「シャルドネ」と並んで世界中で栽培され、ワイン好き以外にもその名を知られるブドウ品種、カベルネ・ソーヴィニヨン。
味わいは産地や作り手によって大きく違うので、たくさんの中から自分好みのものを選ぶのは大変です。
カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴・選び方のポイントとともにご紹介します。
カベルネ・ソーヴィニヨンの基本
カベルネ・ソーヴィニヨンはボルドー原産の黒ブドウで、世界一広く栽培されているブドウです。
その特徴は力強い味わいと豊富なタンニン、高い酸味。
もちろんその味わいは、ワインの産地や生産者、ワインの値段によってさまざまです。
価格はそれこそスーパーで売っているようなワインコインのものから、上は50万円以上するものまで幅広く。
まずは概要をご紹介します。
カベルネ・ソーヴィニヨンの主要栽培国
OIV(世界ブドウ・ブドウ酒機構)の2015年の統計に基づく、カベルネ・ソーヴィニョンの主要な栽培国は次の表のとおりです。
1位 | 中国 | 6万ha |
2位 | フランス | 4.8万ha |
3位 | チリ | 4.3万ha |
4位 | アメリカ | 4万ha |
5位 | オーストラリア | 2.4万ha |
6位 | スペイン | 2万ha |
世界計:34万ha
個人的な意見としては、中国の数字は眉唾じゃないかと疑っています。
カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培面での特徴
世界一広く栽培されているということは、美味しいワインがつくれるということもあるでしょうが、まずは栽培がさほど難しくないという証拠でもあります。
ただし、気候は選びます。
カベルネ・ソーヴィニヨンは晩熟、つまりブドウが甘く熟すまでに時間がかかる品種です。
なので実は原産地のボルドーのような温和な環境では熟すのにギリギリ。日本などは雨が多く日照量が少ないため、完熟させるのは非常に困難なので、栽培が少ないのです。
一方で温暖な地域であれば、ブドウを完熟させることにはさほど困りません。
また、水はけのいい土壌を好みます。
あまり雨の多い環境には適していませんが、乾燥地域でも灌漑(水やり)すれば栽培が可能です。
雨はちょっと少ないくらいの地域が適しているようです。
果実由来の風味の特徴
カベルネ・ソーヴィニヨンが特徴として持つ風味も、生産地の影響を強く受けます。
共通して持っているのはベリーのような香り。ただイメージするベリーの種類は、生産地の気候によって変わります。
カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培地としては涼しい地域ではカシスやブラックベリーなどの、あまり甘くなくて酸っぱいベリーの印象を持ちます。
一方で温暖な地域のものは、もっと甘いベリー。ブラックチェリーやプラムといったフルーツの風味に近くなります。
涼しい地域のカベルネからは、ミントやピーマン、シダなどの「グリーンノート」を感じることがよくありますが、温暖な地域で感じることはあまりまりません。
醸造による特徴
一部の低価格ワインを除いて、カベルネ・ソーヴィニヨンはほぼ全てオーク樽での熟成を行います。
この醸造方法によっても、カベルネ・ソーヴィニヨンの風味や味わいは影響を受けます。
分かりやすいのは新樽での熟成。
新品のオーク樽に発酵後のワインを入れて1~2年保管することで、ワインにオーク樽の風味がつくのと同時に、ワインは木目を通して酸素に触れます。
それによりワインにヴァニラやココナッツ、コーヒーやトーストのような香りが添加されます。
また、適度に酸素に触れることで、口に含んだ時の渋味が滑らかになります。渋味が強めであるカベルネ・ソーヴィニヨンを広い消費者層に飲んでもらうためには重要な工程です。
この新樽をどれだけの割合で使うか、どれくらいの熟成期間をとるかなどは、醸造家の考えやワインの価格によってかけられるコストにも左右されます。
決して「新樽を強く効かせればいい」という者ではなく、ブドウ自体の品質とバランスをとることが大事です。
カベルネ・ソーヴィニヨン 選び方のポイント
カベルネ・ソーヴィニヨンで甘口のワインがつくられることはほぼありません。全て辛口です。
ここでいう辛口とは、ブドウが持っている糖分が全てアルコールに変わって、糖の甘さがないということ。
しかし実際に「甘い」と感じるカベルネ・ソーヴィニヨンは存在します。それはオーク樽や果実の風味で「甘い」と感じているのです。
この「甘い風味」がカベルネを選ぶ1つ目のカギです。
もう一つのカギはタンニン、「渋味の強さ」です。
高価なワインほど味わいの凝縮感がありタンニンも豊富に含みますが、それを「渋い」と感じる度合いは醸造にもよります。
酸と渋味の関係
実は酸味の強いワインの方が渋味を強く感じることが分かっています。
なので同じように濃いカベルネ・ソーヴィニヨンでも、涼しいところのものはタンニンをしっかり感じて引き締まった印象を受けます。温暖な地域のものは、刺激は弱く口当たりの厚みとなって感じるので、より親しみやすい印象です。
自分の好みを探してください!
甘く感じるかどうか、渋味が強いかどうかは、どちらがいいというものではありません。
ワイン初心者ならまずは渋味の弱いものから試してみるといいでしょうが、「何十本とカベルネ飲んだことあるよ」という方なら、いつものものから大きく変えてみてもいいでしょう。
渋いけど・・・意外と飲み込んだ後がスッキリして心地よい
となるかもしれません。
もし渋すぎると感じたなら、牛肉を食べながら飲むことで中和してくれ、驚くほどまろやかに感じます。
熟成度合い
その他には、熟成度合いもポイントです。
タンニンには抗酸化作用があり、タンニンを多く含むカベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、熟成に向いています。
若いころはとげとげしかった強いタンニンが、数年、十数年と熟成することで、なめらかな口当たりとなる。旨いです。
なのである程度古いヴィンテージのものの方が美味しいことがほとんどなのですが、そもそもわざわざ何年も寝かせて販売されるワインは、もともといいお値段します。
熟成能力の高くない安いカベルネ・ソーヴィニヨンは、リリースされた順に消費されるので、古いものは手に入りません。
なので熟成度合いに関しては、「好みに応じて選ぶ」というよりは、「そりゃ熟成したものが美味しいけど、予算に応じて」だよね、という話。
カジュアルに飲みたいワインを買うのか、特別な日のためのワインを買うのかというシチュエーション次第でしょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンの名産地
世界各地のカベルネ・ソーヴィニヨンの特徴を簡単にご紹介し、おすすめの銘柄をいくつかピックアップします。
ボルドー
カベルネ・ソーヴィニヨンの原産地で、ほぼ全てのワインがメルローやカベルネ・フランなどとのブレンドでつくられるのが特徴です。
手頃なワインはメルローの比率が高いことが多く、カベルネ・ソーヴィニヨン比率の高いものは、価格も高いことが多いです。
特に1万円以上の高価格帯のものは、数年~十数年熟成させることで、若いころに感じなかった様々な風味を味わえます。
何か特別な時にぜひお試しください。
なお、ボルドーのワインに、ナパ・ヴァレーのような力強さを期待しない方がいいです。そもそも気候が違い、アルコール度数にも違いがあるのです。
地球温暖化によって近年の暑かった年などは、ナパに近いボディ感を示すこともあります。
しかし年によっては「ミディアムボディ」表記をされるほど。全体からすると、上品さを優先した細身な仕上がりです。
とくにここにご紹介するような熟成したものだと、「ガツン」という一口目のインパクトは強くありません。
5000円以下のボルドーでカベルネ・ソーヴィニヨン主体というものは多くありませんが、こちらはカベルネらしさが表れています。
カリフォルニア(ナパ・ヴァレーを除く)
当店のカベルネ・ソーヴィニヨンの品ぞろえで最も多いのがカリフォルニア産です。
やや涼しい産地もありますが、低価格帯のものは主に温暖な平野部で栽培されています。
雨季と乾季がハッキリしているため、病害が少なくブドウをしっかり完熟させることができます。
オーク樽の風味をしっかり効かせるものが多く、最も「甘く」感じるカベルネが多い産地です。
カリフォルニアらしさが手ごろにコンパクトにまとまっています。
こってり甘い風味を楽しみたいなら
カリフォルニアの中で、比較的甘い風味控えめ、上品さも感じます。
もう少ししっかりタンニンを感じるものが良ければ、「パソ・ロブレス」という産地はねらい目です。
後述するナパ・ヴァレーとは違った個性、エレガントさを備えた高級カベルネなら、これがよく売れています。
ナパ・ヴァレー
カリフォルニア内の名産地で、乾燥して昼夜の寒暖差の大きい気候が、カベルネに最適。
素晴らしく凝縮感のあるワインを生みますが、その人気ゆえにワインは高騰中。4000円以下なら「手ごろな」部類に入ります。
ナパ・カベのなかではエレガント、タンニンもしっかり
この価格帯では余韻が長い方です。
ナパ・ヴァレーで果実の甘さが飛びぬけたものなら
ナパ・ヴァレーの中でも、更に「セント・ヘレナ」など小地区に限られると、より高級です
ワシントン
カリフォルニアよりもずっと高緯度に位置するワシントン州ですが、大きな山脈の東側に産地が広がるため、乾燥して安定した気候のもとブドウが完熟します。
カリフォルニアと似通ったスタイルですが、甘さを感じるものはやや少なめな印象です。
こちらはワシントンの中ではしっかり樽の甘さを感じる方です。
チリ
手頃なワインの印象が多いチリ。カベルネ・ソーヴィニヨンは非常に重要な品種です。
一部高級なカベルネ・ソーヴィニヨンも山側の標高の高いところで作られています。
アメリカ合衆国という一大消費地に比較的近いこともあってか、そのスタイルは少し似ており、ボリューム感がしっかりあるものが多く、土っぽい風味が特徴です。
アルゼンチン
アルゼンチンでは多くのワインが標高が高い畑からつくられています。
それもあってかややエレガントなものが多いですが、日照量の多さゆえかグリーンノートを感じるものはあまりありません。
オーストラリア マーガレット・リヴァー
オーストラリアの中ではやや冷涼な産地で、ボルドーと同じ海洋性気候。
ワインの風味もボルドー的で、酸味を大事にしたワインづくりをしている生産者が多いようです。
あまり安いワインのつくられていない産地でもあります。
産地の特徴が現れた、手ごろな1本
その上級クラスがこちら
オーストラリア クナワラ
マーガレット・リヴァーと並びオーストラリアのカベルネにおいて名産地。
テラロッサと呼ばれる酸化鉄を多く含む赤い土壌のみられ、海洋性気候で酸を保ちながらブドウがよく熟します。
ボルドー的なニュアンスを感じます。
南アフリカ ステレンボッシュ
緯度が低く太陽光は強いのですが、海からの冷たい風がステレンボッシュの暑さを和らげます。
ワイン醸造においてフランスの影響が大きく、あえて日当たりの悪い斜面の畑を選ぶことで酸味のしっかりとしたワインをつくろうとする生産者もいます。
甘い果実感を感じるワインはあまりありません。
特に口当たりがフレッシュで、酸もタンニンも活き活きしています!
比べるともう少しオーク樽による落ち着いた口当たりを感じます。
南アフリカを代表するブランドのひとつ!
多様な姿を見せてくれる、カベルネ・ソーヴィニヨン
当店で特に売れ行きがいいのは、カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンです。
お好きな方も多いのでは?
カリフォルニアやナパの印象が強いと、「カベルネ・ソーヴィニヨンといえばフルボディで力強い」という印象に引っ張られるかも。
タンニンが多く、力強いワインをつくりやすい品種であることは間違いありません。
一方で酸味が高い品種でもあるので、細身でエレガントなワインをつくることもできます。
そして熟成させて飲む楽しさもある品種です。
普段からよくカベルネ・ソーヴィニヨンをお飲みになる方は、ぜひいつもと違ったタイプのものをお試しください。
それが口に合ったとしても合わなかったとしても、カベルネの違った魅力に気づくことができるでしょう。