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【11月16日解禁】2023年のボジョレー・ヌーヴォー ワイン好きがあえて飲む意味とは?

2023年9月25日

【11月16日解禁】2023年のボジョレー・ヌーヴォー ワイン好きがあえて飲む意味とは?
 
2023年もボジョレー・ヌーヴォーの季節がやってきます。今年は11月16日が解禁日。
もう何度も飲んだことがある人も、他に美味しいワインをいくらでも知っている人も、一緒に飲んでほしい理由があります。
あなたが消費する1本が、ワイン好きにとっての明るい未来にちょっとだけつながるかもしれない。
1年で最大のワインイベントをみんなで楽しむ意義をご紹介します。
 
 

「ボジョレー・ヌーヴォーは飲んだことあるけれど、そういえば詳しくは知らないぞ?」そんな方に向けて丁寧にご紹介する記事はこちら。

 

ボジョレー・ヌーヴォーを飲んで美味しく感じたワイン初心者に、次の1本をおすすめする記事はこちら

 
 

ボジョレー・ヌーヴォーは初心者の飲み物?

 
ボジョレー・ヌーヴォーは確かに初心者"も"楽しみやすい味わいです。
そして価格の割に玄人受けするような味わいは控えめです。
 
その理由はおおよそ「新酒だから」で説明できます。
 
 

COCOSで予約できるボジョレー・ヌーヴォー

 
KATAYAMA
毎年仕入れの本数が最も多いボジョレー・ヌーヴォー。平均と比べて果実味の凝縮感がやや高い傾向があります。

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KATAYAMA
ブドウの樹の樹齢が非常に高いのが、上記のワインとの違い。価格差が小さい割には、飲み比べればちゃんとこちらの方が美味しいです。個人的には断然この「サントネール」推し。

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KATAYAMA
ブドウの樹の樹齢が非常に高いのが、上記のワインとの違い。価格差が小さい割には、飲み比べればちゃんとこちらの方が美味しいです。個人的には断然この「サントネール」推し。

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KATAYAMA
なにしろ手頃な価格なのが魅力。筆者は2022年、このボジョレー・ヌーヴォーを飲みました。1人暮らしなので、500mlとちょっと小さいサイズが、個人的にピッタリなんです。他のボジョレー・ヌーヴォーに比べると、風味はよりシンプルです。

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KATAYAMA
新酒だけでなく、船便で輸入される普通のボジョレーも人気な生産者「シャトー・カンボン」。生産者としての格が一段階上なので、ワインもなかなか高価ではありますが、余韻の長さや香りの複雑性が違います。

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ボジョレー・ヌーヴォーは解禁日が決まっている

 
ボジョレー・ヌーヴォーをはじめとしたフランスの新酒は、11月の第3木曜日午前0時に解禁されると決まっています
それ以前に一般消費者に販売したり、抜栓してサービスしたりということは禁じられているのです。
 
 
破ったからといって罰金があるとかは聞いたことがありません。でも飲食店や販売店が大っぴらにやれば、おそらく翌年から供給してもらえないでしょう。
フライングしたからといって爆売れするわけでもなく、あえてやる意味はありません。
 
 

かつてはカウントダウンイベントも

 
この解禁日は世界共通ですが、「午前0時」は現地時間に準じます。
大きな消費国の中では日本が一番最初に解禁される。それが新しいもの好きの日本人に受けたのでしょう。特に1997年から2000年代半ばあたりのワインブームに乗って、ボジョレー・ヌーヴォーのイベントは大きな盛り上がりを見せました。
 
 
深夜営業しているワインバーなどでは、今でも日付が変わると同時に提供が始まります。
かつては解禁を心待ちにする人に向けたカウントダウンイベントも行われたようですが、最近ではあまり目にしません。
 
 

近年輸入量は減少傾向

 
 
昨年はウクライナ戦争の影響で運賃が高騰し、一昨年に比べて販売価格が高騰。販売量が減った年でした。それでもこれだけの数が輸入されているのです。
 
ただしその人気はピーク時に比べれば激減しています。2004年には104万ケース1200万本あまりが輸入されていたそうです。単純計算、日本人の10人に一人は飲んでいたことに。
 
 
 

空輸されるために割高である

 
ボジョレーでの収穫は、早い年で8月末、通常は9月初頭から半ばに始まります。
数週間で発酵、短い熟成を経て瓶詰。パッケージングされて出荷。消費地へ輸送されます。
 
フランスから日本へ船で輸送するのは、2か月程度かかると言われています。船で輸送したのでは解禁日に間に合いません。
ゆえにボジョレー・ヌーヴォーは航空便で輸送されます。当然その運賃は、船に比べて割高です。詳しい金額はわかりませんが、数倍と言われています。
 
 
ゆえにボジョレー・ヌーヴォーと同じ価格帯のほかのワインを比較したとき、ワインの原価が高いのは他の船便輸入のワインです。
価格で比較してボジョレー・ヌーヴォーが「それほど美味しくない」と感じるなら、正確な舌をお持ちだということです。
 
 

ボジョレー・ヌーヴォーの味わいと醸造法

 
ボジョレー・ヌーヴォーをつくる際は、つくってすぐ美味しく飲める製法をとることが法律で義務付けられています。専門用語で「マセラシオン・カルボニック」と呼びます。
 

ボジョレー・ヌーヴォーの典型的な味わい

イチゴやスモモ、クランベリーのような赤系果実の香り。バナナのような甘い風味も。口当たりは軽く、タンニンはほぼ感じません。果実味に厚みがあって酸味が低いか、シャープで上品な酸味を持つかは、そのヴィンテージの特徴をよく反映します。
 
このような味わいには、製法の影響が強く表れています。
ガメイは別に、タンニンの少ない品種ではありません。それどころか優良な畑で新酒用ではない製法でつくったものは、何十年と熟成するポテンシャルを持ちます。
 
 
ボジョレー・ヌーヴォーの軽やかで果実味中心の味わいは、新酒として美味しく飲むという目的のためと考えることもできます。
 
 
ワインに不慣れな方にとって、赤ワインの渋味は好ましく感じないことが多いでしょう。一方でフルーツのような香りのボリュームは大きいので、他のお酒との違いを感じやすいです。
ボジョレー・ヌーヴォーがワイン初心者に好まれやすい味なのは、新酒だからです。
 
 

ワイン上級者が飲んではいけない理由はない

 
ワイン初心者に好まれやすい味であることそれは決して、様々なワインを味わいつくした方が飲まない理由にはなりません
 
ボジョレー・ヌーヴォーは決して高級品ではありませんから、普段からワインを飲む人にとって高すぎる価格ではないはずです。
香りに複雑さはないので、若干飲み飽きしやすいかもしれません。しかし口当たりの軽やかさが手伝ってスルスル入る心地よさがあります。
 
純粋にあの風味が好きではない、どっしり濃いワインしか飲みたくないという方は仕方ありません。でもそうでないなら、「あんなの初心者の飲み物だ」と毛嫌いする理由はないはずです。
 
 
一方で味と価格だけでは、「あえてボジョレー・ヌーヴォーを選ぶ理由」は薄いでしょう。ワイン初心者や20年前のワイン愛好家と違って、他にも美味しいワインをたくさん知っているのですから
ゆえにワイン通がこのイベントにあえて乗っかる理由を、これから2つ提示します。
 
 

同じワインを皆で分かち合う意義

 
日本中で同じころに同じワインを飲む。生産者はそれぞれ違えど、「ボジョレー・ヌーヴォー」という赤ワインの味わいを、それぞれに楽しんでそれが話題に上る
こんな機会は他にありません
 
日本におけるワインマーケティングにおいて、ボジョレー・ヌーヴォーが最大の成功例であることは間違いないでしょう。
 
 

ワインが日本中の話題に上る日

 
日本中のお酒を飲む大人の間で、特定のワインが話題になるとき。ワインを飲もうという気分にさせるもの。
それはボジョレー・ヌーヴォーのイベントを置いてほかにありません。
そしてこれは、普段はワインを飲まない消費者をも巻き込む力をもっています
 
 
「今年のボジョレー・ヌーヴォー、もう飲んだ?」
会社の同僚とこんな会話をするお酒、ほかにないはずです。
 
比較するなら8月18日は国際ピノ・ノワールデーです。ピノ・ノワールは非常に人気の高い品種です。
だからといってこの日に意識してピノ・ノワールを飲んでいる方は多くない。もし同じ日に飲んでいたとしても、2000円の若いピノ・ノワールを飲んだ人と、30万円する熟成したピノ・ノワールを飲んだ人とでは話があうはずもありません。
 
 

身近な人と「美味しい」を共有できる

 
家族や親しい友人となら、一緒に食卓を囲んで「美味しい」を共有する機会はたくさんあるでしょう。でも頻繁にそれができる人はそう多くないはず。年に1回でも一緒にお酒を飲む人、何十人いますか?
 
例えば顔を合わせるだけの会社の同僚みたいに、親しさがそれほどではない人でも、ボジョレー・ヌーヴォーは共通の話題になります。「飲んでおいしかった~」なら言うことなしですが、「今年はおれ、イマイチだったと思う」でもいいんです。「どこで飲んだの?」といった会話の切り口になれば。
 
 
ボジョレー・ヌーヴォー解禁というイベントが、人と人との距離を縮めるきっかけになってほしい。そうであるならば、たとえこの時期だけでも「ワインを飲もう」という人口が増えていくはず。だからこの文化はこの先何十年も続いていってほしいと願います。
 
 

「お祭り」に正しく乗っかる

 
ボジョレー・ヌーヴォーは今年もブドウが収穫できたことを祝うお祭りです
 
偏見かもしれませんが、縁日の屋台のフランクフルトを見て「こんなの、業務スーパーで買ったら価格10分の1だよ」なんていうのは無粋だと思うのです。お祭りの雰囲気を含めて、その体験にお金を払いたい。
 
ボジョレー・ヌーヴォーは航空便で輸入するので確かに割高です。現地フランスで飲むならもっと安いのでしょう。でも1年に1度のイベントにまで、コスパを追求しなければいけませんか?
 
 
だからお祭りだと思って楽しみましょう。イベントのノリに正しく乗っかることをおすすめします。
 
 

皆で味わう「美味しい」がワイン人口を増やす

 
ワイン上級者もボジョレー・ヌーヴォーを楽しんでほしい理由。
それは日本全国で同じワインを飲むという体験を共有できるからです。
 
「美味しい」と感じてもあまり感じなくても、人と人とがつながり、楽しい時間を過ごす。
それを通してワインを好きなる人がちょっとずつ増えることを願うからです。
 
 

生産者に魅力的な日本市場であるために

 
もう一つは日本がワインの輸出先として魅力のある国であり続けるためにです。
ボジョレー・ヌーヴォーの販売を通して、日本向けにもっといろいろな美味しいワインを輸出してもらえるかもしれないのです。
 
 

ボジョレー・ヌーヴォーがたくさん売れるなら・・・・

 
かつてほどの勢いは失ったものの、それでも大量のワインが販売されるボジョレー・ヌーヴォーのイベント。
その需要を見た生産者はどう考えるでしょうか。
 
「あんなワインをありがたがるなんて、未熟な市場だ」とバカにするでしょうか。私はそうは考えません。
 
俺ならボジョレー・ヌーヴォーより安くてずっと美味しいワインつくれるぞ!そんなに需要があるなら、日本に売り込もう
ここまで単純ではないにせよ、日本の市場が魅力的に映るはずです。
 
 
消費国としてワイン市場が魅力的なら、そこへの販売を促進します。レアなワインの割り当て数を増やしたり、プロモーションのために来日したり、中には販売奨励金を出したりといったことです。
 
そうなれば日本で楽しめるワインはより多様に高品質になるかもしれません
 
 

世界の中での日本市場

 
「高く買ってくれる」という方向では、他の先進国に比べて日本が魅力的であるはずはありません。それは近年の為替の弱さや、日本人の平均給与が伸びてないことから、どうしようもないことです。
 
日本人がワインを飲む量は、平均して1年に約4本。欧米諸国に比べて非常に少ない数です。この量を「日本はマーケットが小さい」と捉えられるか、「もっとワイン消費が増えるかもしれない」と見込むか。
ボジョレー・ヌーヴォーのイベントを初心者も含め多くの人が楽しんでいたら。「今後は消費が伸びる余地も十分ある」と考えるのでは
 
 
札束の殴り合いで高級ワインを奪い合っては、中国に勝てるわけがないのです。でも単純に価格だけで売り先を決める生産者ばかりではない。
「日本の人に自分がつくるワインを飲んでもらいたい」そう思ってもらえるなら最高です。
 
 

あなたの消費する1本の意味は・・・

 
ボジョレー・ヌーヴォーが盛り上がれば、生産者にとって魅力的な市場になるから、他のワインをもっと楽しめる。
あくまで筆者の推論です。証明もできなければ全否定もできない、「どうとでもいえる」類のものです。
 
しかしこれは間違いない。あなたが選んで買うワインの1本1本の集合体が市場であり、多くの生産者は市場を見てワインをつくります。(中にはつくりたいものをつくる道楽的な人もいますが)
だからあなたがどのワインを飲むかは、未来をごくわずかに変えます
 
 
評価の高いごく一部のレアワインに飛びつく市場と、マーケティングの成果として新酒を楽しむイベントが何十年間も盛り上がる市場。どちらが生産者にとって魅力的でしょうか。
 
1本のワインを選ぶ判断材料に、日本のワイン市場の未来という要素が入るときがあってもいいでしょう
 
 

このイベントの未来にご協力を

 
ワインで生計を立てるプロの一人として。ボジョレー・ヌーヴォーのイベントは大切にしていきたいと心から思っています。
それは日本中がワインに関心をもって「美味しい」を共有できる、唯一無二の機会だから
そしてこのイベントが盛り上がりを見せる先には、ワイン市場のちょっとだけ明るい未来があると考えるからです。
 
私の力だけでは大したことはできません。だからワインを愛する皆様の協力が必要です。
どこで買ってもいいです。1本・1杯だけでもいいです。
ボジョレー・ヌーヴォーを飲んで、それを話題としてほしい。できれば普段ワインを飲まない身近な方と。
 
 
欲を言うなら予約しての購入をおすすめします。なぜなら解禁日までの予約数は酒販店にとってはとても重要。翌年の仕入れ数を考える上で重要な判断材料だからです。「もっとたくさん売れたかも」と酒販店に思わせたら、翌年のボジョレー・ヌーヴォーはもっと盛り上がるかもしれません。
 
今年のボジョレー・ヌーヴォーは、単なる「好き・嫌い」「コスパいい・悪い」ではなく、もっと深い理由をもって味わってみませんか?
 
 

COCOSで予約できるボジョレー・ヌーヴォー

 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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