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チャレンジする勇気をくれる!?その土地のパイオニアがつくるワイン特集

2023年3月30日

チャレンジする勇気をくれる!?その土地のパイオニアがつくるワイン特集 
 
新しいことにチャレンジする。その勇気をくれるかもしれないパイオニアのワインを飲みませんか?
挑戦には失敗がつきもの。だって失敗は怖い。でもその先にしか成功はない。
誰も成功者のいない土地でワインをつくり始め、産地の代表銘柄となったワインを集めました。
ワイナリーの成功にあやかって、「新年度、よ~しやるぞ!」という気合を自分に注入してください!
 
 

パイオニアのワインは新世界にのみ

 
今回ご紹介するパイオニアがつくるワイン。全てニューワールドのワインです。
なぜならワインをつくり始めた人の記録が残っていて、なおかつそのワイナリーが現存していないといけないからです。
 
 

ヨーロッパ各地域のパイオニアは追いきれない

 
トスカーナでワインをつくり始めたパイオニアはだれかしらいるでしょうが、2000年以上前では確かな記録なんて期待できません。
 
 
ワインづくりの歴史が非常に長いヨーロッパ。キリスト教の伝播とともにほぼ全域でブドウ栽培が試みられたことがあるはずです。
現在ワインがつくられていない地域は、誰もワインをつくろうとしなかった訳ではなく、試みて失敗し衰退した生産地なのでしょう。
 
 

新興産地!?イギリス

 
実はヨーロッパでも新しい産地と呼ばれる地域があります。
その代表格がイギリス。ブドウ栽培北限の地であることを活かし、スパークリングワインづくりに力をいれています。
「新しい」と言われる理由は、最近になってブドウ栽培が可能になってきたからです。その変化の理由は地球温暖化。
 
 
かつてイギリスは「ブドウ栽培には寒すぎる」と考えられてきました。
それが徐々にブドウ栽培の北限が北向きに動き、イギリスでもある程度安定して熟したブドウを収穫できるようになってきたのです。
とはいえ赤ワイン用のブドウにはまだやはり寒いです。現在イギリスでつくられるワインの64%がスパークリングワイン。スパークリングワイン用のブドウは果皮の色の濃さやタンニンが要らないので、寒い地域に向いているのです。
 
ただし欠点はイギリスの物価高。ブリティッシュ・スパークリングは全体的に高価で5000円前後からのスタート。十分にシャンパンが買える価格なので、一般流通はまだまだです。
 
※2022年度 ソムリエ教本より
 
 

新たな産地を拓く難しさ

 
なににせよ新しいことを始めるのには、困難がつきまといます
ニューワールドにはまだブドウ栽培が試されていない土地が残っているかもしれませんが、そこのパイオニアになるのは決して簡単なことではありません。
 
 

パイオニアのメリット

 
新たな土地に進出するメリットは、なんといっても条件のいい畑が手に入りやすいことでしょう。
 
ブドウは時に、他の作物には適さない畑でこそ高品質なものができることがあります
ドイツでのブドウ栽培がいい例でしょう。モーゼル地方の急斜面の畑では、ブドウ以外の作物はほとんど適さないはずです。もちろん伝統的な畑では、急斜面だからこそ品質が上がるという点もあります。しかしそれよりも、平地は麦や芋の畑が優先されて、ブドウは斜面に追いやられた、という面もあります。
 

リースリングの銘醸畑の多くはこのような急斜面

 
ヨーロッパの銘醸地では、基本的に畑を新たに増やすことはできません
栽培条件のいい土地は既にブドウ畑になっています。今は別の目的である土地をブドウ畑に変えても、いいワインができるわけがない。そういう主張でしょうが、既得権益を守るという目的もあるでしょう。
 
それに対してニューワールドでは、新たに畑をつくることができます。もちろん自然環境を守る意識は負けじと高いので、好き勝手はできません。それでもナパ・ヴァレーのような銘醸地を除けば、土地を買って樹を植えることは可能です。
 
50年前、100年前ならなおのこと自由にできたでしょう。
 
 

パイオニアのデメリット

 
しかし新たな土地だからこそ困難なことも少なくありません。
 
ワインづくりには様々なものが必要です。
ブドウの苗木に始まり、垣根をつくる資材。農薬や肥料。トラクターなどの農機具もそうです。醸造タンクやオーク樽。発酵に使う酵母なども、どこでも売っているものではありません。ガラス瓶や栓、出荷用の段ボールだって必要です。
 
 
ワイン生産地ならホームセンターで売っているようなものでも、新しい産地では遠方から取り寄せる必要があります。
 
 
ワインづくりのノウハウを手に入れるのも大変です。
ワインづくりで権威ある大学と言われるボルドー大学、ガゼンハイム大学、カリフォルニア大学UCデイビス校など、全て大きなワイン産地内にあります。
そういった最新の情報が発信される場所から遠いというのは、やはりいろいろな点で不利です。
 
 

手探りでのスタート

 
ヨーロッパの多くの地域で、その場所とブドウ品種が関連づいています。その土地の名称を記したワインをつくるなら、認可されたブドウ品種の中からしか選べないのです。
それは長い歴史の中で最適なブドウがわかっているから。多くの品種を試して、適応しないものは淘汰されて、今現在のブドウ品種が残ったのです。
 
一方でニューワールドではどのブドウ品種が最適か、やってみるまでわかりません。「気温や雨量などがボルドーに似た気候だから・・・」といっても、実はソーヴィニヨン・ブランよりもシャルドネの方がいい結果を残す。そんなことだってあるのです。
しかも一度ブドウを植えて十分樹齢が上がったうえで高品質なものができるか判断する。それに20年単位の時間がかかるのです。
 
 
ブドウ品種だけではありません。どの台木を使うかの選択も重要です。
ある程度の栽培の歴史があれば、最適かはともかく失敗しない公式のようなものはあります。でも新しい産地にはそれがありません。
ひたすら手探りで試行錯誤していく。パイオニアにはまず強い情熱が求められます。
 
 

ブドウの台木とは

19世紀、ヨーロッパのブドウは「フィロキセラ」という害虫によって絶滅の危機に瀕しました。アメリカから持ち込まれたアブラムシの一種が根に住み着き、樹を枯らしてしまったからです。
その対策として開発されたのが、アメリカ系ブドウの根にヨーロッパブドウを接ぎ木すること。それ以降ほぼ世界中で台木を使うことがスタンダードになりました。
ただしアメリカ系ブドウと言っても様々な種類があります。台木の選択は、どんな土壌の畑なのかや、どんなグレードのワインをつくりたいかなどと密接な関係があります。ブドウ品種の選択の他に、台木の選択もワイナリーの行く末に大きな影響を及ぼします。
 
 

「パイオニアのワインが美味しい」と言える理由

 
その土地のパイオニアであること。それがワインが美味しいことにつながるかというと、直接的にはそうは言えないでしょう。
でも全く無関係とはいえません。その理由は3つあります。
 
 

単純に樹齢が高い

 
例えばニュージーランドのセントラル・オタゴや南アフリカのエメル・アン・アードのようなまだ本当に若い産地。歴史が50年そこらの場合。
その土地のパイオニアは、その土地で一番古いブドウの樹が畑に植わっているということを意味します。
ブドウの樹齢が高ければ、一般にそれだけブドウが高品質ということです。
 
 
300年の歴史があれば話は別です。その栽培の歴史の中で何度も植え替えをしているので、必ずしも一番樹が古いわけではありません。
100年ほどの歴史があるならば、古木ゆえの品質向上も無視できる誤差でしょう。樹齢70年と80年の差はワインでは感じ取ることはできません。
しかし20年と30年の差は有意な差であると言えるでしょう。
 
 

ワインが美味しいから現存している

 
そもそも数十年とワイナリーを経営できている。それがワインが美味しい証拠だ
そう考えることもできるでしょう。
 
 
ワイナリーは、ワインが売れないとつぶれてしまいます。
売れるワインをつくるための要素は多岐にわたりますが、なんといっても重要なのは美味しさと適正な値付け。
その土地のスタートから多くのライバルが現れる中で、選ばれ続けてきたというのは、それだけで美味しさの証明と言えるでしょう。
 
 

その土地のロールモデルに

 
ワイナリーが今日その土地のパイオニアと言われるのは、他に追従するワイナリーがたくさんあって、ワインの産地として認められたからです。
 
その土地に後から進出するワイナリー。当然パイオニアがつくるワインを飲んでいるでしょう。
そのうえで「こんなワインを自分もつくりたい!」と思ったか、「この程度のワインなら後からでも勝ち目がある」と考えたのかは当事者しかわかりません。それでも、ワインの味にその土地のポテンシャルを感じたから、美味しいと思ったから、その地区にワイナリーを設立したのです。
 
 
今よりノウハウが不足していた時代のワインでも、同業者に「美味しい」と思わせる力があった。
そこから何十年とかけて洗練されてきたのですから、より多くの人を「美味しい」と思わせられるはずです。
 
 

パイオニアのつくるワインは高い?

 
こんなワインをつくって成功するには、技術だけでなく情熱が必要です。だからでしょうか。パイオニアがつくるワインはやや高価な傾向にあります
例えば先ほども少し触れたエメル・アン・アード。ブルゴーニュ品種の産地として名声をもたらしたパイオニアは、ハミルトン・ラッセルです。
 

 
たまたま目についた、程度では手を出さない価格ですよね。
創業者の情熱ゆえにか、少量・高品質なワインづくりを行う傾向です。
 
パイオニアのワインはやや高価なものが多い。でもそれでは気軽に手が出せません。
今回はあくまで普段飲みワインの延長として手を出せる価格で選んでみました。
 
 

パイオニアがつくるワイン7選

 
その産地の典型的とされるワインのスタイル。
それとその土地のパイオニアがつくるワイン特徴は、共通点がたくさんあります。
 
この産地のワイン、今まで飲んだことがなかった
そんな方はぜひこの機会に、パイオニアのワインから入ってみませんか?
 
※「その生産地域で最初に設立されたワイナリーであること」の事実確認はかなり難しいです。なので今回ご紹介するワイナリーも「実は最初じゃなかった」というものがあるかもしれません。
ただし一番最初じゃなかったとしても、パイオニアであることの困難を乗り越えて、世界に名をはせるワイナリーに成長したことは確かです。
 
 

マーガレット・リヴァーのパイオニア

 

設立:1967年

 
オーストラリアの中でも特に少量・高品質なワインに特化した産地であるマーガレット・リヴァー。その地に最初で最初にワインづくりを始めたワイナリーです。ワインに少しフランスらしさも感じ、今でもトップ生産者の一つであることは間違いないでしょう!
 
 

マーガレット・リヴァー

西オーストラリアの西端、半島のようにインド洋に突き出したところにマーガレット・リヴァーはあります。

 

海洋性気候ながら雨が多すぎることもなく、良質なブドウが育ちます。低価格帯のワインが少なく、中から高価格帯のワインに注力しています。上品でフランスワインの雰囲気も併せ持つカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが特産です。

 
 

マーティンボローのパイオニア

 

設立:1980年

 
高品質なワインをつくる小規模生産者の多いマーティンボロー。気候要因から大量生産はむしろ無理なのですが、それゆえ品質追及は一流品!同じNZのセントラル・オタゴよりもスパイスの香りなどの風味の複雑さで秀でていると言われています。
 
 

マーティンボロー

ニュージーランドでも北島に位置するマーティンボロー。「ワイララパ」という地域の一地区ですが、ピノ・ノワールの生産者として世界に名をはせているワイナリーがいくつもあるので、名が通っています。
 

 
夏の平均最高気温が30℃。しかし最低気温は12℃程度と寒暖差が非常に大きいので、上品な酸味を蓄えたワインができるのです。ただしワイナリーのほとんどが小規模な家族経営の生産者。ご紹介する「アタ・ランギ」のほかには「マーティンボロー・ヴィンヤード」や、日本人生産者の「クスダ・ワインズ」などが有名です。
 
 

エルギンのパイオニア

 

設立:1896年

 
 
政治とワインづくりは大いに関係します。政情が安定してこそ、高品質なワインづくりとブランド確立に腰を据えて取り組めるというもの。パイオニアとしてポール・クルーバーが目指すのは、環境と社会に貢献しながらエルギンを世に知らしめることです。
 

エルギン

南アフリカの中心的産地「ステレンボッシュ」。そこから「エルギン」は山一つ隔てただけです。しかし平均気温は5℃近く変わります。海からも遠くない盆地であるエルギンは、曇りがちな天気が多く日照量が少ないのです。
 

(株)マスダHPより引用



 
それゆえの冷涼な気候。冷涼な産地としてはピノ・ノワールとシャルドネがまず思い浮かびます。ポール・クルーバーもそれらブルゴーニュ品種が得意なのですが、ソーヴィニヨン・ブランもレベルが高い。マールボロに十分対抗しうる、明るい雰囲気のソーヴィニヨン・ブランをつくります。
 
 

エルキ・ヴァレーのパイオニア

 

設立:1998年

 
 
チリの主要なワイン産地よりずっと北側。「エルキ・ヴァレー」はこのファレルニアを興したイタリア人2人によってワイン産地となりました。赤道に近いと暑すぎることが問題になるのですが、それを標高の高さで緩和。手ごろで凝縮感の高いワインをつくります。
 
 

エルキ・ヴァレー

地球上の陸地は北半球に偏っています。ワインに適した緯度の陸地が、南半球には多くない。だからでしょうか。ワインに適した土地の探求は、むしろ南半球でこそ注力されています。
 

 
エルキ・ヴァレーは緯度が低く、普通ならブドウが育たない乾燥地帯。「灌漑すれば問題ない!寒暖差が大事」というのは、ニューワールドならではの発想でしょう。土地は安いでしょうが、過酷な環境でのブドウ栽培。リーズナブルな価格は貧富の差によって成り立っています。
 
 

南アフリカ最古のワイナリー

 

設立:1852年

 
 
諸説ありますがラステンバーグは南アフリカで現存する最古のワイナリーのひとつ。ただし何度かオーナーは変わり、生産が途絶えていた時期もあります。それでも最初期に選ばれたということは、その畑の条件は理想的。欧州の人が好みそうな味わいに仕上げます。
 
 

ステレンボッシュ

南アフリカ、西ケープ州のワイン産地において重要なファクターは海からの距離です。単純に言えば海に近ければ畑が冷涼になる。ステレンボッシュの中で割と内陸に位置するラステンバーグは、下手するとぽってりしたワインになりがち。
 

(株)マスダHPより引用



 
しかしそこに、醸造家の来歴と主なマーケットが影響していきます。ヨーロッパ系移民が多いオーナー。ヨーロッパで研修することが多々あるワインメーカー。一番の市場はイギリス。
結果として上品な酸味を持ったシャルドネが多く、酸味が低くぽってりとしたワインはあまり見かけません。
 
 

パソ・ロブレスAVAのパイオニア

 

設立:1970年代初頭

 
 
この地のブドウ栽培自体1700年代の終わりでありはるか昔。ゆえに本当の意味でのパイオニアではありませんが、「パソ・ロブレス」をワイン産地として地図に乗せることに尽力したのがこの「エバレー」。熟した味わいでありながら、渋みもしっかり感じます。
 
 

パソ・ロブレス

同じだけのタンニンを含む赤ワインでは、酸味が低い方が渋みが穏やかに。酸味が高い方が渋みも強く感じます。
 

カリフォルニアワイン協会MAPより



 
パソ・ロブレスがそのいい例。生育期の日中気温は高い方ですが、夜間は冷え込みます。1日の気温の日較差が15℃ろ超える例も。
人間はすぐさま体調をくずしそうな厳しい環境。その条件下だからでしょうか。パソ・ロブレスのカベルネ・ソーヴィニヨンには、立体的な味わいの骨格をもった人による行事という点でアドヴァンテージです。
 
 

チリで最初のオーガニック認証ワイン

 

発売:2001年

 
 
「この土地のパイオニア」とは言えませんが、チリにてオーガニック認証を受けたワインをつくることにかけては、エミリアーナがパイオニア。他にも様々な認証を取得し、いろいろな思想を持った方のエシカル消費に応えるワインがこの「コヤム」です。
 
 

マーケティングとしての有機認証

チリは一部地中海性気候で、雨季と乾季がハッキリしています。有機栽培をしやすい環境なのです。
だから「チリで有機栽培をする」ということ自体はわざわざ特筆すべきことではありませんが、「認証マークを取得した」ことが重要。あまり語られませんが、認証マークを得るには審査に時間もお金もかかります。2001年のファーストヴィンテージから、オーガニックでしかも品質が高いワインをつくった。今後のマーケティングにおける転換点となったワインと言えるでしょう。
 
 

ワインで挑戦のための活力を

 
失敗を恐れない人なんていません。最初はうまくいかなくたって、工夫してチャレンジを続けて、結果的に「上手く行った、成功だ」にするのです
きっとそのためには、上手くいかない理由に向き合うことも必要ですし、自分に足りないものを身に着ける必要もあるでしょう。それは面白くないしストレスを感じるもの。
 
 
だからこそワインです。美味しいワイン、とりわけ困難を乗り越えて新たなチャレンジを成功させたパイオニアたちがつくるワインは、挑戦のための活力をチャージしてくれるはず。
プロジェクトを成功させて、この美味しいワインを、いやもっと高級なワインを飲むぞ!
そうやって気持ちをちょっとだけ後押ししてくれるはずです。
 
4月が新たなチャレンジの季節である方。明日へのエネルギーにパイオニアたちがつくるワインにあやかってみませんか?





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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