8月は集まって食事をする機会の多い季節。乾杯にピッタリのスパークリングワインがあれば、会はより盛り上がります。
最初の1杯に相応しい泡の万能解はありません。シチュエーションにより適・不適があるものです。
そこで集まる人数とワイン好き度合いで分類して、適したワインのスタイルを考察しました。
「このスパークリング、美味しいじゃん!」で始まれば、きっとその食事の場に笑顔があふれることでしょう。
乾杯にはなぜスパークリングワイン?
乾杯に飲むワインは、シャンパンを含むスパークリングワインが定番。スパークリングがラインナップにない場合のみ、白ワインの場合もある。
会食やパーティーの場でワインが供される場合、そういう組み立てであることが多いです。
そういうルールがあるわけでないので赤ワインスタートがあってもいいんですが、なぜそのパターンが多いかは知っておくべきでしょう。
味が薄い⇒濃いへ
料理がコース仕立てで1品ずつ提供される場合、通常は味の薄いものから濃いものへと向かうよう組み立てられます。
濃い味付けの料理のあとさっぱりとした料理だと、後者の印象が弱くなりがちだからです。
これは飲み物についても言えます。
「薄い」と言っては語弊がありますが、濃厚でないワインから徐々に濃いワインへと飲み進める方が、それぞれのワインをより存分に楽しむことができます。
白ワインと赤ワインを比べると、赤ワインには渋みがあるのでより力強く感じます。またコース料理なら後半が肉料理であることが多いです。それゆえ白ワインのあとに赤ワインを飲む場合が多いのです。
白ワインよりスパークリングワインが早く提供される理由。その一つはアルコール度数です。
スパークリングワインのアルコール度数
スパークリングワインのアルコール度数は、12%ないし12.5%表記のものが圧倒的に多いです。
これはスパークリングワインの製法に関係します。
高級なスパークリングワインは、「瓶内2次発酵」「トラディッショナル方式」などと呼ばれる方法でつくられます。その2次発酵の過程でアルコール度数が1.2~1.5%上がります。目標となるアルコール度数から逆算して、ベースとなる白ワインがアルコール10.5~11%程度になるようにつくります。
瓶内2次発酵の製法についてはこちらのブログをご覧ください。
シャンパーニュ地方ではほとんど例外なく上記のアルコール度数でつくられます。他の産地もシャンパーニュに倣うものが多いので、高アルコールのスパークリングワインはほぼ見かけません。スッキリ感が失われて美味しくないのでしょう。
泡⇒白のセオリーと例外
アルコール度数は味わいのボリューム感につながります。
辛口な白ワインのアルコール度数は、おおむね12.5%~14.5%ほど。スパークリングワインよりはやや高めです。
ゆえに同価格帯のスパークリングワインと白ワインを比べると、白ワインの方が濃く感じる場合が多いです。
それがスパークリングから白ワインの流れが定番である理由の一つです。
一方でスパークリングワインの方が高級である場合、泡の方が濃く感じるケースもあります。熟成期間の長いシャンパンの場合は、むしろ締めの1本すら問題ない場合すらあります。
他のワインの方が軽くてスッキリなら、スパークリングワイン以外で始めるのもありでしょう。
ワイン単体でのバランス感
普通1品目の料理は乾杯のあとに提供されます。すぐに出てくる場合もあれば、時間が空いたり、あるいは乾杯してひと段落してから注文する場合もあります。
スパークリングワインには「ドサージュ」といって少し甘味が加えられている場合が多いです。ゆえに他のワインにくらべて、ワイン単体で飲んだ時の満足感が高いのです。
辛口の白ワインの残糖度は、ワイン1L中に2g以下であることが多いです。それに対して辛口スパークリングワインは12g以下。8g/L程度であることが多いです。
だからスパークリングワインだけ飲み続けても、口寂しくなりにくいのです。
こう書くと「スパークリングワインって糖質多いんだ」とお思われるかもしれません。でもビールの糖質は30g/L程度であり、ワインよりたくさんの量を飲みます。それと比較するなら糖質の量はそんなに気にしなくていいでしょう。
見た目の豪華さ
上質なスパークリングワインにおいて、グラスの中で立ち上る細かな泡。ビールやチューハイ、炭酸飲料の泡とは明らかに違います。
その見た目の豪華さも、テーブルに並ぶ最初の飲食物としてスパークリングワインが選ばれる理由と言えるんじゃないでしょうか。
以上のような理由から、ワインで楽しむ飲み会はスパークリングワインで幕を開けるのが、無難に皆に楽しんでもらえることがわかります。
しかし一口に「スパークリングワイン」といっても、膨大な種類があります。どのように最初の1本を選べばいいのでしょうか。
シチュエーションで異なる最適解
ともかく高価なスパークリングワイン・シャンパンを乾杯に用意すれば、みなが喜んでくれる。そうであればある意味簡単なのですが、そんな単純な話ではありません。
高品質なワイン = みんなが喜ぶとは限らないのです。
個人の好みは当然影響します。しかしそれを言い出せばきりがありません。
考えるべきは、その場の人数とワインの経験値。メンバーがディープなワイン好きなのかあまりワインを飲まない人なのかです。
ワイン初心者にシャンパンをおすすめしない理由
ほとんどワインを飲んだことがないのに、いきなり高価なシャンパンを飲んで「美味しい!」と感じる人もいます。
一方でシャンパンの美味しさが理解できず、「むしろ安いスパークリングワインの方が好き」と感じる人もいます。
私はかつて後者でした。だから「シャンパンって高いのに美味しくない」と感じる人の気持ちもわかります。
シャンパンは基本高価です。だからこそ値段に恥じない派手な味わいに仕上げようとします。香りに複雑さがあるのですが、慣れないうちは「よくわからない風味」と感じることもあります。
シャンパンの味わいに奥行をもたらすミネラル感も、私は最初「苦くて美味しくない」と感じていました。
飲みなれてくるとそれが美味しく感じるんです。
だからといって「皆が美味しく感じるはず」と考えるのはおすすめしません。
金銭感覚のズレを認識しよう
誤解を恐れずに申し上げると、ワイン愛好家の金銭感覚は概ね狂っています。私も当然狂っています。
シャンパンで5,000円といえばリーズナブルな部類ですが、5人で分けて一人グラス1杯ちょっと、それで一人1,000円って、「高い」と感じる感覚が一般的だと思います。
シャンパンの価格感を共有できるワイン好きの集まりなら、別に問題はありません。
でもワインをあまり飲まない人をふくめ様々な人が集まるシチュエーションなら、乾杯の1本が高価すぎるのは理解が得られないでしょう。
人数で選ぶ味わいの傾向
その1本を何人で飲むのか。それによってもワインの選び方は変わります。
グラスワインの標準的な分量は、100~125mlといったところ。ワイン1本は750mlなので、7人を超えるとやや少な目な量です。
少な目な量でも満足するには、味わいは濃厚である方がいいです。一方でグラス一杯ならば味わいがやや単調でも、飽きる前に飲み干してしまいます。
2,3人といった少ない人数で飲むなら、飽きずに飲み切れる方がいい印象で終わります。であるなら凝縮感が高すぎず、温度が上がるにつれて風味が変化するようなものが好印象です。
もし10人を超えるような大規模な会の場合は、乾杯のスパークリングワインは1本じゃ足りないでしょう。また人数が多ければ、ワイン好き度合いがいろいろな人が集まっているはずです。
2本3本と用意するならば、1本あたりの価格は手ごろなものの方が適当かもしれません。
ドサージュと飲みごたえ
スパークリングワインの糖度とほぼ同義であるドサージュ。それはワインの飲みごたえにつながります。
「BRUT」と表記される残糖12g/L以下のスパークリングワインにおいて、ドサージュの量は辛口/甘口にあまり影響しません。しかし味わいに関係がないわけではなく、ドサージュが多い方がより飲みごたえを感じます。逆にドサージュが少ない「ブリュット・ナチュレ」や「エクストラ・ブリュット」だと、より軽快に感じます。
このドサージュの量とブドウ品種、価格に伴う凝縮度が、適した人数を導くカギとなります。
ドサージュについてはこちらの記事で詳しく。