ワインの楽しみ方ガイド

乾杯シーンを盛り上げる!タイプ別に比べるシャンパンVSスパークリングワイン

2023年11月15日

乾杯シーンを盛り上げる!タイプ別に比べるシャンパンVSスパークリングワイン 
 
「とりあえず生で」ならぬ「とりあえず泡で」は、楽しい飲み会の始まりの合図。
シャンパンだけが美味しい泡ではありません。年末のこの時期だからこそ豪華な泡を楽しむチャンス。
スパークリングワインのタイプ別に、シャンパンとそうじゃないものを比較してご紹介します。
集まる人の好みや属性で使い分け、1年の締めくくりに相応しい楽しい時間をスタートしましょう。
 
 

シャンパンと高級スパークリングワインの違い

 
シャンパン(シャンパーニュ)とはスパークリングワインの一種。フランスのシャンパーニュ地方で規定の品種・製法でつくられたもののみ、「Champagne」を名乗ることができます。
ここまでは基本のキ。
 
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
 
ではシャンパンと同じ品種・同じ製法で同じように高級なワインを、別の産地でつくったなら
それでも一般にはシャンパンの方が高級品と考えられています。
ブランドネームは別として、味わいはどう違うのでしょうか?
 
 

同じ伝統的製法

 
スパークリングワインの製法はいくつかの種類がありますが、およそ4000円以上の高級なものについてはほとんど一択。「伝統的製法」と呼ばれるシャンパンと同じ製法です
シャンパーニュ以外の地域でスパークリングワインをつくる生産者の中に、シャンパーニュで修行を経験した人も多くいます。
細かな技術で差異はあるでしょうが、製法においてはシャンパンかどうかでそう違いはないと言えるでしょう。
 

 

同じ長期熟成

 
瓶内熟成、瓶内2時発酵が終了してから澱引きされるまでの期間は、一般に長いほど高品質とされます
酵母の死骸である澱(おり)はアミノ酸の塊であり、それが熟成期間に旨味としてワインに溶けだします。酵母やパンだねのような香りを添加し、香りに複雑さをもたらします。泡の口当たりもなめらかでクリーミーなものとなると言われます。
 
詳しくはこちらの記事でご紹介しております。
 
運転資金と保管スペースに問題がなければ、熟成期間を長くとること自体は難しくありません。スパークリングワインを専業とせず、赤ワイン白ワインの傍らで少量つくっている生産者なら、なおさら容易でしょう。
 
シャンパンとその他のスパークリングワインの味の違いにおいて、瓶内熟成の期間は明確な要因にはなりません。
 
 

同じことが多いブドウ品種

 
スパークリングワインは本当にいろいろな品種でつくられています。しかし高級品に限って言えば、そのほとんどがシャルドネとピノ・ノワール。単一品種かそのブレンドです
 
 
ゆえにブドウ品種においても、シャンパンかどうかで違いはないと言っていいでしょう。
 
 

違いの一つはリザーヴワイン

 
スパークリングワインの多くは「NV ノンヴィンテージ」であり、年数の表記がありません。これはブレンドしているから。最新の収穫年のブドウからつくるワインに、それ以前の収穫年のワインをブレンドして深みをだし、スパークリングワインをつくるのです。
 
このリザーヴワインを何年分、何十年分ともっていて複雑にブレンドできるのは、歴史あるシャンパーニュの生産者の特権です。そのブレンド技術を含め、歴史の浅いニューワールドの生産者ではなかなか真似できません。
 
 
ただしこれは真似する必要がないという実情もあります。高い緯度にあり冷涼なシャンパーニュ地方は、年ごとのブドウの出来に差が大きい産地。それゆえヴィンテージのブレンドにより品質を平均化する必要がありました。
ヴィンテージ表記されたシャンパンは、天候に恵まれた年だけつくられる高級品なのです。
 
しかし気候に恵まれた地域でつくるなら、毎年安定していいブドウがとれます。単一年でスパークリングワインをつくるデメリットがあまりありません。むしろわざわざヴィンテージのブレンドをする方がコストが高いのです。
 
 

違いの一つは酸味

 
シャンパーニュ地方は北緯50度近く。これほど冷涼で昼夜の寒暖差があるワイン産地は、このほかにほとんどありません。
 
ドイツには同じくらい冷涼な産地もあります。近年はより北にあるイギリスも産地として注目されています。
しかし南半球の南緯50度帯には、そもそもほとんど陸地がありません。
 
 
シャンパーニュに比べて暖かい産地でつくられたものは、比較するなら少し酸味は穏やかでしょう。しかし生産者の個性で吸収される程度の差かもしれません。
 
 

最大の違いはブランド力

 
一番の違いは「高級でラグジュアリーなスパークリングワインである」というシャンパンのブランド力かもしれません
 
シャンパンはシャンパンというだけである程度高く売れます。
それに対して「伝統的製法でつくるシャルドネ+ピノ・ノワールのスパークリングワイン」というだけなら2000円前後からあります。それと6000円のスパークリングワインがどう違うか。飲まずに判断するのは簡単ではありません。
 
 
コストをかけて高品質なものをつくれば、市場はそれを受け入れてくれる。高い価格で販売できる。
その信頼があるからこそ、シャンパーニュの生産者は高級品を大量につくることができるのでしょう。
 
その代わり高いなら高いなりの満足を飲み手に与える義務がある
高級品としての期待に応える味につくるから、シャンパンは特別視されるのかもしれません。
 
 

実は明確な違いは・・・たぶんない

 
「シャンパンとその他の地域のスパークリングワインは、このポイントで判別できます!」
そう言葉にできるような明確な風味の違いは、おそらくないです。少なくとも私は知りません。
 
 
別にブラインドテイスティングのコンテストに出るのでなければ、その違いなんて分からなくてもいいんです。
主張したいのは、「シャンパンだけが高級感のある味わいのスパークリングワインじゃないんですよ」といこと。
「シャンパンじゃないのに5000円もするなんて」その気持ちも分かります。でもシャンパンじゃないことで品質で劣る理由はないのです。
 
財布のひもが緩むこの季節。いつもと違う高級スパークリングにもぜひ手を出してみましょう。
 
 

生産者のチャレンジ精神も含めて楽しみたい

 
シャンパンという絶対的なお手本があるからこそ、それに挑戦する生産者が各地にいます。
ある人はシャンパンのような味わいを負けないクオリティーでより手頃に
ある人はシャンパンとは別物としてのスタイルを確立すべく
 
 
生産者の多くはスパークリングワインだけをつくるのではなく、赤ワイン・白ワインとしても上質なものをリリースしています。だからこそブドウ品質はシャンパンに負けない。
 
シャンパンに挑まんとするそのチャレンジ精神も含めて味わってみてはいかがでしょうか
 
 

スタンダードなブレンドスパークリングで比較

 
シャンパンの基本はシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3品種をブレンドしたノンヴィンテージのものです。
たくさんの人に飲んでもらうことを前提とした、その生産者を代表する1本。幅広い人に好まれる変わらぬ美味しさを目指していることが多いです。
 
それゆえ「ラインナップを飲み比べたとき、値段を考えるとスタンダードが一番優秀」と感じることもしばしば。
まずはスタンダードクラスでシャンパンとスパークリングワインを比較します。
 
 

パーティーでも一人でも

大手シャンパン生産者の一つ「ルイ・ロデレール」がカリフォルニアの冷涼産地でつくるスパークリングワイン。「幅広い人に好まれる変わらなぬ美味しさ」という方向性が明確に表れています。さすがの技術力。
だからこそいろいろな嗜好の人が集まるパーティーの場でも失敗がない。安心感があります。
  
 
ルイ・ロデレールのシャンパンなら、スタンダードでも8000円程度。しかも自社畑以外のブドウも使います。
およそ半額のスパークリングワインが全て自社畑のブドウでつくられている。そのお得感をかみしめると、一人で飲むときのご褒美感が増すことでしょう。
 
 

適度にツウな味わいでワイン好き大満足!

 
このセロス・パジョンという生産者の人気シャンパンは、シャルドネ100%でつくる「サクル・ブラン」です。シャープな酸味とミネラル感が際立っています。それに対してこの「スーヴニール」は、3品種をブレンドしているからこそのまろやかさ。それでも大手生産者のスタンダードとは雰囲気が違います。ワイン初心者がたまたま手に取るようなどこでも売っているものではないので、だからこそ適度にツウ好みの味。
2、3人くらい、少人数のワイン好きでゆっくり楽しんでもらいたいシャンパンです。
 
 

フォトジェニックなロゼで比較

 
美しいピンクの液体に立ち上る細かな泡。
パーティーシーンのテーブルを美しく彩ることにおいて、ロゼのスパークリングワインの右に出る液体はありません。
 
 
 
しかし見た目だけなら1000円も10000円もさして変わりません。
数あるロゼ・スパークリングワインの中から、どうやって高品質かつパーティーシーンに相応しいものを選びましょうか。
 
 

ピノ・ノワールの品質から目星をつける

 
スパークリングワインもワインです。品質を決める最大要素はブドウがいかに良い物であるかです。
赤ワイン・白ワインの評価が高い生産者がつくれば、スパークリングワインも美味しいはず!
上品なピノ・ノワールをつくる生産者のうち、高級なスパークリングワインもつくっている生産者。
ドイツのフランケン地方でワールドクラスのピノ・ノワールをつくる、フュルスト醸造所に注目です。
 
 

ワイン初心者と一緒に乾杯ならコレ!

 
フュルストがつくるピノ・ノワールは酸味キュンキュンで、やや玄人受けするタイプ。でもこのロゼ・スパークリングはやや雰囲気が違って、とってもフレンドリーです。イチゴのような甘酸っぱいベリーの香りがふんわりと広がり、香りにも味わいにも小難しさがありません。糖分の数値的にはキリッキリの辛口なのですが、ほんのりとした甘みを感じる優しい果実味。いわゆる『飲みやすい』スタイルです。
 
 
そんなロゼ泡は、3000円でいくらでも見つかります。
でも3倍の値段を出せば、秋晴れのような清々しい透明感と、軽やかな口当たりから予想できないほど長く続く美しい余韻が味わえます
「スパークリングワインっておいしい!」そう感じる人を間違いなく増やすであろう1本。ぜひ20代の若者といっしょに!
 
 

40代、50代こそ似合う硬派なロゼ

 
フュルストの親しみやすい雰囲気のロゼに対して、こちらはラフな服装で飲んではいけないようなビシっと緊張感のあるロゼ・シャンパン
 
ビルカール・サルモンというメゾンの特徴。味わいの骨格がしっかりしており、決してアルコール度数が高いわけではないのに、飲みごたえがあります。硬質なミネラル感があって硬派なイメージ。決してパリピが喜んで飲むタイプの味ではありません。
 
 
「ロゼは女の子が飲むものでしょ?」
少なくともこのロゼ・シャンパンに関しては絶対間違いです。むしろ年齢を重ねた紳士・淑女が飲むべきもの。経験値があって初めて味わえる深み。
オトナが集まる場にぜひこの1本を。
 
 

エレガンス際立つブラン・ド・ブランで比較

 
シャルドネ100%でつくるブラン・ド・ブランのスパークリングワインは、なんといっても上品さが魅力です
酸味が高いのはどれも同じですが、味わいが少し軽く細身。だからこそ香りの華やかさが際立ちます。
 
 
こういうタイプは食前酒はもちろん、食中酒としても活躍します。苦手とする食材が少ないため、1本で通すことができます
2人で飲むならブラン・ド・ブランで乾杯からスタート。物足りなければ赤ワインを足すという楽しみ方がいいでしょう。
 
 

柔らかな果実味には笑顔が似合う

 
「アメリカを代表するスパークリングワインといえば・・・」
シュラムスバーグはその筆頭として必ず名前が挙がる、老舗の生産者です。その看板商品といえるのがこのブラン・ド・ブラン。ヴィンテージ表記のあるスパークリングワインですが、その味わいは極めて安定しています。
 
 
アルコール度数はスパークリングワインとして標準。それでもやはりシャンパーニュに比べたら暖かい地域なのでしょう。果実味にはより熟した柔らかいニュアンスがあります。朗らかな雰囲気を持つこの味わいは、笑顔あふれる食卓にこそ似合う。いい年した大人が、旧友とまるで学生のころに戻ったかのようにガハガハと笑いながら話す。1年にこの時期だけのそんな場にピッタリな雰囲気です。
 
 

ブドウがいいから醸造法は基本でいい

 
赤ワイン・白ワインに比べて工程の多いスパークリングワインは、ワインを特徴づけるための醸造オプションがたくさんあります。ベースワインを樽熟成してふくよかさを持たせたり、マロラクティック発酵をブロックしてシャープな酸味を残したり。
それらをあえて一切行わず、セオリーに沿ってつくるのがクロード・カザル。代々有名なメーカーにブドウを卸してきた栽培農家で、近年になって醸造所を構えてシャンパンをつくり始めました。分量あたりいくらで販売するブドウより、自身の名前を冠するシャンパンにいいブドウを使うのは必然。その質に自信があるから、珍しいことをしなくていいのです。
 
 
王道の味わいというのはそれだけ苦手とする人が少ないということ。初対面の人も含むパーティーで乾杯の1本として最適でしょう。
 
 

飲みごたえのあるブラン・ド・ノワールで比較

 
黒ブドウだから濃い。そんな単純なものではありませんが、シャルドネ100%と比較するならブラン・ド・ノワールのスパークリングワインはコクがあります
 
 
料理とあわないわけではありませんが、ワインタイムとして食事と切り離して楽しむのもあり。ボディ感がしっかりとあるので、単体での満足度が高いのです。何かつまみたい場合は、カカオ分高めのダークチョコレートがおすすめです。
 
 

ピノ・ノワールで有名になった生産者だからこそ!

 
南ファルツのフリードリッヒ・ベッカー醸造所は、シュペートブルグンダー、ドイツのピノ・ノワールで有名になった生産者。
香り高く上品ながら豊富なタンニンが味わいの骨格をつくる味わいが特徴です。
 
フリードリッヒ・ベッカーについてはこちらの記事で。
 
手頃なものから高級品まで人気なのは、純粋にブドウの質が高いから。骨格のしっかりとした味わいのスパークリングワインは、寒い日にピッタリ。ポカポカと暖房の効いた部屋よりは、少し寒い部屋でこたつで温まりながら楽しむのがいいかもしれません
 
 

パーティーシーンを締めくくる華やかなラベル

 
シャンパーニュ地方でも特に安定していいブドウが実るエリアは「グランクリュ」に認定されています。中でも「ブジー」の村でとれるブドウは骨格のしっかりとした味わいのシャンパンになることで有名。
大人数で分けて飲んだとしても、しっかりと記憶に残る味わいです。
 
 
だらこそ「最後にもう1本飲もうか」という締めの1本に最適。美しくマーガレットが描かれたボトルとあわせて、しっかりと皆の記憶に残ることでしょう。
 
 

高級感のある長期熟成タイプで比較

 
熟成期間の短いフレッシュな味わいのシャンパン。
長期熟成により複雑な香りが表れたシャンパン。
どちらの特徴も魅力的ですが、年末の特別な日に楽しみたいラグジュアリー感を感じさせてくれるのは、長期熟成したタイプでしょう。
 
熟成香の強いタイプは温度高めでも魅力を発揮しやすいです。
人数は3~4人。おしゃべりを楽しみながらゆっくりと時間をかけ楽しんでもらうのをおすすめします
 
 

7年+瓶熟の高級感に驚愕!

 
このヴィンテージ入りスパークリングワインは、7年も瓶内熟成してから出荷され、それから4年程度瓶熟成しています。
ベースワイン自体も樽熟成しており、ふくよかで厚みのある味わい。それに熟成香が加わることで、その風味はシャンパンと騙されそうになります。
出荷後の瓶熟成により少しカラメルのような風味も出始めており、豪華な味わいに。
 
6000円出せば確かにいろいろなシャンパンも変えてしまいます。でもこれほど熟成感のあるシャンパンは、同じ価格ではまずありません
 
 
ある程度シャンパンを飲みなれた方ほど、このワインがシャンパンではないことに驚いてもらえるはず。2、3人くらいの少人数のワイン好きだけで囲んでもらったほうが、この1本の特別感を感じていただけるはずです。
 
 

伝統の素晴らしさをワインが教えてくれる

 
先ほどのバロン・ドーヴェルニュと同じくグランクリュのブジー村産ピノ・ノワール100%でつくられるブラン・ド・ノワール。違いとしてこちらは6年半と長い瓶内熟成をしています。
だからこそピノ・ノワールの表現力豊かな深みのある香りがムンムンと広がります。先の「エミー」よりもさらにハッキリと豪華さを主張する風味は、シャンパン通もシャンパン初心者も思わずうなる説得力。
 
どうせなら大人数でこの伝統の素晴らしさを分かち合いたいところ。そうなると飲む順番が難しい。乾杯で飲んでしまうと、そのあとに続く白ワインがよほど濃厚でないと負けてしまいます。
スパークリングではありますが、白ワインと赤ワインの間に挟むのも一つの手でしょう。
 
 

その場限りの味わいだからこそ、記憶に残る体験

 
赤ワイン・白ワインに比べてスパークリングワインは保存が難しいです。
泡が抜けてしまえばその魅力は半減。温度が上がりすぎても味のバランスが崩れます。
 
スパークリングワインはその一時の楽しみ
その一時で5000円1万円が飛んでいくのは、冷静に考えれば非常に割高です。スパークリングワインに立ち上る泡のごとく、お金が儚く消えてなくなります。
 
 
だからこそその特別な短い時間が記憶に残るはず。その一時しか味わえない特別な風味とともに、大切な人と過ごした特別な体験が心に刻まれます。
この時期だからこそ飲みたい高級スパークリングワインが思い出の1本となりますように。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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