ワインのつくり方

シャンパン以外のスパークリングワイン 製法とワインの違いとは

2024年3月15日

シャンパン以外のスパークリングワイン 製法とワインの違いとは 
 
シャンパンが頂点であることは間違いなくとも、それ以外のスパークリングワインもそれぞれの魅力を持ちます。
シャンパンとその他の製法と味わいの違いを理解すれば、適した飲み方が見えてきます。
ブドウ品種や産地の特徴で多様なタイプがあるのに、シャンパンしか飲まないのはもったいない。
泡の刺激の奥にあるスパークリングワインの違いを知って、賢い楽しみ方を身に付けましょう。

 
 

スパークリングワインの製法とその特徴

 
スパークリングワインには大きく分類して6種類の製法があります。(分類法により差異はあります)
製法ごとに風味特性、特に泡の質感に影響が出ます
この章ではシャンパンの製法を含めたスパークリングワインのつくり方を、6種類に分類してご紹介します。
 
 

伝統的方式(シャンパーニュ方式)の製法

 
伝統的方式 メトド・トラディッショナル」「シャンパーニュ方式」「瓶内2次発酵」「メトド・キャップ・クラシック(MCC)」などいくつかの呼び方があります。
世界中の高級スパークリングワイン、具体的にはおよそ6000円以上のスパークリングワインは、ほぼこの伝統的方式でつくられているといっていいでしょう。
 
簡単に説明した図が次の通り。
 
 
まずスパークリングワイン(ロゼワイン)をつくり、それを1本1本瓶に詰めて酵母とそのエサとなるショ糖を加えます。瓶内2時発酵で生じた二酸化炭素を閉じ込めることで、ワインはスパークリングワインへと変化します。その時発生した澱(おり)を動瓶で瓶口に集め、デゴルジュマンで澱を除いてパッケージング、出荷します。
 
 

伝統的方式でつくるスパークリングワインの特徴

 
他の製法に比べて製造に時間がかかります。瓶内熟成の期間は地域によって規定がある場合もあり、例えばスペインの「カヴァ」なら9か月以上。規定以上の熟成期間を設けるところが多く、高級シャンパンの中には10年以上かける場合もあります。
 

Bottle of champagne in the cellar

 
味わいの特徴としては、まず泡感がきめ細かいことです。他の製法と比べて時間をかけて二酸化炭素がワインに取り込まれるためだと考えられます。グラスから立ち上る泡の粒が小さく、口当たりもクリーミー。加えて泡の持続性が良く、飲み方によっては抜栓3日目くらいまでしっかり泡感を楽しめます。
 
 
瓶内2時発酵で生じた澱は、瓶内熟成の期間に分解されてアミノ酸となり、ワインに戻っていきます。その影響で熟成期間の長いスパークリングワインには、パンだねやブリオッシュのような香りを感じることがあります。この香りを感じるようになるには、瓶内熟成およそ3年間くらいは必要と言われますが、ブドウ品種や地域によっても出かたは違います。
参考記事▼
ブドウの収穫から出荷までに普通のワインより時間を要することが多いです。ワイナリーにとっては資金回転率が悪くなります
また1本1本のボトルで保管するのはスペースや手間を必要とします
 
ゆえにコストがかかる製法と考えられています。確かに他の製法よりはランニングコストは割高なのですが、スペインの「カヴァ」の例もあります。製法ゆえに高くなっている金額はそれほど大きくないものと考えられます。
一方で設備コストは低い製法でもあります。後ほど紹介する「シャルマ方式」などの方が、専用の設備がたくさん必要で、大きなメーカーしかできません。
 

ワインの特徴&メリット

泡がきめ細かく、持続する
パンだねやブリオッシュのような香り、うま味
導入コストは安い方

 

デメリット

資金回転率が悪くなる
ボトル差が生まれやすい

 
 

トランスファー方式の製法と特徴

 
「トランスファー方式」は多くのワインの教科書に記載されています。その割には実際にこの製法でつくられたスパークリングワインはめったに見かけません。
当店ではこちら1本。
 
 
トランスファー方式は、伝統的方式のデメリットを無くすべく開発された製法です。
動瓶(ルミアージュ)のところまでは同じ。
澱引を加圧されたタンクの中でまとめて行います。スパークリングワインになったものを一旦混ぜ合わせ、濾過によって澱を取り除き、ドサージュで味を調えてからボトリングするのです。
  
結果、澱引きの作業は効率化されてコストが少し下がり、ボトル差もほぼなくなります。
 

ワインの特徴&メリット

泡・風味ともに伝統的方式に準じる
伝統的方式よりコストがやや安い
ボトル差が少ない

 

デメリット

トランスファー方式のワインをあまり見かけない
知名度が低すぎて、劣った製法と誤解される

  
  

シャルマ方式の製法

 
伝統的方式では1本1本ワインボトルの中で2時発酵させていたのを、大きなタンクでまとめて行うのが「シャルマ方式」です。
瓶内2時発酵から熟成までの期間は伝統的方式よりもずっと短く、2週間から2か月ほどです。タンクでまとめて発酵を行うので、ボトルごとの味わいの差はほぼありません。
 
 
シャルマ方式に使うステンレスタンクは、通常のワインづくりに使うものとは異なり、導入コストは高いと聞きます。しかし動き出してしまえば年に何度も稼働させられます。
シャルマ方式は基本的に手頃なワインが多いです。日本で流通している1500円以下のスパークリングワインはほとんどシャルマ方式と見て構わないでしょう。
 
 

シャルマ方式でつくるスパークリングワインの特徴

シャルマ方式の特徴は、2次発酵期間が短いためにフルーツや花などブドウ由来のアロマがあらわれることです。酵母の自己分解による風味はあらわれません。ゆえに風味はフレッシュな印象。
 
一方で、泡のきめ細かさは伝統的方式に劣ります。グラスから立ち上る泡を比較しても、もっと大粒です。
これは炭酸が抜けやすいことを意味します。3日目、4日目のシャルマ方式のスパークリングワインは、あまり泡が期待できないでしょう。
 
 

ワインの特徴&メリット

フレッシュなフルーツや花のアロマ
コストが安い
大量生産に向いている

 

デメリット

泡はやや粗く、持続性が弱い
導入コストは高い

 
 

アスティ方式の製法

 
アスティ方式には2次発酵の過程がありません。正確には1次発酵の途中からスパークリングワインにする過程に移ります。
 
最初は解放タンクで発酵を始め、その後タンクを密閉します。発酵で生じた二酸化炭素の逃げ場が無くなってワインに溶け込みスパークリングワインとなります。7%程度の目指すアルコール度数になったとき冷却して発酵を止め、ろ過して瓶詰します。
発酵を途中で止めるので甘口に仕上がります
 
 
シャルマ方式と同じようなタンクで行うのでしょう。醸造期間が短いため、秋に収穫した果汁を冷蔵保存しておき、1年間に何度も製造を行います。

アスティ方式のスパークリングワインの特徴

 
アスティ方式もシャルマ方式と同様に短い期間でつくるので、フルーツのフレッシュな風味が感じられます。その分、泡の持続性は高くありません。また炭酸の強さが弱めであることがほとんどで、スパークリングワインというより「微発泡ワイン」に分類されることもあります。(厳密には3気圧以下)
最大の特徴はブドウの糖分由来で甘口に仕上がることです。
 

ワインの特徴&メリット

甘口の微発泡ワイン
フレッシュな風味
コストは低い

 

デメリット

炭酸が強くない
泡の持続性は低い

 
 

アンセストラル方式の製法

 
「メトド・アンセストラル」(アンセストラル方式)と呼ばれる製法があります。「ancestral」とは「先祖の」とか「代々受け継いできた」のような意味があります。「伝統的方式」と似てそうですが、スパークリングワインの製法としてはまったく違います。
 
最大の違いはこの製法には2次発酵がありません。これはアスティ方式にも似ています
1次発酵の途中、まだ糖分が残っており酵母が活動している段階。アンセストラル方式ではこの段階で瓶詰めします。そうすると瓶の中で発酵が継続するので二酸化炭素が溶け込みます。
 

アンセストラル方式の微発泡ワインは王冠で栓をされていることが多い

 
アスティと違って途中で発酵を止めることは基本ありません。なので辛口に仕上がります。
澱引きする場合もありますが、あえて澱が沈殿して濁ったワインに仕上げるケースが多いです。「ペット・ナット」「ペティアン・ナチュレ」と呼ばれるものです。
 
 

アンセストラル方式のスパークリングワインの特徴

 
この方式でもスパークリングワインとはっきり呼べるほど強い泡にはなりません。なので「微発泡ワイン」に分類されるでしょう。泡の刺激はやさしいものの細かくはなく、持続性もよくありません
好き嫌いはあれども、澱の濁りは旨味にもつながります。「ペットナット」は近年の『流行り』ワインと言えるでしょう。
 
ただし澱が含まれている場合はワインが不安定です。出荷後に保管状態によっては発酵がさらに進んで味が変わることもありますし、ボトル差も大きいです
 

ワインの特徴&メリット

澱の濁りで旨味がある
微発泡ワイン
製造コストが低い

 

デメリット

ワインが不安定でボトル差が大きい
泡が弱く持続性が低い

 
 

炭酸ガス注入方式の製法と特徴

 
この製法は説明するほどのものではないでしょう。サイダー、ソーダストリームと同じです。泡の粒が大きくバチバチっとした刺激で、炭酸が抜けるのも早いです
極端な話、あなたも自宅で真似ることができます。美味しい物にはならないでしょうが。
 
製法としてコストが低いメリットがあるのは想像がつくでしょう。だからでしょうか。日本ワインのなかに時折、炭酸ガス注入方式のスパークリングワインを見かけます。
 
もう一つの特徴はアルコール度数が変化しないこと。これについては後述します。
 
 

スパークリングワインに適した産地とは

 
スパークリングワインは世界中でつくられていますが、上質なものとなるとスティルワイン以上に栽培条件が限られます。
その条件とは簡単に言うなら冷涼産地であること。酸味を保ちながらゆっくりとブドウが成熟することが求められます。
 
 

2次発酵でアルコール度数が上がる

 
伝統的方式の瓶内2次発酵の過程では、アルコール度数が1.2~1.5%上がると言われています。シャルマ方式については聞いたことがありませんが、おそらく同じくらい2次発酵の過程で上がることでしょう。
 
しかしあまりアルコール度数の高いスパークリングワインは美味しくありません。炭酸の刺激でスッキリとした味わいを楽しみたいのに、どしっとボリューミーな口当たりは邪魔になるのです。だからスパークリングワインのアルコール度数は、そのほとんどが12~13%です。(アスティなどを除く)
 
 
必然的に2次発酵させる前の白ワイン・ロゼワイン(ベースワインと呼ぶ)は、通常の白ワイン・ロゼワインより低いアルコール度数であることが求められます。
 
 

冷涼産地がスパークリングワイン向き

 
単純化するならブドウは遅く収穫するほど甘くなります。
アルコール度数が低い辛口ワイン(糖分が残っていないワイン)をつくりたいなら、早く収穫すればいい。実際いろいろなタイプのワインをつくる生産者の収穫は、スパークリングワイン用ブドウからスタートします。
 
 
しかし風味の成熟には生育期間、ブドウが樹になっている時間の長さが必要です。無理やり早摘みしても香りのないシュワシュワしているだけのスパークリングワインになってしまいます。ブドウ品種によっては青臭い風味の出てしまうでしょう。
 
だから冷涼な気候が必要なのです。同じブドウ品種なら涼しい気候ほど糖度の上昇が遅いので、生育期間を長くとれます。ブドウの糖度が十分でなくても、糖分は後から足すことができます(捕糖)。しかし風味は足すことができません。
スパークリングワインの銘醸地が緯度の高い地域にあるのは、それが理由です。
 
 

代表的なご当地ものスパークリングワイン

 
ヨーロッパには伝統的なスパークリングワインの名産地があります。その一つがシャンパーニュ地方であることはご存知でしょう。シャンパーニュだけで語ることはたくさんありますが、今回はそれ以外に注目します。
それら地域に根差した”ご当地もの”スパークリングワインを、ワインの具体例を出しながらご紹介します。
 

ヨーロッパ以外のスパークリングワイン

アメリカやオーストラリアなどにも「高品質スパークリングワインの産地」はあります。しかしシャンパーニュほど専業でやっているところはありません。赤ワイン・白ワインもつくりつつ、一部をスパークリングワインにするケースが大半です。そのワインの傾向も、あまり地域でひとくくりにすることはできません。

 
 

フランス産 クレマンの特徴とは

 
シャンパーニュ以外のフランス産スパークリングワインとして、「クレマン」と呼ばれるものが各地にあります。「クレマン・ド・〇〇」というように、〇〇にその産地が入ります。クレマンの一覧は次の通り。
 
地方名 スパークリングワイン名 主なブドウ品種
ブルゴーニュ クレマン・ド・ブルゴーニュ シャルドネ、ピノ・ノワール、アリゴテ、ガメイなど
ボルドー クレマン・ド・ボルドー メルロー、セミヨン、カベルネ・フランなど
アルザス クレマン・ダルザス ピノ・ブラン、リースリング、ミュスカ、ピノ・グリなど
ロワール クレマン・ド・ロワール シュナン・ブラン、カベルネ・フラン、グロローなど
ラングドック・ルーション クレマン・ド・リムー モーザック、シュナン・ブラン、シャルドネ
ローヌ クレマン・ド・ディー クレレット、ミュスカ、アリゴテ
ジュラ クレマン・デュ・ジュラ サヴァニャン、シャルドネ、トゥルソーなど
サヴォワ クレマン・ド・サヴォワ ジャケール、シャスラなど
  
ブドウ品種の構成が非常に多様であるため、その特徴を一言で表すことはできません。
あえて特徴を挙げるなら、「シャンパンよりも手頃で美味しい」というゾーンを狙ってつくっているように感じることです。ひょっとすると日本に入ってきていないだけかもしれませんが、あまり高級品を見かけません。シャンパンという絶対的王者がある国だからこそ、それと真っ向勝負はしない方針なのでしょう。個性を抑えて飽きない普段飲みを目指すもの、品種の個性を出してシャンパンとは別の飲み物にするものなど様々です。
 

当店で扱っているクレマンの一例▼

品種構成、ブルゴーニュのイメージとは違うかも?

あまりスパークリングワインのイメージがない地域かも?

まさに「飽きの来ない味」

黒ブドウ配合だからこそのコク

シャンパンを目指しているゆえの雰囲気

シャルドネ100%の”正統派”感

控えめな風味と線の細さ

 
「クレマン」とつけば全て伝統的方式でつくられるスパークリングワインです
ほかの製法をとれば別の名前となりますが、アンセストラル方式の伝統スパークリングワインなどもあります。
 
 

イタリア ロンバルディア特産フランチャコルタの特徴とは

 
ロンバルディア州でつくられる「フランチャコルタ」はまさにイタリアにおけるシャンパンの位置づけ
伝統的製法でつくられるこのスパークリングワインは、熟成期間の規定がシャンパンよりさらに長く決められており、まさに高級路線。シャンパーニュに対するパリのように、近くにミラノの街があります。一大消費地を抱えるので高級ワインの産地として発展できたという点でも共通しています。
違いとしてはブドウ品種。シャルドネとピノ・ノワールが中心なのは共通ですが、ムニエの代わりにピノ・ビアンコ(ピノ・ブラン)をつかうことなどでしょうか。
 

当店で取り扱っているフランチャコルタの一例▼

 
あくまで私の知る限りですが、シャンパンと比べて熟成期間が長くても、ブリオッシュや酵母などの香りは感じにくいように思います。その分ブドウ由来のピュアな果実感が、幅広い層に高級感のなかの親しみやすさを与えます。
 
 

スペイン特産 カヴァの特徴とは

 
伝統的製法でつくられた泡感の細かいスパークリングワインを手頃に楽しめる。それだけではないことを承知の上で、カヴァの魅力は「安くて美味しいこと」だと考えます。
 
「CAVA」は地域ではなく製法の名前です。カヴァの生産量の大半は東部のペネデス周辺でつくられていますが、リオハなどの内陸部でもカヴァをつくることができます。
主要品種はマカベオ、チャレッロ、パレリャーダの3種類のスペイン品種。しかしシャルドネやピノ・ノワールなどを使用することも可能で、主要品種が一つも入ってないカヴァもあります。
 
 
フランスに比べて温暖な地域が多いため、シャンパンなどに比べると酸味は低め。ブドウ品種がいろいろなこともあり、その風味は多様です
それゆえにマーケティングに苦戦している印象。1万円を超える高級カヴァもつくられてはいるのですが、認知が広まっていない。「カヴァは安くて美味しい」だけじゃなく、「カヴァは値段が上がるとこう美味しくなります」というのが浸透すればいいのですが、現状ほど遠いように感じます。
 

当店で取り扱っている手頃なカヴァの一例▼

この価格でちゃんと泡が細かい、カヴァの典型

シャルドネは上品さを狙ってブレンドされることが多いようです

その昔、一躍「時のワイン」となった銘柄

 
 

イタリア ヴェネト特産プロセッコの特徴とは

 
「プロセッコ」はシャンパンを大きく引き離して世界で最も多くつくられ飲まれているスパークリングワインです。その数年間5億本!その需要は現在も上昇傾向です。
ヴェネト州の指定エリアで栽培された「グレラ」というブドウ品種をつかってつくられます。もとは「プロセッコ」と呼ばれていた品種ですが、ワイン名と区別すべく名前を変えました。
 
プロセッコは伝統的製法でつくられることもありますが、基本的にはシャルマ方式でつくられるスパークリングワインです。近年ピノ・ノワールをブレンドしたロゼの生産も許可されました。
 
 
ワインの特徴としてはリンゴを思わせるフレッシュな風味とシャープな酸味、製法に由来する元気のいい泡感と手頃な価格です。その酸味とバランスをとるべく、ほんのわずかに仕上げの甘味添加が多い「エクストラ・ドライ」である銘柄が多い傾向です。
一部高級品もありますが、1000円台のリーズナブルなものが豊富です。
 

当店で取り扱っているプロセッコの一例▼

  
参考記事▼

プロセッコとは 世界一多く飲まれるスパークリングワイン 人気の理由とおすすめプロセッコ

メディチエルメーテSNSより[/caption]
 
ランブルスコの製法は基本的にシャルマ方式。一部アンセストラル方式のものもあるそうです。甘口のランブルスコをつくるには、発酵を途中で止めて糖分を残すか、仕上げに添加しています。
 

当店で取り扱っているランブルスコの一例▼

 
 

製法ごとに特徴を感じるおすすめスパークリングワイン

 
ヨーロッパにおけるスパークリングワインの伝統産地は、そのブランド名を名乗るために品種や製法の規定が存在します。
それに対して新興産地やヨーロッパ以外の産地では、どんなブドウ品種でどんな製法を用いるのも自由です。
 
伝統的製法に高級感や複雑さで劣ったとしても、他の製法にもそれぞれの良さがあります。
 
 

炭酸ガス注入方式ならではの魅力

 
炭酸ガス注入方式の大きな特徴は、スパークリングワインにする過程においてアルコール度数が変化しないことです。
つまりこの製法は、熟度の高いブドウをつかった良質なスパークリングワインの生産を可能にします
さらに2次発酵がないので、ブドウ由来のフルーツや花のアロマをより明確に表現することができます
 
その代表格がニュージーランドのマールボロにて、ソーヴィニヨン・ブランでつくるスパークリングワイン。これに関しては伝統的製法よりも炭酸ガス注入方式が優れていると言われています。ソーヴィニヨン・ブランが持つグレープフルーツやハーブのアロマ。それを損なうことなくスパークリングワインにすることができるからです。
 
 
 

シャルマ方式ならではの風味と魅力

 
シャルマ方式の魅力はまずは価格。それからフレッシュな風味と安定性です。
カヴァは例外として、下記のワインのような価格は伝統的製法ではほぼ実現できません。これだけの低価格となると、製法によるコストの差が相対的に大きくなるからです。
 
 
欠点としては泡の持ちで劣ること。でも2日目に全く泡がないわけではありません。ボトル半分くらいをシャンパンストッパーをつかって冷蔵庫で保管するなら、ある程度の泡はキープできます。
夫婦で晩酌するから1日で飲んでしまうような家庭なら、全くデメリットになりえないでしょう
 
 

甘口スパークリングワインの2つの製法

 
スパークリングワインに貴腐ワインのような濃厚な甘口はありませんが、ほのかな甘口ならいろいろつくられています
その一つは先ほどご紹介したアスティ、およびそのつくり方を踏襲したワイン。この場合はブドウ由来の甘味を残すように発酵をコントロールしてつくります。
 
もう一つは甘味の添加。伝統的製法にせよシャルマ方式にせよ、仕上げの甘味調整に加えるリキュールを増やして、やや甘口ワインをつくることができます。この場合はアスティ方式よりもしっかりとした泡感で、アルコール度数も標準的です。
 

甘味添加でつくる甘口スパークリングワインの一例▼

  
 

シャンパン以外の高級スパークリングワイン

 
世界にはシャンパンに挑まんとして、あるいは独自の哲学で高級スパークリングワインをつくる生産者がいます
 
ヨーロッパ以外で有名なスパークリングワインの産地は、カリフォルニア州のアンダーソン・ヴァレー。それからオーストラリアのタスマニア島。どちらも冷涼な気候を活かして、シャルドネとピノ・ノワールから正統派に上質なスパークリングワインをつくります。
 

アンダーソン・ヴァレーでシャンパンの生産者がつくる▼

 

タスマニア産スパークリングワイン▼

 
ヨーロッパではまずはドイツに注目。特産のリースリングを使ったもの、シャルドネ&ピノ・ノワールでつくるもの、ともに高級スパークリングワインがあります。
中でもスパークリングワインに特化した生産者がつくるものがこちら。
 
 
このほかには近年イギリス産の「イングリッシュ・スパークリング」がメジャーになりつつあります。取り扱いはありませんが、「ナインティンバー」などが有名銘柄です。
 
 

理解してこそ愛好家 スパークリングワインの多様性

 
世界一のスパークリングワインはシャンパンであることは明白。香りのボリュームと複雑さ、泡の質感、余韻の長さや広がり。どの点をとっても、皆があこがれるような高級シャンパンは別格です。
でもそれ以外のスパークリングワインは下位互換なのではありません。たとえお金を湯水のように使えても、「スパークリングワインはシャンパンだけでいい」というのは見識が狭いと考えます。
 
 
シャンパンとは違う生産地域、異なる品種、別の製法だからつくれる味がある。それに適したシチュエーションがある
それらを知って理解し自在にワインを選択してこそ、真のスパークリングワイン愛好家です。グラスから立ち上る泡のように、ワインのある生活がより心躍るものとなるはずです。
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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