ワインのつくり方

コルク栓とスクリューキャップ どっちがいいの?

2019年12月27日

みなさまは自分が飲むワインを購入する際、ワインの栓がどのタイプなのかを気にされますか?
 
例えばプレゼント用途ならば、「コルク栓の方がなんとなく高級そうな感じがするから」とか、逆に「あの方はあんまりワインを飲まなくて、コルク抜きがあるかわからないからスクリューキャップにしよう」など考えるかも。
それぞれが「高級なイメージ」と「開けやすさ」というメリットを持つのはすぐわかります。
 
しかし自分が家で飲むワインにとって、それらはほぼメリットになりません。
そんなことより開けて飲んで美味しいのがいいんです。
結局、どっちのほうがいいの?
 
今回は、コルク栓とスクリューキャップの性質の違いについて、ありがちな誤解を挙げながらご紹介して参ります。
 
 

そもそもワインの栓の役割は?

 
ワインの栓の役割は、ワインを酸素から守ることです。
 
誰しも、飲み切れなかったワインを数日~1週間放置してまた飲んだら、味が変わってしまって残念な思いをしたこがあるでしょう。
大雑把に言うと、酸化はワインの敵と言えるでしょう。
 
それを防いでくれているのが、ワインのガラス瓶とコルク栓、もしくはスクリューキャップです。
 
ワインが現在のように、ガラス瓶に入れられコルクで栓をして流通し始めたのは1650年ごろと言われています。
それ以前は、ワインの酸化をきっちり防ぐ方法はありませんでした。
 
 
ワインの容器は初期のころはアンフォラと呼ばれる甕(かめ)。
それから次第にオーク樽が使われるようになりました。
しかしながら、木材はある程度空気を通してしまうので、中に保管されたワインは蒸発するとともに酸化してしまいます。
 
なので当時は、ワインにヴィンテージという概念はなかったはずです。
なぜなら出来立てが一番美味しくて、すぐに飲んでしまうものだから。
 
数年後に飲むワインが、新しいものと同じくらい、ひょっとしたらそれ以上に美味しい
そんな楽しみ方をするには、空気を通さないガラス瓶と、密閉性の高いコルク栓が開発されるのを待つ必要があったのです。
 
 
さて、ここで「酸化はワインの敵」と申しましたが、これは多量の酸素に数日以上の単位で触れた場合です。
ワインの醸造や熟成の過程における、微量の酸素との接触は、ワインに良い影響を与えることもあります。
これは醸造学における非常に深い議題となり、詳しくご紹介することはできません。
 
 
いいワインを作るうえで、適量の酸素は必要である、という認識が正しいでしょう。
 
 
 

スクリューキャップの性質

 
スクリューキャップはほぼ酸素を通しません。
 
 
いくつかの実験によると、一般的な錫/サランライナー製のスクリューキャプが1日に通す酸素の量は0.0002~0.0008cc程度。
1ccの酸素を通すのに、3.5~14年もかかる計算になります。
(ジェイミー・グッド 『新しいワインの科学』より)
 
酸素の透過がないわけではないが、かなり微量
出来てから数年で飲まれるワインに関しては、スクリューキャップならほとんど外気の影響を受けないと言っていいでしょう。
※酸素接触がないからといって、味が変わらないわけではありません。
 
ただし、スクリューキャップのワインはヘッドスペースが大きい。
ヘッドスペースとは、ワインの液面から栓までの空間のことです。
 
液体は温度変化によって膨張・収縮するものなので、瓶の破損を防ぐために多少の余裕を持たせてワインは充填されています。
 
同じ高さまでワインを入れても、コルク栓はその長さの分、ヘッドスペースが小さくなります。
なので出荷時においてはスクリューキャップのものの方が、瓶の中に多くの空気が存在するのです。
そのため、5年程度の熟成ではスクリューキャップの方が大きく味わいが変化する、という実験報告もあります。
 
そのヘッドスペースの空気を窒素など不活性な気体で置換してから栓をする、という生産者ではまた話が異なってきます。
 
また、スクリューキャップの方がコストが安いというのは確かなようです。
 
 

コルク栓にも種類がある?

 
数多くのワインを開けていると、一口にコルク栓といっても様々なタイプがあることに気づきます。
 
大別すると次の3つです。
①天然コルク
②合成コルク
③圧搾コルク
 
 

①天然コルク

コルクを抜く際、途中で折れてしまった経験はないでしょうか。
おそらくそのコルクは、天然コルクです。
20年30年前のものでないのに簡単に折れてしまったとしたら、ひょっとしたらあまり上等でないのかもしれません。
 
ワインのコルクは、コルク樫という樹の樹皮を加工したもので、最大の生産地はポルトガル、次いでスペインです。
当然その品質もピンキリであり、触った感じが硬いものは組織の密度が高く、酸素を通しづらい高級品です。
 
長さもまちまちで、40mm程度のものから60mm近くのものまであります。
当然、長いコルクの方がしっかり栓をしてくれますので、数十年の熟成を考えて作られた高級ワインには、高級な長いコルクが打たれます。
 
コルギンに使われるコルクは、1本4$もするそうです。
 
天然コルクの酸素透過率は、実験にもよりますが0.0001~0.0023。
ただしこの実験は瓶を逆さにしてコルクが常にワインと接触した状態で行っています。
ワインが染みることでコルクの組織がより密になり、スクリューキャップと変わらないくらいきっちり密閉されるのです。
 
ワインを寝かせて保管するのはこのためです。
 
 
とはいえ天然コルクは数十年もすると脆く劣化してきます。
酸素を防ぐ能力も弱まります。
古いワインにボトル差、同じ銘柄ヴィンテージでも味わいが異なるのが普通なのは、コルクの状態にばらつきがある影響が大きいと考えられます。
 
また、ワインの抜栓も難しくなります。
 
そのほか天然コルクには、『ブショネ』と呼ばれるワインの欠陥を引き起こすリスクがあります。
これに関しては回を改めて後日ご紹介したいと思います。
 
 

②合成コルク

プラスチック製のコルク栓のことです。
若干ゴムのような弾力があり、ぱっと見はしっかり密閉してくれそう。
 

ノマコルクの合成コルク

 
しかし実はこの合成コルク、あまり酸素を防いでくれません。
先ほどの資料によると、合成コルクの酸素透過率は0.0019~0.0030cc/日。
出荷から1年半で、ワインが酸化して大きく劣化していた例もあるそうです。
 
合成コルクを使う理由は、コストは押さえたいけどスクリューキャップだと安物に見られそうと考えるから。
手ごろな価格帯のワインでコルク栓、妙にヴィンテージが古いものは、注意した方がいいかもしれません。
 
 

③圧搾コルク

一見すると合成コルクのように安物に見えることがあるのですが、実はとてもしっかりしているのがこの圧搾コルク。
天然コルクを作るのに用いたコルクの切れ端を細かく砕いて、それを成型して作ります。
 
 
この圧搾コルクのメーカーとして有名なのが「DIAM」という圧搾コルクをつくるウオネ・ヴシャージュ社(旧名:サバテ社)。
DIAMのコルクは長さや太さはもちろん、酸素透過率まで選べるのが特徴です。
0.0007cc/日とスクリューキャップと変わらないようなものから、0.0035cc/日と高いものまで。
ワインメーカーがそのワインにどれくらい酸素が必要と考えるかで、コルクを選択できるようになっているのです。
 
圧搾コルクはその製法上、ブショネのリスクはほとんどなし
そのため高級ワインで頻繁に「DIAM」の刻印を見かけるように感じます。
 
 
 

新しい栓のタイプ ガラス栓

 
近年登場したのがガラス栓。
VonolockヴィノロックやVino-sealとも呼ばれます。
コストが高いものの、スクリューキャップ並みの気密性と高級感があります。
 

 
イタリアやアルザスなどの生産者で、瓶詰時に酸化防止剤の添加量を最小限にしたい生産者が、よく採用する傾向にあります。
ただし単価が高いため、まだまだ普及しているとは言えません。
 
 

よくある誤解 ワインはコルクを通して呼吸する?

 
先述のとおり、ワインはコルク栓によって完全に外気と遮断されているわけではありません。
微量ながら酸素が侵入しますし、中の液体も蒸発して古いワインは液面が下がってきます。
 
だからといって、それを呼吸と言えるかといえば違うでしょう。
呼吸と呼べるほどの、空気のやりとりをしているわけではないのです。
 
「正常なコルクでも、ごく微量の酸素を通している」と認識してください。
 
 

よくある誤解 スクリューキャップは熟成しない?

 
そんなことはありません。
長期間の保管により若い状態に比べ香味が好ましいものとなることを熟成というなら、スクリューキャップのワインもコルク同様熟成します。
 
ただ、その風味はコルクのものとは異なり、年をとるスピードも違うのは事実です。
 
論より証拠。
 
西オーストラリアのルーウィンエステートは上質なシャルドネとカベルネの生産者として知られています。
非常に意欲的な生産者で、この2004年のシャルドネは、コルク栓のものとスクリューキャップのものの両方でリリース。
 
 
以前この2つを飲み比べる機会がありました。
 
コルクの方はある程度予想通りの熟成
ヘーゼルナッツや紅茶のような複雑な香りは、適度な酸化熟成を感じさせます。
やはりブルゴーニュと比べると年をとるのが早いのか、ブルゴーニュでいうと1990年代半ばくらいの印象でしょうか。
「熟成したシャルドネ」として大変満足できるワインでした。
 
対してスクリューキャップの方。
驚くほどフレッシュ。そしてきれいに熟成している。
コルクの方で感じた酸化のニュアンスはほとんどなく、それが全体をクリーンな印象にまとめています。
 
その代わり、熟成したワイン特有の様々な風味が折り重なったような密度は少な目。
飲んだのが2年前くらいのはずですので、「13年も熟成してこれくらいかぁ」古酒好きには物足りなく感じてしまうでしょう。
 
やはりボトル差が少ないのはスクリューキャップの方。
このワインは輸入元様の倉庫で保管されていたもので、色合いや液面の高さから判断して健全なものが出荷されます。
この検品の段階でも、やはりコルクとスクリューキャップの差はあらわれるのだとか。
 
 
 
 

結論 飲んでみなくちゃわからない

 
今回のブログでは、「酸素を通さない栓が良いもの」のように書きました。
もちろんワインの保管に多量の酸素は厳禁なので、合成コルクは長期熟成に向きません。
 
しかし、実は酸素がなさすぎるのも問題
酸素を通さないスクリューキャップやガラス栓でも、別の問題が起こっているのです。
 
それは『還元』。
酸素が少なすぎることで硫化水素が遊離してしまい、卵の腐ったような臭いを発する状態のことを言います。
 
一方で「瓶詰時の酸素の濃度をきっちり管理すれば、スクリューキャップでも還元状態にはならないよ」という生産者もいます。
 
詳しく述べると結論にたどり着かないので省かせていただきます。
 
今回の結論としましては、コルクがいいのかスクリューキャップがいいのか、私たちが考えるよりも生産者はしっかり考えているということです。
一番大切なのは、その中身であるワインが美味しいと感じるかどうか。
コルクかスクリューキャップかだけでは、どちらがいいなどわかるものではありません
 
生産者がどんな思いでそのワインをつくり、どんな哲学でその栓を選択したのかを含めて味わいたい。
ちょっとすっきりしない結びになってしまい申し訳ありませんが、非常に複雑で深いテーマだということを知って頂けたらと思います。

-ワインのつくり方
-

Copyright© 葡萄畑のこぼれ話 ワイン専門店 葡萄畑ココスのブログ , 2020 All Rights Reserved.