暑い時期は総じてスパークリングワインを美味しく感じますが、特にピッタリに感じるものには選び方があります。
ブラン・ド・ブラン、つまり白ブドウ100%でつくられるものを選ぶことです。
その白ブドウとは決してシャルドネだけではありません。他にもキリっとうまい泡が世界中にあります。
ジメジメを吹っ飛ばすかのようなスパークリングワインで、爽やかな晩酌を楽しみましょう!
スパークリングワインには黒ブドウも使う?
「白のスパークリングワインだから、白ブドウからつくるのは当たり前じゃないの?」
そう思っても決して恥ずかしいことではありません。現に白ワインのほとんどすべては白ブドウのみからつくられます。
でもスパークリングワインに限って言えば、黒ブドウも使われることが少なくないんです。
スパークリングワインの製法
シャンパンに代表される「伝統的方式」「瓶内2次発酵」などと呼ばれるスパークリングワインの製法は下記の通りです。
白のスパークリングをつくるための製法
シャンパンに限って言えば、ブドウは全て手摘みすると規定されています。
それに倣って上質なスパークリングワインをつくろうとする生産者は、法律で決まっていなくても手摘みしている場合が多いです。
加えて収穫されたブドウはすぐに全房圧搾されます。ブドウの房をそのままプレス機に入れて、圧力をかけて果汁と果皮・種を分離します。
圧搾する前に除梗・破砕する方法もあります。ブドウの粒を茎から外して軽く潰してからプレスすることも多いのですが、その方法はとりません。
収穫・圧搾の際にこの手法をとることで、色のついていないスパークリングワインができます。それは白ブドウだけではありません。ピノ・ノワールのような黒ブドウを使っても、果肉の部分が赤くなければ白のスパークリングワインがつくれるのです。
果肉まで赤い品種
数あるブドウ品種の中には、果肉まで赤く色づいて熟すブドウ品種もあります。たとえばガルナッチャ・ティントレラなどです。
こういったブドウをスパークリングに使うことはまずありませんが、もし無理やりつくるとロゼになってしまうものと考えられます。
赤ワインが赤い理由
そもそも赤ワインが赤いのは、ブドウの果皮の色が果汁に移るからです。黒ブドウの果皮は黒色に近い紫色なので、その色がワインに移ります。
発酵前にブドウを破砕して果皮を果汁に浸す。もしくは発酵時に果皮と果汁が接触する。
ワインが紫~赤、ピンク色をしているのは、この2つの理由に寄ります。
ブドウを機械収穫する場合、簡単に言えばブドウの樹をゆすってブドウの粒のみを叩き落して回収します。ゆえにある程度は実がつぶれてしまい、色がついてしまいます。
手摘み収穫したとしても、除梗をすればある程度果粒がつぶれて、やはり色がついてしまいます。
それを防ぐために、必ず手摘み収穫し全房圧搾するのです。
シャンパーニュの基本はブレンド
シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエ。
シャンパンの伝統であり基本はこの3品種のブレンドです。
シャンパーニュはブドウ栽培北限の産地であり、かつてはちょっと寒い年だとブドウの成熟度に問題が生じました。
だからこそ成熟のタイミングが違う複数品種を栽培することで、リスクヘッジを図ったのです。
それは決して商業的な安定のためだけではありません。ブレンド比率を調整することで、その生産者がつくるシャンパンの味わいを安定させる狙いもありました。
ブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワール
白ブドウのみからつくるスパークリングワインを「ブラン・ド・ブラン」と呼びます。
黒ブドウのみからつくる白のスパークリングワインを「ブラン・ド・ノワール」と呼びます。
もともとはシャンパーニュで使われた言葉で、前者はシャルドネ100%、後者はピノ・ノワールもしくはムニエのみでつくられるものに使われるのが通例。
しかし他の産地で他の品種でつくるスパークリングワインにも、この言葉が使われることがあります。まあ、シャンパーニュのブランドにあやかろうとしているのでしょう。
ブドウの白黒による味わいの違い
同じグレードのスパークリングワインで比較するなら、ブラン・ド・ブランよりブラン・ド・ノワールの方が、コクとボリューム感があることが多いです。
対してブラン・ド・ブランの魅力は、爽やかな酸味と軽やかな飲み心地でしょう。
これが1万円前後の価格帯になると、一概には言えません。ボリュームしっかり飲みごたえのあるブラン・ド・ブランだってあります。
でも家飲みワインの価格、おおよそ3,000円以下に限って言うなら、「ブラン・ド・ブランはスッキリ」と言っても問題ないでしょう。
夏にはブラン・ド・ブランを
ブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワールに優劣はありません。もっというなら、「美味しいようにブレンド比率を調整できる」両方のブドウを使ったスパークリングワインの方が美味しいはずです。
でも夏に飲むスパークリングワインという前提なら。ジメジメした気候のもとたくさん汗をかいて帰宅したあなたの身体に対してなら。明日の活力のために、晩酌のお酒でスッキリと気持ちをリセットしたい気分ならば。
白ブドウ100%でつくるブラン・ド・ブランのスパークリングワインの方がより美味しく感じることが推測できます。
白ブドウ100%でつくるスパークリングワインのおすすめ
今回は自宅で普段飲みすることを想定して、3,000円以下でおすすめをご紹介します。
この価格帯となると、それほど2次発酵の熟成期間は長くありません。それは必ずしも悪いことではなく、フレッシュ感や品種特性の現れたスパークリングワインが出来上がります。
ご自身の好きなブドウ品種を中心に、あまりなじみのない土着品種もぜひお試しください。
爽やかさを最大限活かす製法
ソーヴィニヨン・ブラン100%
白ワインでもソーヴィニヨン・ブランはフレッシュ感と清涼感に溢れる品種です。スパークリングワインでもそのキャラクターを活かす目的で、炭酸ガス注入方式が採用されています。簡単に言えばサイダーです。
インヴィーヴォという生産者が、「嫌われにくい」ワインをつくるのが非常に上手。だからソーヴィニヨン・ブランという品種が苦手でないのであれば、ガッカリすることはまずないでしょう。逆に品種の個性はそのままなので、嫌いな人はどうしようもありません。
それだけにジメっとした空気を払しょくする爽やかさは抜群!ちょっとした失敗を忘れたい気分のときなどにはピッタリでしょう。
ただし泡の持続性はそれほどよくありません。開けたその日のうちに飲み干すのをおすすめします。
炭酸ガス注入方式のメリット
この方式は安上がりですが、メリットはそれだけではありません。
ガスを注入するだけで2次発酵しないので、ベースワインのアルコール度数を上げません。だからブドウを適度な熟度まで待って収穫することができます。
瓶内2次発酵やシャルマ方式なら2次発酵でアルコール度数が上がるので、それを逆算して早く収穫する必要があります。ソーヴィニヨン・ブランは早く摘みすぎると、青臭い風味が強くなりがちです。
加えて瓶内2次発酵で何か月・何年と熟成させると、フレッシュさがなくなります。ソーヴィニヨン・ブランの良さを殺してしまうのです。
総合してソーヴィニヨン・ブランでスパークリングワインをつくるうえで、この炭酸ガス注入方式は非常に適しています。
繊細で飽きない味わい、リピート多し!
シュナン・ブラン100%
高級品では例外も多いですが、安価なシュナン・ブランは線が細く軽快な味わいの白ワインが多いです。
スパークリングワインでもまさにそう。印象の強いワインではないのではないですが、その分飽きがこない。
「このワインが飲みたい」と選ぶというより、「美味しかったから、またこれ"で”いいや」と選ばれているんじゃないかと予想します。COCOSのスパークリングワインの売り上げにおいて、常に上位にランクインしています。
甘い香りとドライな味わい、だけどど真ん中
ジャケール100%
「サヴォワ地方」という産地も「ジャケール」という土着品種も、ソムリエやワインエキスパートの勉強をしてない限りなかなか親しみのない言葉。ただ、この地方では珍しいものではありません。だから「知らないだけで別に突飛なものではない」という安心感だけ持ってください。
その上でハチミツのような少し甘い香りと、しっかりドライな味わい。夏の中でも「今日は少しだけ暑さがマシだね」という日に飲みたいバランスです。
産地も品種も珍しい割には、その味わいは皆に好かれるスパークリングワインのイメージど真ん中。決して冒険するワインではありません。
「クレマン」とつけば一人でも安心
「一人暮らし・パートナーは飲まないから、自分で1本飲み切らないと。だからスパークリングは開けにくい」そんな方もいらっしゃるでしょう。泡が抜けてしまったスパークリングワインは、基本的に美味しくないし悲しい気持ちになるからです。
その点において、瓶内2次発酵のスパークリングワインは、長い期間をかけて炭酸が溶け込むので、泡が抜けるのもゆっくり。
フランスのスパークリングワインで「クレマン」と表記があれば、最低でも9か月の瓶内2次発酵を経ていることが保証されます。3日程度はしっかり泡を保ってくれます。1日2杯強なら飲めるという方も多いでしょう。
泡の元気さとメシワイン
ガルガーネガ100%
「ソアーヴェ」とはイタリア・ヴェネト州の名物ワイン。「みんなの憧れ」とかではなくて、一般庶民の生活に溶け込んだワイン。食事と一緒に常にあるような、年から年中楽しまれる白ワインです。
白ワインが基本ではありますが、少なからずスパークリングワイン「ソアーヴェ・スプマンテ」もつくられています。キャラクターとしてはソアーヴェと一緒。香りの特徴よりも軽快な飲み心地に魅力のあるワインで、ついもう一口とお酒が進む。
このワインがあると知らぬ間に食べ過ぎてしまう、飲みすぎてしまうかも?
この1本で楽しむおうちイタリアン
グリッロ100%
「あ、手ごろなイタリアンのグラスワインで使われてそう」
試飲会にてこのワインを初めて口にしたときの感想です。
カジュアルなイタリアンって、1品目が前菜の盛り合わせであることが多いじゃないですか。それを引き立てるワインは、1対1の好相性よりも1対多のほどほどの相性。ちょっと海の風味を感じさせるこのスパークリングは、その要望に見事にこたえてくれます。
レストランみたいにこじゃれた感じにしなくていいんです。「とりあえずオリーブオイルとニンニクとトマトをつかえばイタリア風!」みたいなこじつけおうちイタリアンな料理。適当に美味しそうなものつくっても、このワインがちょっとだけより美味しく感じさせてくれる。そんな懐の広さがあります。
ワンランク上のカヴァは上品さが違う!
カヴァの伝統品種+シャルドネ
「カヴァは安いからこそ価値がある」なんて言ったら怒られそうですが、実際1000円台でもそこそこ美味しい銘柄の多いカヴァ。ちょっと高い価格を払うなら、それ相応の美味しさを期待させてほしいもの。
とはいえ「美味しさ」は数値化できるものでも絶対的なものでもありません。あくまで感覚的なものなので、感覚的な言葉にならざるをえません。
この2,000円台半ばのカヴァが1,000円台と違うところは、気品と洗練。はい、思いっきり抽象的なイメージです。
やや高めの酸味と味わいの透明感。おそらくはワインづくりにおいて当たり前のことを生真面目にやっているのでしょう。そう予想させるスキのなさが、安いカヴァとの違いです。
真夏は白ブドウのみでつくる泡で乾杯!
一般消費者がワインを買って楽しむ上で、専門家の評価は選び方のヒントの一つにすぎません。
「買ってよかった」そう感じたなら、いくら評価が低くてもあなたのそのシチュエーションにとっては最高のワインです。
もちろん評価の高いワインや単純に高価なワインは、個人の好みを飛び越えて「美味しい!」と感じさせるパワーを持っています。だから好みが様々な人と飲むなら、高いワインの方がそりゃ無難です。
でも予算に限りのある晩酌ワイン。満足度を上げるためには、自分の好みを分析してそれにあわせてワインを選ぶのが大前提。加えて季節や飲むシチュエーション、料理などとの相性を考慮してピッタリのものを選べれば、より満足度が上がります。
今回は「真夏に家飲み価格帯のスパークリングワインを選ぶなら、白ブドウ100%でつくるものを」という理由と具体的なワインをご紹介しました。
ご紹介したほかにも、ブラン・ド・ブランのスパークリングワインは無数にあります。ぜひ自分なりの大正解を見つけてみてください。