「シュワっとしているものが飲みたくて探しているけど、説明が似たり寄ったりで選べない!」
製法が味わいに与える影響の大きいので、スパークリングワインは迷いやすいです。
なので見方を変えて、飲むシチュエーション、TPOから選んでみましょう。
あなたが飲みたいと思ったそのときにピッタリのスパークリングワインが見つかるかも!
選び方のポイント
スパークリングワインの味わいには、そのつくり方が大きく影響します。
普通のワインならまずブドウ品種と産地ですが、スパークリングワインについてはつくり方のウエイトが大きい。
製法にどんな種類があるのか、どう味わいに影響するかを理解するのが、味わいからワインを選ぶコツです。
まずは簡単にスパークリングワインの味わいに影響を与えるつくり方についてご紹介します。
スパークリングワインの製法
どうしてワインがシュワシュワしているのか。
スパークリングワインの製法の種類を理解するのが第1歩です。
重要なポイントは伝統的方式かそれ以外か。
そして伝統的方式なら、瓶内2次発酵の期間は長いのか短いのかです。その長い/短いのボーダーをハッキリ決めるのは難しいですが、3~5年くらいが目安。
この製法によって、まず泡の質感が変ります。
時間をかけて泡がワインに溶け込む伝統的方式。口当たりはクリーミーでなめらかな泡のスパークリングができます。さらに泡の持ちがよく、飲みかけを冷蔵庫で保管しても翌日・翌々日まで楽しむことができます。
伝統的方式の中でも瓶内2次発酵の期間が長いものは、風味にも違いが現れてきます。パンだねやブリオッシュなど、酵母由来の複雑でリッチな香りを感じるようになるのです。
逆に伝統的方式以外、シャルマ方式や炭酸ガス注入方式などでは、バチバチっと元気な泡のものが多くなります。口の中の刺激は強いので、強い炭酸が好きな方はこちらがおすすめ。泡の持ちは良くないですが、その日のうちに飲み切るなら問題になりません。
スパークリングワインの製法については、「スパークリングワインってシャンパン以外に何があるの?」をご覧ください。
ドサージュ
ドサージュとは簡単に言うならスパークリングワインの糖度のこと。
伝統的方式やシャルマ方式のスパークリングワインは、2次発酵の過程でワイン中の糖分がほとんどなくなります。
炭酸が入っていると甘味を感じにくくなるので、甘味を添加して味わいを整えるのが一般的です。
辛口のスパークリングワインを意味する「BRUT ブリュット」表記のものでも糖分は入っています。ただしそれは甘味としては感じられず、味わいのふくよかさ・ボリューム感として感じます。
甘味を全く加えない「ブリュット・ナチュレ」極々少量の「エクストラ・ブリュット」などもあります。より細身でキリっとした印象のスパークリングワインです。さらにドサージュがほとんどないということは「炭酸が抜け切っても甘くならない」というメリットもあります。泡が抜けても美味しい。
もちろん、あえて甘味を残したりしっかり甘味を加えてつくる、甘口スパークリングワインもあります。
ブリュットがまずは基本。
「ブリュット・ナチュレ」や「エクストラ・ブリュット」は暑い時期やとにかくスッキリしたいときにピッタリ。
デザート替わりに飲む場合や、ワイン初心者がいるとき、寒い時期に甘いものでほっとしたいときなどは、「ドゥミ・セック」や「ドゥー」のスパークリングワインを考えてみてもいいでしょう。甘さ表記はありませんが、モスカート種でつくるスパークリングワインもまた、甘口のものがほとんどです。
ドサージュについて詳しくは「用語解説 ドサージュとは? シャンパン・スパークリングワインの選び方」をご覧ください。
価格
スパークリングワインも、価格が高い方がそりゃあ高品質です。高い味がします。
ただし、それがイコール美味しいかというと、必ずしもそうではありません。
例えば高級なシャンパン。香りが非常に豊かで風味も凝縮しており、余韻も長く続きます。
それを真夏のたくさん汗をかいた日の終わり、ゴクゴク喉を鳴らして飲みたい日に開けて美味しく感じるか、微妙なところでしょう。
ワインの余韻は割と価格に対して正の相関があると感じています。高いものほど余韻が長い。
余韻が長いものは、飲み込んだ後も味わいが残ります。すぐに次の一口を飲もうとしても、口が重たい。安いワインの方がゴクゴクいけるものです。
高ければいいというものではない。スパークリングワインを飲みたいシチュエーション、TPOにフィットさせることが重要なのです。
何もない平日 自宅でいつもの夕食に
平日ということは翌朝も早く起きて仕事ということ。
1晩に飲むアルコールの適正量は人それぞれですが、今回は1本を2日ないし3日で飲むことを想定します。
2人で飲むけどビール1本飲んでからワイン、という家庭でもこれくらいのペースかもしれません。
こういう場合に考えるべきは泡の持ち。翌日開けた時に「シュっ」と言わなければ、テンション下がってしまいます。
そのためには伝統的方式でつくられているスパークリングワインであること。
そのうえで、何もないいつもの夕食なのですから、普段使いできる価格であることが求められます。
飾らないいつものスパークリングにカヴァ
普段使いのスパークリングワインとしてまず思い浮かべて頂きたいのが「カヴァ」です。
スペインのペネデスを中心につくられる世界第3位のスパークリングワイン。1000円台が中心の手ごろな価格にも関わらず、伝統的方式でつくることが定められています。
シャンパンとは品種が違い、スペインの土着品種で酸味はやや控えめ。そのため悪く言えばスケール感の大きさはないし熟成ポテンシャルも低め。でもどちらもデイリーワインには求めてない要素。
代わりに肩の力を抜いて飲めるような親しみやすさがあります。高価なシャンパンのように、価格を納得させるだけの香りの主張がない。余韻がやたら長く続くこともないから、すぐ次の一口が飲める。
そんなカヴァの中でも、価格の割に瓶内2次発酵の期間が長くおすすめな1本がこちら。
試してほしい ピリ辛料理を食べる日には
激辛料理はお好きですか?
ペペロンチーノ、麻婆豆腐、カレー、キムチ鍋、タンタンメン・・・・考えてたら汗出てきた。
辛い料理を食べてたっぷり汗をかいて、上がった体温が落ちてきたタイミングで眠りに入る。気持ちいいですよね。外食だとこう好きな時には眠れません。
その激辛料理を美味しく食べ続けるために試してもらいたいのが、シャルドネ100%の伝統的方式のスパークリングワイン。
辛味をふわっとやさしく包んでくれるように感じます。
先に挙げた料理すべてに「合う」とまでは申しませんが、水を飲むよりはしっかり舌をリセットしてくれるはずです。
夕食前からワインだけで、もしくは食後に飲むなら
私はよく、夕食を作りながらワインを飲むことがあります。特に早めに家に帰って凝ったものが作りたい気分のときなど。
そういう場合はワインだけで飲みますよね。
割と料理に手が離せなくて、気づいたらあまり飲んでないこともあります。
また、「これはワインに無理に合わせないでいいだろう」という料理のときには、夕食を食べてから食後にワインを飲むことも。
そもそも習慣として「ごはんと一緒にお酒を飲む」というのがない方もいるでしょう。
そんな方におすすめなのがシャルドネ+ピノ・ノワールの伝統的方式でつくるスパークリングワイン。
要するに「シャンパンを目指した世界のスパークリング」です。
イメージとしてはシャルドネのエレガンス+ピノ・ノワールのふくよかさ。つまりワイン単体で飲んだ時のバランス感にすぐれたスパークリングワインということ。
とくにこのワインは、瓶内2次発酵の期間が3年以上と長い+ドサージュが少ないので、泡が抜けにくい上に抜けても美味しい。
1杯を飲む時間が長くかかりがちな、料理をしながらや食後にテレビなどを見ながら飲むのに適しています。
休み前 明日を気にせず飲める日の晩酌には
平日と休み前で飲む量が変る、という方は少なくないでしょう。
「前日飲みすぎると、翌日体が重たいから」
筆者はアルコール耐久値の割に回復能力が高い、つまりすぐ酔っぱらうけど二日酔いにならない体質。なので平日から平気で深酒しますが、おそらく少数派だと思われます。
平日節制しているからこそ、翌朝ゆっくり起きればいい休み前はガブガブ飲んでグーすか眠りたい。
でも1日で飲み切っちゃうなら1本のボトル価格は抑えたい。
そんな方はシャルマ方式のスパークリングワインをおすすめします。
基本的にシャルマ方式は安いです。1000円台がほとんど。1000円以下でもたくさんあります。
泡の持ちが良くないデメリットは、1日で飲み切るなら全くデメリットになりません。
ただ、シャルマ方式の手ごろなスパークリングワインといってもたくさんあります。
その風味や味わいの違いから、季節ごとにおすすめをご紹介します。
春のスパークリングは花の香り
「プロセッコ」はイタリア・ヴェネト州のスパークリングワインで、生産量としてはシャンパンを大きく上回り世界No.1スパークリングワイン。
全てとは申しませんが、基本的にはシャルマ方式でつくられます。それは、品種由来の白い花やリンゴなどのフレッシュな風味をしっかり保つため。
もちろん1年中美味しいスパークリングではあるのですが、特にピッタリだと考えるのがいろいろな花が見ごろを迎える春。
プロセッコはグレーラという品種の酸味が高いことから、辛口の中でもドサージュを多めに作られます。そういう点でも、夏より春が向いているでしょう。
夏のスパークリングはともかく安く!
夏は暑い。汗をかきます。乾いた喉を潤すべく飲むスパークリングワインはグビグビ飲みたい。
だからこそ高いスパークリングワインはNG。ゴクゴク飲むのがもったいないというのもありますが、味が濃ければそれだけ一気には飲みづらい。
そんなときにはこの安いスパークリングワイン。アルコール度数を考えると、ビールとさほど変わらない値段で楽しめます。
秋のスパークリングは土着品種や黒ブドウで
暑い夏が終わって涼しくなってくる秋は、濃い味わいのものが欲しくなる季節。
ゆえに手ごろなスパークリングワインの中でもちょっとしっかり目、コクのある味わいのものが美味しく感じます。
目をつけるべきはイタリアの土着品種でつくるスパークリングワインや、黒ブドウでつくるスパークリングワイン。
たとえば「ラボーソ・ヴェロネーゼ」という黒ブドウでつくるロゼ・スパークリング。黒ブドウならではのコクが楽しめます。
ピノ・ノワールの外さまざまな黒ブドウがブレンドされたこちらのスパークリングも、ちょっと”濃く”感じる味わいです。
冬のスパークリングは持ち越しも考えて
寒い冬は最も水分を求めていない季節。
この時期に関しては、休み前であっても「飲んでる途中で自然とストップがかかる」ことを想定しておくべきでしょう。
という訳で持ち越しも考えた伝統的方式のスパークリングワイン。それも濃い味わいに感じるブラン・ド・ノワールのものがおすすめです。
「普段飲みにはもうちょっと安い方がうれしいんだけどな~」という価格ですが、ピノ・ノワール100%のスパークリングはあんまり安いものがないのも事実です。
嬉しいことがあった日の夜 自分へのお祝いに開けるなら
舶来品であるワインは他のお酒よりもちょっと割高で、小難しくて非日常感があるからこそ、たまのご褒美になり得ます。
嬉しいことがあったとき、仕事で達成感があったときに、自分へのご褒美として美味しいワインを飲む。
そうして美味しいワインを満喫する体験は、さらに頑張って嬉しいことをつくるためのモチベーションになります。
そういったときに飲むスパークリングワインに求められるのは、普段のみのスパークリングとは異なる豪華な味わい。
豪華な味わいとなると、やっぱり伝統的方式のスパークリングワインです。
ちょっとうれしいことがあったとき
伝統的方式でつくることによる豪華な風味はちょっと味わいたい。
だけど、“ちょっと”うれしいことなので、あくまで普段の晩酌の延長ですし、そんな高いものを買うつもりはない。
そんなときまず捨てるべきは「ブランドへのこだわり」。一人で飲むならシャンパンかそうじゃないかなんてどうでもいいじゃないですか。美味しければいい。
そこでご提案するのが、カリフォルニアの中でトップクラスの人気を誇るスパークリング。
ちょっと高いお値段にみあった味わいをつくるため、様々な工夫がなされています。
とっても嬉しいことがあった記念日に
「えへっ、贅沢しちゃった♪」
例えば仕事で大きなプロジェクトが成功に終わったなど、とっても嬉しいことがあったとき。
少なくともSNSで自慢したくなるようなスパークリングワイン、開けていいんじゃないでしょうか。
そうなるとやっぱりシャンパン。世界最高のスパークリングワインに酔いしれたい!
でも一人で飲むなら、たくさん飲むにしても時間がかかる。温度も上がってしまう。
「泡が抜けにくい」はもちろん、「温度が上がって泡が抜けても美味しい」を狙いましょう。
なら選ぶべきは「ブリュット・ナチュール」や「エクストラ・ブリュット」の極辛口。
輸入元の社長は、「シャンパンの最高峰の一つ『サロン』を飲んでいるかのようだ」と語ります。
自宅で飲み会・ワイン会 何本か飲むワインの乾杯用には
「うちでワイン会しようよ」「今度飲みにおいでよ」
そうやって人を招いてワインを飲むことはありますか?
そういった会の始まりにはスパークリングワインが最適。
というのも、スパークリングワインはほとんどが食前酒、つまりワインだけで飲んでも十分美味しい味わいに仕上げられているからです。
こういう集まりは、みんな一度には揃わないもの。だからこそ「スパークリング飲みながら集まるのを待って、料理は揃ってから」というシチュエーションにピッタリなのです。
もちろんスパークリングなら何でもいいというわけではない。
そこはやっぱりみんなの好みに合わせないと!
ほとんどワインを飲んだことがない人もいるなら
「普段はチューハイをちょっと飲むくらい。今日初めてワインを飲みます。」
そんな方がメンバーにいるなら、甘口のスパークリングワインを1本用意してはいかがでしょう。
「アスティ」「モスカート・ダスティ」なら、アルコール度数低めで親しみやすいブドウの香りを持つ甘口。
「こんなワインもあるんだ!」と驚かすことができるかも。
ただ、ワイン好きのみなさまには物足りないワインでしょう。
なのでこういう甘口スパークリングが好きそうな人のための1本で、メインとなるワインは他に用意する段取りで。
ある程度のワイン初心者中心のメンバーなら
日常的にワインを飲んでるが、ワインマニアはいなくて詳しくない人ばかりの集まり。
そんなメンバーなら、ウンチク抜きに「ちょっと豪華な」気分を味わってもらい、なおかつワインが手ごろなものが嬉しいはず。
こういう条件なら、手っ取り早いのが「Champagne」の文字。
シャンパンの中では低価格な部類に入りながら、「激安」というほどではない。
しっかりとシャンパンらしい味わいも感じつつ、気難しさがない。
たぶん、ワイン評価誌が点数をつければしょぼっちい数字になる。でも普通においしくて、安い。
そんな1本の出番でしょう。
ワインに詳しい人の集まりなら
ワインに詳しい人が集まるなら、レアなシャンパン、評価の高いシャンパンを出せばみなテンション上がります。
でもそういったものって当然高い。
ワイン好きを低予算でおっといわせるためには工夫が必要です。
ポイントは自分じゃなかなか手を出さないもの。
1000円台のものが多いプロセッコの4000円弱は勇気がいるはず!
ワインに親しんでいると、「甘口」を毛嫌いする人が結構多いです。
このスパークリングは「ドライ」なので、ちょっと甘味があります。そういうものに手を出さない。
なのに出されて飲めばほとんどの人が絶賛する。「ちょい甘口は試飲販売に強い」は定説です。
もちろん高いだけじゃありません。「プロセッコのグラン・クリュ」といえるような、正真正銘の高級ワイン。
これならワイン通もうならせることができるはず。
レストランでのワイン会 今日の会をワクワクさせる1本は
持ち寄りのワイン会に参加したことはありますか?
レストランを使ってのワイン会。参加者は会費に加えてワイン1本を持参する。
「ほかの参加者はどんなワイン持ってくるのかな?」というワクワクが味わえます。
ワインのタイプに偏りが出ないよう、幹事が事前に調整するもの。
あなたが乾杯のスパークリングワインを担当することになったとします。
さて、何を持っていけば、スタートにふさわしく会を盛り上げられるでしょうか。
参加者の属性バラバラで無難にいきたいなら
本当にどんな人たちが集まっているのか分からないって場合もありますよね。幹事の人以外は初対面。
ワインに詳しい人もいれば、割と初心者な人も来るらしいと。
その中であなたは、「ガッカリされなければいい」という目標だったとします。自分は引き立て役でいいと。
無難なものを持っていくなら、「ほどほどに有名なメゾンもの」がおすすめです。たとえばこちら。
「メゾンもの」とは、今は「中~大規模生産者」くらいに捉えてください。
年産量が多くたくさん販売しないといけないので、ワインマニアではなく万人に受ける味づくりな傾向があります。
かといって「モエ・エ・シャンドン」や「ヴーヴ・クリコ」のような、どこにでも売っている値段の分かりすぎるものじゃない。
「こだわって選んだ」感をアピールできるものです。
ワイン通をもあっと言わせたいなら
ワインマニアのテンションを上げたい、「今日は〇〇さんの持ってきた最初の1本が一番美味しかった」と言われたい。
そういう高い目標を掲げるなら、レアなシャンパンを狙いましょう。
生産量が少なく、入荷と同時に完売するような生産者のもの。当然、現在は売り切れているものです。
例えば「フレデリック・サヴァール」、「シャルトーニュ・タイエ」や「ピエール・パイヤール」の上位キュヴェなと。
ワイン会なら通常「〇〇円くらいのワインを持参」と大体の目安が決められているもの。
少々オーバーしても文句言うひとは普通いませんが、あまりに高いのを持って行っても雰囲気を壊しかねない。
だからたいていの会で「ジャックセロス」はやりすぎでしょう。
「大して高額ではないけど手に入りにくいレアなシャンパン」がベストです。
あらゆるシーンにスパークリングワインを
個人的にはスパークリングワインは1年中美味しいと思っていますが、やっぱり一番美味しいのは夏!
でも「夏には泡ものがいい!」と言われたって、膨大な種類があるのに1本を選ぶのは難しいですよね。
製法が似ていれば味わいも近いので、特徴となる味わいからワインを選ぼうとしても迷っちゃう!
ならばこそ飲むシチュエーション、TPOで選んでみましょう。
飲むシーンごとに、スパークリングワインに特に求める要素を考えていくと、適したタイプが浮かび上がってきます。
今回ご紹介した選び方を参考に、この夏はスパークリングワインを使いこなしてみてはいかがでしょう。