ワインのつくり方

熟成期間が長いシャンパン 風味の違いとおすすめ銘柄

2023年8月25日

熟成期間が長いシャンパン 風味の違いとおすすめ銘柄

 

 
一般的にシャンパンは瓶内2次発酵の期間が長いほど高級とされます。
酵母の自己分解が、風味に豪華さをもたらすのが理由の一つです。
長い期間澱と接触することによる風味の違いと、違いを感じる大まかな目安をご紹介します。
これを知ればよりあなた好みの、よりそのシーンにあったシャンパンが選べるようになるでしょう。
 
 

瓶内2次発酵とは

 
まずは「伝統的方式」と呼ばれる、シャンパンをはじめとした高級スパークリングワインに採用される製法をご紹介します。
簡単に言えばまずベースとなる白ワインをつくり、それを瓶に詰めてからもう一回発酵させ、その時生じる二酸化炭素を閉じ込めて炭酸入りのワインをつくります。
 
 
この2回目の発酵を瓶の中で行うので「瓶内2次発酵」と呼びます。
2次発酵を大きなタンクで行う製法もあります。
 
 

瓶内2次発酵の期間

 
ヨーロッパ各地にはスパークリングワインのブランドがあります。
Champagne シャンパン」がその代表ですし、フランスの「クレマン・ド・〇〇(地域名)」や、スペインの「カヴァ」、イタリア・ロンバルディア州の「フランチャコルタ」なども有名です。
 
これらには瓶内2次発酵から出荷までの期間の下限が決められています。シャンパンなら15か月(※1)。カヴァやクレマンなら9か月です。
つまりそれ以下の期間であわただしくつくっては、そのブランドに相応しい品質を保てないと考えられている証。
 
※1 正確には澱引きまで最低12か月、瓶熟成も含めて最低15か月です。
 
 
実際に既定の期間ギリギリでつくっているワインは滅多に見かけません。少なくとも日本に輸入される瓶内2次発酵のスパークリングワインのほとんどが、より美味しくするために規定より長い期間熟成されています。
 
では瓶内2次発酵でどのように美味しくなるのでしょうか?
 
 

瓶内2次発酵で何が変わる?

 
瓶内2次発酵でスパークリングワインがどう変わるのか。大きくは次の2つ。口当たりのなめらかさと酵母の自己分解由来の風味です。
 
 

泡はゆっくり溶け込めばゆっくり現れる

 
時間をかけてワインい溶けこんだ二酸化炭素は、グラスに注いだ際にもゆっくり気泡となって現れる
化学的な根拠を私は目にしたことはありませんが、感覚的に、また経験的にそう考えられています。
 
 
実際に瓶内熟成の期間が長いシャンパンは、グラスに注いだ時に立ち上る泡が細かいです。さらにその泡もゆっくり立ち上ります。グラスで立ち上る泡がほとんどなくても、口に含めば細かい泡がたくさん現れる場合もあります。
短期間でスパークリングワインにしたものは、泡の粒が大きい上に、抜栓後すぐ泡が抜けてしまいます。
 
泡の細かさは口当たりに関係します。瓶内熟成の期間が長い泡は「クリーミー」と表現されます。舌の上で感じる泡感が非常になめらかなのです。
 
澱引きまでの期間が長いほど、泡の口当たりがクリーミー。これは主要な変化の一つです。
しかしその期間が3年と5年の間にブラインドテイスティングで分かる違いがあるかというと、それほど顕著ではありません。
 
 

酵母の自己分解に由来する風味を持つ

 
酵母やその死骸である澱(おり)はタンパク質の塊です。
 
瓶内2次発酵の際に、添加した酵母が糖分を食べてアルコールと二酸化炭素に変えます。その反応自体は1週間程度で終了するそうで、糖分を食べつくすと死滅し澱となって沈殿します。長い年月ワインが酵母に接触していることで、その澱のタンパク質がアミノ酸に分解されて、ワインの液中に戻っていきます
「瓶内2次発酵」と表記される期間のほとんどは、実際には発酵が進んでいるわけではなく、この澱との接触期間なのです。
 
 
アミノ酸の多くは「旨味」として感じます。またその澱が溶け出すことで、パンだねやイーストのような香りがスパークリングワインに付加されますautolysis(オートリシス)と表現されることもあります。
 
 

オートリシスがもたらす『豪華な風味』

 
酵母の自己分解によるパンだねやブリオッシュの香りは、シャンパンの風味に複雑さをもたらします。簡単に言うと風味が『豪華』になります。高そうな香りになるのです。
 
 
高級なシャンパンのおおよそにこのオートリシス由来の香りがあります。だから「この香りがあれば高いシャンパン」と刷り込まれている。その可能性も否定しきれません。
 
とはいえ風味の強さがあり複雑さがあり飲みごたえがあるのは確かで、それらは高品質なワインの条件です。オートリシスの香りが顕著に現れながら「スッキリ軽い」なんてものはありません。
 
 

そして価格が高価になる

 
熟成の期間を長くとるということは、ブドウを収穫してから製品化してお金になるまで長い時間がかかるということです。資金回転率が悪くなります。
 
だから生産量の大部分は比較的早くリリースし、一部のより上質なブドウを用いて長期熟成のシャンパンをつくる。そういうラインナップにするワイナリーが多いです。そして長期熟成するものは当然高級品。高価になります。
 
 
瓶内2次発酵から澱引きまでの期間の長いシャンパンは、基本高価です。
 
 

瓶内2次発酵は長ければいいわけではない?

 
オートリシスの香りによって、シャンパン・スパークリングワインは「高そうな香り」になるのはほぼ例外がありません。でもそれがイコール美味しいかというと、「美味しいワインの定義は一つではない」という話になります。
 
というのも長期熟成させるとオートリシスの香りが支配的になるため、風味がどれも同じ方向に向かってしまうのです。つまりつくり手や産地の個性よりも、熟成期間の味が強く出てしまう。
畑の個性をシャンパンに表現しようとする小規模な生産者は、これを嫌うことがあります。だからあえて瓶内熟成の期間を2~3年程度に抑え、ブドウ由来の風味を強く表現しようとする場合もあるのです。
 
 
瓶内熟成の期間が短いからといって、劣ったシャンパンとは限らない。それは覚えておいてください。
 
 

何年をもって「長期熟成」とするか?

 
では瓶内2次発酵から澱引きまでの期間が何年以上だと「長期熟成」と言えるのでしょうか。明確な基準はありません。
 
期間の長さによる泡の細かさは、「〇年以上だと急に細かくなる」というのがないので、基準にはなりえないでしょう。
ではオートリシスの風味はどうでしょうか。
 
 

シャンパンの最低熟成期間

 
先ほどシャンパンの瓶内2次発酵と熟成の期間は15か月と述べましたが、厳密には澱引きまでに最低12か月以上。瓶熟成も含めて15か月です。
さらにそれはノンヴィンテージ(複数のヴィンテージをつくるシャンパン)の場合。単一ヴィンテージからつくるミレジメの高級シャンパンは、最低3年の熟成期間が定められています。(瓶内2次発酵期間の規定は12か月で同じ)
そして実際には多くのシャンパンでこの規定を大きく上回る期間を経てリリースされています。
 
なので少なくとも3年程度では「長期熟成」とは言えないことは間違いないです。
 
 

オートリシスの風味には3~5年

 
同じだけの期間瓶内熟成していても、オートリシスの香りを強く感じるシャンパン、あまり感じないシャンパンがあります。ブドウの質や醸造方法にも大きく関係するのでしょう。
 
 
オートリシスの風味が現れるのには、おおよそ3~5年の瓶内熟成が必要だと考えられています。ただしこの目安は経験的で感覚的なもの。異論もあるでしょう。
オートリシスの香りが支配的になる段階か、香りの中に探せばイーストっぽい香りもあるという程度か。その線引きは難しいです。
 
 

スタンダードのドン・ペリニヨンで8年以上

 
高級シャンパンの代名詞ともいえる「ドン・ペリニヨン」。
白の中にもラインナップがあり、通常のキュヴェとP2、P3があります。このPは「プレチュード」であり、熟成のピークの2回目、3回目でのリリースという意味。通常のキュヴェとは瓶内熟成の期間が違い、高級品はより長く熟成させて出荷されるのです。
 
では通常のキュヴェはというと、「最低でも8年以上」でワイナリーが「1回目の熟成のピークだと判断したとき」にリリースされます。なので2023年半ばの現在、最新のヴィンテージは2013年。これが一番新しいドンペリであり、決して熟成した古いワインではないのです。
このあたりは赤ワイン・白ワインとは少しヴィンテージの感覚が違います。
 

 
個人的にはこの「8年」を基準にしています。8年間熟成していたら、間違いなく酵母の自己分解に由来する豪華な香りが感じられる。スタンダードのシャンパンに比べて、誰が飲み比べても有為な差で高そうな味がする
 
 
故に当店オリジナルの味わいチャートにおいて、「熟成のなめらかな泡」が味わえると判断するのは、この瓶内2次発酵から澱引きまで8年以上を基準にしています。
 
 

シャンパン以外でも同様か?

 
このオートリシスの香り。シャンパン以外のスパークリングワインでも同様に現れるのか。
経験的に「現れるものもあるがやや少ない」と感じています。特にブリオッシュのような甘味を伴う酵母の香りというのは、他の地域ではあまり感じたことがありません。
 
当店のスパークリングワインの中で、比較的しっかりオートリシスの香りを感じるのはこちら。
 

 
一方でイタリアの高級スパークリングワインである「フランチャコルタ」は、この香りを感じた経験があまりありません。
 

 
この「アルマ・キュヴェ」はそもそも熟成の期間が長くはないですが、もっと長いものでも同様です。
 
この違いは個人的に気になるところです。ブドウの成分的な違いからくるのか、酵母の選択なのか。興味深い。
 
 

ポスト・デゴルジュとの違い

 
瓶内2次発酵から澱引きまでの期間が長いのと、澱引きしてドサージュを加え栓をした後の瓶熟成が長いのとでは、風味の変化が異なります。
後者の瓶熟成を「ポスト・デゴルジュマン」と呼ぶことがあります。(あまり一般的ではありません)
この違いは何で生じるのでしょうか。
 
ドサージュについてはこちらで詳しく

用語解説 ドサージュとは? シャンパン・スパークリングワインの甘辛と選び方

   

瓶内二次発酵の長いシャンパンは白ワイングラスかブルゴーニュグラスで。フルートグラスはもったいない。[/caption]
 
必ずしも乾杯で飲まなくてもいいでしょう。最初の1杯はえてしてすぐに飲み干してしまうもの。他のワインとの兼ね合いもありますが、順番は考える価値あり。
泡で初めて白ワイン・赤ワインを飲んで、お腹もいっぱいになったあと。締めのシャンパンとしてでもいいでしょう。濃い味付けの肉料理を食べたあとでも十分味を楽しめる強さがあります。
 
本日最後のお酒として、豪華な風味のシャンパンをセレクトするのはいかがでしょう。
 
 

シャンパン選びは熟成期間にも注目

 
シャンパンやスパークリングワインは、赤ワイン・白ワインに比べ醸造法による味わいのウエイトが大きいです。
その中の重要な要素の一つが「瓶内2次発酵」と表記される澱引きまでの期間の長さ。長いもの、具体的には3~5年以上の期間を経たものは、酵母の自己分解によるパンだねやブリオッシュの香りを持ち、泡感がきめ細かくなります。風味が豪華になるのです
ただしその分価格が高くなります。
 
数名で囲む食卓、食後の1本としてこんなシャンパンを選べば、高い満足感を持ってその食事会を締めくくることができるでしょう。

-ワインのつくり方
-, ,