
世界中で栽培され人気の品種であるシャルドネは、飲み比べが非常に楽しいワインです。栽培や醸造の影響をワインに反映しやすく、様々なタイプの白ワインがつくれるからです。ワイン初心者が選びやすいよう、本記事では「樽熟成」と「産地の寒暖」に注目してタイプ分けします。好みのシャルドネを見つけ、飲み比べを楽むためのガイドとしてご活用ください。
シャルドネとは 品種特性と主要生産国
白ワイン用のブドウ品種の中で、シャルドネは間違いなく一番知名度の高いブドウです。「Chardonnay」の文字はワインのみならず、チューハイや駄菓子の原材料としても見かけることがあります。
それほど広く知れ渡っているのは人気だから。手頃で入手しやすいワインから憧れの高級ワインまで、味も価格帯も幅広いからです。
シャルドネとマスカットの共通点と違いとは
白ブドウとして他に有名なものを挙げるなら「マスカット」でしょう。食用ブドウとしてスーパーでもよく見かけます。シャルドネとは何が違うのでしょうか。

植物学的な分類をすると、シャルドネもマスカットも「Vitis Vinifera ヴィティス・ヴィニフェラ」という同じ『種』に属します。その中にシャルドネやマスカットなどの『品種』があるのです。ヴィティス・ヴィニフェラはヨーロッパ周辺が原産で、ワインづくりに非常に適しています。
マスカットは食用にもワイン用にも使われる品種。たくさんの亜種があり、主なものは「マスカット・オブ・アレキサンドリア」といって、独特の「麝香(じゃこう)」と呼ばれる甘い香りを持ちます。食用に栽培されるものは、大粒になるように品種改良されてきました。

それに対してシャルドネは基本ワイン用のみ。果汁を搾って使います。その際に粒が小さい方がワインの品質が上がりやすいため、小粒なもの多い点が違います。酸味もシャルドネの方が高い傾向です。
でもブドウ自体の味わいは結構似ていて、ピュアな甘みが広がります。
シャルドネの起源と語源とは
シャルドネのルーツ、起源はその最大生産国でもあるフランスです。
故郷と考えられているのは、ソーヌ=エ=ロワールという地域。現在の区分でいうとブルゴーニュとシャンパーニュ地方の間、ややブルゴーニュ寄りのあたりです。

初めて文献に登場したのは、17世紀終わりごろの「Chardonnet」という記述。
しかしながら、「Chardonnay」という名前は、フランス、ブルゴーニュ地方の南部、マコネー地区にある「Chardonnay村」からとられたと言われています。
シャルドネの両親は?
シャルドネを遺伝子解析したところ、ピノ系のブドウとグーエ・ブランというブドウの交配により生まれたと判明したそうです。
つまりピノ系ブドウの突然変異で生まれた「ピノ・ブラン」という品種とは、親子か兄弟の関係。例えばドイツなどではどちらの品種も栽培され、よく味わいが似ていると感じますが、兄弟関係なら納得です。
栽培におけるシャルドネの特徴とは
「シャルドネは雑草だ」
そう冗談めかして言った生産者がいます。その意図は、シャルドネは世界のワイン産地においてかなり広く栽培できるから。
冷涼な気候からある程度暖かい気候に適応し、土壌をあまり選びません。およそどんな環境でも、丁寧に栽培すればある程度の品質のワインが出来上がります。

その上で最高級の味わいを表現するには、特別な条件がそろわないといけません。シャルドネは栽培環境をワインに反映しやすい品種と言われています。広く栽培されているのは、それぞれに違ったワインができあがるからです。
ワインにおけるシャルドネの特徴
特徴がないのが特徴。
シャルドネは「ニュートラルな品種」だと言われます。そのブドウ品種ならではの香りというものがない。栽培環境や醸造で大きく変化するからです。

例えば「ゲヴュルツトラミネール」という品種。この品種はライチやバラのような特徴香を持ちます。1000円ちょっとのワインでも5000円オーバーのワインでも、どの産地のワインでもある程度共通した香りがあります。
一方でシャルドネにはそういう「共通する香り」というものがありません。
だからこそ栽培と醸造の影響がワインの風味にしっかりと現れ、多様なワインがつくられるので興味深いのです。
シャルドネの主要生産国
アデレード大学の資料によると、2016年のシャルドネの主要生産国は次の通り。
順位 | 国 | 面積 |
---|---|---|
第1位 | フランス | 4.7万ha |
第2位 | アメリカ | 4.1万ha |
第3位 | オーストラリア | 2.1万ha |
第4位 | イタリア | 2万ha |
第5位 | チリ | 1.1万ha |
第6位 | スペイン | 7千ha |
第7位 | 南アフリカ | 7千ha |
第8位 | アルゼンチン | 6千ha |
第9位 | 中国 | 6千ha |
第10位 | モルドバ | 4千ha |
世界計 | 20万ha |
数字は概数
原産国のフランスが1位ではあるものの、アメリカでもかなりの量がつくられていることがわかります。
世界一のブドウ品種は?
世界で最も栽培面積が広いブドウは、2016年のデータではカベルネ・ソーヴィニヨンです。白ブドウに限ってみると、わずかな差ですがスペインで主に栽培される「アイレン」が1位。シャルドネが2位です。
聞き覚えのない品種でしょう。主に日常消費ワインや、フランスに輸出されて安いスパークリングワインになります。近年は減少傾向になるので、今はもうシャルドネが白ブドウ1位になっているかもしれません。
シャルドネの選び方1 オーク樽熟成
「いろいろなワインをつくれるのがシャルドネの魅力」
それは間違いないのですが、一方でワイン初心者にとっては「何を選んでいいのかわからない」という困惑にもつながってしまうでしょう。
本記事ではなるべく単純化してご紹介します。自分好みのシャルドネを選ぶコツ。注目すべきポイントは「樽熟成」と「産地の寒暖」です。
オーク樽熟成によるシャルドネの風味変化
白ワインの醸造は、搾った果汁を容器に入れてアルコール発酵を行い、そののちに熟成の過程に入ります。
その容器にオーク樽を使うのか使わないのか。それが大きなポイントです。特に熟成の際の容器に注目しましょう。

オーク樽で熟成したシャルドネは、樽材に由来するヴァニラやココナッツのような風味を感じるようになります。それがブドウ本来の風味とまざり、より様々な香りを感じます。
更に木目を通したゆるやかな酸素接触により、なめらかで厚みのある口当たりを獲得します。
結果としてリッチで飲みごたえのある白ワインになるため、高級感が出ます。実際高額なシャルドネのほとんどはオーク樽熟成してつくられます。

樽熟成の効果についてこちらの記事でより詳しく▼
オークの風味の強弱
オーク樽熟成による風味はある/なしではありません。全くなしというものから、ほんのわずかに感じるもの、極めて明確に感じるものがあります。
もしあなたがその風味を好きなら、熟成に使う新樽比率の高いものを選ぶといいでしょう。新品のオーク樽からはより多くの風味が添加されます。一方で何度も使った古樽で熟成しても、ヴァニラの甘い風味はほとんど現れません。
仮に新しいオーク樽で熟成させたワインと古い樽で熟成させたワインを、1:1の割合でブレンドすれば「新樽比率50%」です。
ただし風味の現れ方はブドウの品質とのバランスです。同じ新樽比率でも風味に凝縮感のある良いブドウを使えば、フルーツなどの風味が強いため、樽香は控えめに感じます。
アメリカンオークとフレンチオーク
一口にオーク樽といっても、メジャーなものはフレンチオークとアメリカンオークに分類されます。それぞれ楢(ナラ)の木の品種が違い、それに応じて風味も異なります。
アメリカンオークは、ウイスキー好きの方には「ホワイトオーク」の名称の方がなじみ深いでしょう。
詳しい話はさきほどのオーク樽に関する記事に譲るとします。

シャルドネからつくる白ワインについて知っておくべきことは2つ。
1つ目は比較するならアメリカンオークで熟成した方が、甘いヴァニラ香が顕著に現れること。これが出すぎるとワインの個性を消しがちなので、フレンチオークと併用されることが多いです。
2つ目はフレンチオーク熟成の若いシャルドネには、樽材由来の若干のタンニンを感じることも多いこと。これがワインに熟成能力を与え、10年20年かけて美味しくなっていくものもあります。
本来どちらが上等というものではありませんが、高級なシャルドネはフレンチオーク100%で熟成されているものがほとんどです。
あなたにとって樽香の「ちょうどいい」は?
樽香は強ければいいというものではありません。
ブドウ由来の香りに対してオーク樽の風味が強すぎる状態を、「樽負け」と呼びます。それが好きな人もあるでしょうが、醸造法由来の香りなので、同じようなワインは世界中どこでもつくれます。
樽香が強すぎるワインは、どれも似たり寄ったりになりやすいというデメリットがあります。
そして個人の好みもあります。
フルーツの風味と樽香が上手くバランスをとったシャルドネの中にも、人それぞれ好みがあります。
「樽香が甘く香るワインが好き」「ヴァニラというよりヒノキのような、上品な香りが好き」

こればかりは実際に飲んでみないと、自分にとっての「ちょうどいい」はわかりません。樽香がない方が好きという人もいます。
シャルドネを飲んで美味しいと感じたとき、それは樽熟成由来の風味が気に入ったのかを考えてみるといいでしょう。その蓄積が自分好みのワインを選ぶヒントになります。
樽熟成したシャルドネのおすすめワインはこちら▼
シャルドネの選び方2 産地の冷涼/温暖
シャルドネのワインに現れる栽培環境の影響で、もっとも分かりやすいのは畑の寒暖です。それは果実味と酸味のバランスとして現れやすいです。
ただし収穫のタイミングによっても変わりますし、畑の寒暖と言っても地形の影響は簡単にはわかりません。
あくまで大雑把な目安としてください。
涼しい/暖かいシャルドネの風味
極端に二分するなら、シャルドネは産地によって次のような風味を持ちます。
冷涼産地のシャルドネ
青りんご、レモン、白桃、白い花、鉱石など
キレのいい酸味を持ち、フルーツの香りは控え目
温暖産地のシャルドネ
パイナップル、マンゴー、アプリコット、メロンなど
凝縮した果実味を持ち、酸味が目立たない
産地の寒暖は赤道からの距離で
ブドウ畑が温暖か冷涼かは、さまざまな要素が関係します。大雑把には次の通り。
赤道からの距離が遠い(緯度が高い)ほど冷涼、近いほど温暖
標高が高いほど冷涼、低いほど温暖
晴れの日が少なく雨が多いほど冷涼、その逆ならば温暖

とくに分かりやすいのが赤道からの距離。世界地図上で北半球なら北にいくほど、南半球なら南にいくほど涼しい。そう考えると大まかな指標にはしやすいでしょう。
酸味は低い方がいい?
ワインは強い酸性の飲み物であり、飲みなれないうちは酸味を苦手とする方も多いでしょう。でも極端に酸味を避けようとするのはおすすめしません。
酸味には「バランス」と「質」があります。酸味が高くてもボディ感がしっかりあれば、「酸っぱくて不快」とは感じません。ワインの質が高ければ、苦手なはずの酸味が心地よく感じることもあります。
高価なシャルドネは基本的に高い酸味を持ちますが、機会があるならまず飲んでみるのがいいでしょう。
シャルドネの白ワインにあう料理
世界中でいろいろなタイプのシャルドネがつくられています。それゆえ「シャルドネにあう料理」と一括りに提案することは不可能です。
しかし先述のとおりシャルドネの風味はオーク樽熟成と産地で大きく変わります。それを踏まえれば、タイプ別にシャルドネにあう料理の方向性がわかります。
樽リッチ系シャルドネにあうクリームグラタン
温暖産地でしっかりオーク樽熟成してつくられるシャルドネには、ヴァニラやトロピカルフルーツのほかにバターやトーストのような香りを持つものが多いです。
しっかりボリューム感のある味わいにあわせて、料理も重ためのものがバランスをとります。

その代表格と言えるのがクリームグラタン。ベシャメルソースのバターや乳製品の風味がシャルドネの風味を引き立てます。
樽エレガント系シャルドネにクリーム煮
涼しい産地のシャルドネでオーク樽熟成してつくられるものも、ヴァニラやバターの風味は共通している場合が多いです。ただしアルコール度数が少し低く酸味が高いなら、料理のバランスも少し変える方がいい。
同じようにバターやクリームは使いつつ、油脂は控えめ。グラタンほどこってりではないものがいいでしょう。

例えば魚のムニエルや鶏肉のクリーム煮。「フリカッセ」と呼ばれるブルゴーニュ地方の郷土料理などはその代表格です。
樽なしリッチ系シャルドネにチキンステーキ
樽の風味のないシャルドネには、それほど個性的な香りがありません。なので「この料理と抜群にあう」という組み合わせを見つけるのは難易度が高いです。
代わりに割と幅広い食材に対して相性が悪くない。つまり「この料理のときに飲むと不味くなる」という例が少ないのです。それはコース料理のように1品ずつ食べるのではなく、テーブルにいろいろな料理を一度に広げて楽しむ際の食中酒に向いています。

そのなかで暖かい産地でオーク樽なしでつくるシャルドネにおすすめなのが、たんぱくな肉料理。チキンステーキやポークソテーなどです。これらに赤ワインをあわせると、料理の味が負けてしまいがち。ニュートラルなシャルドネだからこそ、「ほどほどに相性がよくて食事が進む」という組み合わせになるはず。
樽なしスッキリ系シャルドネは万能選手
オーク樽熟成したシャルドネを生魚とあわせると、生臭さが際立ってしまった経験が多いです。100%とは言いませんが、樽香と生の魚介は注意が必要。
その点でオーク樽の風味がないスッキリ系シャルドネは、苦手とする食材が非常に少ない。アルコール度数も控えめで軽いタイプなら、料理より味が強くて前に出すぎる心配もありません。

さきほどと同様、このタイプも万能の食中酒。いろいろなメニューの並ぶ食卓にあるとうれしい脇役。冷蔵庫に1本冷えていると安心するタイプです。
違いを理解するためのおすすめシャルドネ6選
オーク樽と畑の寒暖、2つのポイントをもとに、主要産地のシャルドネをご紹介します。飲み比べることで違いの原因と結果を理解することができ、自分好みのワインを選べるようになるヒントとなるでしょう。
さらに経験を積めば、ワインのスペックからおおよその風味を想像することも可能です。
すっぴん&フレッシュなストレートの味わい
オーク樽の風味ほぼなし 涼しい産地
冷涼産地ゆえに酸味が高く、オーク樽熟成の風味がない。そのスタイルのワインを見つけやすい産地の代表例が、フランスのシャブリ地区です。特にスタンダードクラス、単に「Chablis」とだけ書いてあるクラスで、そのつくり方をする生産者が多い傾向です。


シャブリジェンヌがつくるこのシャブリは、5%だけ樽熟成することで風味に複雑さを持たせているものの、ほぼステンレスタンク醸造。飾り気のないシャルドネの風味をストレートに味わえます。
加えてシャルドネの特徴である「栽培環境を反映する」というのもしっかり感じます。香りに感じるフルーツや花には例えられない要素。「ミネラル感」と呼ばれるワイン独特のニュアンスが確かにあるはずです。
フルーツ感たっぷりなリッチ系
オーク樽の風味なし 温暖産地
私が最初このワインに注目したのは輸入元の試飲会。ワイン醸造などの情報はまず見ずにテイスティングするので、最初はオーク樽熟成しているものと思っていました。それくらいリッチでボリューム感のある味わいだったのです。


南イタリアに位置するプーリア州。太陽に恵まれた暖かい産地で、フルーティーで濃厚な赤ワインが多くつくられます。そこでつくられるシャルドネもまた、豊満でリッチな味わい。パイナップルやメロンなどの熟したフルーツの香りを持ちます。
私は騙されましたが、確かに樽香はなし。先ほどのシャブリと飲み比べると、ほとんど共通する香りが見いだせず、「ニュートラルな品種」ということをよく理解できるでしょう。
甘い樽香漂うフレンドリーさ
アメリカンオーク樽熟成の香り 温暖産地
アメリカンオーク樽100%でつくられるシャルドネは、アメリカ産のものでもそう多くはありません。「甘いヴァニラ香」というのをハッキリ認識したければ、このスペイン産シャルドネがおすすめ。
決して勉強のためのワインではなく、甘くまったりとした香りが漂うこのワインは非常にフレンドリーな印象で、コンスタントに売れている人気商品です。
ただし私はこのワインに「スペインらしさ」あるいは「ナバーラらしさ」のようなものは感じ取れません。同じような気候の別の産地で同じ醸造をすれば、違いの分からないワインが出来上がりそう。そう感じてしまいます。
そういう意味では「オリジナリティーのない優等生ワイン」と言えるかもしれません。
新樽比率100%でとびきりの樽感
新樽フレンチオーク100%の香り やや温暖産地
新樽100%で熟成するなら、毎年新しいオーク樽を購入する費用がかかります。また先述のとおり樽香がブドウ由来の香りとバランスをとれるよう、高品質なブドウを使う必要もあります。
「新樽100%熟成が美味しい」というわけではありませんが、「新樽100%熟成なら上級ワインだから美味しい」という可能性は高いです。


樽熟成した白ワインはその風味の豊かさから、こういった丸いワイングラスが向いています。
南アフリカワインのコスパの良さも手伝って、このワインは新樽100%熟成なのに3000円台半ば。産地の指向でしょうか、ブドウは過熟させすぎることなく、トロピカルフルーツというよりは柑橘などのフルーツのニュアンスを感じます。
そしてハッキリ感じるオーク樽由来の上品な樽香。樽熟成ならではの味わいが口の中で横に広がるようなリッチな風味も味わってもらえるでしょう。
上品な樽香の高級感
新樽フレンチオーク100%の香り やや冷涼産地
マニアックなことを言い出せばキリがないもので、フレンチオーク樽と言ってもそのメーカーやロースト具合によっても風味は異なります。
高級オーク樽メーカーとしてよく名前が挙がるのが、フランソワ・フレール社やダナジュー社など。
複数のメーカーから樽香購入し、ブレンドして使うのがほとんどですが、「うちはこのメーカーのオーク樽しかつかわない!」と決めている生産者もいます。
サンタ・バーバラの「オー・ボン・クリマ」はそのひとつで、上級ワインはフランソワ・フレール社の新樽100%発酵・熟成が基本なようです。


先ほどの「ロバートソン」もフレンチオークの新樽100%ではありますが、比べてみると香りの『品格』のようなものが違います。フルーツやヴァニラの甘い香りはより控えめに、ヒノキ風呂のような高級感のある香りが漂います。
それに「高級感」を感じるのは、私が「高級なシャルドネにはこのような樽香がする」と刷り込まれてきたからかも。なのでどちらがあなたの好みにあうかはわかりませんが、比べる価値があるのは間違いないです。
ちょっとの樽香が最近の流行
醸造情報なし やや温暖産地
近年のトレンドで言うなら、オーク樽熟成に使う新樽の比率は減少傾向です。
いくつかの理由がありますが、その一つは食生活の変化。健康志向の一環として、世界的に油脂をたっぷりつかった料理は避けられがちです。
さきほどシャルドネにあう料理をタイプ別に紹介しました。樽香が強くリッチなワインは、濃い味付けのリッチな料理でこそバランスが取れます。そのリッチな料理が避けられる傾向にあるのです。


代わりに注目を増しているのが、あえて樽熟成しない、あるいは樽香をほんの少しに絞ったフレッシュ感のあるシャルドネ。
「ライトリー・ウッディド」と名付けられたこのワインはまさにその流行を反映したもの。醸造情報はありませんが、フレッシュなフルーツ感のなかに、ちょっと樽由来の複雑さを感じるような味わいです。
これならヘルシーでライトな食事にちょうどいいでしょう。
シャルドネ100%でつくるスパークリングワインのいろいろ
シャルドネが活躍するのは白ワインばかりではありません。スパークリングワイン用としても最重要品種の一つで、世界中で栽培されています。
シャルドネ100%のシャンパン「ブラン・ド・ブラン」
「シャンパン」はフランスのシャンパーニュ地方でつくられるスパークリングワイン。そのラベルに「Blanc de Blancs」と書いてあれば、シャルドネ100%でつくられていると思ってほぼ間違いありません。
その代表格でありシャンパン好き憧れの銘柄と言えるのが、「サロン」です。シャルドネ100%でつくるスパークリングワインの頂点と言っていいでしょう。
ただし「シャルドネのスパークリングワインの味」を知るために飲むには、現実的な価格ではありません。
他産地にもある「ブラン・ド・ブラン」
「ブラン・ド・ブラン」という用語はシャンパーニュ地方のみで使われるわけではありません。意味としては「白の白」であり、白ブドウのみからつくる白ワインを指します。
なので他の産地で使われる場合は、シャルドネ以外の白ブドウが使われる場合もあります。スパークリングワイン以外に使われている例もあるほどです。
南アフリカのこの人気スパークリングワインは、明確にシャンパンを目指したスタイル。「ブラン・ド・ブラン」と表記し、シャルドネ100%でつくっています。醸造機材もわざわざフランスから取り寄せているそうです。
シャルドネ100%でつくるスパークリングワインにおいて、私が共通点だと感じているのは美しい酸味。シャープすぎないのに気品ある印象を与えてくれることです。
なので100%で主役を張るばかりでなく、上品さを加えるブレンド材料として活躍することもあります。
シャルドネの白ワインで比べて飲む楽しみを
ワインを選ぶ楽しさというのは、大きく分けて2つあると考えています。
一つはいかに自分の、あるいはプレゼントする相手の好みにあわせるか。シャルドネで言うなら、樽香の強さや産地の寒暖などをヒントにタイプを絞り、価格とあわせて「ちょうどいい」を見つけることです。膨大な種類のワインが流通しているシャルドネなら、きっとあなたにとっての「ちょうどいい」銘柄がどこかにあるでしょう。


もう一つは飲み比べる楽しさを期待して。今回紹介したような栽培・醸造の異なる特徴を持つものを飲み比べれば、ワイン初心者にも感じ取れる明確な違いがあります。また、それらを揃えた上で別の銘柄を比べれば、より繊細な生産者や畑の特徴が浮かび上がります。
この違いの表現力も、ニュートラルな品種であるシャルドネの魅力です。
どちらもワインの楽しみ方です。
ワインの味わいはまずブドウ品種で決まります。とはいえ「シャルドネ」という一品種だけでもこれほど様々なワインがあるのです。
口に合うシャルドネ/合わないシャルドネ、当然あります。その理由に注目しながら飲めば、単に「美味しい」だけじゃない満足感が得られるはずです。