品種のお話

【品種のおはなし】シャルドネとは 白ワインの特徴と選び方のポイント 【ソムリエが解説】

2019年4月5日

【品種のおはなし】シャルドネとは 白ワインの特徴と選び方のポイント 【ソムリエが解説】
 
ワインを飲まない方でも「シャルドネ」の名前は聞いたことがあるはず。
白ワイン用のブドウの中で最もメジャーなシャルドネ。
その特徴は産地や醸造法によって変幻自在なところにあります。
白ワインを飲むならまずは知っておきたいシャルドネの基本をわかりやすいく解説します。
 
 

有名でも「最も多いブドウ」ではない

 
シャルドネはおそらくワイン用のブドウ品種として日本ではもっとも有名ではないでしょうか。
ワイン以外にもハイチュウのようなお菓子やチューハイなどなど、シャルドネの果汁はワインにする以外にもいろいろ活躍しています。
「シャルドネ」という響きや、「Chardonnay」というつづりの美しさもそれと無関係ではないでしょう。
 
「白ブドウ」というくくりなら、さすがに「シャインマスカット」をはじめとしたマスカット系には譲るでしょう。
しかしスーパーに並んでいるわけではないワイン用ブドウであるにもかかわらず、多くの方が耳にしたことがあるはずです。
 
 

よく見かける「マスカット」とは何が違う?

そのまま食べる生食用ブドウとしてなら、シャルドネよりマスカットの方が絶対優れています。
 
シャルドネのブドウの粒は、季節になるとスーパーで見かけるデラウェアくらい小さいです。この粒の小ささが、ワインにしたときは風味の強さにつながるのですが、そのまま食べるなら大きい方が食べやすい。
ブドウ自体の香りも、マスカットが「麝香(じゃこう)」という独特な香りを持つのに対し、シャルドネは割と特徴のない甘い香り。
 
 
甘味はシャルドネの方が強いかもしれませんが、それも栽培環境などによって異なる程度です。
 
味わいで大きな違いは、シャルドネの方が酸味が高い。ブドウとして食べた時「酸っぱい」と感じるほどの差ではありませんが、これがワインにしたときに非常に重要です。
 
 

実はありふれたブドウかも

「あまり目にする機会がないから、シャルドネって高級ブドウなんじゃ・・・」
そう考えても無理はありません。
 
実は全くそうではない。
低価格なお菓子に使われているのは、輸入果汁が簡単に手に入るからです。
 
 
日本にはチリをはじめとしたワイン生産国から膨大な量のブドウ果汁が輸入されています。
それらは主として、スーパーで売られているような大手メーカーの廉価なパックワインなどの原料となります。
 
チリで4番目に多く栽培されているブドウはシャルドネ。
当然白ワイン用に安いシャルドネ果汁が大量に輸入されているので、実は果汁を得ること自体は難しくないと推測できます。
 
 

シャルドネは世界一、ではない

そんなシャルドネですが、別に世界一広く栽培されているわけではありません
それどころか白ブドウでNo.1でもありません。
 
少し古い2015年のデータになりますが、白ブドウとして1番多い品種はアイレン。
ほとんどの方が聞いたことのない品種でしょう。
 
生産量の大半を占めるのはスペイン。
ほとんどが国内消費用の廉価なワインとなったり、フランスに果汁で輸出されて安いスパークリングワインの原料になります。
 
1000円以下のフランスのスパークリングワインを見かけたら、品種に注目してみてください。
フランスでほぼ栽培されていないはずの「アイレン」の文字をよく見かけるはずです。
 

世界最多はカベルネ・ソーヴィニヨン

そのアイレンも最多のブドウというわけではなく、世界一の栽培面積を誇るのは、これまたよく聞くカベルネ・ソーヴィニヨン
シャルドネは順位でいうと5番にすぎないのです。
 
しかしながら、「最も広く栽培されているブドウ」とは言えそう。
ジャンシス・ロビンソン著の『The Grapes』にも「widely planted inteernational white variety」と紹介されています。
それは後述するシャルドネという品種の特徴に関係します。
 
 

シャルドネのルーツはブルゴーニュ地方

 
シャルドネのルーツ、起源はその最大生産国でもあるフランスです。
故郷と考えられているのは、ソーヌ=エ=ロワールという地域。
現在の区分でいうとブルゴーニュとシャンパーニュ地方の間、ややブルゴーニュ寄りのあたり。
 

シャルドネの語源

初めて文献に登場したのは、17世紀終わりごろの「Chardonnet」という記述。
しかしながら、「Chardonnay」という名前は、フランス、ブルゴーニュ地方の南部、マコネー地区にある「Chardonnay村」からとられたと言われています。
 
いずれにせよ、シャルドネが有名なブドウとなったのは19世紀になってから。
それまでは、「ピノ・ブラン」という突然変異によって皮が白くなったピノ・ノワールと混同されていたといいます。
 
シャルドネを遺伝子解析したところ、ピノ系のブドウとグーエ・ブランというブドウの交配により生まれたと判明したそうです。
親には似ているもの。混同されていたのも無理はありません。
 
 

シャルドネの主な生産国

 
OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)の2015年のデータによると、シャルドネの国別栽培面積は下記の通り。
 
国名
栽培面積(ha)
1位
フランス
50,623
2位 
アメリカ
42,912
3位
オーストラリア
21,442
4位
イタリア
20,056
5位
チリ
11,698
シャルドネの故郷であるフランスがトップなのは納得。
その他の国はブドウ栽培面積自体が上位の国々です。
 
つまりたくさんワインをつくっている国は、ほぼ必ずシャルドネをたくさん作っているということ。
シャルドネがいかに多くの人に愛されているかが分かります。
 
 

シャルドネというブドウの特徴

 
多くの書籍で「シャルドネの風味はニュートラル」という表現を見かけます。
「この香りがしたらシャルドネ」と言えるような際立ったものがない。
つまり特徴がないことが特徴、と言えます。
 
その代わりに、土壌や気候などの栽培条件、そして醸造方法を如実に反映します。
どこでどんな風に育ったシャルドネというブドウが、どのようにワインになったか。
シャルドネはほとんど辛口ワインに仕上げられるので、甘辛の違いはあまりありません。それでも大きく味わいが異なるということです。
 
そういう意味で非常に面白い品種と言えるでしょう。
「ライトボディ」と表現したくなるスッキリ風味のものから、「フルボディ」と表記される高アルコールでどっしりとしたものも、どれもシャルドネ。
シャルドネはだいたいどのような環境でも、手間暇をかければそこそこの品質のものができます。
世界中のシャルドネを飲み比べる、というのも楽しいでしょう。
 
 

シャルドネ選びのポイント

そうはいっても「シャルドネにはいろいろあるよ」だけだと飲むワインを選びようがない。
まずは次の2つをポイントに選んでみましょう。(予算は抜きにして)
 
オークの新樽使用の有無
栽培地の気候、特に気温
 
 

オーク樽熟成でシャルドネは変わる

 
白ブドウは収穫後ブドウを潰して絞って果汁を得たら、ステンレスタンクやオーク樽で発酵・熟成させます。
大きなステンレスタンクで発酵させてから、オーク樽で熟成させることもあります。
 

樽熟成で風味が変わる

このオーク樽熟成によってシャルドネの風味は大きく変わります。
特に2年目、3年目の古樽ではなく、新樽を使った際には大きく風味が変ります。
 
味わいがリッチになり風味は複雑になります
多くの樽熟成シャルドネは、バニラやバター、オークの香りを感じるようになります。
(詳しくは樽熟成に関する記事をご覧ください)
 
個々の風味は実際に飲んで感じないとピンとこないでしょう。
イメージで説明するなら、シャルドネはオーク樽熟成を経て、高級ワインの風格を得るのです。
味や風味の広がり、スケール感が増すイメージ。
 
実際、市価3000円以上のシャルドネで、オーク樽熟成していないものは5%もないでしょう。
 
当店でもオーク樽熟成のシャルドネは大人気です。
一口飲んだ時、「なんかいいワインを飲んでいる感」がするのです。
 

樽きかせればいい、わけではない

一方で、樽を効かせればいいというものではありません。
オーク樽の風味が支配的になると、どれも似たような味わいに感じてしまうのです。
生産地の特徴が感じられません。
 
また強すぎる樽の風味は食事の邪魔をすることが多々あります。
 
故に近年のトレンドは、熟成にあえて古樽を用いたり、オーク樽のサイズを多くして風味がつきすぎないように工夫するところにあります。
 
 

栽培地の気候は概ね冷涼なほどいい

 
シャルドネの故郷であるブルゴーニュは、非常に冷涼な産地です。
なのでシャルドネは暑いのがあまり得意ではありません
 
なぜなら温暖な気候だと酸味の低いブドウになってしまうからです。
スケール感を求めない手ごろなワインなら、酸が低いのは親しみ易さにつながるので悪くはありません。
しかしそれでは高級酒にはなりえない。
 

冷涼な地区を求めて

なので温暖な産地、例えばカリフォルニアや南アフリカなど。(※両産地とも冷涼な地区もあるので一括りにはしにくいのですが)
そこでレベルの高いシャルドネにトライする生産者は、標高の高いところに畑を拓いたり、収穫を早くするなどの工夫をこらして酸を残そうとしています。
マロラクティック発酵を行わないというのも選択肢のひとつです。
 
 

冷涼地域のデメリット

一方で冷涼産地であることのデメリットももちろんあります。
その最大のものが霜害(そうがい)です。
 
 
春、徐々に暖かくなりブドウの芽が出始めたあとに、急に氷点下に冷え込み霜が降りると、新芽が死んでしまいます。
もし霜にやられてしまうと、ブドウは次の芽を出しますので、収穫が0になるという訳ではありません。
しかし収穫量は激減しますし品質も落ちます
 
また、最大の産地ブルゴーニュはたびたび雹害(ひょうがい)にも見舞われます。
夏の時期に雹にやられると、収穫量は取り返せません。
雹により50%減、80%減という話もたびたび聞きます。
 
 
一般に冷涼産地ほど収穫が安定しないといっていいでしょう。
 
 
 
 

シャルドネを知るにあたり飲むべきワイン

 
地域や製法に留意しながら飲むことで、シャルドネを知るのにおすすめのワインをご紹介していきます。
 

シャブリ / ドメーヌ フルニヨン エ フィス

 
■冷涼産地 ■オーク樽不使用
 
Chablisシャブリとは、フランス、ブルゴーニュ地方北部にあるシャルドネの銘醸地。
その名前があまりに有名であるため、その昔アメリカでは辛口の白ワインを「シャブリタイプのワイン」と表記して販売していたんだとか。
シャブリの生産者や消費者からしたら迷惑な話。それが原産地呼称保護制度の導入につながったと言います。
 
樽を使っていないシャルドネの特徴として、白い花や青りんごの香りが挙げられますが、このワインにはそれが忠実に現れています。
 
 

ペルナン ヴェルジュレス ブラン レ クルー / ドメーヌ ロラン ペール エ フィス

 
■冷涼産地 ■フレンチオーク使用(新樽比率15%)
 
ブルゴーニュ全体、いや世界的な流れとして「オーク樽の風味を抑えて、ブドウが本来持つその土地の味わいを強調しよう」というものがあります。
一方で前提知識なしに飲んだ時に、価格説得力がある、つまり高そうな味がするのは樽の効いたものだったりします。
 
このブルゴーニュワインは、その少なくなりつつある樽リッチなシャルドネ。
冷涼産地なので豊かな酸味があり、次に紹介するものと同様フレンチオーク熟成でありながら、ヴァニラの甘い風味は控えめです。
 
 

ジラード シャルドネ ロシアン リヴァー ヴァレー

 
■やや温暖産地 ■フレンチオーク使用(新樽比率35%)
 
カリフォルニア、ソノマコースト内のロシアン・リヴァー・ヴァレーは比較的冷涼な産地、
ただそれはカリフォルニアでは、という話。
ブルゴーニュに比べたならずっと温暖です。特に味わいやアルコール度数にそれが現れています。
 
その違いはジューシーな果実感となって現れます。
洋ナシなどの熟した果実の風味がその特徴です。
 
 

マイケル デイビッド シャルドネ 

■温暖産地 ■フレンチオーク使用(新樽比率100%)
 
近年は減少傾向にある新樽比率100%のシャルドネ
輸入元提供のテイスティングコメントには、「青りんごや軽やかな柑橘系」とあります。
しかし私にはもっと熟したマンゴーやパイナップルのようなアロマに感じました。
 
 

ラステンバーグ ステレンボッシュ シャルドネ

 
■やや温暖産地 ■フレンチオーク使用(新樽40%)
 
ジラードのシャルドネと同じくフレンチオークの一部新樽で熟成です。
しかしこの2つは多きく風味が違います。
 
樽熟成からくるカチッとした印象は共通してあるのですが、ステンバーグのものはバニラやバターの風味はほとんどないのです。
 
これは南アフリカがターゲットとするマーケットの嗜好によるものと推測します。
 
南アフリカの大きな輸出先は、旧宗主国であるイギリスです。
そしてイギリスの市場は、近年急速に変わってきていると言います。
樽の風味が出すぎていない、酸のしっかりとしたタイプです。
 
もちろん南アフリカにもカリフォルニアのようなシャルドネも見つけることはできます。
しかし近頃評判が高いのは、ラステンバーグのようなスタイルです。
 
 

フォルティウス シャルドネ フェルメンタード エン バリーカ / ボデガス バルカルロス

■やや温暖産地 ■フレンチオーク使用(新樽比率不明)
 
アメリカンオーク100%で熟成されたシャルドネというのは、実はあまり見かけません。
希少品であることはなく、むしろフレンチオークの方が高価。恐らくフレンチオークの方が高級品とされるのが関係しているのでしょう。
 
違いとしてはヴァニラやココナッツの甘い香りがより強く現れること。
樽から抽出されるタンニンはフレンチオークより少な目なので、柔らかい印象になりやすいです。
 
 

まとめ

 
主要生産国のシャルドネをとても大雑把にまとめるなら、ブルゴーニュとカリフォルニアの温暖産地が対極
酸が強くエレガントなスタイルと、バニラの甘い香りが全面に出たリッチなスタイル。
その間にオーストラリアやニュージーランドなどがある。
南アフリカはややブルゴーニュ寄りで、チリはカリフォルニア寄り
 
もちろん生産者ごとの違いはあるので、乱暴な分類かもしれませんが、私はこのようにとらえています。
 
最後にこれらの地域で試していただきたいシャルドネをご紹介します。
味わいから冷涼な産地だと感じる順に並べております。(実際の数値とは異なるかもしれません)
 

オーストラリア/マーガレットリヴァー産のハイレベルなシャルドネ

ニュージーランドのオークランド産。ブルゴーニュ的なつくり

オーストラリア/ヤラ・ヴァレー産。樽熟成によるクリーミーさが見事!

イタリア/ピエモンテ産。樽熟成とステンレスタンク熟成が半分ずつ。

南アフリカ/ロバートソン産。新樽100%熟成のリッチさ。

 
 
 
白ワインの中でシャルドネの人気は圧倒的です。
正確なデータは出せておりませんが、当店の白ワインの売り上げの中でシャルドネが占める割合はおよそ2/3。
白ワインを飲むならシャルドネから」と言っても言い過ぎではないでしょう。
 
一方で「シャルドネは好きじゃない」という方も一定数おられます。
口に合わないからと言って「私はワインの味がわからない」なんて思う必要は全くありません。
白ブドウ品種は何百種もあるのに、シャルドネだけ飲むのはもったいない。
いろいろなものを試してみましょう。
 





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