品種のお話

ピノ・ノワールとは?品種の特徴と地域別おすすめ銘柄

2023年1月25日

ピノ・ノワールとは?品種の特徴と地域別おすすめ銘柄

 
 
ボリュームのある香りの華やかさと、軽い口当たりの心地よさ。
ピノ・ノワールでつくる赤ワインの魅力は様々ですが、それだけではありません。
スパークリングワインにも姿を変えるこの品種に、次々とワイン好きが魅了されています。
その味わいを多様にする要因から地域別のおすすめ銘柄まで、詳しくご紹介します。
 
 

まずはピノ・ノワールの基本を抑える

 
ピノ・ノワールはフランスのブルゴーニュ地方が原産。交配によって開発された品種ではなく、「人々がブドウ栽培を始めたころにはそこに生えていた」という古い品種です。
 
 
地域ごとにワインの特徴を紹介する前に、そのベースとなるピノ・ノワールの性質をお話します。
 
 

ピノ・ノワールの名前の由来

 
「Pinot」というのはフランス語で「松ぼっくり」を意味します。「Noir」は「黒」ですから、ブドウの色を表しています。
そう呼ばれる理由は房の大きさが小さいから。松ぼっくりとは言わないまでも、小さな房をつけるのが特徴です。
 
 
ワイン用ブドウは全般に、生食用ブドウと比べるとブドウの粒が小さいです。実が小さい方が果汁に対して果皮の割合が高く、風味高いワインになる傾向があります。
ピノ・ノワールの実も、生食用ブドウのデラウェアかブルーベリーくらいの大きさです。粒が小さいと房自体も小さくなりがちです。
 
 

ピノ・ノワールとピノ・グリ、ピノ・ブランは兄弟!?

 
わざわざ「ノワール」とつくのは、黒くないブドウもあるから。
「ピノ・グリ」と「ピノ・ブラン」という品種はピノ・ノワールの突然変異で生まれたといわれ、DNAは同じだそうです。つまり極論言えば皮の色が違うだけ。
 

ヒューゲルのピノ・グリ

 
この3つの品種は兄弟関係と言っていいかも。いえ、DNAが同じという意味では兄弟より近しい関係ということです。
 
 

ピノ・ノワールの典型的な味わいは?

 
「産地や醸造で非常に多様な味わいになる品種」ということを前提としたうえで、ピノ・ノワールからつくられる典型的な赤ワインの風味は次の通り。
 

ピノ・ノワールの典型的な味わい

香り(若い時)  ボリューム豊かで華やかさがある。赤や黒のベリーを主体にスミレなどの花の香り
香り(熟成して) 皮革や土、きのこ、動物的な香りなど
口当たり 軽やかでアルコールが高くともどっしり重たくはならない
タンニン 一般には穏やかなタンニンで渋みは弱い
酸味 高いものが多いが温暖地域では低くなる
 
「力強く濃厚」なタイプのものは少なく、「繊細で上品」なタイプの赤ワインが典型的なピノ・ノワールです。
極めて低価格なものを除き、基本的にはオーク樽熟成してつくられます
 
 

他の品種に対してピノ・ノワールが優れている点

 
ピノ・ノワールは非常に人気な品種で、当店もたくさんのワインを扱っています。
2023年1月現在、当店は2600種類くらいのワインを扱っています。そのうち500種類あまりがピノ・ノワールを主体としたワインです。
 
それだけたくさんのワインを扱うのは、売れるからです
赤ワイン用のブドウはほかにたくさんあるのに、なぜそれほど人気なのでしょうか。
その理由は次の5点だと考えます。
 

ピノ・ノワールが好かれる理由

華やかな香りのボリューム
 「ピノ・ノワールグラス」という専用のワイングラスがあるくらい、高品質なピノ・ノワールはその場を支配する香りのボリュームを持ちます。
飲み疲れしない軽やかなボディ感
 話を聞いていると、ワインを飲み始めて濃厚なワインが好きになってから、次第にピノ・ノワールが好きになったという方が多いです。その中にはピノ・ノワールの軽い口当たりが「飲んでて楽」と感じている方も多いようです。
穏やかなタンニン
 「渋い赤ワインは苦手だけど、ピノ・ノワールなら飲める」という方もいます。上記の軽い口当たりとあわせて「飲みやすい」と感じるのでしょう。
上品な酸味
 酸味のボリュームが高く、果実味とのバランスがとれていてスマートな味わいのとき、上品な印象を持ちます。「上品な赤ワイン」でまず思い浮かぶのはピノ・ノワールでしょう。
熟成能力
 何十年も熟成させることで、風味は複雑に、口当たりはなめらかに、余韻は長くなっていく。十分なタンニンと高い酸味を持つピノ・ノワールは高い熟成能力を持つことも、愛好家を夢中にさせています。
 
これらの特徴が全て備わったようなワインは、非常に高価に取引されます。
 
 

『ロマネ・コンティ』をつくるのもピノ・ノワール

 
ロマネ・コンティ」の名前は耳にしたことがあるでしょう。どんなワインかわからずとも・・・
ロマネ・コンティはフランスのブルゴーニュ地方で、「ロマネ・コンティ」という畑でつくられる赤ワインです。そのブドウ品種がピノ・ノワールです。
 
その取引金額は300万円を超えることもあります。そりゃあ、名前は知ってても飲んだことない人がほとんどなのも、無理のない話です。
 
ロマネ・コンティについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
 
 

ピノ・ノワールはどんなブドウ?

 
原産であるブルゴーニュがかつて非常に寒い産地であったとおり、ピノ・ノワールは涼しい気候に適した品種です。
春に発芽するのが早く、また秋にブドウが熟すのが早いのが特徴。「熟すのが早い」ということが意味するのは、ブドウの糖度が一定まで上がるのに必要な積算温度が少ないということです。
 
この特徴が後の話に関わってきます。
 
 
土壌の好き嫌いが激しい品種で、「粘土石灰質土壌でないといいピノ・ノワールはできない」とすら言う人もいます。(意見の分かれるところです)
また一通りのメジャーなブドウの病害、だいたいに対して弱いです。非常に栽培が難しい品種と言えます。
 
 

「シュペートブルグンダー」はピノ・ノワールの別名

 
ブドウ品種の多くは別名を持ちます。それぞれの地域に根差してそこの名前で呼ばれていたのが、調べてみると別の地区のブドウと同じだったという事情です。「シノニム」といいます。
 
ピノ・ノワールのシノニムで最も有名なのが、ドイツの「Spatburgunder シュペートブルグンダー」です。ドイツには800年以上前にブルゴーニュからピノ・ノワールが持ち込まれ、栽培されてきました。そしてドイツの地に適応していったので、「ドイツの土着品種である」と考えられています。
 
 
そのほかのシノニムとしては、アルザスやドイツの一部で使われる「Clevner クレヴナー」や、イタリアで使われる「Pinot Nero ピノ・ネロ」などがあります。他にもなん十種類もありはしますが、輸出市場では「Pinot Noir」と書いた方がはるかに売りやすいため、あえて使われることはあまりありません。
 
 

ワインを大量生産するには・・・

 
もしあなたがワインを安く大量につくろうとしたとします。
 
ブドウを大量生産しようと思ったら、広大な平野に畑をつくるのが手っ取り早い。
ブドウはそれほど多くの水分を必要としません。だから乾燥が厳しいくらいの土地に植えて、灌漑(ホースを通しての水やり)で賄った方が、病害にもなりにくくて効率的です。
同じ面積の畑からたくさんブドウを収穫するには、あまり房の間引きをせずに、ブドウをたくさん実らせた方がいい。すると栄養が分散してブドウが熟しにくくなりますが、温暖な気候の畑を選べば十分な糖度で収穫できます。
 
 
カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネ、シラーと言ったブドウならそれでいいでワインを大量生産できるでしょう。
でもピノ・ノワールはそれがうまくいかないんです。
 
 

ピノ・ノワールは大量生産に向かない

 
ピノ・ノワールは糖度が上がるのが早い、早熟な品種です。
温暖な環境では、花が受粉して実が膨らみ始めてから収穫までの期間が短すぎます。とくに間引きをあまりしない栽培では、風味の成熟が追いつきません。
 
そうすると甘いけど味のないブドウ、アルコールは高いけど風味に乏しいワインになってしまいます。
ピノ・ノワールは大量生産に向かない品種なのです。
 
 
もう一つ。ピノ・ノワールは土壌の性質を強く反映します
例えば広大な畑を取得して一面にピノ・ノワールを植えたとしても、土壌が均一でなければ品質や味わいにばらつきが生じます。
その良し悪しは置いておいて、違いが大きいならば作り手は「じゃあ別のワインとして販売しようか。1種類のワインにまとめるより売りやすいだろう」と考えるでしょう。
 
だからピノ・ノワールの赤ワインは少量多種類になる傾向が強いと考えられます。
 
 

安くて美味しいピノ・ノワールはなかなかない

 
上記の理由から、安くて美味しいピノ・ノワールはなかなか見つかりません
具体的には3000円くらいをボーダーとして、結構品質に差がある印象です。
 
単位面積当たりの収穫量が品質に大きく影響します。なので広い土地を取得しやすく、人件費の安い国なら、1000円台でもなかなかのものがあります。その代表がチリです。
しかし畑の拡張が難しい国では、なにかを妥協しないと3000円以下には収まらない。「美味しいけど高い」か「安いけど不満が残る」のどちらかであることは覚悟してください。
 
 

ピノ・ノワールの主な栽培国

 
ピノ・ノワールは知名度では抜群なものの、土壌や気候を選ぶ性質から、そこまで栽培面積は大きくありません。
層栽培面積は11万8千ha。世界のわずか2.2%です。もっとも栽培面積が広いカベルネ・ソーヴィニヨンの1/3以下。
 
順位 生産国 栽培面積
1位 フランス 3万2千ha
2位 アメリカ 2万5千ha
3位 ドイツ 1万2千ha
4位 モルドバ 6500ha
5位 ニュージーランド 5000ha
ただしその人気から多くの国でじわじわと畑を拡大しています。
 
 

生産地別 ピノ・ノワールの特徴とおすすめ銘柄

 
ピノ・ノワールの全体像を知るには、銘醸地といわれる産地の典型的な味わいのものを順に飲み比べていくことです。
同じ品種ながら、驚くほど香りの性質が違うことがわかります。
 
 
もちろん生産者ごとにワインの風味は違いがありますし、同じ銘柄のワインでもヴィンテージによっても印象は変わります。
それでも、数多くのワインを飲めばその地域の傾向は確かに感じられます。そしてそれは、その土地の気候や土壌にもとづきます。さらに言うなら、主な市場や立地からくる国際関係などすら、ワインの味わいの中に現れているように感じます。
 
きっとこういう場合、地域別で手ごろなワインを紹介した方が喜ばれるのでしょう。
しかし今回はあえて、結構高価なワインを紹介します。「このワインでダメなら、この地域のピノ・ノワールは自分にあわない」そう判断してもいいような自身のある銘柄です。
 
 

ブルゴーニュ産ピノ・ノワールの特徴

 
ブルゴーニュのピノ・ノワールについて、1小節で語りつくすことなどとてもできませんが、世界のピノ・ノワールの絶対王者であることは確かです。
 
ボジョレー地区を除くとブルゴーニュにある約3万haの畑。そのうちおよそ40%でピノ・ノワールが栽培されています。「フランスでピノ・ノワールといえばブルゴーニュ」のイメージでしょうが、栽培面積、つまり量の点からいえば1/3強でしかないのです。
しかし消費者に与える影響。「ワイン愛好家のあこがれである」という点では、ブルゴーニュの特級畑からつくられるピノ・ノワールは圧倒的です。
 
 
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
 
ブルゴーニュ 地方全体の産地特徴を基本から
 
グランクリュとは?ブルゴーニュの特級畑
 
ブルゴーニュワインは、ブドウのとれる畑によって広域・村名格・1級畑・特級畑という格付けが明確になされています。そしてワインの品質と価格もおおよそこの格付けに従います。そのうえで一部の人気生産者のワインが法外な高騰をしているのが現状です。
 

風味の特徴

香りに感じる熟した果実の甘いニュアンス。他の地域と比べて最も控えめで引き締まっているのがブルゴーニュ産ピノ・ノワールです。ただし、近年はかなり暑いヴィンテージも増えてきて、「ニューワールドのように甘いなあ」と感じることもしばしば。具体的には2015、2018、2020年のものなどです。全体として酸味は高い傾向です。
村名格以上のものは、生産者によってはしっかりとしたタンニンを感じる場合もあります。10年20年と熟成させて楽しむことも想定しているのでしょう。
 
ワインの小売り価格は2000円台半ばからのスタート。買いブドウでワインをつくる大手生産者の広域クラス「BOURGOGNE」表記のものがそれくらいから見つかります。
ワインのクラスで価格は大きく違うので、平均価格は出しようがありません。上を見れば価格は青天井です。
 
 

ブルゴーニュのピノ・ノワールを知るのにおすすめな1本

 
地域ごと・畑ごとに風味が異なることを比べて楽しむ。テロワールを感じることがブルゴーニュワインのだいご味。だから1本飲んでブルゴーニュをわかることなんてできません
それでもあえて1本選ぶなら、ヴォーヌ・ロマネ村の村名格のワインを飲んでもらいたい。上品でありながら芯の強さがある気品を感じる香りは、他の産地では表現できないと考えるからです。
 
ブルゴーニュワインは1つの銘柄の生産量が少なく、年間通して安定供給できるものはほぼありません。
このリシャール・マニエールのものも在庫ある限り。完売の際はご了承ください。
 
 
「おすすめの1本が2万円って高い!」と感じるかもしれません。2万円は私にとっても高いです。でも、「ヴォーヌ・ロマネの村名格」としては『やや高め』程度であり、生産者の知名度とレアさを考えれば適正価格です。残念ながら・・・
 
 

オレゴン産ピノ・ノワールの特徴

 
ブルゴーニュに次ぐピノ・ノワールの産地としてどこの名前を挙げるか。議論の分かれるところでしょう。
おそらく量のベースではカリフォルニア。国単位で括ってしまうならドイツ。でも地域単位で品質を考慮すると、オレゴンをまず取り上げるべきでしょう。
 
 
オレゴンはカリフォルニア州の北隣。ブルゴーニュとほぼ同じ北緯45度付近に位置します。かつては寒すぎてブドウ栽培が難しいと考えられていたそうです。
ゆえにカリフォルニアのピノ・ノワールとは風味の点で明確な違いがあります。それは甘さ。実際の糖度的な甘さではなく、香りに感じる甘いニュアンスが、カリフォルニアに比べて抑えめなのです。ただ、それでもブルゴーニュやドイツほど引き締まったイメージはありません。
 
 
小規模な生産者が非常に多く、それにともなってワインの価格は高め。およそ5000円くらいのスタートです。ただしワイナリーがつくるトップキュヴェでも3万円程度であることが多く、価格の幅は狭めです。
 
 

風味の特徴

若いうちは赤いベリーや黒いベリーを香りに感じます。先述の通り甘いニュアンスは控えめで、樽香が前面に出てくるようなものもあまりありません。これは個人的なイメージですが、「果実感がフレッシュでピチピチ」というよりは、すこし落ち着いた段階でリリースされるものが多い印象。強いタンニンや酸味を感じるものはあまりありません。
 
オレゴンでのピノ・ノワールの栽培は1960年代のスタート。ブドウの樹齢が60年を超えるものはないわけですから、歴史の長さではブルゴーニュやドイツには勝てません。
 
 

オレゴンのピノ・ノワールを知るのにおすすめな1本

 
オレゴンの生産者の多くは、ブルゴーニュにならって単一畑でのワインづくりを大切にしています。
単一畑のワインはその畑の個性が表現されるので、オレゴンの特徴を知るなら複数の畑をブレンドする下位のワインを飲んだ方がベター。
 
 
この「ドメーヌ セリーヌ ピノ ノワール ヤムヒル キュヴェ」は、ウイラメット・ヴァレー内のいくつかの地区からブドウをブレンドしています。スタンダードクラスが8000円オーバーというかなり強気な価格設定です。
しかし「オレゴンのピノ・ノワールって美味しいの?」という疑問に答えるなら、これくらい出さないと判断基準にならないのは確かです。
 
 

セントラル・オタゴ産ピノ・ノワールの特徴

 
ニュージーランドワインの中心地はマールボロ地区であり、そこでも多くのピノ・ノワールがつくられています。しかし品質面でリードするのは南端のセントラル・オタゴ地区です。
南緯45度付近にあり、北半球と南半球の違いはあれどブルゴーニュと同じくらい。緯度が高いということは日照が弱く冷涼であることを意味します。
 
 
しかしセントラル・オタゴのピノ・ノワールはアルコール度数が高いものが多く、力強いです。というのも、偏西風によって運ばれてくる湿気を西側に位置する高い山脈が遮ってくれるため、雨が少なく日照量が多いのです。
豊富な日照でブドウは良く熟し、それでいて朝晩は冷え込む。気温の日較差が大きい環境は、品質の高いワイン生産に向いています
 
一方で、セントラル・オタゴという立地はニュージーランド全体からみると超田舎。陸の孤島と言ってもいい僻地です。ワインを出荷するにも、近隣の港からというわけにはいかず、マールボロなどに一度運んでからとなるでしょう。輸送コストが高いのです。
だから低価格帯のワインで勝負しても他の産地に勝てるわけがない。高品質ワインの少量生産で、「セントラル・オタゴ」というブランドを高めていこうというのが、彼らのワインづくりから感じられます。
 
 

風味の特徴

熟度の高いブドウを感じさせる、黒系ベリーのアロマを持つものが多い印象です。ただし酸味はしっかり高いので、引き締まった印象。甘いニュアンスはオレゴンと同程度かむしろ控えめです。口に含んで感じる果実感に厚みがあり、スタンダードクラスはすぐに飲めますが、トップクラスはタンニンが強く熟成が必要なものも多いです。
 
セントラル・オタゴもオレゴンと同様、スタートは5000円台から。上級クラスは2万円前後までのことが多いので、価格の幅は小さめです。
 
 

セントラル・オタゴのピノ・ノワールを知るのにおすすめの1本

 
フェルトン・ロードは歴史的にそこまで古いわけではありません。しかし「セントラル・オタゴ」を世界に知らしめたワイナリーとして非常に重要です。
 
「バノックバーン」という、セントラル・オタゴではやや温暖な地区に畑をもっており、他の生産者と比べてやや酸味おだやか。7000円台という価格は決して手ごろではありませんが、その香りの妖艶さはきちんと「上級ピノ・ノワール」を感じさせてくれます。
 
 
 

バーデン産ピノ・ノワールの特徴

 
ブルゴーニュの間違えるようなピノ・ノワール」を探すのであれば、ドイツのバーデン地方が一番でしょう。
ドイツの中で最も温暖であり、「ブルゴーニュに似た気候」のもと、粘土石灰質土壌にピノ・ノワールが植えられています。
 
単純にブルゴーニュと物理的な距離が近く、若手生産者を中心に情報交換も盛んだとか。ドイツで昔から栽培されてきた「シュペートブルグンダー」ではなく、あえてブルゴーニュから苗木を取り寄せて植える生産者もいます。
 
 
ドイツのピノ・ノワール全体で見たとき、世界的に高い評価を受けている生産者はいます。ただしオレゴンやセントラル・オタゴと比べると、まだ層が薄い印象です。ただ、10年後はどうなっているかわかりません。
世界的な地球温暖化の進行により、かつてのピノ・ノワールの生産地はブドウの過熟に苦しんでいます。それに対して北緯50度付近に畑が広がるドイツでは、「ブドウが十分熟す年が多くなった」とむしろ歓迎する生産者も多いとか。ピノ・ノワールに適した緯度帯が上がっているんです。今まで注目されてなかった産地で、新たなピノ・ノワールのスター生産者が出てくるかもしれません。
 
 

風味の特徴

果実味と酸味のバランス感はブルゴーニュに非常に似ています。バーデンらしさという意味では、個人的には森の苔むしたようなアロマを感じるものが多いと感じています。「シュペートブルグンダー」表記のものの中には、伝統に倣って少し糖分を残した仕上げをするワインもあるそうですが、日本にはあまり輸入されていないのか出会ったことがありません。
 
バーデンはドイツの中でも広い産地であり、価格の幅も広いです。中には1000円台のものも見つかりますが、やはり品質はそれなり。
3000円前後くらいからある程度品質の高いワインが見つかります。高級なものは3万円を超えていきます。
 
 

バーデンのピノ・ノワールを知るのにおすすめな1本

 
「ドイツのピノ・ノワールといえば」でまず名前が挙がる生産者、フーバーがバーデンにいます。
しかし「フーバーのワインはブルゴーニュ的すぎる」という意見もあり、私もこれに一部同意しています。
 
なので今回おすすめするのは、マルティン・ヴァスマー醸造所。
 
 
「マルクグレーフラーラント」という、バーデン内のサブリージョンの名前を冠したシュペートブルグンダーです。
ドイツの中では温暖なバーデンという産地を感じさせる、まろやかな風味が特徴です。
 
 

シャンパーニュ産ピノ・ノワールの特徴

 
ここまでピノ・ノワールでつくる赤ワインのお話をしてきましたが、ピノ・ノワールはスパークリングワインの材料としても非常に重要です。
シャンパーニュ地方において、シャルドネとブレンドすることで、あるいはピノ・ノワール単独で、数多くの偉大なワインを生み出しています。
 
 
スパークリングワインは「瓶内2次発酵」や「ドサージュ」によっても大きく味わいが変わります。だから「ピノ・ノワールだからこういう味」というのは断定しづらいです。ただ、ピノ・ノワール100%でつくる「ブラン・ド・ノワール」のスパークリングワインは、旨味をともなうような果実感を感じるものが多いです。
 
シャンパーニュのスタイルにならって、世界中の冷涼産地にてシャルドネとピノ・ノワールから、様々なスパークリングワインがつくられています。
 
 

ブラン・ド・ノワールの味わいを知るおすすめ銘柄

 
他の産地に比べて「畑」の概念が弱いのが、シャンパーニュ地方のひとつの特徴。歴史的にいくつもの畑からブドウをブレンドするのが当たり前だったからです。
だからシャンパーニュの「グラン・クリュ」は、畑単位ではなく村単位です。それぞれが広いので、「グランクリュだからとても高価」というほどの違いはありません。
 
それでもやはり昔からいいブドウが育つからこその「グランクリュ」。この「フィール・フルール・ド・ブジー」のブジー村もその一つです。
 
 
ピノ・ノワール100%の味わいが、このシャンパンに関しては味わいの骨格となって現れています
 
 

その他の地区からおすすめの1本

 
他にも詳しくご紹介したい産地はありますが、ここからは簡単にワインだけ取り上げまず。
 
 

カリフォルニア:セントラルコースト 高いブドウの熟度による甘やかな果実感を感じます。

 

オーストラリア:タスマニア島 風味の緻密さと透明感が両立しているように感じます。

 

南アフリカ:ウォーカーベイ 上品な酸味に明るくオープンなイメージ。

 

ドイツ:ファルツ 森っぽい奥行のある香りにエレガンス。

 
 

ピノ・ノワールの沼にハマるなら覚悟をもって

 
ピノ・ノワールは高い。これが結論です
 
高まる需要に応えるべく、世界中の生産者が妥協なきピノ・ノワールをつくっています。
それぞれにしっかりと産地の個性が、生産者の個性が、ヴィンテージの個性が表現される。それがピノ・ノワールの面白いところです。
 
 
それぞれの生産地における特徴について、文献からの情報にあわせて個人的な経験も加えて、違いを文字で表現してみました。
その違いをワインで感じてもらおうとすると、どうしてもこのように高価なワインになってしまいます
もっと価格を下げて、晩酌で満足できるワインならいくつもあります。でも産地の特徴を理解できるほどではない。
 
とあるバイヤーさんの見解ですが、ピノ・ノワールは樹齢25年くらいからじゃないと、その土地の特徴を反映しないと。
実らせるブドウの量が落ち着き、根が十分深くに伸びないと、なかなかワインに個性が現れないといいます。樹齢の高さはワインの値段にも影響します。
 
 
冒頭で3000円以下ではなかなか美味しいピノ・ノワールは見つからないと述べました。
逆に言えば、高いお金をかければそれに見合ったものがたくさんあるということでもあります
(ブルゴーニュのピノ・ノワールは数万円かけても平気で裏切ることがあるのでご注意を)
 
高いお金をかけて期待して飲んだら、やっぱり美味しい。妥協して飲むものと違う
だからこそ愛好家がピノ・ノワールの沼にハマってしまうのです。
軍資金に乏しいなら、あえて避けるのもワインの楽しみ方です。ピノ・ノワールに手を出すときは覚悟をもって。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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