高いブドウがとれるヨーロッパ系ブドウつなぎ合わせる栽培法で、ほぼ世界中で採用されています。
この台木の種類を適切に選ぶことで、ソーヴィニヨン・ブランであってもあまり樹が成長せず、いいブドウが収穫できます。

適した気候

ある程度幅の広い気候で栽培されるソーヴィニヨン・ブランですが、品質が高いものは冷涼から温和な地域でつくられます
ソーヴィニヨン・ブランの性質として、中程度からやや早熟。暖かい環境だとブドウの糖度が早くに上がりすぎます。
熟しすぎたソーヴィニヨン・ブランは退屈なものになってしまうとも言われるので、やや涼し目の環境がいいようです。
特に石灰質土壌の畑からは、引き締まった印象の素晴らしいソーヴィニヨン・ブランがつくられます。

ソーヴィニヨン・ブランの香りはどこから?

ソーヴィニヨン・ブランの香りは個性が際立っているものが多く、さらに香りのボリューム自体が豊かなものが多いので、初心者でも割とブラインドテイスティングで当てることができます。
一応は「アロマティック品種」には分類されないのですが、そういいたくなるほど香りが特徴的なんです。
ソーヴィニヨン・ブランの特徴香はどのような成分なのか、また生産地の気候によってどのように変化するのか、見ていきましょう。

メトキシピラジン

正確には2-イソブチル-3-メトキシピラジンという化合物。
特にピーマンの香りを構成する趣向な化合物で、他にはジャガイモやコーヒー、グリーンピースなどに含まれています。
主にミントや青草にも似た青っぽい香りのもとです。
平均的な閾値、感じるか感じないかの境目の濃度は15ng/lと言われています。
たとえるなら10億リットル(東京ドーム満タンの水)の中に大さじ1杯のメトキシピラジンでも感じるということ。
それだけ人間の鼻が敏感な香りなのです。
推測ですが、果実の熟度と関係の深い香りなので、十分に熟した果実をかぎ分けられるように、進化の過程で敏感になっていったのでしょう。
この香り成分は、他にカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランにも含まれています。
冷涼な地域のものや、果実が未熟なうちに摘み取ったブドウでつくったものからは、多く感じ取れます。なのでたとえ生産地としては温暖だとしても、廉価なワインはブドウを大量生産するゆえにブドウが熟しきらず、青い風味を強く感じることもあります。
 
この青っぽい風を苦手とする方も少なくないようです。
 
一方で温暖な産地で丁寧につくられたものには、あまり感じません。
また、ブドウの実が成熟期に受ける日照にも左右されます。
晴れの日が多く、ブドウの葉で影ができぬよう手入れの行き届いた栽培がされたなら、あまり強くは感じません。
このようにブドウに葉っぱが多いかぶさらないように整えると、青い風味は減りますが、それには手間暇かけた畑仕事が必要です。

そのほかの香味成分

上記のメトキシピラジンが一番有名ですが、3-メルカプトヘキシアルアセテート、3-メルカプトへキサンー1-オール、4-メルカプトー4-メチルペンタンー2-オンという3つの成分も、ソーヴィニヨン・ブランの特徴的な香りに寄与しています。
前の2つの化合物からは、グレープフルーツやパッションフルーツのような、それほど甘くないが酸っぱさだけじゃないワインの香りを示します。
残りの一つからは、ツゲ香と呼ばれる植物の香りを感じます。この含有量が多くなると「猫のおしっこ」に例えられる香りとなります。
これらの香り成分の濃度が主となり、ソーヴィニヨン・ブランの代表的な風味を形作ります。
ソーヴィニヨン・ブランからつくられる白ワインの代表的な香り

この香りはどこから?

このソーヴィニヨン・ブランの、特にニュージーランドのマールボロ産のものによく感じる香りはどうして生まれるのでしょうか。
普通に考えたら、ソーヴィニヨン・ブランの特徴なら、ソーヴィニヨン・ブランのブドウそのものが持っていると考えるのが妥当です。
確かに、ソーヴィニヨン・ブランのブドウを食べたら、草っぽいようなハーブのような風味を感じました。

チリ ウンドラーガの畑のソーヴィニヨン・ブラン

しかし実は、特にマールボロのソーヴィニヨン・ブランの香りについては、酵母の働きが大きく寄与しているとわかっています。
ニュージーランドで広く使われるQA23という酵母。それがアルコール発酵の際に爽やかなハーブの香りを生むのです。
なのであの香りを好ましいと思っている醸造家がつくれば、他の地域でもある程度似たワインはつくれますし、逆に全く異なる香りを持ったソーヴィニヨン・ブランも存在します。

ソーヴィニヨン・ブランの頂点

 
皆が評価する世界一美味しいソーヴィニヨン・ブランは何か
どの品種についても議論が巻き起こるような質問です。
 
取引価格は一つの目安ですが、生産量が少ないと極端に高価になりすぎるので、一概には言えません。
(最も高価なのはスクリーミング・イーグルがつくるソーヴィニヨン・ブランです)
 
ある程度多くのワイン通に納得してもらえるだろうワインは、フランスのロワール地方、ディディエ・ダグノーがつくるものです。
これが最高級ワインというわけではないのですが、この「シレックス」が最も有名。当店が扱っているのはバックヴィンテージの並行品なので割高ですが、正規品の最新ヴィンテージなら2万円ちょっとで流通しているはずです。
 
 
もしあなたがソーヴィニヨン・ブラン好きなら、「いつかは飲みたい憧れのワイン」として、「ダグノー」の名前は頭の片隅にいれておいて損はないでしょう。
 
 

ソーヴィニヨン・ブランを4つに分類する

 
ソーヴィニヨン・ブランは品種個性が強く、そして比較的"作り手の意思が反映されやすい"ブドウ品種だと私は考えます。
産地の気候や土壌といった要因ももちろん味わいに影響します。しかしそれはシャルドネやリースリングに比べると少し控えめに感じます。
 
地域によってソーヴィニヨン・ブランの味わいは変わります。しかしそれは、地域によって生産者が目指す味わいが違うから、ワインの味わいが違うのだと考えます。
 
 

地域と醸造法による4タイプ

 
先述のとおりソーヴィニヨン・ブランは世界中で多く栽培されています。
それらを本記事では4つに分類してご紹介します。
 
Aタイプ フランス/ロワール
トゥーレーヌ、サンセール、プイィ・フュメなど

 
Bタイプ ニュージーランド/マールボロ
チリや南アフリカ、オーストラリアなども含む

 
Cタイプ ボルドーブラン
オーク樽熟成、セミヨンとのブレンドをするタイプ

 
Dタイプ 樽熟成ソーヴィニヨン・ブラン
ニューワールドのハイクラス

 
それぞれの基準と特徴をご紹介します。
 
 

共通する品種の味わい

 
全てのタイプに共通するソーヴィニヨン・ブラン自体の風味や傾向もあります。
 
 
まずソーヴィニヨン・ブランはほとんど全て辛口ワインです。フランスのソーテルヌ周辺では、セミヨンとブレンドして極甘口の貴腐ワインにもなります。でも半辛口~甘口というのは基本的にありません。
 
酸味の高さは気候の寒暖によるとはいえ、全体的に高いです。同じ産地で比べるならシャルドネより高いでしょう。
 
風味としては先述の香気成分によって、ヴィンテージの若いころはグレープフルーツのような柑橘系アロマを示すことが多いです。ただ同じ柑橘類でも、リースリングのようなレモンという表現が使われることは稀です。
 
 

Aタイプ ロワール産

 

Aタイプの特徴

〇冷涼産地で高い酸味を持ち、軽快な口当たり。
〇樽熟成はする/しない両方あるが、樽香がハッキリとは現れない。
〇風味に青草やハーブの緑の香りはあまり感じない(Bタイプとの違い)

 
加えるとすれば、ハチミツや火打石のような風味を持つものが多いです。特にプイィ・フュメ産に顕著です。
 
あまり記載のあるワインはないのですが、マロラクティック発酵はしないものが多いでしょう。
 
価格帯は2000円前後の手ごろな物から、1万円オーバーの高級品まで様々です。
 
 

マロラクティック発酵(MLF)とは

ワインのアルコール発酵のあとに起こります。ワイン中のリンゴ酸をバクテリアが乳酸に変えることで、酸味がまろやかになり、微生物的に安定します。風味が複雑になりコクのある口当たりになる効果もあります。一方でフレッシュさが失われるので、あえてマロラクティック発酵をブロックする場合も多いです。

 
 

Bタイプ マールボロ産

 

Bタイプの特徴

〇温和から冷涼産地でやや高い~高い酸味を持つ。
〇ステンレスタンクで発酵・熟成
〇青草やハーブなどのグリーンノートから、熟したフルーツのアロマを同時に持つ
〇概ね3000円以下で手ごろ
〇風味のフレッシュさが命で熟成しない

 
マールボロ産のソーヴィニヨン・ブランはこのタイプで大成功しました。せいぜいここ20~30年のことです。
「ハーベイシャス」といわれる青い風味が顕著なスタイルが、ニュージーランドワインの主要市場であるイギリスで大ヒットしたのです。
 
マールボロはそこまで涼しい産地ではないで、収穫を遅らせればブドウはよく熟します。パッションフルーツやグァバ、パパイヤ、メロンなどの熟したフルーツの風味を持つワインも多いです。一方でグレープフルーツや青草といった熟度の低い風味を同時に持つ場合も多いです。
これはマールボロでブドウ収穫が機械で行われるのが一般的であることに原因があると予測します。機械収穫の方がスピードが速く、朝の涼しいうちに収穫できます。それがワインのフレッシュさに寄与していると考えららえます。
 
 
 
チリのレイダ・ヴァレーや南アフリカのエルギンといった海よりの産地、オーストラリアの沿岸産地などでつくられるソーヴィニヨン・ブランも、おおまかにこのBグループと言えます。マールボロほどグリーンノートを強調するものは少ないですが、フレッシュさを大事にしているのは同じでしょう。だからスクリューキャップが圧倒的に多いです。マロラクティック発酵は基本的にブロックします。
 
基本的には買った時が飲み頃です。質が高ければ5年程度美味しさをキープしますが、セラーで寝かせることで美味しくなっていくことはありません
 
 

Cタイプ ボルドーブラン

 

Cタイプの特徴

〇オーク樽熟成しており樽香を感じる
〇ブドウの熟度が高く、味わいにコクがある
〇熟成ポテンシャルがある
〇ソーヴィニヨン・ブラン単一の場合もあるが、セミヨンとブレンドするものも多い

 
いわゆる"ボルドー左岸"と呼ばれるメドックやグラーヴ地区が生産の中心地です。
アントゥル・ドゥ・メールなどでつくられる低価格なソーヴィニヨン・ブランは、ステンレスタンク発酵・熟成されるものが少なくありません。その場合はCタイプというよりAタイプの方が味わいが近いです。
 
数万円で取引される高級品も少なくありません。ただしそれは生産者の評価が高いから。赤ワインで評価が高くて高級品をつくるから、白ワインも高価だというケースが多いです。
 
メドック五大シャトーの一角、シャトー・マルゴーがつくる「パヴィヨン・ブラン・ドゥ・シャトー・マルゴー」などはその典型でしょう。
 
 
基本的にマロラクティック発酵はしているでしょう。他と酸味を比べたときにわずかに低め。ただし凝縮感やボリューム感によって、実際の差以上に酸味が穏やかに感じることでしょう。
 
熟成によって風味の複雑さを増していきます。中にはマロングラッセのような甘い香りが現れるものもあります。そうなってくると、Aタイプ・Bタイプに感じる品種特性は隠れてしまいます。
 
 

Dタイプ ニューワールドの樽熟成タイプ

 

Dタイプの特徴

〇樽熟成はするが樽香はきかせない
〇フレッシュさはあまり強くなく、風味の複雑さがある
〇およそ3000円以上
〇生産者はBタイプもつくっている
〇ある程度熟成ポテンシャルがある

 
Cタイプに比べてブドウ品種の特性、柑橘系の風味や高い酸味といったものをハッキリ感じさせつつ、Bタイプに比べて複雑味があって”高い味がする”。それがDタイプの特徴です。
同じ生産者のBタイプと比較するなら口当たりはしっかりしますが、全体から考えるとやや軽快な傾向。
このタイプに属するワインはそう多くはありません。
 
ニューワールドといっても、カリフォルニアではCタイプに近づけるものが多い印象です。
 
 

典型的でおすすめなソーヴィニヨン・ブラン8選

 
それぞれのタイプの特徴をしっかり感じさせつつ、価格に対して上質な味わいを感じさせてくれる。さらに純粋にワインとして優れているものを、タイプごとに2種類ずつご紹介します。
 
 

Aタイプ  ロワール産

 
Aタイプのワインは、ハッキリ言ってBタイプよりも風味が地味です。それでいて微妙に価格が安くないものが多く、正直言ってポンポン売れていく銘柄はありません。
しかし先述のAタイプの特徴は、Bタイプで変わりが効くものではないです。
 
先に「ソーヴィニヨン・ブランは産地特性を表現しにくい」と述べました。その中で畑による風味の違いを表現できるとすれば、確実にこのAタイプです。
 
 
 
たとえばこの2つの産地。ロワール川を挟んで向かい合っており、距離は非常に近いです。
私はこの2つの違いについて、「ハチミツや花の蜜の香りがある方がプイィ・フュメ」だと捉えています。
 
 
晩酌に食事とともに楽しむなら、私はAタイプを筆頭候補に挙げます
  
  

Bタイプ マールボロ産

 
香りのボリュームがあり、風味がハッキリと現れて、ワインと特徴を感じやすい。いわゆる”わかりやすいワイン”であり、ワイン初心者に非常にウケがいいのが、マールボロ産のソーヴィニヨン・ブランです。
 
一方で品種と地域の特徴が強すぎて、生産者や畑の特徴がどれだけ感じられるかは疑問です。極端な話、「マールボロのソーヴィニヨン・ブランならどれも同じような味だよね」と感じてしまうかもしれないのです。
 
 
当店ではかなり多くのマールボロ産ソーヴィニヨン・ブランを扱っています。だから正直、上記のワインである必然性はあまりありません。典型的な味わいで、ケチの付け所が特になく、ちょっとだけ安めだからピックアップしただけです。
 
 
 
それに対してこのワインはしっかり『違い』を感じさせてくれます。海に近いレイダ・ヴァレーの冷涼な気候からくる豊かな酸味。石灰質の土壌を反映した、引き締まって緊張感のある味わいとチョークのような感触のミネラル感は、Bタイプの中でも個性を主張します。
 
 
味わいのメリハリが大きいため、ピッタリの料理も多いのですが、料理に対して「強すぎる」場合もあります。
この爽やかさ、私は休日午後の明るいうちからワイン単体で楽しみたいです。
 
 

Cタイプ ボルドーブラン

 
樽熟成タイプとはいえ、その風味の程度は価格によります。
低価格なものは熟成させずすぐ飲むことが前提。だから樽香といってもある程度控えめで、フレッシュ感を持たせます
およそ5000円を超えるようなものは、今飲んでもいいし10年後にはもっと美味しくなっていることも考えていることでしょう。
 
 
こちらは前者の低価格帯のものです。でもセミヨンによる桃の風味と味わいのボリューム感は、Aタイプとは明らかに違います。
このように複数品種ブレンドワインも多いのが特徴です。
 
 
 
ボルドー以外でCタイプなのがこちら。
こちらのワインを選ぶとしたら、ソーヴィニヨン・ブランのバリエーションとしてというより、樽熟成してボリューム感のある白ワインでシャルドネ以外というケースが考えられます。
香りにボリュームも複雑さもあり、飲みごたえがあります。複数人で飲むパーティーシーンにおいては最も適したタイプでしょう。
 
 
また、ワインボトルの形がCタイプのみボルドー型ボトルがほとんどです。他のタイプは1000円以下の低価格品を除き、ほとんどがブルゴーニュ型です。
 
 

Dタイプ ニューワールドの樽熟タイプ

 
時々言われるのが、「醸造段階である程度酸素に触れていると、瓶詰後も酸化に強くて長持ちする」。
真偽のほどはわかりかねますが、Dタイプのソーヴィニヨン・ブランにある程度の熟成ポテンシャルがあるのは確かです。
 
 
Dタイプのワインは、「Bタイプとの差別化のために醸造法を変えている」というものが多いように感じています。
畑の中で特に出来がいい区画がある。通常区画と一緒にするのはもったいないから、上級ワインをつくりたい。でも同じ醸造ではそこまで大きな差を感じてもらえないかもしれないから、樽熟成して複雑味を持たせよう。そんな意図ではないでしょうか。
 
だからそんなに高価なものもありません。実際ニュージーランド産のソーヴィニヨン・ブランで5000円以上をつけるものは、楽天市場に数銘柄しかありません。
 
 

型破りでしかし美味しいソーヴィニヨン・ブラン

 
これまでご紹介してきた、4つの典型的なソーヴィニヨン・ブラン。
そのどれにも当てはまらないような例外的、それでいて非常に品質の高いものも中にはあります。
 
 

ハチミツの風味と凝縮感がハンパない!

 
アルコールが15%を超えるような、びっくりするくらいリッチな"樽熟成ナシ"のソーヴィニヨン・ブラン。
実は「カンシー」という産地がマイナーすぎるだけで、この産地では突飛なものではありません。
 
 
 
ハチミツを中心とした花やフルーツの風味を幾重にも感じます。風味の複雑さもボディ感も非常に高い。その分酸味は穏やか。
Aタイプとは明らかにキャラクターが違います。
 
 

キリッキリにドライながら青さは極少

 
Bタイプと同じニュージーランドでありながら、最南端・最冷涼の産地。だから酸味は高いのですが、シュール・リー(※)の効果である程度のボディ感はあり、「薄っぺらくて酸っぱい」とはならないです。そしてセントラル・オタゴの豊かな日照ゆえか、自然酵母の影響か青い風味はほぼ感じません
 
 
あえて分類するならBタイプでしょうが、酸味の高さと味わいのメリハリは、AタイプともBタイプとも違います。飲み比べると面白いでしょう。
 
(※)澱引きせずに澱(おり)とともに熟成させること。澱はタンパク質の塊なので、それが分解されてワインに溶け、旨味やコクが増す。ソーヴィニヨン・ブランに行われるのは珍しくない。
 
 

ソーヴィニヨン・ブランでも”いろいろ飲む楽しさ”を

 
ワインの風味のバリエーションという意味では、ソーヴィニヨン・ブランはシャルドネやリースリングに劣るかもしれません。
きっと「ソーヴィニヨン・ブランはどのワインもだいたい一緒」と感じている方も少なくないでしょう。
 
でも地域や醸造法に注目してみれば、確かに味わいに大きな違いがあり、それにより適した飲み方もあります
 
 
ソーヴィニヨン・ブランの白ワインは比較的手ごろです。それでも品種特性がしっかり現れた美味しいものが多い。だからそれでつい満足しちゃいがち。もったいない。少し価格を上げたところに、いろいろな表情を見せるワインがあなたを待っています。そしてそれでもシャルドネよりずっと安価。
 
あなたのソーヴィニヨン・ブランのイメージ。今回ご紹介した4つのタイプにそのイメージと違うものがもしあったなら、ぜひ一度試して違いを楽しんでみてください。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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