ワインのできるところ

ブルゴーニュワイン 地方全体の産地特徴を基本から

2019年11月6日

 
 
畑が違えばワインの味が違う。ブルゴーニュワインの特徴はこれにつきます。
だからこそ主に2種類だけの少ないブドウ品種から、他地域を圧倒する種類のワインがつくられます。
これからワインを学ぶ人は、どのようにブルゴーニュワインに向き合えばいいのか。
世界で最も高級なワイン産地、ブルゴーニュの全体像を基本からご紹介します。
 
 

半端な覚悟と財力で深入りするべからず

 
もしあなたがプロではなく素人のワイン好きで、世界各地のいろいろなワインを飲んで好みを見つけようとされているなら。
「ワイン1本1万円は高い」と感じる程度の正常な金銭感覚なら。
ブルゴーニュは一番後回しにすることをおすすめします。
 
 
 

ブルゴーニュワインはコスパが悪い

 
ここに「ブルゴーニュのグラン・クリュ」という著書におけるレミントン・ノーマン氏の言葉を引用します。
 
ブルゴーニュワインは絶対的な品質というものがあるが、誰もがそこに喜びを見いだせるわけではない。
同じ価格の物が同等の味わいという市場原理の中で、ブルゴーニュワインは最大の支出が最小の成果になりかねないものである。
 
つまり「ブルゴーニュワインはコスパが最悪な上に、高級品を誰もが美味しく感じるわけじゃないよ」ということ。
 
 
ブルゴーニュを紹介する記事の冒頭で心を折りにいっているのには訳があります。
生半可な財力じゃ太刀打ちできないほど、今のブルゴーニュワインは値段が異常だからです。
 
 

魅力を感じるには、最低5万円!?

 
畑が違えばワインの味が違う。それを感じるには同じ生産者の畑違いのワインを飲み比べるのが一番
もちろんどんな生産者でもいいわけではありません。きちんとその違いを表現できる、評価がある程度高い生産者で
 
後ほどブルゴーニュワインのクラスについては解説しますが、畑の名前が記載されることの多いのが1級畑から
近年人気生産者の広域クラスで6000円前後。1万円出しても人気の高くない村名しか買えません。それらはたいてい、複数の畑をブレンドします。
 
 
1級畑はその人気により価格差が大きくありますが、2.5万円くらい出せばいろいろ選べます。それを2本並べて違いを味わう。
必要経費5万円です。それですら「美味しいと感じるかはわからない」なんです。
 
 

それでも沼にハマる人が続出

 
別にブルゴーニュワインが高価なのは、日本だけではありません。全世界的なものです。
「適正価格」とは言えずとも、別にワインショップが法外な値付けをしているのではありません。
純粋に需要と供給の市場原理によって値上がりしているのです。
 
 
投機マネーの流入も確かにあります。
しかしそれ以上に、それでも買う人がいるから。「高い!」と悲鳴を上げて白目をむきながらも買い求める愛好家がたくさんいるからです。
 
ブルゴーニュファンを沼に引きずり込む魅力とは何なのでしょうか。
 
 

ブルゴーニュ地方の概要

 
ブルゴーニュはワインの生産地域の名前で、ボルドー地方とならんでフランス2大産地の一角です。
フランスの行政区分でいうと、ヨンヌ県、コート・ドール県、ソーヌ=エ=ロワール県、そしてローヌ県の4つの県にまたがって広がる産地です。
 
フランス全体のワインマップで見たブルゴーニュ地方は下の地図のとおり。
 
 
ディジョンやボーヌと言った都市というより街はありますが、基本的には田舎です。
Google Mapで有名なワイナリーや畑を眺めてみても、ワイン愛好家以外にとってはワクワクするようなことなどまるでないでしょう。
 
 

ブルゴーニュのワイン生産

 
数字で見たブルゴーニュワインは次の通り。
 
栽培面積約4.5万ha(うちボジョレーが約1.5万ha)
平均ワイン生産量約210万ヘクトリットル(2.8億本)(うちボジョレーが80万ヘクトリットル)
 
後ほど述べますがボジョレーはブルゴーニュの地区の一つです。しかし単独で栽培面積の1/3を占めるほど、たくさんのワインを生産する重要な産地です。
 
 

ブルゴーニュの気候

 
一般にブルゴーニュは冷涼から温和なな大陸性気候であると考えられています。
 
厳密な大陸性気候の定義は、1日の気温の高低、1年の気温の高低が大きく、冬に乾燥し夏に多く雨が降る気候を指します。
 
 
だから厳密には西岸海洋性気候に属します。ただ、その中でも日較差が大きく夜冷えることがワインにプラスに働いています。それゆえ大陸性気候だと記述されることが多いです。
 
ワインにおける気候区分についてはアメリン&ウィンクラー博士の気候区分が有名です。
日本語の資料に試験用のもの以外があまり見つからなかったのですが、英語版Wikipediaに詳細に一覧化されています。
それによるとブルゴーニュの中にあるディジョンの気候は「Ib」。確かに冷涼なことは間違いないのですが、もっと涼しい産地はたくさんあります。
 
 
にも関わらず多くの人がブルゴーニュを冷涼産地だと考えるのは、ワインの味わいが冷涼さを感じさせるエレガントなものだからでしょう。
ただし一口にブルゴーニュといっても縦に長いです。距離にして端から端までおよそ150km。南北である程度の気候の違いはあります。
 
 

ブルゴーニュの土壌

 
土壌はブルゴーニュワインを多様にしている非常に重要な要素です。ただし、土壌のことを紹介すると到底初心者向けの記事ではなくなってしまいます。
だから知っておいてほしいことは2つ。ボジョレーを除くブルゴーニュは基本的に粘土が混ざった石灰質土壌であること。そしてその割合や形成された年代の違いによって、粘土石灰質土壌にもいろいろあり、それがワインの味わいの違いにつながっていることです。
 
 

ブルゴーニュは「コート」のワイン。

 
フランス語で「コート」は丘を意味します
ブルゴーニュの上級の畑はすべて、丘の斜面に沿って広がります。何百年も前からブルゴーニュでワインをつくってきた人々は、この北東から南西に伸びる丘の斜面で安定していいブドウができることを知っていました。
そのメリットは次の通り。
 
 
  • 斜面ゆえに効率的に日照を得られる⇒ブドウの熟度が上がる
  • 斜面なので冷たい空気が溜まりにくい⇒霜害の被害が少なくなる
  • 表土が少なく地表の栄養素が少ない⇒ブドウの樹は根を深くに伸ばす
  • 雨水が流れるため水分が過剰になりにくい⇒生産量がすくなくなり風味が凝縮する。病害が少なくなる。
 
特に1級畑以上の上級の畑は、ほぼ斜面に位置します。
 
 

広義と狭義の「ブルゴーニュ」

 
本来「ブルゴーニュ」とは上記のとおり、ワインの生産地である地方名を指します。
ただし「私はブルゴーニュワインが大好き!」という人の考えるブルゴーニュの範囲はもっと狭いです。
そういう人たちは十中八九、「コート・ドール」を指してのみブルゴーニュと考えています
 
 

みんなのあこがれ コート・ドール

 
ブルゴーニュ地方の中の、「コート・ド・ニュイ」地区と「コート・ド・ボーヌ」地区を合わせて「コート・ドール = 黄金の丘」と呼びます。
ブルゴーニュワイン愛好家は、「ブルゴーニュ」と聞いてまずこの「コート・ドール」を思い浮かべます。高級ブルゴーニュワインの象徴たる「グラン・クリュ」はこのコート・ドールに集中しています
 
 
実際、コート・ドールのワインとその他ブルゴーニュのワインとでは、価格の桁が違うこともしばしばです。
生産量としては多くないものの、人々を魅了し沼にハマった愛好家を量産するのは、このコート・ドール地区のワインなのです。
 
コート・ドールを含めてブルゴーニュの各地域の特徴をそれぞれ紹介していきましょう。
 
 

ブルゴーニュの各地区

 
ブルゴーニュは北から南まで、シャブリからボジョレーまで8つの地区に分けられます。
順番にご紹介します
 
 
 

シャブリ地区

 
シャブリ地区はコート・ドールに近いところがあります。
その理由の一つは知名度が非常に高く、ライトな消費者層にも知られていること。
もう一つは特級畑の認定があることです。ブルゴーニュの特級畑は、コート・ドールとシャブリにしかありません。
 
 
ブルゴーニュ地方に含まれるものの、シャブリはコート・ドールとシャンパーニュ地方との中間地点くらいに離れており、ロワール地方とも違いです。以前「シャブリはブルゴーニュ地方の一部かどうか?」というのが法廷で問われたことすらあるそうです。
 
 
「Chablis」と書かれたワインはすべてシャルドネからつくられる白ワインです
しかし地区の名前としての「シャブリ」の中には、イランシーのようなピノ・ノワールを生産する村もあります。
 
「Chablis」というワインは、辛口でミネラル感をはっきり感じるスッキリとした白ワインです。
一方で「Chablis Premier Cru シャブリ プルミエ クリュ」や「Chablis Grand Cru シャブリ グラン クリュ」と書かれたワインの大半は、酸味が高くともそれを上回るボリューム感を持ったワインが多いです。
 
シャブリについての詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
 
 
 
 

コート・ド・ニュイ地区

 
コート・ドールの北側がコート・ド・ニュイ地区です。
ここでは白ワインも作られますが、基本的には赤ワインの産地です。特級畑は一つを除いて全て赤ワインのみが生産可能です。
 
 
コート・ド・ニュイはコート・ド・ボーヌに比べて、石灰質に混ざる粘土の量が多いです。それがワインにふくよかさとブドウの熟度をもたらし、より良質なピノ・ノワールを生むのです。
 
北はマルサネから南はニュイ・サン・ジョルジュまで、8つの村がコート・ド・ニュイの中にあります。
 
 

オート・コート・ド・ニュイとオート・コート・ド・ボーヌ地区

 
コート・ド・ニュイやコート・ド・ボーヌの畑は斜面にそって広がります。
その斜面の上部に広がるのが、オート・コート・ド・ニュイおよびオート・コート・ド・ボーヌ地区です。
 
西側から冷たい空気が入ってくるそうで、ひと昔前まではそれほど質の高いワインがつくられる場所ではありませんでした。
だからこの2つの地区の中には、村名を表記できる地区はありませんその分価格は村名格よりお手頃です。
 
ただ地球温暖化の影響もあって、近年はブドウの完熟には困らなくなってきました。それにより品質も向上しています。
近い将来、地域区分が大きく変更されることがあるかもしれません。
 
 

コート・ド・ボーヌ地区

 
コート・ド・ニュイと比較するなら白ワインの銘醸地。「モンラッシェ」をはじめ白の特級畑のほとんどはコート・ド・ボーヌにあります。
一方でヴォルネイやポマールをはじめ赤の銘醸といえる村もいくつかあります。村の数もニュイよりも多く、ラドワ・セリニィからマランジェまで13の村が村名を表記することができます。
 
 
「ボーヌ」が街としての中心であり、いくつもの大手の生産者がここに本拠地を置いています。
 
 

コート・シャロネーズ地区

 
コート・ド・ボーヌの南側には「コート・シャロネーズ」という地区があります。
 
ピノ・ノワールによる赤ワイン、シャルドネによる白ワインが多くつくられているほか、「アリゴテ」という品種による白ワインの品質がことさら高い「ブーズロン」という村があります。
そのほか「メルキュレ」「ジヴリ」「リュリー」「モンタニィ」という4つの村のワインは品質が非常に高く、エチケットに村名を表記できます。
 

メルキュレ。違いはわかりません。

 
コート・ドールと比べると酸味やタンニンが少し穏やか。そして5000円以下から多くのワインが楽しめます
味わいの面でも価格の面でも親しみやすい産地です。
 
 

マコネ地区

 
ここは広大なシャルドネの王国です。栽培面積の約8割を占めます。
「マコン」「マコン ヴィラージュ」「マコン ○○」(←○○には村の名前が入る)といったワインが大量につくられています。
村名表記できるものとしては、「プイィ・フュイッセ」「プイィ・ヴァンゼル」「プイィ・ロシェ」「サン・ヴェラン」「ヴィレ・クレッセ」があります。
 
同じ白の産地としてコート・ド・ボーヌと比較するなら、まず遠く南にあるだけあって温暖です。これは単純な緯度の影響のほか、地中海からローヌ地方を抜けてブルゴーニュを通りアルザスに抜ける暖かい風の影響を強く受けるからです。
また「コート」と名の付く地名がないことから、幾分か畑の傾斜がゆるく平地に近いところが多いようです。
 
その結果シャルドネの味わいは豊満でボリューム感のあるものが多い傾向。酸味も比較すると穏やかです。その果実感に合わせて樽熟成をかけているものも多く、同じ白ワインの産地でもシャブリとは対照的な味わいです。
 
 

ボジョレー地区

 
ブルゴーニュの中で最も異質なのがボジョレー地区です。
日本では圧倒的に「ボジョレー・ヌーヴォー」で新酒として楽しまれるイメージが強い産地でしょう。しかしもちろん新酒以外のワインもつくっています。
 
ここはガメイをつかった赤ワインの生産が圧倒的な地域
「ボジョレー」「ボジョレー・ヴィラージュ」「クリュ・ボジョレー」の3カテゴリーで生産されます。
 
 

クリュ・ボジョレー

ボジョレー地方のグラン・クリュのような存在で、「モルゴン」「ムーラン・ナヴァン」などの10個の区画が認められています。
熟成能力がある上質なワインをつくるため、新酒として出荷することは認められていません。
3000~5000円くらいの価格帯でも20年を超えて熟成するワインがあります。「ガメイだから・・・」と軽視するのはもったいない産地です。
 
なおごく一部ですがシャルドネからつくる白ワインもつくられています。
 
 

ブルゴーニュワインのグレード

 
ブルゴーニュワインは非常に価格幅が広いのが特徴です。
手ごろなものは2000円台から、高いものは数十万円。中には数百万円のワインも。
 
その価格差の理由は畑の「格」です。
格付けの上下がそのまま品質の高低として現れ、価格に反映されます。
その頂点は「グラン・クリュ」です。
 
 

ブルゴーニュワインのヒエラルキー

 
ブルゴーニュワインは次のように4つのグレードに格付けされます。
上から「Grand Cru 特級畑」「プルミエ クリュ 1級畑」「ヴィラージュ 村名格」「レジョナル 広域名」です。
 
 
レジョナルクラスで最も多い「Bourgogne」は、「Apellation Bourgogne Contlrolee」と記載されることから、「ACブルゴーニュ」と呼ばれることもしばしばあります。
 
 

グレードで畑はどう違う?

 
上級のワインほど、そのワインに使われるブドウのエリアが限られます。単一畑でつくられる傾向にあるのです。
 
レジョナルのワインは、ブルゴーニュ全域のブドウを使えます。1つの畑からつくってもいいですし、複数の畑のブドウを混ぜても構いません。村名格や場合によっては1級畑のブドウを一部加えても、レジョナルを名乗ることは問題ありません。
 
逆にヴィラージュのワインにレジョナル専用の畑のブドウは使えません。
 
 
特級畑のブドウが他の畑とブレンドされることはめったにありません。
1級畑はたまに「○○ プルミエ クリュ」という畑名の表記されないものがあります。
 
 
例えばこのワインの場合は、それぞれの1級畑の所有面積が非常に小さい。だからそれぞれの畑ごとにつくるのが難しいので、ブレンドして畑名なしとしています
 
そしてヴィラージュ、レジョナルとグレードが下位になるほど、ブレンドするのが普通。畑名が表記されることは少なくなります。
 
 

なぜ畑をブレンドする?

 
どうして下級のブルゴーニュワインは畑のブレンドでつくるのか。2つ理由があります。
 
一つは手間とコストがかかる割に得られるものが少ないから
畑ごとにワインを仕込むためには、その数にあわせた発酵タンクが必要です。熟成もそれぞれに行い、より多種類のエチケットを用意する必要があります。
その手間をかけても有名な畑なら高くで売れますが、レジョナルクラスの畑ではたとえ畑名を表記したとしても知っている人が少ない。
畑名が表記されていたとて、それだけで買いたくなるわけではありません
 
 
二つには単一畑でつくるのはごまかしがきかないから
栽培条件で劣るからレジョナルなんです。ブドウの状態が理想的でないこともあるでしょう。
複数の畑をブレンドするなら、区画ごとの良し悪しが平均化されます。だから一つの畑の出来があまりよくなくても、トータルのワインとしては合格点なものになることもあるのです。
 
 

グレードでワインはどう違う?

 
ブルゴーニュワインの高いものはどう違うか?
香りのボリュームが増す。香りがより複雑になる。タンニンが緻密で味わいに立体感があり、余韻を長く感じる
 
 
これらが共通して持つグレードの違いでしょう。同じ生産者でランク高低の比較をすれば、より感じ取りやすいはず。
 
ただし高級ブルゴーニュは何十年という熟成ポテンシャルを持ちます。そして往々にして、20年後に飲んで美味しいワインは、新しいうちはあまり良さを発揮しないことがあります
 
 
 

「デクラセ」とは

 
デクラセとは日本語にするなら「格下げ」。実際のグレードより下の表記をあえて使うことです。
 
例えばプルミエ・クリュの畑のブドウを、村名格のワインにブレンドする。グラン・クリュなのに畑名ないの1級畑として販売する、などです。
 
 
例えばヴォギュエがつくる「シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ」。実は畑はグラン・クリュのミュジニーです。
ブドウの樹は定期的に植え替えないといけません。樹齢の低い樹のブドウは品質で劣ります。ヴォギュエのミュジニーはわざわざ「ミュジニー V.V.」(Viellie Vigne = 古木)と表記するほど、樹齢にこだわります。植え替えて樹齢の低い間は、デクラセして下級ワインとして販売することで、上級ワインのブランド価値を保つのです。
 
樹齢以外は基本的に同じです。同じ手間をかけて育てたブドウでつくるワインが、樹齢だけで価格1/3あたりになると考えるとお買い得な気がしてきます。ま、もっともヴォギュエの「シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ」は、お買い得とはとても言えないほど超お高いんですが・・・
 
 

ブルゴーニュのブドウ品種

 
ブルゴーニュワインがこれほど畑に注目される理由。
その大きなものに、ブドウ品種が決まっているというものがあります。
 
白ワインはシャルドネ
赤ワインはピノ・ノワール
ボジョレー地区はガメイ
 
 
同じ品種だからこそ違いを感じ取りやすいのです。
 
 

土壌の特性を表現する

 
加えてシャルドネとピノ・ノワールが土壌の特性をよく反映するブドウだという点も挙げられます。
コート・ドールは湾曲した地層の断面が露出している地域です。だから数m離れただけで土壌の種類が微妙に違ったりするのです。
 
有名なブドウのなかでも、例えばシラーはあまり土壌が語られることはありません。どんな土かの影響が比較的小さいのでしょう。
 

畑の土壌は地中深くの話なので、表面の土を見ても違いはわかりません。

 
「どんな土壌でも風味が変わらない」なんてブドウはありません。それぞれ向いた土壌があります。
ピノ・ノワールはかなり土壌を選びます。粘土石灰質が最高とされています。その真偽はおいておいても、粘土質や砂質での高品質ピノ・ノワールはあまり聞きません。
シャルドネはある程度どんな土壌でもよく育ちます。ただ、その風味は大きく異なります。
 
隣接していて気候の差がない畑どうしでも、そこに境界を引く意味がある。その理由はシャルドネとピノ・ノワールの品種特性です。
 
 

ヴィンテージのごまかしがきかない

 
ボルドーもその年によりブドウの出来に差がある地域です。
だからこそ、熟すタイミングや風味が違う数種類のブドウを植えて、そのブレンド比率を毎年変えることで、ヴィンテージによる差を小さくしています。
だから条件の厳しいヴィンテージであったとしても、ある程度繕うことができるのです。
 
ブルゴーニュはそれができません。
醸造技術で多少は操作できるかもしれませんが、単一品種・単一畑でつくるならば、ヴィンテージによる味の違いは生じて当然です。
 
 
ただし、ヴィンテージの「良し悪し」と考えるのは適切でないかもしれません。補糖しないとちゃんとしたワインにならないような、ブドウの成熟に困る年はなくなりました。地球温暖化によってです。
 
ヴィンテージによる特徴はあっても、それは優劣ではありません。「熟成に向いた年」「リリース直後から美味しい年」などのように、その特徴を見極めて、買う/買わないではなく、いつどうやって飲むのかを考えるのが建設的です。
 
 

熟成の楽しみがある

 
ピノ・ノワールもシャルドネも熟成能力がある品種です。
レジョナルですらものによっては10年。特級畑なら30年50年と美味しくなっていく可能性すらあります。
 
 
グレードによりワインが年をとるスピードは違います。レジョナルは早く、グランクリュは遅い。でもだんだんと変化していくのは確か。
全く同じ銘柄・同じヴィンテージでも、熟成により風味を大きく変える。それもブルゴーニュワインファンを魅了している点でしょう。
 
 

多様性が人々を魅了する

 
生産者が違えば味が違う。
畑が違えば味が違う。
グレードが違えば味が違う。
ヴィンテージが違えば味が違う。
熟成の度合いが違えば味が違う。
 
そしてそれぞれのワインは生産量が少なく一期一会である。
 
飲むたびに特別な体験ができる
全く美味しいと思えない残念な体験も含めて。
 
その予想できないところ。飲んでみるまで分からなくて、楽々と予想を超えていくところ。きっとその多様性に人々は魅了されるのでしょう。
完全に理解するには全財産をつぎ込んだとて足りません。沼にハマる覚悟は慎重に。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
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