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【産地解説】南アフリカワイン その歴史と代表産地 人気の理由とおすすめ銘柄

2024年1月15日

【産地解説】南アフリカワイン その歴史と代表産地
 
 
南アフリカワインの特徴を一言で述べるなら「多様性の宝石箱」。狭いエリアで驚くほど個性的なワインが生産されます。
低い緯度と冷たい海流という要因は、ダイナミックな気候の違いを生んでいます。
「南アフリカワインの特徴」は確かにありますが、飲み始めればその味わいは一言で語れないことをすぐに悟るはず。
気候とワインの味わいを決める要因を整理して、歴史とともに南アフリカワインを簡単に紐解きます。
 
 

南アフリカワイン全体の特徴

 
国際品種で世界中と真っ向勝負できるコストパフォーマンス
これが南アフリカワインの最大の強みだと考えます。
特に注目すべきは、赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨンとシラー、白ワインならシャルドネです。
加えて南アフリカが得意とするブドウ品種、ピノタージュとシュナン・ブランも忘れてはなりません。
 
 

ヨーロッパ系ニューワールドワイン

 
近年は「ニューワールド」という言葉は徐々に使われなくなってきているようです。しかし私は定義として使えるものがあると考えます。
それは「ブドウ栽培に適した条件が明らかになってから選ばれた栽培地域」というものです。
ボルドーのように収穫期に雨が降りやすい環境は選びません。ブルゴーニュのようにしょっちゅう霜害が発生するところにあえて畑は拓かないのです。
 
 
その意味で南アフリカはまさに『選ばれた産地』
ブドウの病害は少なく、安定してブドウが熟し、大量生産も可能だからです。
 
一方で南アフリカのワイナリーは、そのほとんどがヨーロッパ系の人々がオーナーです。
また時差がないのでヨーロッパから多くの人が観光に訪れます。その観光客による国内消費もバカになりません。
さらに海運の利便性から特にイギリスが主要なマーケットです。
 
 
ヨーロッパ系の人々がヨーロッパを目掛けてワインをつくっています
その意味で「ヨーロッパ系ニューワールドワイン」と言えるでしょう。
 
 

安い人件費によるコストパフォーマンス

 
南アフリカはアフリカ大陸では先進国で経済が発展しています。
仕事を求めて周辺諸国から移住してくる人が少なくありません。彼ら彼女らは南アフリカの大都市周辺に掘っ立て小屋をつくって住み着きます。南アフリカの戸籍外の住民も多いのです。一説には数百万人だと言われています。
 
 
そういった事情もあり、南アフリカでは安価な労働力を確保できます
朝から晩まで農作業をさせるのに必要な人件費は、一人1000円程度だとか。
ワイナリー最大の支出は人件費です。それを低く抑えられるので、南アフリカワインは世界の市場で競争力があります。
 
 

狭い地域で驚きの多様性

 
南アフリカの面積に対して南アフリカワインの栽培面積は大きくありません。
ほとんどのブドウ畑は西ケープ州に位置しているからです。それは海からの距離とも深い関係です。
 
西ケープ州の中にも多様な産地があります。
それぞれ気候が異なり、気候の違いにより適した品種が異なり、そしてワインの味わいが異なるのです。
 
 
地域特性があるのは、世界中全ての産地で同じです。
しかし西ケープ州は非常に狭い範囲で非常に大きな気候の違いがあります
その理由を後ほどご紹介します。
 
 

南アフリカワインの歴史

 
南アフリカの経済的な発展。そこには主に3つの国が関わっています。
オランダ、フランス、そしてイギリスです。
 
 

2月2日は南アフリカワインの日

 
1659年2月2日
南アフリカ初の総領事ヤン・ファン・リーベックの記述によるとこの日、南アフリカで初めてワインが醸造されました。
南アフリカワインの歴史は、ここから始まりました。
 
当初はオランダ人の入植が主で、ワインの醸造はさほど上手ではなかったようです。
オランダ人の影響は現代も建物にみられます。
 
 
ラステンバーグのワイナリーをはじめ西ケープ州のいたるところでみられるこの美しい建物は、『ケープダッチ方式』と呼ばれます。
オランダの影響力が大きかったころの名残だと言います。
 
 

ナポレオンが愛した「ヴァン・ド・コンスタンス」

 
後にフランス人が入ってくるようになって、ワイン産業が盛んになります。
1761年にはコンスタンシア産の甘口ワインがヨーロッパ向けに輸出されるようになり、ナポレオンも愛飲したといいます。
 
 
この甘口ワイン、「ヴァン・ド・コンスタンス」という名で現在も作り続けられています。コンスタンシア地区には10軒前後のワイナリーがあるそうですが、日本で見かけるのは「クライン・コンスタンシア」という生産者のものばかり。オープンマーケットなのでいろいろな輸入元が仕入れており、入手性が高いです。
 
 
 

イギリスの植民地化と世界恐慌

 
19世紀前半にはケープ植民地はイギリス領となります。
その影響で英語が公用語のひとつ。オーストラリアのようななまりもなく(おそらく)観光客としてはありがたい限り。
 
フランスとの戦時中は南アフリカワインの英国での消費が劇的に伸びましたが、その後戦争が終結し打撃を受けます。
そこにフィロキセラが追い打ちをかけました。立ち直ろうにも世界大戦中は需要も落ち、生産過剰に陥ってしまいます。
 
その苦難を乗り越えるべく、1918年生産者団体「南アフリカブドウ栽培者協同組合(KWV)」が発足。
現在もリーズナブルなワインの生産者として日本でも親しまれています。
 
 

アパルトヘイト政策と半鎖国時代

 
1948年の純正国民党政権誕生から、1994年まで続いた『アパルトヘイト政策』の名は、聞き覚えのある方も多いでしょう。
アフリカーンス語で「隔離・分離」を意味するこの政策により、白人優位の社会が形成されました。
就業や教育機会、居住場所や公共サービスなど様々な面で弱い立場となった有色人種。
 
 
アパルトヘイト政策は世界から非難を浴びます。1960年以降1992年まで、オリンピックから締め出されていたほどでした。
1980年代に入ると経済制裁が強まり、ワインを含め貿易があまりできなくなります。鎖国のような状態だったのです
 
 

アパルトヘイト撤廃とその後の急成長

 
1994年の選挙により、ネルソン・マンデラ氏が大統領となりアパルトヘイト政策は撤廃されました
 

Nelson Mandela 1994.jpg
© copyright John Mathew Smith 2001, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

 
世界中どこでもそうですが、人々から差別意識がなくなるには時間がかかります。その影響は今でも経済格差などという形で残っています。
しかしそれ以降は経済制裁もなくなり輸出入が盛んになり、経済的に急成長を遂げています。
 
 

非常に高い環境保護意識

 
2010年に導入され2012年に今の形となった品質保証と持続可能性への取り組みを証明するシール
 
 
これは現在日本で流通する南アフリカワインに、非常に高い割合で貼ってあります
南アフリカのワイン生産者がいかに環境保護の意識が高いかがわかります。
 
 

次世代に受け継ぐべき自然の宝庫

 
それだけ高い意識を向けるに足る自然の宝庫。それは間違いありません。
 
南アフリカの緯度は南緯27度~34度。
北半球の日本でいうと、沖縄の北端から徳島市くらいの緯度にあたるので、総じて温暖な気候です。
 
 
全土で約2万4000種類の動植物の原産地となっており、ケープ半島だけでも約1万種類の植物が生育しているといいます。
国土の多くが自然公園として認定されており、開発から守られています。
これは世界的にもとびぬけた動植物の多様性です。
 
 

自然をそのまま観光資源とする

 
世界史の中での南アフリカと言えば、15世紀の末にポルトガル人のバルトロメウ・ディアスが喜望峰(Cape of Good Hope)に到達したのが有名です。
その喜望峰すら、舗装された道と看板があるだけ
 
 
日本の景勝地には、往々にして土産物屋さんや道の駅、飲食店が立ち並んだりします。
ついついそういったところを利用してしまうのも事実なので、文句を言うのは筋違いなのですが、なるべく手付かずの自然は何にも増して美しい。
 
自然を尊重する姿に頭が下がります。
 
 

南アフリカワインの気候要因

 
南アフリカの産地の多くは、おそらくブドウ栽培に置いて最も適している地中海性気候です
夏に乾燥し冬場にまとめて雨が降るので、ブドウがよく熟し病気が少ないからです。イタリアや南フランス、カリフォルニアやチリなどにみられる気候です。
 
 
その中での栽培条件を理解するうえで重要なのは3つ。
低い緯度、冷たい海流、そして地形です。
 
 

低い緯度がブドウの成熟を助ける

 
先ほど南アフリカの緯度は27~34度と申しましたが、ワイン産地のある西ケープ州の主要産地は32~34度くらい
北半球に例えるならこれはヨーロッパにあてはまりません。アフリカ大陸のモロッコ北部にあたります
 
 
緯度の低さは日照の強さを意味します。日照が強ければ気温は温暖となり、ブドウはよく熟します
特に内陸部には温暖~高温の産地が多く、果実味豊かなワインをつくりやすい産地だと言えます。
 
しかし単に暑い産地でないところが、ワインの品質を高めています。
 
 

冷たい海流からの風が畑を冷やす

 
南アフリカの沿岸を流れるベンゲラ海流は、南極方向から流れてくる寒流です。これが西ケープ州沿岸の畑に冷却効果をもたらします
 
 
水は比熱が高い。簡単に言うと、暖まりにくく冷めにくいという性質を持ちます。
 
対してむき出しの土は比熱が低く、太陽光によって暖まりやすい。暖められた地面はその熱を空気に伝えます。
 
空気が温まるとどうなるか。上昇します。大気が上昇するところは、低気圧となります。
一方で冷たい海は空気を冷やすことで、下降気流が発生します。高気圧です。
 
 
高気圧から低気圧へと空気が流れ、それが風となる。甲子園の名物「浜風」と同じ原理です。
冷たい海と暑い内陸部によって、冷たい風が吹き込む気候が形成されるのです。
 
 

沿岸部ほど上品なワインの産地

 
南アフリカでは南に行くほど涼しいのですが、西ケープ州においてはその差が非常に顕著です。
というのもおおむね南にいくほど海に近く、海流の影響を強く受けるからです。
 
 
大雑把に沿岸部で酸が豊かで上品なワインがつくられ、内陸部で果実味豊かでリッチなワインや、リーズナブルな大量生産ワインがつくられます
 
 

地形要因があるから同じ地区でも違いが面白い

 
上記が全体の傾向ではありますが、実際の産地の気候条件はもっと複雑です。地形要因も影響するからです。
 
わかりやすいのは標高。単純に標高が高いと涼しく、低いと暑い。それだけでなく高地は基本内陸部なので、昼夜の寒暖差が大きくなり引き締まったワインが生まれる傾向があります。
 
 
それだけではありませんん。大きな山脈のどちら側の斜面や山麓にあるかも重要です。
ブドウの熟度に困らない南アフリカにおいて、日当たりのいい北側斜面が必ずしも最上の畑ではありません。
南に面した日当たりの悪い畑をあえて選ぶことで、涼しい環境でブドウを栽培し、エレガントなワインをつくることもできます。
 
南アフリカの大自然と生産者の意図。両方がワインに反映されているのです。
 
 

代表産地と注目生産者

 
南アフリカ、西ケープ州の産地は非常に個性豊かです。
その個性となる気候要因とワインの特徴、その特徴をしっかりと感じ取ることのできるワインの生産者を、産地ごとにご紹介します。
 
 

ワイン生産の中心地 スレテレンボッシュ

コースタル・リージョン

 
ステレンボッシュは1679年に誕生した南アフリカでもっとも古い街。その周辺に広がる生産地区です。
栽培面積が南アフリカ最大であるだけでなく、ステレンボッシュ大学という栽培・醸造の権威があるため、名実ともに南アフリカにおけるワイン生産の中心地です。
手頃なワインもたくさんつくられてはいますが、南アフリカを代表する高級ワインも少なくありません。
 
その栽培地域は8つの小地区が認定されていますが、今回は割愛します。
 
ブドウ品種としては何といってもカベルネ・ソーヴィニヨンに注目
 
しっかり熟度がある中にも、きちんと酸味があるのが共通点です。
 
 
2000円前後からもワインはあるのですが、3000円ちょっとだせばスケール感が一気に変わります。
 
 
高級品としてはこちらに注目。決して「安くて美味しい」だけじゃないことを証明します。
 
 
南アフリカを象徴する品種「ピノタージュ」もまずはステレンボッシュ
 
 
カノンコップはワインスクールなどでもよくつかわれる老舗生産者です。
 
 
低価格品から高級品まで、シラーも多くつくられています。「シラーズ」表記のものも混在しています。
 
 
ボディ感豊かで親しみやすいタイプが多いでしょうか。ローヌやバロッサ・ヴァレーほどの高級品はありません。
 
 
白ワインはやはりシャルドネの生産が多いです。他の産地と比較するなら、樽香しっかりのボディ感があるタイプが多い傾向です。
 
 
シュナン・ブランもその傾向でボリューム感と上品さを兼ね備えるタイプです。後述するスワートランドのものと比べると対照的でしょう。
 
 
 

寒暖差と古木 スワートランド

コースタル・リージョン

 
ステレンボッシュの北西側に広がるスワートランドは、エリア面積こそ広大ですがブドウ栽培面積はステレンボッシュやパールよりやや少な目。
安いワイン用のブドウも栽培されているのでしょうが、あまり地区の名前は出てきません。地域の特性を生かしたワインは高級志向。5000円前後は出さないとあまり楽しめないと思った方がいいでしょう。
 
内陸部だけあり昼間は暑く夜は涼しい、寒暖差の大きな気候です
他の地区に比べ樹齢が高い樹が多く、無灌漑(水やりをしない)のブッシュヴァインでの栽培が盛んです。特にローヌ品種に注目が集まっており、国際品種主体のステレンボッシュとは差別化がされています。
 
 
このワインのエチケットに描かれているのがまさにブッシュヴァイン仕立てのブドウの樹。背丈が低い分だけ必要な水分量が少なく高品質なブドウをつけますが、作業性が悪く人件費が高くなります。
 
 
暑い環境ではあるもののブドウを早めに摘んでアルコールを抑える傾向にあり、むしろステレンボッシュのワインよりもスマートな味わいを目指す生産者が多いと感じます
 
シュナン・ブランにおいてもその違いが顕著で、酸とミネラルを大事にして樽香を抑えたつくりのものが主流。ステレンボッシュと比べると通好みの味といえるでしょう。
 
 
 
この地区のスター生産者は「サディ」や「マリヌー」など。特にサディは専門誌の評価が常に最高で、争奪戦となるアイテムです。
 
 

かつてのサブリージョンで共通点あり フランシュック

コースタル・リージョン

 
ステレンボッシュの北東に位置する小さな地区「フランシュック」。もともとはステレンボッシュの中の小地区で、特色の違いから独立しました。
おそらくその違いを生む原因は日照時間。山脈の山間に位置するのでステレンボッシュよりも日照時間が短く、より引き締まったワインが生まれます
 
「ブーケンハーツクルーフ」というスター生産者が本拠地を置いています。ステレンボッシュにも畑を持ち同クラスのカベルネをつくるので、比較すれば違いを理解できます。
 
 
 
またこの地には非常に樹齢の高いセミヨンが植わっています。
これほどのボディ感と複雑さ。とても同等価格のシャルドネでは表現できません。
 
 
 

手頃なワインから幅広く パール

コースタル・リージョン

 
上記の地区に比べると、ステレンボッシュの北側にあるパール地区は手頃なワインがいろいろ見つかるエリア
ワインのラベルに見る機会は多くありませんが、栽培面積自体はステレンボッシュよりわずかに少ない第2位。
 
この地には「KWV 南アフリカブドウ栽培者組合」という、南アフリカ最大規模の生産者の本拠地があります。この国におけるワインの歴史をつくってきたような生産者です。
 
「ブラハム」もまたパールの特徴を表すような、よく熟した果実味を持つ手頃でフレンドリーなワインをつくります。
 
 
 

南アフリカきっての高級産地  ウォーカーベイ

ケープ・サウス・コースト

 
ホエール・ウォッチングで有名な「ヘルマナス」という街を中心に広がる冷涼産地。街の北側にある「ヘメル・アン・アード」は、新興の産地ながら非常に上品で高品質なブルゴーニュ品種のワインを生み出します。ただし価格は総じて高く、手頃なワインの少ない地域です
 
この地のパイオニアはハミルトン・ラッセル。それでもまだ設立50年に満たない程度です。
 
 
小さいながらも注目すべき生産者が非常に多い地区。「クリスタルム」「ストーム・ワインズ」「アタラクシア」「アルヘイト・ヴィンヤーズ」「ニュートン・ジョンソン」などが挙げられます。
 
 

もう一つの冷涼産地 エルギン

ケープ・サウス・コースト

 
ステレンボッシュからエルギンは車で1時間もかかりません。にもかかわらず気候は大きく異なり、特に夏季の最高気温が大きく下がる涼しい地域です。
ソーヴィニヨン・ブランやブルゴーニュ品種、シラーなどが主力品種です。
 
もともとはリンゴの産地として栄えてきたところで、リンゴ事業で成功を収めたポール・クルーバーがつくるワインはコスパがいいと評判です。
 
 
ステレンボッシュとシラーで比較しても、上品な酸味が際立つワインが多いです
 
 
 

始まりの地ケープ半島で コンスタンシア

コースタル・リージョン

 
ケープタウンから南の喜望峰に至る途中、コンスタンシアという小地区があります。
海から近い冷涼気候でありながら、テーブルマウンテンからの山脈に守られ雨が多すぎない恵まれた環境
大都市が近いことでワインツーリズムも盛んで、立派なレストランで食事を楽しめるワイナリーが多いそうです。
 
 
ここでは赤も白もボルドーブレンドが多いのだとか。
 
 
凝縮感の点では他の地域に譲りますが、その分バランス感と飲み心地のよさが魅力です。
 
 

産地だけでは語れない南アフリカワインの魅力

 
国としてのワインの特徴がありつつ、詳しく見ていけば小地区ごとに多様なワインをつくる。
これ自体は世界中おおよそどこの生産国でも同じと言えます。
しかしその中で南アフリカの特徴と言えるのは、非常に狭いエリアに多様な特徴を持つ生産地区が密集していることです。
 
 

マルチリージョンブレンドが容易

 
産地間の距離が近いことは、その境界を越えてブドウの調達が容易なことを意味します
その結果、地区を跨いだブレンドワインが、単一畑のワインに劣る理由がありません。若手を中心に買いブドウだからこそできるワインが日々つくり出されています。
 
 
日本酒やビールの原料である米や麦は保存が効きます。だから原料産地と醸造所が近いことで有利なのはわずかな輸送コストの差くらいです。
ブドウの場合は収穫してからワイナリーに運び入れるまで、そう何日もかけられません。ブドウはそれ自体で発酵が可能。収穫時の衝撃や自重により潰れて意図せぬ発酵が始まってしまうことがあるからです。
収穫時に亜硫酸で発酵を止め、培養酵母で発酵させるスタイルなら、畑とワイナリー間が10kmも100kmも変わらないかもしれません。一方でもし自然酵母での発酵を意図しているなら、畑が近いことはワインの品質につながります。
 
西ケープ州においては「地区の境界を超える」といってもそう離れているわけではないので、そこに品質面でのデメリットはないのです。
 
 

生産者のラインナップが多様な場合も

 
一人の生産者がいくつもの地域のワインをつくっている例もあります。
 
例えばキャサリン・マーシャルという生産者。
醸造所はステレンボッシュにありますが、ブドウの購入先は主にエルギン。冷涼産地のワインをつくりたいのでしょう。
 
 
さらに当店には未入荷ながら、スワートランド産のグルナッシュからもワインをつくっています。
 
この例のように購入するブドウからワインをつくる生産者にとって、西ケープ州は多様なラインナップでワインをつくりやすいのが特徴です。
ドメーヌ型の生産者にネゴシアン型の生産者が劣るとは限りません
 
 

2000円台のプライスリーダー

 
2000円台で有名品種のワインを世界中から探すとき
南アフリカワインは高い満足を与えてくれる可能性が他より高いと感じています
 
その理由は今回ご紹介したもの。
低い緯度による豊かな日照と、地中海性気候によるリスクの少ない栽培環境。海からの冷却効果による上品な味わい。そして安い人件費です
特に人件費は、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどに対してアドバンテージでしょう。
 
 
1000円台ではチリ産ワインに勝てないところはあるかもしれません。超大規模なワイナリーは多くないので、チリの有名ブランドほどのスケールメリットはないからです。
 
特にカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、シャルドネの3つ。ニューワールド的な果実味の明るさと、ヨーロッパ的な上品さを併せ持ちます。2000円台で探すなら、まず南アフリカから探してみては?





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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