通販が一般のワインショップに勝る点は品ぞろえです。
何か探しているワインがあったら、当ブログをご覧になっているような方は、まずGoogleやAmazon、楽天市場などで検索されることでしょう。
実際、そうでもしないとなかなか手に入らないワインというものもあります。
ワインショップの裏事情なども交えながら、一般のワインショップにはなかなか置いていないような珍しいアイテムをご紹介してまいります。
実店舗との違い、それは商品数
当店には現在、2000種類ほどのワインの在庫があります。
楽天市場で売り上げの多いワインショップの中には、この3倍ほどのワインが登録されているところもあります。
おそらく、日本に6000種類のワインの在庫を置いている実店舗はないでしょう。
ワインのネットショップとリアルショップの違い。それは商品数です。
商品数が違う理由
お客様にとっては商品数が多くて困ることは、探すのが大変というくらいで、どちらかというと多い方がいいでしょう。
しかし実際にはネットショップの方が往々にして商品数が多い理由。それはスペースの問題です。
リアルショップにとって立地は重要です。
人通りの多い立地にあることは、何より強く新規客を呼び込めます。
必然、地価は高くなりお店のスペースも限られてきます。
一方でネットショップにとって立地は然程重要ではありません。
もちろん僻地すぎると働く人の確保に困りますが、基本的にはほどよく田舎の方がいい。都心部から外れて地価の安いところの方が、低いコストで大きな倉庫が持てます。
商品数の違いは単純にスペースの問題です。
どちらにせよラインナップは大切
とはいえいくらワインを置くスペースがあっても運用資金がないとワインは在庫できません。
なのでリアルショップでもネットショップでも、どのワインを置くか、どのワインを置かないかが重要です。
滞留在庫ばかり増えていってはお店が潰れてしまいますから、売れるものを仕入れるのが基本です。
一方でほっといても売れるものばかり揃えても面白みのないお店になってしまいます。
だから、「売りたいもの」も仕入れてそれをアピールし「売れるもの」に育てていくのが、ショップの特色となります。
それでもネットショップはスペースに比較的余裕がある分、「売れるかわからないけれど、面白いから置いてみるか」のハードルは少し低くなります。
商品ラインナップの考え方
ワインのラインナップの考え方。これからご紹介するのはあくまで私の持論ですが、他のバイヤーの方も大きくは違わないと推測します。
基本としては「お客様になるべく多くの選択肢を提供するため、満遍なくそろえる」です。
これは当店のような国の専門性がない総合のショップでも、「イタリアワイン専門店」のような範囲を絞ったラインナップでも同じ。
それぞれの範囲で需要に応じて幅広くそろえようとするものです。
$判断のための要素
満遍なくそろえるというのは、それぞれの要素について重複をコントロールするということです。
その要素とは、ワインの価格・生産国・品種・味わいのタイプなどです。
例えば「2000円くらいの樽の効いたカリフォルニア産シャルドネ」ばかりを揃えるのではなく、「2500円くらいの同じタイプ」「3000円くらいの同じタイプ」を優先してそろえるということです。
需要があるものは厚く
一方で、ラインナップを均等にするかというとそうではありません。
例えば先述の「2000円くらいの樽の効いたカリフォルニア産シャルドネ」は非常によく売れるワインです。
なので、例えば「8000円の樽の効いたカリフォルニア産シャルドネ」に優先して2本目を仕入れますし、「2000円くらいのドイツ産シャルドネ」に優先して3本目を揃えます。
まだまだ珍しいドイツのシャルドネより、多くの人が飲んでいるカリフォルニアのシャルドネを「こないだの美味しかったから似たような別のワイン試してみよう」の方が売り上げが見込めるからです。
自然と売れるものを売る
ワインの販売は経済活動ですから、売り上げ・利益を上げることがまず第一に考えるべきこと。
なので売れるワインに類似したもののラインナップを厚くするのは当然のことです。
例えば当店は、「ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン」もよく売れるワインの一つです。
故に同じような価格帯でたくさんの選択肢があります。売れるから増やしてきました。
「1本2500円以下で12本1ケースすべてバラバラの銘柄を」なんて買い方もできます。
すると「手ごろなニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン」好きな方には利用しやすいお店となっているはず。
こうしてそのワインショップの強みになっていくのです。
売れるものと売りたいもの
売れるものをたくさん売っていくのは、長くないスパンで見ると効率良いですし、マーケティング的にも正しいのでしょう。
しかし「売りたいもの」のないお店は、早晩飽きられていくと考えています。
ワインを選ぶ者がAIではなく一人のワイン好きであるなら、当然その人の好みは現れます。
あまり売れている様子はないのにラインナップの厚いカテゴリーがあったなら、きっとそれがワインを選ぶ者の好みです。
当店はドイツの1万円以上のピノ・ノワールはたくさんそろえております。かなり生産者に偏りがありますが。
私片山の趣味です。正直、ポコポコ売れてはいません。(低価格帯はおかげさまで売れるようになってきました)
大切なのはバランス
オーナーでもないのに好きなワインを入れさせてもらえるのは、回転がよく利益を生み出しているワインも多くし入れているからです。
その中には「売れることは分かっていて仕入れるけど、ぶっちゃけ好きじゃない」ワインもあります。
「売れるワイン」と「売りたいワイン」
それらがバランスよく仕入れられてこそ、ショップとして成長し、お客様に価値を提供できるのではないかと考えております。
この通りに行くなら「好きなわけでもない、珍しいワイン」を仕入れることはほとんどありません。
珍しいということは、あまり多くの人が飲んでないということであり、売れる見込みの高くないワインだからです。
そんなワインがもし扱われているとすれば、「好みとは別に、試飲したときに価格に対しての品質の高さを実感した」可能性が考えられます。
「こんなんよく置いてるなぁ、売れるの?」というようなワインは、ひょっとしたらとびきり美味しいワインかもしれません。
輸入元との取引事情
当店のワインは全て輸入元さまから卸されたものを販売しております。
輸入元さまとの取引条件や関係性なども、商品ラインナップに影響を与えます。
輸入元さまとの取引条件
その比率は申し上げることはできませんが、我々ワインショップは輸入元さまが定める定価よりも安い価格で卸しを受けています。
その卸価格と販売価格の差がワインショップの粗利となります。
基本的に輸入元さまと取引する場合はロット単位というものがあります。
多いのは混載、つまりワインをバラバラに12本1ケース単位で注文すれば、送料は輸入元さま持ち、という条件。
送料がかかれば販売価格に乗せる必要がありますので、基本的にはロット単位に沿った注文をします。
欲しいワインを1本だけ、という注文は基本的にはできないのです。
もちろん、ロット条件が金額なこともあります。
「混載1ケース以上、もしくは定価で5万円以上」のような条件です。
条件がもっと多く、2ケース、5ケース以上という輸入元もあります。
“ロットを組む”ために
ある輸入元さまから仕入れたワインについて、均等に在庫が減るならば売れたものを再発注するだけ。ロット条件を満たす、ロットを組むことに困りません。
しかし、そのようなことは基本的に起こりません。
「このワインだけ無くなっちゃったから発注したいけど、他が減ってなくてロット組めない」というのが日常茶飯事です。
ロット組みで困らないためには、1社から仕入れるワインの種類を増やすこと。何よりよく売れるワインを仕入れることが必要です。
お店の陳列スペースや倉庫スペース、運転資金に限りはあります。
闇雲に取引輸入元さまを増やすと、かえって商品を回転させにくくなるため、売り上げ規模に応じて絞るものです。
輸入元さまにもそれぞれ特色がありますから、どこの輸入元さまと取引しているかもまたお店の特色となります。
受注発注のネットショップ
お店にとって最大の負荷である在庫金額と在庫スペースを節約するため、受注発注で運営するネットショップもあります。
注文を受けてから発注し、それが届いてから出荷するわけです。
そういったところは、納期が「3~7営業日以内に出荷」となっているほか、価格面では魅力的なところが多いです。
そういうところは、当店よりはるかにロット組みに頭を使うんだろうなと推測します。
「あと2本で12本ロット組めるところに、5本の注文入った。どうしよ?」みたいな。
そういうお店で「自分の注文したワインなかなか来ないなぁ」と思ったら、きっとロット組みに困っています。
当店はすべて在庫商品です!
COCOSの扱うワインは、ごく一部の例外を除いてすべて在庫があるワインです。
例外というのは、一部の人気ワインの予約販売、輸入元さまから直送される企画商品など。
あとは恥ずかしながら誤発送や管理ミスで、注文後に在庫がなくなっているのに気づくパターンです。(ごめんなさい)
在庫があれば、すぐ発送できます。14時までの注文で、営業日は当日発送しています。
「あ!これ美味しそう」と思って購入手続きしたワイン、早く飲みたいじゃないですか。
ニッチなワインに受注発注は向いてる?
でも時に受発注の誘惑にかられることはあります。
「美味しい」「美味しそう」だけど「売れなさそう」なワインを見つけたときです。
例えば、珍しい地域や一般的でないタイプのワイン、3000円以下で美味しいのを見つけたから仕入れたとします。
それくらいなら頑張ってアピールして売ります。
ただ、その生産者が同時に7000円の上級ワインをつくっていたとしたら。
そっちも並べたいけれど、諦めざるを得ないでしょう。だって自分だったら飲んだことないのにその価格、手を出さないもん!
そんなとき、登録だけしておいて受注発注で、というのが頭をよぎります。
まぁ、いろいろなリスクがあって結局はやらないのですが。
ネットならではであろうニッチなワイン
ネットショップは実店舗に比べると、保管スペースにやや余裕がある。
その差を活かしたような、正直あまり売れていないけど意外と美味しい、ニッチなワインを紹介していきます。
ラーツ ファミリー カベルネ フラン 2017
高級なカベルネ・フランの産地と言えば、まずボルドーのサン・テミリオン地区。それからロワールのシノン地区などが挙げられるでしょう。
実際、シャルル・ジョゲの同じ価格帯のカベルネ・フランを扱っていますが、ちゃんと売れていきます。
それが南アフリカでとなると、なかなか難しいのが現状。
ワインは間違いなく良いんです。
南アフリカで訪問したときに飲んで、でも売る自信がないからスタンダードクラスのドロマイト・カベルネ・フランのみにしようかと考えていました。
ところが、一度当店のスタッフで飲み会をする機会があり、その際にこの「ファミリー」を皆で飲んで納得させてしまった、というのが扱っている経緯です。
ボルドー、サン・テミリオン地区の上級ワインに全く負けていませんでした。
これが売れていないのは、まこと我々のアピール不足でしかない。
フリードリッヒ ベッカー ギョーム ロートワイン キュヴェ トロッケン 2015
フリードリッヒ・ベッカーのワイン自体はよく売れています。
しかし、2021年4月時点で17種類も扱っていますので、当然人気に差は出てきます。
何このドイツっぽくない品種のブレンド
エチケット違うけど、これもベッカーなの?
そんな声の聞こえてくるこの赤ワイン。
先入観なく飲めば、案外「普通の赤ワイン」としてすっと入ってくるんですが、品種や地域が気になるような中級者だと、頭にいっぱい「?」を抱えることになるでしょう。
プティット プティ 2017 マイケル デイビッド
珍しいながらも、ほどよく売れていっている例外として。
プティ・シラーもプティ・ヴェルドもどちらも補助品種。ワインに濃い色合いや力強い味わいをもたらすべくブレンドされるものであり、あまり単一のワインは見かけません。
なので購入されるお客様も「プティ・シラーってこんな味だよね、美味しそう」で購入されるわけではないと推測します。
「カリフォルニアで樽をきかせた濃厚赤ワインって、だいたいこういう味だよね」というイメージがあるから、珍しい品種でも売れていくのでしょう。そして実際、イメージどおりの味です。
タシュナー イルサイ オリヴェール 2019
1年半ほど前、実店舗に外国人のお客様が日本人のお客様に連れられて来店されました。(当店では珍しいです)
「何か珍しいワイン買って帰りたい」と仰るので、とある日本のワインと、このワインを出したところ、「ぼく、ハンガリーから来たんだ」とのこと。偶然です。
でもイルサイ・オリヴェールなんて品種知らないよ!
ハンガリーでも珍しい品種のようです。
ジャンシス・ロビンソンMWの『The Grapes』によると、1930年にハンガリーで開発された交配品種です。
柔らかい口当たりのアロマティック品種で、このワインからもマスカット系品種やゲヴェルツトラミネール種に感じるような香りの広がりがあります。
白い花や洋ナシに例えらえますが、香りの中に甘さもあり、実際の糖度よりも甘く感じると思われます。
なにより、「ちょっと試してみよっか」となりやすい価格がうれしいこのワイン。
ワインに力を入れているカジュアルなレストランで、グラスで飲めたら嬉しいな~。