樽熟成してリッチなシャルドネは大人気ですが、シャルドネだけが樽リッチワインではありません。
それぞれ特徴香を持った品種を樽熟成すれば、違った特徴を持つ複雑でボリューミーな白ワインができます。
樽シャルドネばかりだと似たようなワインになりがち。違ったキャラクターのワインは晩酌を楽しくします。
シャルドネとの違いに注目しながら、樽香が豊かに香る白ワインのおすすめをご紹介します。
樽熟成したシャルドネが人気な理由
当店が取り扱う白ワインの種類数において、シャルドネは4~5割を占めます。これだけ偏らせて品揃えしているのは、シャルドネが人気でよく売れるからです。特に樽熟成して風味豊か、口当たりもリッチな味わいのものがよく売れています。同じワインを5本6本と購入されるお客様も少なくありません。
その理由を次の2つだと私は分析します。
樽リッチシャルドネが人気な理由
同価格帯の他品種に比べ香りが派手で豪華だから、高級感と満足感がある
初めて見るワインでも味わいが想像しやすいから安心して買える
当店一番人気の樽シャルドネ
シャルドネの中ではカリフォルニア産が特に人気。その中でも圧倒的No.1はこちらです。
その名称の通りパンやバターのような濃密な香り。クレームブリュレのような甘く香ばしい香りも感じます。口に含んでも香りどおりのリッチな味わいは健在。酸味は低くないのですが、ともかく樽と果実の味が強いので控えめに感じます。「やや甘口」と表記したくなるような甘やかな風味と飲みごたえが人気の理由でしょう。
ワインの専門誌が評価をするなら、「樽香が強すぎてバランスが悪い」と判断されるでしょう。しかしこの味を好きと感じる一般消費者が多いのは事実。Amazonのページなどにはかなり多くの高評価が寄せられ、SNSでもよく目にするワインです。
口コミを見ると「濃厚な樽の風味が唯一無二」「しっかりした味」「バターのような滑らかさ」などを気に入った方が多いようです。
このワインに限らず、樽熟成したシャルドネは人気です。
樽熟成で白ワインはどう変わる?
白ワインをオーク樽熟成することによって、ヴァニラやココナッツ、トーストやクローヴなどの香りがつきます。
白ワインが本来持つフルーツなどの香りに樽香が混ざり合うことによって、リッチでいろいろな香りのする高級そうなワインになるのです。
また、オーク樽からは微量のタンニン、渋味のもとも溶け出します。それがワインに味わいの骨格を与えます。
木材は僅かに空気を通しますので、樽熟成中にワインはゆるやかに酸化します。それが厚みのある滑らかな口当たりを生みます。
樽熟成によって、ワインは複雑な香りとボリューム感を得るのです。
なぜ「樽リッチワイン」といえばシャルドネ?
シャルドネは「ニュートラルな品種」と言われます。「この品種といえば〇〇の香り」みたいな特徴香が弱く、土地や醸造法の影響がワインに現れやすいのです。品種の特徴香が弱いため樽香と調和しやすいのです。
例えばゲヴュルツトラミネールという品種を樽熟成することはほとんどありません。ライチやバラのような華やかな品種の特徴香を、樽熟成は邪魔してしまうからです。こういうことはニュートラルなシャルドネにはありません。
加えてシャルドネはかなり幅広い環境に適応します。だから世界中で樽熟成したシャルドネ、いわゆる「樽ドネ」がつくられています。とある生産者が冗談交じりに「シャルドネは雑草だからね~」と言っておりましたが、それくらいどこでもつくれるのです。しかも手をかければある程度の品質のものが出来上がります。
純粋にワインの種類が多いのも、「樽熟ワインといえばシャルドネ」というイメージづくりに一役かっているでしょう。
「同じようなワイン」になってしまうのがメリットでありデメリット
シャルドネの果実味の強さや酸味とのバランスは、気候や生産者の目指す味で決まります。樽の風味を強く効かせてつくるなら、同じくらいの価格帯で似た気候帯のシャルドネは似たような風味に仕上がりがちです。
特に低価格帯。高価格帯ならブドウの質が高く、樽香を超えて個性的な風味を主張するかもしれません。しかし低価格帯ではそれほどのブドウの質は望めない。
結果として、慣れてくるとシャルドネは「飲まなくても90%くらい味が想像できるワイン」となります。
それを「期待通りの味だから安心して買える」とポジティブに捉えることもできます。
「残り10%の意外性が面白いんだよ」という楽しみ方もあります。
一方で「いろいろ飲みたいのに、同じような味でつまらない」と感じる方もいるでしょう。
樽ドネの甘く香ばしい香りと飲みごたえのある味わいは好き。でももっといろいろ飲みたい。
そんな方にこそ、シャルドネ以外の樽リッチワインをご提案します。
シャルドネ以外の樽熟成した白ワイン
これからご紹介するシャルドネ以外の樽リッチワインは、それぞれの品種の個性が樽熟成の特徴と融合しています。
樽ドネと比べて安くて美味しいとは申しません。しかし明確な違いは感じていただけるはず。そのうえで複雑な香ばしい風味と飲みごたえのある味わいは共通しています。
ピッタリあなたの好みにハマるかは、飲んでいただかないとわかりません。でも全く嫌いということはおそらくありません。樽熟成という共通点があるのですから。その上で違いを感じる、比べて楽しいワインとなるはずです。
ソーヴィニヨン・ブランの樽リッチワイン
「ソーヴィニヨン・ブランといえばニュージーランド」のイメージがある方には以外かもしれませんが、この品種の樽熟成は珍しくありません。その代表がボルドーブランです。
特に5000円を超えるような高級ソーヴィニヨン・ブランは、新樽も使った樽熟成をして10年を超えて熟成していく味につくられます。フレッシュなフルーツ香は控えめである替わりに、樽香やスパイス感とボディが豊かです。
高級品では珍しくありませんが、低価格帯は基本的にステンレスタンク醸造のスッキリ系です。なのでこのワインは例外的。
90%ブレンドしているソーヴィニヨン・ブランは100%新樽熟成。その樽香に負けないように、ブドウはかなり遅摘みしていると思われます。香りにはしっかり木材の風味は感じますが、樽ドネのような甘いニュアンスは控えめ。スペック的にはこの価格が信じられないワインですが、若干のバランスの悪さは感じます。このワインを気に入れば、間違いなく樽好き認定です。
それと比べるとこのサブスタンスは、樽香は強いものの果実とのバランスがとれています。そこは値段だけのことはあります。
樽ドネと大きく違うところは、ソーヴィニヨン・ブランらしいグレープフルーツのような果実味と酸味の高さ。シャルドネに比べて暖かい地域での栽培や遅摘みによっても酸味が落ちにくい傾向があります。かといって酸味が目立つわけではなく、ボリュームのある味わいをしっかり支えているイメージです。
シュナン・ブランの樽リッチワイン
シュナン・ブランも品種の香りはそう強くはなく、酸味が高く保たれる品種です。ステンレスタンク醸造がメインではありますが、中には樽熟成してリッチに仕上げられるものもあります。
このブラハムは、半分はステンレスタンク、半分をフレンチオークで醸造。新樽比率については記載がありませんが、確かに樽の風味とリッチな口当たりを感じます。
樽熟成していない、ステンレスタンク醸造のシュナン・ブランもリリースしているので、それと比べてみるのも面白いでしょう。
ヴェルディッキオの樽リッチワイン
ヴェルディッキオはイタリア、マルケ州の地ブドウ。「柑橘やリンゴ、アーモンド」などと風味を表現されることが多いですが、少なくともステンレスタンク醸造ではそれほど豊かな香りを示しません。だからこそ「ラインナップの上級は違いを出そう」という意図でしょう。新樽は使わずにやや控えめに香りをつけながら樽熟成されています。
樽香よりも口当たりのボリューム感に樽リッチさが現れているように感じます。
ミュスカデのやや樽リッチワイン
ロワール地方西部でメジャーな「ミュスカデ」も、品種の特徴香は穏やかなブドウです。「シュール・リー」という製法でコクをもたせてつくることはありますが、基本は酸味高めのスッキリ系白ワイン。樽香を効かせることはそう多くありません。
だからこそこのワインはいい意味でミュスカデとは思えない。樽香としてはそれほど豊かではないものの、味わいはしっかりボリューミー。飲みごたえがあります。これでもミュスカデとしてはやや高価な部類だからこそ、余韻も長く続きます。
シャルドネとブレンドでつくる樽リッチワイン
シャルドネはそれほどブレンドに使われることが多くない品種です。でも決してブレンドワインが美味しくないわけではありません。
その証拠と言えるのがこちらの2本。
マルヴァージア・ビアンカ 50% 、 シャルドネ 50%
シャルドネ 60% 、 モスカート 20% 、 フィアーノ・ミニュトーロ 20%
「シャルドネ100%だとありきたりだから変化をつけたい」という意図が強いのではないでしょうか。
ルナに感じるボリューム感の中にある柑橘の風味。エッダに感じる樽とは違うフルーツの甘い香りは、ブレンドしている品種の特徴でしょう。
普段はシャルドネしか飲まない方が「ちょっとだけ冒険」するのにいいでしょう。
珍しい樽の使い方をしたリッチ(?)ワイン
こちらはマニア受けする白ワイン。味わいが突飛というのではなく、醸造法がかなり珍しいのです。
このワインは樽発酵(おそらく新樽使用)でありながら、熟成はステンレスタンク。なのでヴァニラやスパイスの香りは感じるのに、口当たりはフレッシュで滑らかさはあまりありません。香りはリッチだけど味わいはスマートという意味の「(?)」です。
好奇心が強い方は買わずにいられないはず!
樽リッチワインを飲むときにつくりたい夕食
覚えてください。樽リッチワインにはクリーム!
樽熟成した白ワインは、一般的にクリームソースやバターを使ったものと相性がいいことが多いです。例えばクリームソースのパスタや白身魚のムニエルなど。グラタンやシチューなどもいいですね。
ホタテのバター焼きのようなバターのコクがある料理も寄り添ってくれます!
他には鶏肉や豚肉などのたんぱくな白身の肉料理と好相性です。特に塩コショウのみのシンプルな味付けなら、断然赤ワインより樽リッチ白ワインです。
鶏もも肉や豚バラ肉のような脂身の多い部位を食べるなら、樽リッチワインの中でも酸味がしっかりしたものを選ぶとベターです。油脂を酸が切ってくれるので、よりさっぱりと味わえるでしょう。
濃厚白ワインのバリエーションとして
シャルドネの白ワインは、気候や土壌を反映する品種であるという性質上、本来は多様性に富んだ味わいです。しかし低価格帯の樽リッチワインに限って言えば、ある程度風味が似てきてしまうのは否めません。
同じものを飽きずに飲み続ける方は気にならないかも。でもいろいろなワインを試して違いを楽しみたい方にとっては、もうちょっと変化が欲しくなるのでは?
樽香があって飲みごたえのある白ワイン、すなわちシャルドネではありません。他の品種でもリッチで飲みごたえのあるワインをつくることができます。そして品種の個性が加わる分だけ、低価格帯でも明確な違いを感じやすいです。
シャルドネから乗り換える必要はありません。たまの気分転換に、晩酌ローテーションの一環として、シャルドネ以外の樽リッチワインにトライしてみましょう。あなたにとってのワインの世界が、またちょっとだけ広がるはずです。