少ない予算でワインを選び満足するには、自分の好みとワインの強みをマッチさせるのが大事!あなたがピノ・ノワールに何を期待するかで選べば、少々の欠点は気になりません。多くの人が魅力に感じる6つのポイントに注目し、3000円以下のおすすめワインをご紹介します。「安いから仕方ないね」ではない気分が上がる1本で、ご機嫌な晩酌を楽しみましょう。
昨年からずいぶん値上がりしちゃいました
こちらの記事は同様のテーマで昨年もご紹介しました。
しかし2024年も値上げの波はすさまじく、続々と3000円のボーダーを超えていってしまいました。
キュベ リカ ピノ ノワール / ロングリッジ ⇒3000円台前半
ブルゴーニュ ルージュ / リュシアン ミュザール ⇒4000円台になるので取り扱い休止
マルティン ヴァスマー シュペートブルグンダー ⇒3000円台前半
シャノン エルギン ピノ ノワール 2000円台前半⇒後半
アルタ マリア ピノ ノワール ⇒3000円台前半
ジャンニテッサーリ ピノ ノワール ⇒2000円台前半のまま
ヴァヴァサワー マールボロ ピノ ノワール ⇒2000円台前半のまま
ディストリクト 7 ピノ ノワール ⇒2000円台後半のまま
(2024年10月時点)
昨年「3000円以下で安くて美味しい」と言っていた銘柄8本のうち、変わらず2000円台なものはわずかに4本!
これらは値上がりしたとはいえ価値のあるワインです。しかしどうせならとラインナップを一新してご紹介します
あなたはピノ・ノワールのどこが好きですか?
ピノ・ノワールは非常に人気の高い品種。多くのワイン好きが好みの一番目に挙げます。
理由は「美味しいと感じた経験のある赤ワインを思い出せば、ピノ・ノワールが多かった」でしょう。ではその美味しいと感じた理由はなにか。突き詰めれば「人による」となるのですが、大まかには次の6つに分類できるでしょう。
香りのボリューム
香りの複雑さ
洗練された香り
軽快な味わい
なめらかな口当たり
上品な酸味
加えて「穏やかな渋味」も大きな理由でしょう。ただ3000円以下では全てのピノ・ノワールがタンニン穏やかです。なので項目からは外しました。
期待するポイントで選ぶピノ・ノワール8選
3000円以下で完璧なピノ・ノワールなど望めません。価格によって味が大きく変わる品種だからです。
でも限られた予算で満足する方法はあります。あなたがピノ・ノワールの好きなところ。そのポイントをなるべく多く備える銘柄を選べばいいのです。
逆にあなたが重視しない味わいがイマイチでも、それほど満足度は下がらないでしょう。
各ワインにこのピノ・ノワールが持つ魅力のポイントを記載しておりますので、参考にしてください。
ドメーヌものブルピノがこの価格なら万歳しかない!
洗練された香り
軽快な味わい
上品な酸味
「ブルゴーニュ」といってもマコン地区のものなのでワインは比較的手ごろ。それでも購入ブドウでつくる大手のワインではない、ドメーヌもので3000円以下はそうそうありません。決して厳格さや高級感はありませんが、それでもやっぱりブルゴーニュ。前に出すぎないフルーツ感の奥ゆかしさとエレガンスを堪能できます。
南フランスでブルゴーニュの味わいに寄せて
香りのボリューム
軽快な味わい
上品な酸味
南仏の手頃なブドウでブルゴーニュのエレガンスを。そのために75%はステンレスタンク熟成、半分はマロラクティック発酵をしていません。ブドウの酸味をなるべくキープし、フレッシュな風味に仕上げるためです。「まるでブルゴーニュ」とまでは申しませんが、価格に対して十分満足できる上品さがあります。
「濃いワインが苦手だからピノ」という方にピッタリ
香りの複雑さ
軽快な味わい
なめらかな口当たり
このワインの産地はブルゴーニュとロワール地方の間。地方をまたがるので産地を名乗れませんが、冷涼産地であることは間違いありません。少し「陰気」な雰囲気を漂わせるこちらは決してワイン初心者には勧めません。いろいろ飲み比べるのが好きな方にこそ、「こんな風味もあるんだ!」と喜んでもらえるはず。
きっと来年の今頃は・・・涙
香りのボリューム
香りの複雑さ
なめらかな口当たり
上品な酸味
このワインは価格に見合わぬ香りの複雑さを持ちます。フルーツだけでなく奥行きを感じるアロマは、ワンランク上を想像するでしょう。原稿執筆時に3000円以下ギリギリ・・・。輸入元さんも頑張ってくれてはいますが、2025年度版では範囲外に旅立ってしまうかも?
「品種ラインナップの一つ」とは違います!
香りのボリューム
香りの複雑さ
なめらかな口当たり
チリは品種名表記ワインの一大産地なので、ピノ・ノワールが「いろいろ栽培している品種の一つ」にすぎない生産者が多いです。クロ・デ・フは違います。ブルゴーニュ品種に特化し、土地の個性を表現するワインづくり。その哲学でつくられるワインが、ありがたいことにチリワイン価格なだけ!
この地域では味も価格もフレンドリー
香りのボリューム
香りの複雑さ
なめらかな口当たり
オレゴン産のピノ・ノワールは基本高価で、5000円なんて安い方。ただしほぼカリフォルニアのこの地域は別で、まだマイナーな地域だからこそこの価格で楽しめます。内陸部ゆえある程度暖かいのか、よく熟したフルーツ感を持ちフレンドリーな味わい。オレゴンらしさとは違いますが、好きな人は多いでしょう。
食事の後に楽しみたい充実感
香りのボリューム
香りの複雑さ
なめらかな口当たり
ほどよく樽の効いたこのピノ・ノワールは、渋味はほぼないながらも舌の上に乗る味わいに厚みあり。酸味が穏やかなこともあり、「ダイニングテーブルで食事と一緒に」というよりは「食後にソファーでゆっくりと」なイメージ。映画やドラマを観るお供にピッタリの、時間をかけて楽しみたいタイプです。
少量で満足したいときの飲みごたえ
香りのボリューム
香りの複雑さ
なめらかな口当たり
先ほどの「ライダー」よりもう一段階リッチで厚みのあるピノ・ノワール。この価格帯にして「濃厚」という言葉が当てはまりそうなものはなかなかない!ゆえに「今日はお酒を控えめにしよう」という日にいいかもしれません。ただピノ・ノワールに上品さを求める人にとっては、「ならピノ・ノワールじゃなくてもいい」となるかも。
ピノ・ノワールは高価な赤ワイン!?
ピノ・ノワールのブドウを育てること自体が、他のブドウに比べて明確にコストがかかるという理由はありません。比較的病気には弱い品種ではありますし、多収量品種というわけではありませんが、だからといってそれがブドウ価格に影響するのはわずかです。
生産者が多くの品種からワインをつくる場合、ピノ・ノワールも他の品種と同じ価格であることが多いです。
一方で「ピノ・ノワールを好きでいるのはお金がかかる」という人もいます。
それは安いピノ・ノワールにイマイチに感じるものが多いからです。
ワインを安くつくるには
手ごろで高品質なワインは、大量生産によるスケールメリットによって実現しています。大量に安価なブドウを確保しようと考えるなら、次のような地域を選ぶと有利です。
- 広い畑を確保できる安い土地
- 安い人件費
- 機械作業がしやすい平地の畑
- 雨が少なく、特に生育期に降らない気候
- ブドウがよく熟す温暖な気候
たくさんブドウを得るために、1本の木、単位面積あたりに実るブドウの量は減らしたくない。なるべく収量制限はしたくないのですが、そうするとブドウへの栄養が分散して熟しにくくなります。だからそのブドウに適した気候の範囲内で、温暖な畑の方がワインをつくりやすいのです。
例えばカリフォルニアやチリ。冷涼な沿岸部よりも温暖な内陸部の方が、手ごろなワインを大量生産している産地です。(どちらも「セントラル・ヴァレー」と呼ばれます)
ピノ・ノワールは大量生産に向かない
ピノ・ノワールは早熟な品種です。「早熟」というのは、低い積算温度で糖度が十分に上がるということ。同じ環境でもカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどに比べ早くブドウ糖度が上がるのです。
一見良く思えますがそうではありません。風味の成熟が追いつかないのです。ブドウの収穫は開花から100日後と言われます。その標準よりあまりに早く糖度が上がってしまうと、色味や香り・渋みの乏しいアルコール感が強すぎるワインになってしまいます。かといって風味の成熟を待つと、アルコールが高すぎて酸味のない厚ぼったいワインが出来上がります。
冷涼なブルゴーニュ生まれのピノ・ノワール。その豊かな香りは、冷涼な気候のもとじっくり時間をかけて成熟してこそのものです。他の品種よりも大量生産には向かないのです。
ゆえに手頃な価格のピノ・ノワールは、何かしら物足りない点を感じるものが極めて多い。風味に乏しく感じたり、味わいのバランスが悪かったり、フルーティーなだけでピノ・ノワールの特徴を備えなかったり。特に5000円、1万円の高級品をある程度飲みなれている方にとっては、満足できるものを見つけるのは非常に難しいです。
完璧ではないがいいところもある
3,000円以下のピノ・ノワールがないかというと、そんなことはありません。当店では2024年10月現在73種類ほども扱っていますし、楽天市場などに流通するのはそれこそ数えきれないほど。
しかしそのほとんどは、「ピノ・ノワール好き」を自称する人からすると、どこか不満の残るものであることでしょう。
「安くて美味しい」が難しいピノ・ノワール。手ごろなものの味わいは、決して完璧ではありません。「凝縮感が低い」「口当たりがとげとげしい」「余韻が短い」悪いところを探せば見つかります。
それでもそのピノ・ノワールは選ばれたものです。無数につくられるものの中から、まずは輸入元のバイヤーさんが「これは日本で売れる」と判断して仕入れる。それを我々COCOSのバイヤーが「これはお客様にも納得してもらえる」と考え扱っているのです。
先に挙げた愛好家がピノ・ノワールを好きになるポイント。そのうちどれか一つはいいところがある。だから取り扱っておすすめしているのです。
ワインの香りや味わいの中で、ワインの良し悪しを判断するにあたり重視するポイントは人それぞれです。香り豊かなワインを好む人、口当たりのなめらかさを大事にする人、酸味の質に注目する人、様々です。だからそのワインの魅力に感じるポイントが、自分にとって譲れないポイントと一致するワインを選ぶといい。そうすることで、妥協できるポイントでは妥協して、低い予算で高い満足を得ることができます。
手ごろな価格なりに持つストロングポイントに注目して、自分好みのピノ・ノワールを選んでみましょう
ピノ・ノワールならではの充実した晩酌を
上記のようにピノ・ノワールは安くて美味しいワインには向かない品種。どの生産者も価格と品質のバランスポイントを見つけるべく相違工夫しています。
だからこそ面白い。銘柄によって大いに違いが出るからです。悪い言い方をすればアタリとハズレがあります。
加えて言うと自身のピノ・ノワールの好みを、普通はそう正確に言語化できません。何本も飲んでいくうちに、「自分の好みはこんな傾向かな・・・」と分かってくるものです。
ゆえにピノ・ノワールは、「いろいろなワインを飲むのが楽しい」人に向いています。価格の割に抜群に美味しいワインに出会っても、それほどリピートせずに「もっとほかに」と考える。
そんな違いを楽しむ方の晩酌を、当てずっぽうではない狙いを持って選ぶピノ・ノワールが、よりご機嫌なものにしてくれることでしょう。