ワインの楽しみ方ガイド

お寿司にあうワイン!?くら寿司とワインの相性を徹底検証

2022年7月15日

 

 
「和食」と聞いてまず思い浮かべるのが「すし」でしょう。もはや「SUSHI」は共通語です。
今回はくら寿司をテイクアウトしてワインの相性を検証しました。
探したのは「このネタにはこのワイン」ではなく、定番のネタに幅広く合う使い勝手のいいもの
最も万能にすしのお供となったのは、当初の予想を裏切ってあのワインでした。
 
 

お寿司とワインの相性 その良い・悪いとは?

 
お寿司を食べながら飲むものは、普通は暖かいお茶ですね。
お酒ならまず日本酒です。米を原料としていることも関係するのか、日本酒に合わないネタというのもあまりない。
今回はここがベースラインです。せっかくワインを合わせるなら、お茶や日本酒を超えることを「合っている」ラインとします
 
 

今回目指す"合っている"の基準

 
今回目指すのは、様々なネタ全般に合うもの
「このネタにはこのワイン」というピッタリのものは狙いません。だって1貫ごとに違うワインを開けるなんて、お店でも非現実的ですから
また、今回は付属の醤油をつけて食べることに限定します。「このネタは岩塩で」「オリーブオイルを少し垂らして」などの工夫でワインに近寄ってくれるネタはあるでしょうが、今回は考えないことにします。
 
 
そのうえで、お寿司をモグモグしながらワインを飲んだ時どうなるのか。
 

お寿司とワインが合うとは

◎ネタの鮮度が上がったかのように美味しく感じた
◎ワインの風味がより複雑に、バランスよく感じた
◎これならいくらでも食べられる!そんな錯覚を覚えた
 
このように感じた時"合っている"と判断します。
 
 

ワインとお寿司が"合ってない"とは

 
逆に"合っていない"ときはどうなると予想できるか。
 

ワインとお寿司が合っていない

× お寿司が生臭く感じる
× ワインの酸味が尖って残ってしまう
× ワインの味が強すぎて、口に含んだ時からお寿司を感じなくなる
 
こうなったとき相性が悪いと判断します。
 
 

検証する寿司ネタ

 
くら寿司の季節ものではない定番ネタの中から次の10種類を選びました。
私の胃袋のキャパシティーが20皿40貫くらいですので、ワイン4本×10種類という計算です。
ネタは次の通り。
 
極み熟成まぐろ
サーモン
はまち
ゆず塩かつおたたき
真いわし
極み熟成真鯛
やりいか
甘エビ
味付けいくら
たまご焼き
 

知ってました?世間一般にはこれは1人前ではなく4人前だそうですよ。

 
 

ワインと合わせたときの生臭みについて

 
研究によりワインと魚介類を合わせた時の生臭みには、鉄の2価イオン(Fe2+)が関わっていることが分かっています。
 
正直私も半分ほどしか理解できていません。そのメカニズムや証拠が気になる方はこちらのリンクをご覧ください。
 
 
この研究から、鉄イオンの濃度が低いワインは魚介とあわせたときにも生臭みが出にくいということがわかります。
そして鉄イオン濃度が低いワインこそ、日本の甲州をつかった白ワインなのです。
 
 

酸化防止剤無添加のワイン

 
亜硫酸の入っていないワインは魚とあわせても生臭くない
そういう主張を聞いたことがあります。
その話を聞いた時は、話している人から亜硫酸無添加に対する妄信的な賛美を感じたので、うさん臭く思っていました。
 
しかし上記の研究をもとにすると一考するかちはあります。
先述のとおり生臭みにはFe2+イオンが関係しますが、そのイオンが1つ電子を失った(酸化した)状態のFe3+イオンはあまり影響しません。そしてワインにはFe2+もFe3+も含まれています。
 
亜硫酸は強い還元性を持ちます。だから酸化防止剤として働くのです。
その亜硫酸がFe3+をFe2+に還元してしまう可能性。十分あり得ます。
 
ただ、その程度は私にはわかりません。そもそも亜硫酸は添加しなくてももともとワインに含まれています。濃度が少し上がった程度でペアリングの風味に大きな影響を与えるのかどうか。もしそういった研究があれば論文を読んでみたいものです。
 
 

今回検証するワイン

 
今回は4種類のワインを候補として選びました。
お寿司に万能にあうワイン」という方向性のため、赤ワインを外して白2本ロゼ・スパークリングという構成です。
 
経験的にオーク樽熟成の風味が感じられるものは生魚と苦戦します。
それもあって赤ワインは外しました。
 
 
先述の研究から、まずは樽熟成を行っていない甲州
 
それから日本と同じく生魚を食べるスペインのバスク地方のワインであるチャコリ。「チャコリおじさん」ことインポーターいろはわいんの寺田さんの推薦は、「醤油をつけて食べるお寿司にはチャコリのロゼ!」とのこと。なので当店人気銘柄のイルスタのチャコリを白とロゼでそろえました。
 
 
チャコリおじさんはこの方です。
 
さらに酸化防止剤無添加ワインとしてクローヌ
クローヌが亜硫酸を加えないのは、醸造家ニッキーの奥様が亜硫酸に対してアレルギーを持っていたからだと言われます。
その理由は、いわゆる"自然派ワイン"の生産者たちとは全く違うものです。
 
まずはワインだけで飲んで味わいを確認していきます。
 
 

甲州ヴェルディーノ

 

色合いは驚きの透明感。こちらも香りは控えめで伊予柑のよう。瑞々しい味わいは酸味も中程度で余韻も短い。良くも悪くも「水みたい」なワイン。

 
 

イルスタ

 

ゆずなどの柑橘と洋なしの控えめなアロマ。細かな泡があるので物理的にクリスプな口当たりで、軽やかな果実味がフレッシュな高い酸味とともに広がる。余韻は短く消えるかに感じるが、よくよく味わうと塩味にも似た海のミネラルがじわっと舌をつかんだまま10秒以上続く。

 
 

イルスタ・ロゼ

 

クランベリーやリンゴあめのような控えめなアロマ。口に含めばチャコリらしいキュッと舌を締め付ける酸味を感じるが、それと同時に舌先をべったりと包むような触感も感じる。まるで酸味の高いワインに少し酸味の低いワインを混ぜたかのごとく。白と比べると明らかにボディ感が強く、味わいが横に、ほっぺたの方へと広がる。余韻はややくぐもった風味。

 
 

クローヌ・ボレアリス・ブリュット

 

ブリオッシュやマジパン、マーマレードのような甘いアロマ。アップルパイのような凝縮感のある果実味で、余韻も長くつづく。酸味の高さはあまり感じない。 つい先日試飲会で飲んだボトルより明らかにうまい!個体差かな?

 
 

お寿司との相性を検証する

 
今回は基本わさびを少なめにつけて、醤油をつけて食べました。
一度ごっくんしてまだ口に残っているかどうかというタイミングでワインを飲んでいます。
 

まぐろとの相性

 
甲州 
イルスタ・白 △~〇
イルスタ・ロゼ 〇?
クローヌ △

 
建前上は「お寿司といえばこのネタ」であるマグロ。ただ、100円のお皿なので、実際は代用魚じゃないでしょうか。
 
 
甲州との相性はまずまずいい。少しだけ甲州が酸っぱく感じますが、もともとが酸味が低いのでちょうどいいくらいです。
イルスタ・白は悪くはないが引き立てる感じもないので、今回の検証では落第です。
イルスタ・ロゼは判断に困りました。飲み込む瞬間に醤油のうま味を引き立てているようにも感じましたが、ケンカしているようにもとれます。
クローヌはワインが持つ甘味が少し強調されてもったりする感じ。同時にごくわずかな生臭みも感じました。
 
総じてどれも「悪い」というほどではありませんでした
おすすめできるほどの相性ではありませんが、「ワインを飲みたいなら、つまみがお寿司のまぐろでも問題ないよ」というレベルです。
 
 

サーモンとの相性

 
甲州 △~〇
イルスタ・白 〇
イルスタ・ロゼ ◎
クローヌ △

 
実質的にお寿司の一番人気はサーモンではないでしょうか。
 
 
甲州との相性は先ほどと同様、ほぼ変化なし。
イルスタ・白と合わせたときは、醤油とワサビの味が強調されたように感じました。悪くはないです。
イルスタ・ロゼとの相性がベスト。しっかりサーモンのうま味を受け止めて、味わいが持続しました
クローヌとあわせたとき、相性は悪くないがバランスが悪く、クローヌの味が強すぎました。
 
全体としてマグロよりも相性が良く、今回検証したお寿司の中でベストと言えました。
 
 

ハマチとの相性

 
甲州 ×
イルスタ・白 △ 
イルスタ・ロゼ ◎
クローヌ △

 
つづいてハマチ。筋がある部分があたったこともあり、割と歯ごたえがありました。
 
 
甲州はハッキリダメでした。甲州の酸っぱさが強調され、その後に生臭みが少し。
イルスタ・白も苦戦しており、ワサビの尖った感じだけが目立ちました。
イルスタ・ロゼがこれでも優勝。ワインの甘味がやや強調されるが、そのあとにハマチの風味がもう一度盛り上がります。それでいて生臭みはない。
クローヌは惜しいんだけどやっぱり少し味わいが強い。勝ってしまいます。
 
マグロやサーモンに比べて、相性の良し悪しがハッキリ別れるネタといえます。
 
 

ゆず塩かつおたたき

 
生姜とネギが乗っているのでワサビなしで合わせます。
 
 
甲州 
イルスタ・白 △~〇
イルスタ・ロゼ ×
クローヌ ×

 
甲州は問題なく受け流している感じがします。驚くような美味しさではないですが、スムース。
イルスタ・白はやや酸味が尖るように感じますが、許容範囲です。
イルスタ・ロゼは生臭さではないのですが、風味がケンカしています。鉄臭くもったりとした印象。かつおというより、ネギが悪さしてそうです。
クローヌもネギに負けていそうで、酸味が強調されてしまいました。
 
かつおのたたきはスーパーなどでも手に入れやすい食材です。もしワインと合わせるなら、ネギなしでかつおと醤油がいいかもしれません
 
 

いわしとの相性

 
かつおのたたきとの相性から、ネギはあらかじめ取り除きました。
鮮度がそこまで良くないのか、お寿司自体にある程度いわしの生臭みがあります。
 
 
甲州 
イルスタ・白 △~〇
イルスタ・ロゼ 〇
クローヌ 〇~◎

 
甲州は生臭みを強調も取り除きもせず、飲み込んだ後に生臭さがまた戻ってきます。
イルスタ・白は生臭みをやや抑制してくれます。ただ、いわしの脂の乗りがよくて、少し受け止めきれていないようにも感じました。
イルスタ・ロゼはほんの少し生臭さを強調しているようにも取れるが、脂身をしっかり受け止めているので相性は良かったです。
クローヌは生臭みの強調がまったくなく、引き立てはしないもののバランスがとれています。
 
劣化が早く生臭みが出やすいイワシですが、どのワインでもそれほど悪くはありませんでした
 
 

やりいかとの相性

 
甲州 △~〇
イルスタ・白 △~〇
イルスタ・ロゼ △
クローヌ △

 
 
甲州は問題もないがいいところもなし。つまり合わせる必要なしというもの。
イルスタ・白についても特に寄り添う変化なしで、難しい。
イルスタ・ロゼは良くなくて、生臭みともったり感が強調されました。
クローヌは例によって味わいが強すぎ、やりいかと合わせる意味がありませんでした。
 
ある程度予想はしていましたが、いかで苦しみました。
高級なお寿司ならともかく、手ごろなお寿司のいかに味わいはなく、歯ごたえとねっとりとした食感だけです。
引き立てるものがない場合、ワインとの相性は苦しむようです
 
 

極み熟成真鯛との相性

 
甲州 △~〇
イルスタ・白 
イルスタ・ロゼ △
クローヌ △~〇

 
 
甲州はこれまた良くも悪くもないというもの。
イルスタ・白と合わせるとやや酸味の質が悪くなる印象がありました。しかし、不味いというほどではありません。
イルスタ・ロゼはわずかに生臭みが強調されてしまいました。しかし白のように酸味がわるくなることはありませんでした。
クローヌはこれまたワインが勝ってしまっていますが、他に比べるとわずかなバランスで、悪いところはありません。
 
これまたたんぱくな味わいのネタで、相性の判断はやや分かりにくいものでした。
ただ、どれも致命的に合わないというものではありません。
 
このあたりでお腹いっぱいになってきました。
 
 

甘エビとの相性

 
鬼門となりそうなイクラの前、油断していたところに伏兵がいました。
 
甲州 ×
イルスタ・白 ×
イルスタ・ロゼ ××
クローヌ ×~△

 
これはワサビをほんの少しつけていただきます。
 
 
甲州は苦味やえぐみのようなものが強調されて、よくありません。
イルスタもあまり良くなくて、生臭みをともなうもったりとした感触が残ります。
イルスタ・ロゼはここまでで一番悪い相性。もったりとした印象が強調されて、風味がケンカしています。
クローヌは酸っぱさが少し目立ちますが、この中では一番マシでした。
 
総じて、甘エビはワインと合わせない方がいいと言えます
エビ自体は合わないことはない。特に火を通せばリースリングなどのワインを始め、いろいろ選択肢があります。
しかし生で甘味がありねっとりとした食感ですと、かなり相性に苦しむようです。
 
 

いくらとの相性

 
一般にワインと魚卵は合わないと言われます。いくらは当初から苦戦が予想されました。
これはワサビはつけていません。
 
甲州 ×
イルスタ・白 △~〇
イルスタ・ロゼ △~〇
クローヌ 〇

 
 
甲州との相性は悪くて、苦味やえぐみが強調されます。
イルスタは悪くなくて、苦味は感じるものの、味わいはしっかり受け止めてくれます。
イルスタ・ロゼはワインのもったりとした風味が強調されるものの、単純にネガティブとは言い切れません。
クローヌが一番良くて、いくらの生臭さを相殺している感じ。ネガティブな要素は全く感じません。
 
当初危惧していたほど悪い結果にはなりませんでした。
ただ、1皿100円のネタなので、本当に魚卵としてのいくらかどうかは、私には判別しかねます。
 
 

たまごとの相性

 
いろいろ試した後の最後のオアシスとしてチョイスしたたまごが、実は一番の難敵でした
これもワサビなしでいただきます。
 
甲州 ×
イルスタ・白 ×
イルスタ・ロゼ △
クローヌ ×~△

 
甲州は苦味と酸味が強調されてアウト。
イルスタ・白との相性は全くダメ。苦さと酸っぱさが強調されます。
イルスタ・ロゼはちょっと硬い印象になるものの、そんなに悪くありません。
クローヌは酸味が強調されてトゲトゲしくなって、美味しくないです。
 
ワインと玉子の相性もあまり良くないとされています。それは玉子の持つ硫黄の香りが、ワインのネガティブな香りと感じてしまうからと言われています。今回はその硫黄の香りより、玉子の甘さと反発しあっている印象を受けました。
 
最後のたまごは写真撮り忘れ・・・40貫とワイン8杯くらいお腹に入れて、うぷってなってたので大目にみてください。
 
 

総評 お寿司に万能にあうワインは?

 
総評として今回の検証でベストのワインを選ぶにあたり、考え方が2つあります。
 
まず一つは、「自分はワインが好きだから、お寿司を食べるときも何かしらワインを飲みたい。他のお酒じゃなくて」という考え方。
この場合はクローヌが一番でしょう。今回の寿司10種類において、致命的に相性が悪いものが1番少なかったのがクローヌです。バランスとしてワインの味が強かった組み合わせはありますが、食事を通してこのワインを飲んで後悔はないと言えるでしょう。
 

 
今回は幅広いお寿司に合うワインがお題ですので、クローヌを優勝とします。
 
 
ただし、「お寿司とワインが引き立てあう」という、ペアリングの原則から考えたときの優勝はイルスタ・ロゼです。
 
 
サーモンやハマチとイルスタ・ロゼは、合わせることで旨みが一段上がっていました。
「お茶や日本酒でお寿司を食べるよりさらに美味しく」という目的なら、一番可能性とリスクがあるのはこのワインです。
 
 
 
ネタが違えばやはり合う・合わないは違いがあります。
身近な回転寿司とワインとの相性検証、友人と集まった際にワイワイとやってみるのも楽しいでしょう。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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