ワイン選びに失敗しない最も確実な方法は、上手に専門家に相談することです。
ソムリエは全知全能ではありませんから、適切な情報を渡せばより良い提案が得られます。
不安を抱えて訪れた売り場で満足のいく買い物ができるかは、あなた次第です。
自分で飲むワイン、贈り物のワインに分けて、ソムリエを"使う"コツをご紹介します。
ワインを相談したくなる2つのシーン
ワインを選ぶとき、そのワインの用途は次の3つのどれかであるはず。自分で飲みたいワインを探すか、贈り物にするワインを探すか、用途はわからないけど確保しておきたいか。
ワイン選びを相談したくなるのは、特に最初の2つでしょう。
自分が飲むワインに迷う理由は・・・
自分が飲むためにどのワインを買うかで迷うのは、たくさんの種類がある売り場の中から限られた予算でなるべく満足できる1本を選びたいからです。
試飲したうえでワインを選ぶ機会はあまりありません。都心部の百貨店などに行けば試飲販売が行われていることが多いですが、飲めるものはごく一部。味見できないワインの方が圧倒的に多いです。
さらにプラカップでほんの一口飲んだ印象と、家でボトル1本飲む印象は多くの場合異なります。
普段飲みじゃない、ちょっと特別な日に飲む高価なワインを買うなら、失敗したくない気持ちが働くのでより迷ってしまうでしょう。
満足できるワインを選ぶには
飲んで美味しいワインを選ぶアプローチはいくつかあります。
一つはワインの評価を参考にするもの。「〇〇コンクール金賞受賞」や「××ポイント90点」などです。ワインの専門家がなるべく客観的に品質の高いワインを選びます。その評価を信頼して購入する方法です。一般論として「いいワイン」を選ぶアプローチです。テレビ番組などのメディアで紹介されていたから、SNSで見たから、知人におすすめされたからというのもこちらに含まれます。
もう一つのアプローチはあなたの好みにあわせて選ぶ方法です。ブドウ品種や産地、醸造法などをヒントに、あなたが好きなワインと共通点が多いものを探します。一般的な評価よりもあなたの好きを重視する選び方です。
この2つは併用できます。好みのタイプの中から評価の高いものを選んでもいいのです。
贈り物のワインを選ぶのはより難しい
上記からわかるとおり、贈り物のためのワイン選びはより難しい。なぜなら贈る相手の好みは往々にしてわからないからです。
特に送り主の方がワインを飲まない場合、味わいの傾向から選ぶのはほぼ不可能でしょう。
しかも贈ったものが気に入ってもらえたかどうかがわかりません。「社交辞令」というものをわきまえている大人は、たとえ好みじゃないワインをもらったとて「美味しかったです。ありがとうございました」と言います。
「去年はこのワインで喜んでもらえたから・・・」は、実はあまり信頼できないかもしれません。
ワイン選びはワインのことを知らない人にとってはもちろん、ある程度ワインを知っている人にとっても難しいです。だからより詳しい人に相談するのです。
ワインを相談できる場所で買う
ワイン選びの相談に乗ってもらいたいなら、頼れる人がいるところに買いに行くのが一番です。
ワインはコンビニにも売っていますが、店員さんに相談しようとする人はいないはず。ラベルに書いてあること以上を応えてくれるとは期待できません。(ごく一部のワインに注力している店舗は例外です)
ワインを相談したいなら、大小のワインショップや百貨店がおすすめです。
頼りになる相談相手の目印?
ワイン売り場で接客してくれるのは、広い括りで言うと「ショップ店員」さん。
その人が「ソムリエ」の称号を持っていれば金色のバッジをつけているでしょう。これが相談相手としてある程度頼りになるかどうかの一つの目安です。
バッジをつけているということは、「遠慮なくワインを相談してください!」というメッセージの表れ。
ただ、そのバッジだけで過度な期待はしないでください。確かに試験をパスするには結構勉強が必要ですが、そのバッジの示すものは「ワインを勉強していくための基礎知識がありますよ」程度のもの。その先どれだけ研鑽を続けるかは本人次第です。
「ソムリエ」と「ワインアドバイザー」
小売店・輸入元勤務者向けの「ワインアドバイザー」という日本ソムリエ協会が認定する称号が過去にありました。しかし認知度がなかなか高まらず、今では「ソムリエ」に一本化されています。
本来の意味で「ソムリエ」はレストランサービスをする人ですが、ワインに携わる仕事に従事する人は日本ソムリエ協会認定「ソムリエ」の称号を取得できます。本記事では分かりやすさのために、「専門知識のあるワイン販売者」という意味で「ソムリエ」と使うこともあります。
買う場所でメリット・デメリットがある
まず検討すべきが小さなワインショップです。
個人店の場合はオーナーさんが仕入れも接客もしています。だから並んでいるワイン全てを把握しているはずです。「この2本は何が違う?」と聞いてもきちんと答えてくれるでしょう。
ただし商品数が限られるので、同じ条件で何度もおすすめを聞けば、提案するものが無くなってくるかもしれません。
大きなワインショップにもソムリエの称号を持ったスタッフが在籍しているはずです。しかし規模が大きければ1人で全ては見れませんので、そのスタッフが飲んだことのないワインも当然置いてあります。スタッフの経験値もまちまちでしょう。
百貨店の販売スタッフも経験豊かな方が多いです。ただし百貨店の従業員ではなく、ワインの輸入会社がお金を出して派遣していることも。だからその売り場に長く常駐している人は一部で、担当外のワインはあまり把握していない場合もあります。
総合的な酒屋にもワイン専門スタッフがいる場合もあります。でも行ってみないとわからない。
特にワイン初心者は、最初の3つの中から選んで訪れることをおすすめします。
相談者には相談力があった方がいい
ChatGPTをはじめとした生成AI。あなたは上手に使えていますか?
満足のいく答えを返してくれる質問をできる人は、きっとワインの相談も上手にできます。
雑な相談は不満の残る買い物になりがちな理由を説明します。
ソムリエさんはあなたのことを知らない他人
相手は自分のことについて何も知らない前提に立つ。
実はこれが適切に相談する、適切にAIを使う一番のポイントです。
〇あなたは何のためのワインを買いに来たのか
〇あなたは普段どんなワインをどれくらい飲んでいるのか
〇今回のワインの予算はどれくらいか
〇あなたはワインに関してどの程度の知識があり、どういった言葉で紹介すればいいのか
単に「おすすめを教えて」と言っても、一般論やスタッフが好きなワイン・売りたいワインの提案はできます。
しかしこういった情報抜きには、「あなたのためのワイン」は提案できません。
相談の際に必要な情報はあなた自身のこと
ワインのことをある程度知らないと専門家に相談しちゃいけない。そんなことは断じてありません。
ただしあなたの要望や条件をきちんと言葉で伝えるコミュニケーション能力はあった方がいいです。
専門用語は知らないのならそう伝えましょう。「自分は普段ワインを飲まないけど・・・」と相談しても全く構いません。
接客の際は慣れた人ほど、お客様の見た目や話し方から属性を推測します。言葉の選び方や提案方法を変えます。
あまり根掘り葉掘り聞くのは遠慮するから、経験に基づいて推測するのです。言葉にして伝えることは歓迎されこそすれ、面倒くさがられることはありません。
その必要な情報とは、「冷涼産地のピノ・ノワールで全房発酵比率が高く新樽比率が低いもの」とかいうワインのタイプや醸造法の分類ではありません。ここまで好みがわかっている人なら、相談せずに自分で探せます。
それよりもあなた自身のことを伝えてください。
自分好みのワインを相談して選ぶポイント
まずは自分で飲んで満足のいくワインを買うために、好きな味わいのワインをおすすめしてもらう相談をしてみましょう。
このために必要なことは、自分の好みをいかに正確に伝えるかと予算です。
予算は2段階で考えると伝えやすい
「おいくらくらいでお探しですか?」
見た目からお客様の予算を決めつけるのは失礼なことも多いので、接客の際はだいたいまず予算を尋ねます。
でもワイン初心者のうちは予算に迷うことってありませんか?
いくらくらいの予算なら十分なんだろう?
財布には3万円入っているけど、もちろん全部は使いたくない。ワインなら2000円くらいはするものと覚悟しているけど、3000円でぐっと良くなるなら出してもいい。
ならば
できたら2000円以下に抑えたいですが、ずば抜けたものがあるなら3000円くらいでも出せます
と伝えればいい。
そうすればまず2000円予算で提案をしてくれ、そのうえで3000円のものは何が違うのかを添えて紹介いただけるでしょう。売る方からしたらそりゃ高いものを買ってもらいたいでしょうが、説明を聞いて納得できなければ買わなくても全く問題ありません。
好みを伝えるのは写真が簡単
自分で飲むワインを買い物に行くということは、それまでに一度ならず「ワインって美味しい!」と感じた経験があるはず。一方でいまいち口に合わないものも経験したから、ハズレなく選びたいと思うのでしょう。
好みのワインの味わいを言葉にして伝えられたら選んでもらいやすいですが、それができたら苦労しません。
だからおすすめは写真を見せることです。
あなたが「これ好き!」と感じたワイン。それを飲んだ時にお手持ちのスマホで撮って残しておくのです。
そしてそれを見せて「このワインが好きなので、似たようなワインを教えて」と相談する。写真は数枚あった方がいいです。そうすれば共通点からあなたの好みをより正確に推測できます。
ただしこの方法は、写真があなたのスマホの画像フォルダにないと使えません。レストランなどで美味しいワインに出会ったら、SNSに挙げなくてもとりあえず撮影しておいて損はないでしょう。もちろん撮影可能なお店であることは確認するのがマナーです。
ワインのエチケットから好みがわかる理由
日本には数十万種類のワインが流通しています。あなたが好きなワインを相談するソムリエさんが飲んだことがないかもしれません。
ただワインのラベル、エチケットには国ごとに表記ルールがあります。特にヨーロッパの場合は、産地の名前と栽培可能なブドウ品種、時に製法までが紐づいています。だからエチケットから飲んだことのないワインの味わいをおおよそ推測できるのです。
もちろん全く想像できないワインもあります。でも今の時代「Google Lens」などの機能で写真からワインを検索できるので、何かしらの情報は手に入ります。
好みのワインにプラスアルファを伝える
好きなワインがあったとして、それとちょっと違うものを飲みたい場合もあるでしょう。
例えば写真で好みを示すのはレストランで飲んだ高級ワインだけど、今日は手頃な価格で探している。
このワインに似た味わいのものを、2000円くらいで教えてください
全く問題ありません。
もちろん3万円のワインに似たワインを3000円でなら、スケールダウンするのは当たり前。でもタイプは寄せることができます。
例えば写真のワインを飲んだのは冬だから濃いのが美味しかったけれど、今は夏だからスッキリとしたものが飲みたい。
このワインが好きですが、今日はもうちょっとスッキリ系で
ちゃんと意図は伝わるでしょう。
「このワインってどういうタイプなんですか?」そう尋ねることで自分が好きだと感じたワインの位置づけを教えてもらってもいいでしょう。それが次のお気に入りワインを探すヒントになります。
苦手なワインは大きなヒントになる
好きなワインは写真に残しても、苦手だなと感じたワインを撮影することはないかもしれません。
でもワインを提案する身からすると、美味しいと感じたワインより苦手に感じたワインの方が、ワイン選びのヒントになります。
ワインがイマイチと感じる原因は大きく3つ。ワインの味わいが好みのタイプに合わないか、ワインの品質が純粋に低いか、何かしらの原因でワインの状態が良くないかです。
このうち3つ目に関しては確率的なものなのでヒントになりません。
今回の予算に対して「美味しくない」と感じたワインが安すぎると、あまり気にしなくていいかもしれません。逆に高いワインを苦手と感じていたなら、飲み頃の問題だった可能性もあります。
飲み頃についてはこちらを参考に▼
特に参考になるのは好みのタイプ違い。写真からワインのタイプを想像し、
このワインは酸っぱすぎると感じましたか?
ソムリエール
渋味がイヤだったんですかね?
ソムリエール
など確認することができます。
苦手だったワインとはタイプが違い、好きと感じたワインに似たワインを探すことで、あなたにピッタリであろうワインを選ぶことができます。
相談例:自宅で飲む白ワインを2500円くらいで欲しい
例えとして自宅で飲む白ワインを2500円くらいで相談するとします。
どういう風に好みを分析し提案するのか、そのプロセスを示してみます。
カリフォルニアの樽シャルドネがお好き
「このワインが好きでした」とお客様に見せてもらった写真がこの3枚だったとしましょう。
これは当店の白ワインにおける売上本数で、2023年12月のトップ3です。
ちょっとこれは簡単すぎますね。共通点は次の通り。
ポイント
〇品種はシャルドネ、産地はカリフォルニア
〇オーク樽熟成の風味をしっかりと感じる
〇甘やかな風味があってボリューム豊か、酸味は穏やか
こういった好みの方に2500円前後でおすすめするなら次の3本です。
正直この3つはよく似ていて、それぞれの違いを言葉で伝えるのは難しいです。私の中でイメージでの差はありますが、同時に飲み比べたわけではなく、ヴィンテージの特徴で逆転するほどの違いでしょう。
どれを飲んでもハズレはないはずです。
風味の方向性で好みを探る
次の例として最初の2枚が好きで、3枚目が苦手に感じたとします。
気に入った
気に入った
イマイチだった
この3つは2つはニュージーランド産で1つはドイツ産。品種はバラバラです。味わいとしても真ん中は辛口ではなくやや辛口。
醸造法としてオーク樽熟成をしていないのが共通しています。
白ワインの場合は酸味が高いものを苦手とする方もいるのですが、真ん中のワインも酸味が高いのでそれも違います。
となるとソーヴィニヨン・ブランという品種の青い風味やドライな余韻を苦手としたのかもしれないと推測します。
となればある程度以上にスッキリとした味わいで、熟した明るい果実味のあるものを提案します。
贈り物のワインを相談するポイント
贈り物において相手の好みにピッタリのワインを選ぶのは困難です。
お相手に「今度ワインを贈ろうと考えているので好みを教えてください」と聞けたらいいですが、現実的ではないでしょう。
基本スタンスとしては好みがわからない前提に立ったうえで万人受けするものを選ぶこと。そのうえで相手の属性から、リスクの高そうなタイプを避けることです。
ソムリエが知りたい情報
〇あなた自身はワインに詳しくない
〇相手の方の好みはわからない
この前提で贈り物のワインを相談するなら、予算に加えて相手の方に関する情報をなるべく詳しく伝えましょう。もちろん分かる範囲で結構です。
ワイン選びのヒント
〇贈り物の用途(誕生日、お礼、〇〇のお祝いなど)
〇年齢
〇職業
〇既婚者/独身者(ワインを一人で飲むか否か)
〇お酒の強さ
〇お酒の中でワインの占めるウエイト
〇ワインの経験(昔から飲んでいたかなど)
この中で最初の方はワインの知識関係なくわかるので答えやすいでしょう。
お酒の強さやワインの経験などは、一緒にお酒を飲む関係ならわかるかも。
用途から選ぶ方法も
美味しいと思ってワインを飲んでもらいたいのが基本なので、味で選ぶのがベースです。
一方で贈り物の用途にあわせて、そのワインの意味合いで選ぶ方法もあります。
もし当てはまるものがあればご参考に
お探しの用途に当てはまらない場合も多いでしょう。例えば誕生日やお礼のワイン。
それらの場合は「無難に気に入られそうなもの」で選んでいきましょう。
「無難な味わい」とは
無難なワインの味わい
- 香りの質がそのブドウ品種・地域として典型的なものである
- 果実味・酸味・渋味などの味わいで突出したところがない
- ヴィンテージやボトルによる風味の差が大きくない
- 既に飲み頃に入っていながら、数年単位の熟成が可能
好みのわからない相手に贈る無難な味わい、というよりなるべく嫌われにくい味わいワインの条件とは、次のようなものでしょう。
昔から有名で安定してたくさん売れてきたワイン。じつはそんな銘柄がこの条件に当てはまることが多いです。
例えばシャンパンの中でも特に知名度が高いヴーヴ・クリコ。「味の特徴は?」と聞かれても困るくらい、シャンパンとして普通の味です。
味わいが「無難」であることは大事ですが、一方で銘柄として「ベタすぎる」ことは、相手によってはおすすめできません。
ワイン好きには飲んだことのないものを
ワイン好きには新しいもの好きが多いと思っています。なにせ数あるお酒の中で、これだけの種類があるワインを選ぶのですから。
たとえ晩酌ワインの銘柄はお気に入りのもの固定という人でも、贈り物でもらうワインは飲んだことがないものの方がうれしいのでは?
贈り物にワインをあえて選択したということは、相手の方は多少なりともワインがお好きということをご存知だからでしょう。
となれば贈り物の銘柄は「ベタすぎる」ものは避けるべきです。過去に飲んだことがあるだろうから。
とはいえ種類の多いワインにおいてギフトに適した価格で、「どこでも売っていて誰もが飲んだことある」というものはそう多くはありません。
気にしすぎなくていいでしょう。
年齢で避けるタイプを考察する
「〇〇歳くらいの方ならこんなワイン」
そう言い切れるような簡単なものではありません。ただ、ヒントにはなります。
例えばざっくり60歳くらいを過ぎた方なら、飲む量が減ってくることが多いと推測します。そうなるとワインを1-2日では飲み切らないかもしれない。一人暮らし、あるいは配偶者がお酒を飲まない場合もそうです。
なら数日かけて美味しく飲み切れるタイプを選ぶ。古いワインやスパークリングワインを避けます。
30歳未満の若い方へのプレゼントなら、ワインの経験値も低いと推測できます。(結構例外もありますが)
ならば味わいが奥深く繊細なものより、風味がハッキリしたものを選ぶ。何年も置かずに飲むでしょうから、飲み頃感があるものがベター。
抜栓が難しいだろう古いワインも私なら選びません。
50歳前後よりも上の方の若いころは、「ワインといえばフランス」のイメージがかなり強かったはずです。それもあって「年配の方にはフランスワイン」と考える人もいますが、そうとは限らない。
ワインを飲む頻度が少ない方ならそれもいいでしょう。でも頻繁に飲んできた方なら知識がアップデートされて世界中で素晴らしいワインがつくられていることを知っています。またフランスの高級ワインを飲んだ経験が豊富なら、予算によってはあなたが贈るワインが見劣りしてしまうかも。あなたと同じようにいろいろな方からワインをもらってきてるだろうことも想像しましょう。
ワインの「格」のようなものが定まっていない、新興地域のものがより喜ばれる場合もあるはずです。
職業は年収に関係しワインに関係する
ワインがお金のかかるお酒であることは否定できません。ある程度の年収がないと、そうそういろいろな銘柄を頻繁には飲めない。
そして年収にはやはり職業が関係します。
医師や弁護士、金融やマスコミ関係なら年収が高いことが予想されますし、経営者やコンサルタントは付き合いでお酒を飲む機会も多いでしょう。
ワインの経験値、とりわけどれくらい高級なワインを飲んでそうかのヒントになります。
これらの職業の方に対してそれほど多くない予算でワインを選ぶなら、私は有名産地はあえて外して提案します。同じようにワインをもらう機会も多いだろうと予想するからです。
その上でブドウ品種や味わいは典型的で、ブランドの低さから値段の割に品質の高いもの。相手の方に新たな発見を促せるようなものを選ぶでしょう。
タイプに良し悪しなんてない
相手の好みがわかるならともかく、赤ワインがいい、白ワインはダメのようなタイプの優劣はありません。
選ばれる頻度で言えば赤ワインが最も多いです。だからといってそれが無難かというと、渋味の強さに対する感じ方が人それぞれです。ワイン経験値によっては避けるべきかもしれません。
赤ワインが多いからこそ、あまりもらう機会が少ない白ワインを選ぶという「逆張り」も一つの手です。
ただし甘口ワインは避けておいた方が無難かも。ワインは辛口しか飲まないという人も多いです。特に年齢によっては「糖尿病の治療中で甘いお酒は避けている」という可能性もあるからです。
相談例:ワイン好きの方へお礼に贈りたい
先ほどと同様、相談例に対して提案するワインを考察してみます。
40代の会社員で、配偶者のいる方に何かしらのお礼で贈るワインを選びます。晩酌にワインをよく飲むとは聞いているけど、会社の飲み会で居酒屋のワインは飲まないので、味にこだわりがあると推測できるとします。
予算5000円、1万円でそれぞれ選んでみましょう。
予算5000円でワイン好きの方へのお礼
予算5000円というのは贈り物としては十分な額ですが、ワインを選ぶ上で決して豊富とは言えません。「普段飲み用よりもちょっと上」というクラスです。40代でワイン好きの方なら、ちょっと特別な日には自分で買って飲む金額かも。
だからこそ「自分で買える金額だけど、自分ではあえて選ばない。でも美味しい」というタイプなら、きっとワイン好きの方に興味を持ってもらえるでしょう。かといってあまりに変わった風味のものはリスキーです。
〇有名生産国のマイナー品種、でも味わいは割と王道
〇人気ブドウ品種の新興生産地
この2つのアプローチでピックアップしました。
イタリアの赤ワインといえば、特に中南部は「果実味しっかりでそれほど渋味は目立たずなめらか」というのが典型。そしてこのワインもまさにそうなので違和感なく楽しめるでしょうが、品種は「モニカ」。そこそこのワイン通でも聞いたことがないはず。
シャルドネは世界中でつくられているからこそ選択肢が多すぎて、わざわざオレゴン産を選んで買う方は多くないはず。だからこそ贈り物で。どこかで飲んだことがなければ、先述の「あえては買わない」ワインと言えるでしょう。
「あえては買わない」といえば、知らない5000円のロゼワインに手を出す方は稀です。3000円以下に豊富に美味しいものがあって、それより高くどう美味しくなっていくのかが想像がつきにくい。ワイン好きだからこそ喜んでくれるはずです。
予算1万円でワイン好きの方へのお礼
予算が1万円あれば、それほどメジャーでない産地の適度に有名なワインが狙えます。
「この生産者のワイン、気になっていたんだけどなかなか手が出なくて・・・」飲んでみたかったワインを贈り物でもらったなら、そりゃあうれしいはずです。
「ニュージーランドのピノ・ノワールといえば・・・」という問いに対して、少なくとも10番目までには名前に挙がる。それが「マーティンボロー」という産地のパイオニアであるアタ・ランギです。品質は間違いないのですが、1万円という金額なら他にも優先して飲みたい産地がいろいろある。だからこそのチョイスです。
グロセットもまたある程度ワインを飲んでいる方にとっては有名生産者。オーストラリア産リースリングといえばで真っ先に名前が挙がります。スクリューキャップだから取り扱いの難しさも熟成にばらつきもなくてハズレが少ないでしょう。
1万円あればいろいろなシャンパンを買えます。だからあえて別の地域で高級スパークリングワインを買うのは勇気がいる。
シャンパーニュで有名な「ルイ・ロデレール」がカリフォルニアに進出してつくるので、安心感があります。でも自分で選ぶならシャンパンのブランド力をつい信じちゃう。だからこその逆張りです。
知識は要らない、真剣さと敬意は必要
ソムリエ、ワインアドバイザー、ショップ店員はシステムではありません。まして全知全能の神ではありません。ワインの知識と役割を持った一人の人間で他人です。
その知識は業務の中で身につくものだけではなく、個人研鑽と向上心で積み上げてきたものです。
この前提に立つなら、取引相手としてその能力に敬意を持つはずです。そして真剣に相談するはずです。たとえ買わない選択をするにせよ、それはきちんと意志をもって、理由を持って決断するはず。
その心構えがあるなら、ワインを紹介する側も全力を持って臨んでくれます。ゴールはワインを売ることじゃない。あなたがその買い物に満足して、またその売り場に足を運んでくれることだからです。
そのために必要なのは、決してワインの知識ではありません。ワインに詳しくないから相談するんです。
彼ら彼女らの給料は、あなたが支払うワインの代金から出ているのです。
見た目で適当に選んだりネットの口コミを参考に選ぶ。こちらの事情を話して時間をかけて相談し納得できるものを買う。どちらがお得でしょう?