
ジメジメと暑い日本の夏は、冷えたスパークリングワインが格別にうまい季節。泡ならば何でもいいのではなく、この季節だからこそ美味しい1本の選び方があります。白ブドウ100%でつくられた爽やかな風味のタイプや、甘さを抑えた極辛口タイプが特におすすめ。気分をリセットしてくれる爽快スパークリングワインの選び方と、予算別のおすすめ銘柄をご紹介します。
気軽にグビっと飲みたい夏の泡5選
暑かった1日の終わりには、ついグビグビっと喉を鳴らして飲みたいもの。
となるとあまり高価なワインはもったいないですし、濃厚な風味も考え物です。まずは普段飲みとして手に取りやすい、3000円程度までの価格でおすすめをご紹介します。
爽やかさに磨きがかかって最高!
白ブドウ100%
極辛口
フレッシュで気軽に飲める味わい、そして手頃な価格で、世界一人気なスパークリングワインであるプロセッコ。シャンパンよりも少しだけアルコール度数が低く、11~11.5%のものが主流です。それゆえ軽快な口当たりのシャープな酸味とのバランスを取るように、ドサージュ(仕上げに加える甘味)は多めにするのがセオリー。
しかしこのワインはそのドサージュがゼロ。つまり極辛口なんです。キュンキュンくる酸味がストレートに表現され、汗をかく季節にこそぴったりなバランス感。こりゃもう止まらない!


氷水で冷やしても素敵なエチケットのまま
白ブドウ100%
ワインを急速に冷やしたいとき、あるいは冷蔵庫温度よりさらにキンキンにしたいとき。有効なのは氷水に漬けることです。
でもエチケットなふやけてはがれてしまうの、少し気になりますよね。
その点このワインの「セリグラフィ」ボトルなら大丈夫。ボトルに直接プリントされているので、水にぬれても平気です。
もちろん味わいも文句なし。瓶内2次発酵で熟成期間が4か月というのはなかなかない短さですが、その分白い花のようなフレッシュな香りを存分に楽しめます。
品種特性と製法がベストマッチ!
白ブドウ100%
このワインにつかわれる炭酸ガス注入方式というのは、一般的には安物のスパークリングに使われます。サイダーと同じなので熟成による美味しさは生まれず、泡も粗いのです。
しかし「ソーヴィニヨン・ブラン × 炭酸ガス注入方式」の組み合わせは、おそらくベストな組み合わせ。熟成を必要としないからこそ、ソーヴィニヨン・ブランのフレッシュなアロマが保たれます。また2次発酵でアルコールを上げないので、しっかり熟したブドウを使うことができます。
泡持ちが良くないという欠点も、この味わいならあっという間に飲みほしちゃうから問題なし!


クリーミーな質感はお値段以上!
白ブドウ100%
日本最大の生産規模を誇り、常に価格以上の美味しさを感じさせてくれる北海道ワインさん。
スパークリングワインにおいてもやはり優秀。瓶内2次発酵でつくりながら3000円台前半というのは、日本においては結構安い方ではないでしょうか。味わいはクリーンでクリーミー。それほど引き締まった酸味はなく、尖らずまろやかな印象です。
ゴクゴク飲んでもいいし、泡持ちがいいから翌日に持ち越してもいい。冷蔵庫で冷えてたらつい開けたくなっちゃいます。
この複雑さは予想を超えてきた!
極辛口
高級スパークリングワインのイメージは全くないだろうアルゼンチン。だからこそというべきか、このワインは割安感があります。
ブドウの質が非常に高いのでしょう。風味が濃厚とかボリューム豊かというわけではないのですが、余韻が複雑に豊かに広がります。シャンパンでも小規模生産者のものに時々感じるようなスパイシーさ。そのブドウの質があるからこそ、ブリュット・ナチュール、つまり甘味添加なしでも痩せた印象にならず、味わい深いワインに仕上がっています。これは泡が抜けても美味しそう!
自分へのご褒美として気分をシャキっとしてくれる3選
例えば友人を家に招いてもてなす際の、乾杯の1本として。またあるいは仕事で一区切りついたときの自分を労う1本として。
普段飲みよりちょっとだけ贅沢なワインを開けたいとき。夏にピッタリのスパークリングワインから選ぶとしたら、何を選びますか?
こういう時ならではの一段上質な泡をご紹介します。


冷涼&高級産地ならでは
最近でこそワイン産地として知られ始めているイギリス。一方でワイン消費国としては歴史の中で常に重要なポジションであり、消費者の舌も肥えていることでしょう。
なので安くてほどほどのワインなんてつくれないしつくらない。シャンパンを意識したような高品質スパークリングワインばかりです。
このハッティングレイ・ヴァレーがつくるスタンダードクラスも、まさにシャンパン的。ベースワインを部分的にオーク樽熟成し、瓶内熟成も2-4年と長め。十分に風味豊かです。
それでも最北の産地といえるイギリスだけあり、その冷涼さを感じる風味は夏にピッタリ。グビっと飲むのはもったいなくても、しっかり爽やかさと高級感を与えてくれます。
甘味は引けばいいというものではない!
「糖分のないスパークリングワインをつくることは綱渡りのようなもので、ミスは許されない」
そう醸造家が話す通り、スパークリングワインの仕上げに加える糖分にはきちんと役割があり、引けば夏向きになるというものではありません。下手に甘味を抑えたら、痩せた印象のすっぱいだけのワインになってしまいます。
だからこそ毎年はつくれず、ブドウの出来がいい年に限定されるのがこの「ウルトラ・ブリュット」。極辛口でありながら、長期熟成の酵母感で風味のボリューム感が増し、素晴らしいバランスに仕上がっています。スパークリングワインを愛する醸造家だからこそのこだわりが詰まっています。
ロゼだってこれなら夏向けだ!
ここまでの選び方に倣うなら、ロゼのスパークリングワインはあまり夏向きではありません。黒ブドウに由来するコクや味わいのボリュームは、「スッキリ爽やか」という方向性と相反するからです。
しかしこのワインは別。「世界一すっぱいロゼワイン」なんて言われる、非常に酸味の高いロゼワインのスパークリングだからです。その酸味とバランスを取るべく、ドサージュは適度に加えられていて、それでもなおキレがいい!
当店に入荷当時から比べると結構な値上がりをしてしまい、取り扱い休止を考えたときもありました。しかし試飲会で飲んでそのシャープな美味しさに「これは紹介せねば!」と、現在も取り扱っております。


夏にピッタリのスパークリングワインを選ぶコツとは?
数あるスパークリングワインの中から、特に夏に美味しく感じるものを選ぶポイントとして、先述の通り次の2つを提案します。
〇白ブドウ100%でつくるスパークリングワインを選ぶ
〇ブリュット・ナチュレやエクストラ・ブリュットの極辛口を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
ブラン・ド・ブランとは
「Blanc de Blancs ブラン・ド・ブラン」とは、白ブドウのみからつくるスパークリングワインのことを指すのが基本です。(たまに白ワインにも使われます)
「Blancs」と複数形なのは、その白ブドウ品種は数種類である場合もあるから。
主にこの用語が使われるのはシャンパンにおいて。ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの主要3品種をブレンドしてつくるのが基本。なので白ブドウのみでつくるシャンパンを特別に「ブラン・ド・ブラン」と呼んだのです。シャンパンにおいては「ブラン・ド・ブラン ≒ シャルドネ100%」と思って差し支えありません。


一方で世界には上質なスパークリングワインをつくる品種はたくさんあります。例えばピノ・ブランやモーザックなどを補助品種に使いつつ、「ブラン・ド・ブラン」を表記する例もあります。
白ブドウ100%の爽やかさ
夏に白ブドウ100%のスパークリングワインを推す理由は、黒ブドウからつくるより爽やかな風味を持つ傾向があるからです。
大雑把にまとめると、ブドウの色によるスパークリングワインの風味の傾向は次の通りです。
ブドウ | よく感じる風味 | ボリューム感 |
---|---|---|
白ブドウ | リンゴ、柑橘、白い花 | 比較的軽快 |
黒ブドウ | ベリー、アプリコット、黄色い花 | ややコクを感じる |
もちろんブラン・ド・ブランの中にも豊かなコクを持つものもありますが、そういったものはたいてい高価。気軽に家で飲める価格なら、おおよそこのような傾向でしょう。
スパークリングワインの「ドサージュ」とは
夏にピッタリのスパークリングワインは、ドサージュが控えめなものをおすすめします。
ドサージュとはスパークリングワインの仕上げにリキュールを加えて甘味を添加することであり、その仕上がりの糖度を言います。
糖度はショ糖換算した糖類が1Lのワイン中に何グラム溶けているかで表します。数字だと判別しにくいので、ドサージュ量により「ブリュット」のような名称があります。
代表的なドサージュ量とその呼び方は次の通り。
呼称 | 残糖の範囲 |
---|---|
ブリュット・ナチュレ | 3g/L未満 |
エクストラ・ブリュット | 0-6g/L |
ブリュット | 0-12g/L |
エクストラ・ドライ | 12-17g/L |
・・・・ | ・・・・ |
この中でドサージュの少ない2つが、この暑い季節におすすめです。
ドサージュについてはこちらの記事で詳しく
糖度と炭酸と酸っぱさの関係
瓶内2次発酵やシャルマ製法によるスパークリングワインは、白ワインを発泡させる2次発酵の過程で1%少々アルコール度数が上がります。
高いアルコールの重量感と炭酸の刺激は相性が悪いです。なのでもともとの白ワインは早摘みした糖度の低いブドウを使い、11%程度とアルコール低めにつくります。早摘みのブドウからつくるので、スパークリングワインの多くは高い酸味を持ちます。
また炭酸の刺激は甘味を感じにくくします。炭酸の抜けたコーラが甘すぎて飲みづらいのはそのためです。


酸味が高くて炭酸の刺激があり、甘味のないワインは、尖った酸っぱさとして不快に感じがちです。味わいは痩せた印象に感じます。
それを補うべく、ほとんどのスパークリングワインはドサージュで糖度調整をして、味わいにボリューム感をもたらしているのです。
なので10g/Lくらいのドサージュのあるスパークリングワインは、ほとんど「甘い」とは感じません。これも「辛口」の分類なのです。
慎重に選ぶべき極辛口
ブリュット・ナチュレやエクストラ・ブリュットのスパークリングワインは、上手につくらないと酸っぱくてイマイチなものになってしまいます。
では「上手につくる」とはどういうことかというと、風味の豊かさでバランスをとることです。
先述の「DVカテナ」などは、ブドウの質が高いのかよく熟したフルーツの風味を持ちます。「グラハムベック ウルトラ・ブリュット」は、長期熟成による酵母の複雑な風味をまとわすことで、高い酸味とのバランスをとっています。
2000円以下の低価格スパークリングでブリュット・ナチュレはほとんど見かけません。そのグレードのブドウでは、極辛口でバランスをとるのが非常に難しいからです。
こういったもともと糖度の低いスパークリングワインは、炭酸が抜けてきても甘ったるくなりません。なので1人や2人でじっくりと時間をかけて飲んでも、最後まで美味しく飲み切れます。
夏の「バランスがいい」は酸味寄り
ワインの味わいにおいて、最も大切であり最も評価が難しいのが「バランス」です。
スパークリングワインにおいては、風味の豊かさや果実味の凝縮感、酸味の強さにつり合いがとれていて、どれかが突出していないことを「バランスがいい」言います。
とはいえ非常に感覚的ですし、個人の嗜好にもよります。酸味が高いのが好きな人と嫌いな人では、「ちょうどいいバランス」のワインは異なります。


各自の好みがあったうえで、暑い季節はそのバランスポイントが酸味が高い方に少し移動するはずです。簡単に言うと、ジメジメ暑い季節は、ちょっと酸っぱいものが美味しく感じるということ。夏にレモンをつかった様々な飲み物・食べ物がプロモーションされるのはそのためです。
極辛口のスパークリングワインは、バランスをとっていると言っても酸味を強く感じやすいです。だからこそ夏にピッタリ。だからこそ1年の中で夏が一番美味しく感じやすいのです。
スッキリ爽やかなスパークリングが待つ夕食へ
気温が高い上に湿度が高くベタベタする。そんな不快指数の高い日本の夏。気がめいってしまいそうになります。
そんな季節だからこそ、日々の楽しみがないとやってられない!
もちろんビールも美味しいです。炭酸の刺激とホップの苦みは、気分を引き締めてくれます。
しかし一般的な大手メーカーの缶ビールには、「次の1本を楽しみにする」というワクワクはありません。味を知ってますから。
夏のスパークリングワインにはそのワクワクがあります。今回ご紹介したものの他にも、白ブドウからつくる/極辛口のスパークリングワインはたくさんあります。毎日だって違う銘柄が飲めます。


「こないだ飲んだのもシャープで美味しかったな。今晩はどれを開けようかな・・・」
そんな風に楽しみにしながら帰り道を歩けば、夕食の1本はあなたをもっと元気にしてくれるでしょう。