ワインの選び方

ブドウ品種でワインを選ぶ落とし穴!?選びにくいが美味しいワインとは

2023年9月20日

ブドウ品種でワインを選ぶ落とし穴!?選びにくいが美味しいワインとは 
 
ブドウ品種でワインを選ぶ方法しか知らないと、見逃してしまいがちな美味しいワインがあります。
入門者向けとして広く紹介され、分かりやすくはあるのですが、完璧ではありません。
選びにくい理由はあれど、同価格帯の他のワインに比べ確かなメリットのあるワインがたくさんあります。
選んで買えるワインの幅が広がれば、ワインのお買い物はもっと楽しくなることでしょう。
 
 

「品種で選ぶ」方法は優れている

 
どうやったら自分好みのワインが選べるんだろう?
 
誰しも最初は疑問に思うことです。何しろワインは種類が多い。それに高価なものも少なくない。
大手メーカーの缶ビールや缶チューハイなら片っ端から飲んでみて自分にあうのを見つけるのが早い。種類が少ないし安いからです。でもそれはワインではとてもできません。
 
そこで多くの入門書やワインスクールなどでおすすめされているのが、ブドウ品種でワインを選ぶということです。
 
 

「ブドウ品種でワインを選ぶ」とは

 
まずは十数種類の手に入りやすいブドウ品種100%でつくられたワインを一通り飲んでみる。その中でいいなと思った品種を中心に飲んでいく
簡単に言うとこれが「ブドウ品種でワインを選ぶ」の基本です。
 
 
基本の品種とは、赤ワイン・白ワインそれぞれで合計7種類。
赤ワイン 白ワイン
カベルネ・ソーヴィニヨン シャルドネ
ピノ・ノワール ソーヴィニヨン・ブラン
メルロー リースリング
シラー
 
この7品種が最もメジャーなことは誰も異を唱えないでしょう。次は異論があるでしょうが、上記に次いで有名な品種です。
 
赤ワイン 白ワイン
グルナッシュ(ガルナッチャ、タイ、カンノナウ) ピノ・グリ
テンプラニーリョ シュナン・ブラン
プリミティーヴォ(ジンファンデル) セミヨン
カベルネ・フラン ゲヴュルツトラミネール
マルベック
 
有名で人気で手に入りやすいものから順に飲んでみて、その特徴を覚える。そのうえで「今日は軽めのワインが飲みたいから、ピノ・ノワールにしよう」というように選ぶ。
それがブドウ品種をキーとしてワインを選ぶ方法です。
 
 

「ブドウ品種でワインを選ぶ」が優れている理由

 
この方法の優れているところは、わかりやすさと手軽さです。
 
何しろ覚えることが少ない。
人気のものから順に飲んでいくのは、自分の好みが見つかるまででいいのです。これらのブドウ品種全部飲まないといけないわけじゃありません。
 
 
あとは自分の好きなブドウ品種がラベルに書かれているワインを選べばいいだけなので、非常にわかりやすい。
 
 

品種で選べば上手くいく

 
それでいて結構信頼できます。というのもワインの味わいを最も大きく左右するのは「ブドウ品種」と「産地」だと言われますが、産地は品種に無関係ではないからです。加えて価格も品種に関係します。
 
  • 温暖~高温で豊かな日照量がないと、ブドウが完熟せず青臭くなる
  • 冷涼な気候でゆっくり成熟してこそ風味が豊かになる
  • 灌漑(かんがい:水やり)のコストが高い環境なので乾燥に強い品種を植える
 
このようにその産地に適した品種、品種に適した気候というものがあります。
だから品種が決まれば産地もある程度絞られ、結果としてワインの味わいにある程度方向性がみられるのです。
 
 
高価なワインは高そうな味がします。その高そうな味をつくれる品種は、商業用に栽培されている1400を超える品種のなかで、そう多くはありません。
安いワインはどの品種でもつくれます。でも高い価格に消費者が納得して買ってくれる品種は限られており、必然的に1万円超えのワインになるブドウ品種はそう何十種類もありません
 
それゆえブドウ品種はワインの価格にも関係します。だから品種を選べば味わいもおよそ決まるのです。
 
 

お気に入りの品種が見つかった次は?

 
有名品種の中に「自分はこれが好きそうだなぁ」というのが見つかったとしても、同じ銘柄をずっと飲み続ける方は少数派でしょう。
多くの方は「カベルネ・ソーヴィニヨンでもっと美味しいのないかな?」と、お気に入りの品種の違うワインを飲み進めることでしょう。
あるいはいつもとはちょっと違う気分のときに、まだ飲んだことのない品種にチャレンジし、より自分にピッタリのものがないか探す。徐々にマイナーな品種も飲んでみる。
 
 
これが「ブドウ品種で選ぶ」方法をより深めるということです。
ブドウ品種でワインを選ぶのは、覚えることが然程多くはなく、それでいてほどほどな精度で欲しいワインを選べる。現状ではワイン初心者にとって最高の方法です。
 
 

ブドウ品種ばかりで選んでいると見逃しがちなもの

 
ブドウ品種で選ぶのは、確かに分かりやすく失敗も少なめです。
その代わりにすべてのワインを網羅できるわけではありません。この方法でワインを選ぼうとすると、ついつい避けてしまいがちなワインのタイプがあります。
 
それは大きく次の2つ。
ブレンドワインとマイナー品種のワインです。
 
 

ブレンドのワインは選択肢に挙がりにくい

 
「今日はしっかりした赤ワインが飲みたいから、カベルネ・ソーヴィニヨンにしようかな。それともシラーがいいかな」
そのようにブドウ品種で選んでいるとき、あまりブレンド品種のワインは候補として頭の中に浮かばないのではないでしょうか。
 
 
例えばボルドー地方のワイン。メルロー100%はあっても、カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランの単一ワインはめったにありません。しかも最多品種が50%や60%といったものもあります。ブドウ品種の特徴がそのままワインの特徴とは言えないので、選び取りづらいのです
 
 

ブレンドワインの魅力

 
カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にメルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドなどをブレンドする。
こういった品種構成のワインを「ボルドーブレンド」と呼びます。ボルドーブレンドをつくる生産者は、たいていブレンド比率を毎年変えます。
 
4品種あるから何か出来がわるくてもほかの品種で補える。これがボルドーブレンドの魅力の一つ、味わいの安定性です。ただしブレンドというのは、醸造家にとって「こんなワインをつくるんだ!」という目指すものがないとできません
 
 
それが醸造家の哲学だったり長年守ってきたスタイルだったりオーナーの方針だったり様々でしょう。しかしブレンド比率や樽熟成などの醸造オプションを選ぶ上で、醸造家の頭にはワインのイメージがあるはずです。
 
単一品種だからといってブレンドしないわけではありません。複数の畑から別々に醸造したワインを、最終的に比率を調整しながらブレンドして仕上げるのが普通です。
それでも風味特性の違う複数の品種からつくるワインの方が、よりつくり手の意図が現れるワインとなるのは間違いないはずです。それはヴィンテージごとの味わいの安定にもつながります。
 
「美味しいワインをつくろう」という意図と安定性。それがブレンドワインの魅力です。
 
 

マイナー品種はたどり着く人が少ない

 
先ほどメジャーな品種を挙げましたが、逆に言うとそこに挙げなかった品種は全てマイナー品種です。そう言い切っては少し乱暴でしょうか。
 
「自分の好みが見つかるまで、よく目にする順に飲んでいく」
そうすると多くの人が有名品種の中に好みを見つけます。好奇心旺盛な方であと20~30品種程度でしょう。
 
何百種類と飲み続ける人は少ないでしょう。何百種類もの品種のワインが実際に入手可能であるにも関わらずです。
 
 
その顕著な例がイタリア。イタリアは土着品種の国で、州単位、あるいは地方単位で非常に多くの品種を栽培しており、そしてほかの地域ではごく一部しか栽培されません。
「キャンティ」をつくるサンジョヴェーゼ。「バローロ」をつくるネッビオーロ。モンテプルチャーノやプリミティーヴォ、ネグロアマーロ、ネレッロ・マスカレーゼ・・・白ブドウならコルテーゼにトレッビアーノ、フィアーノやヴェルメンティーノ・・・。
こんなものはほんの一例で、300種類以上の品種からワインがつくられていると聞いたことがあります。
 
ドゥレッラやインクローチョ・マンツォーニ、フォルジャリンまでたどり着く人は本当にごく一部なのです。
 
 

マイナー品種のデメリット

 
お金儲けという点では、土着品種を抜いてしまって有名な国際品種を植えた方が有利かもしれません。実際にイタリアにてカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといったフランス品種の栽培面積は結構多いです。国際品種で評価の高いワインをつくれば、高い価格で販売しやすいからです。
 

 
この2本のワイン。どちらも飲んだことがなかったとして、どちらかをプレゼントに贈るならシャルドネを選ぶ人がほとんどだと思います。
(個人的には断然このフィアーノの方が飲みたいですが、それは味を知っているから)
 
もちろんイタリアで国際品種を植えている人が全て商業主義だ、なんて言うつもりは毛頭ありません。純粋に高品質なワインがつくれると思って植えたのでしょう。
しかしいわゆる「スーパートスカーナ」ワインの成功。サッシカイアやオルネライア、ルーチェ、トリノーロ、マッキオーレなどがつくるワインの最近の値上がりを見ていると、品種の選択と経済的な成功は密接なように感じます。
 
 

それでもつくり続けるマイナー品種

 
世界的な人気ワインになって、今の数倍の値段で販売できるようになる。マイナー品種からワインをつくっていては、その可能性は非常に低いです
 
それでもつくり続けている生産者がいます。そのワインを見つけて日本に輸入しているインポーターがいます。
その理由は決して「珍しいから」だけじゃありません。有名品種は持っていない個性がワインに表現されていて、ワインの「いろいろ飲む楽しみ」を広げてくれると信じているからほかの品種ではなくこの土着品種が大好きという人も少ないながら必ずいることを知っているからです
 
 
ワインが売れなければ生産者はワインをつくることはできません。たとえあなたが聞いたことのない品種だったとしても、継続的に売れている、買って飲んでいる人がいるということ。そうじゃないと日本であなたの目にとまらないのです。
 
マイナー品種だからといって強烈な個性を持つとは限りません。その特徴は様々なので「マイナー品種はこういう風においしい」なんていうことはできません。でも確かに何かしらの魅力があるから、現代まで受け継がれてきたのです。
 
 

見逃しがちな産地1 ボルドー

 
ボルドーワインの人気は陰りを見せています。
国内においては単純に「20年前に比べてワインの選択肢が膨大に増えた」というのが大きいでしょう。他に美味しいワインが大量に輸入されるようになったから、需要が分散しているのです。の
しかしそれだけではないようです。こちらのWINE REPORTの記事によると、ボルドーのブドウ畑は2023年の10月に10%近く減らされるようです。生産過剰に陥っているのです。
 
 

苦戦しているのは低価格ワイン

 
この記事によると、特に8-15ユーロほどで取引されるワインで販売が苦戦しているようです。日本に輸入するなら3000円前後かもう少し上でしょうか。流通しているワインの種類はとてつもなく多いうえに、一つ一つの生産者で有名なものはそう多くない価格帯です。
 
だからこそ選び方の指標として品種を頼りにしたくなるのでしょう。そうなったときに、ブレンドが基本で品種として味を想像しにくいボルドーワインは不利です。
ボルドーはジロンド川の左岸・右岸で、メインでブレンドされる品種が異なります。とはいえ10万haという広大な畑に対して品種のバリエーションは少ない。地域が同じならワインごとの違いは、品種においてはブレンド比率のパーセンテージくらいです。
だから生産者ごとに情報を得て選ぶのですが、ワイナリー説明にはどこも同じような良さそうなことが書かれています。公式HPを精読したとて、「この2本はどう違うの?」の答えは得られません。
たくさんの似た価格のボルドーワインから、1本を選ぶのが非常に難しいのです
 
 
これだけが需要減少の理由ではありませんが、「選択肢が多い中で消費者が選ぶのが難しい」というのはあるはずです。
 
 

ボルドーワインの他にない魅力

 
一方でボルドーワインには、ほかの地域には"あまりない"魅力があります。手ごろに熟成ワインを楽しめることです。例えばこちら。
 

 

 
10年前後熟成したワインが2000円そこらで出てくることは、ほかの地域ではあまりありません。「腐葉土」や「皮革」などと表される、なんとも言葉にしにくい「熟成による香り」。2019~2021年あたりの若いボルドーと比べたとき、香りの方向性に明らかな違いがあります
 
熟成ワインが新しいワインと変わらない値段で手に入る。これこそボルドーの販売不振の影響かもしれないだけあって、販売側としては喜んでいいのか微妙なところです。
 
 

見逃しがちな産地2 イタリア

 
イタリアの場合は見逃すというより、ある程度分け入ってはいくが途中で遭難する人が多いのでしょう。先述のとおり非常に土着品種が多く、日本で手に入るものだけでも相当数あります。
  
有名なものに関しては、論ずるより飲むが易し。サンジュヴェーゼやモンテプルチャーノなら「まず飲んでみましょう」と提案します。手頃なものも多いですから。
 
 
しかしなんでもかんでも「飲んだらわかるよ」じゃあ、こうして記事を書く意味がない。それに種類が多すぎて何から手を付けていいのかわかりません。
なので個性のハッキリした品種について、どういうポイントを期待して飲めばいいのかと、もし取り扱いがあれば具体的なワインをご紹介します。
 
 

ルケ バラのような香り(ピエモンテ州)

おそらくピエモンテ州でしか栽培されない「ルケ」という黒ブドウ。バラや香水のようなボリューム豊かな芳香が特徴のアロマティック品種です
白ブドウでは「ゲヴュルツトラミネール」をはじめいくつかあるアロマティック品種ですが、黒ブドウでアロマティック品種は珍しい!
 

 
この品種を栽培する生産者は20数軒しかないそうです。にも関わらずイタリアを代表するワインとして「D.O.C.G」に認定されているのは、それだけ特徴があって魅力的だからです。
 
 

サグランティーノ フルボディで渋み特級

 
赤ワインの渋味のもとは、ブドウの果皮や種に含まれるタンニン。タンニンはポリフェノールの一種ですが、そのポリフェノールの含有量が世界一といわれているのは、フランスの「タナ」とウンブリア州のあたりの「サグランティーノ」です。
 
カベルネ・ソーヴィニヨンにもタンニンの強いワインは多くありますが、さらに渋みが強いです。ピエモンテ州のネッビオーロもまたタンニンの多い品種ですが、ネッビオーロよりふくよかなボディ感と果実味を持つのが特徴。
 
渋味と飲みごたえを求める方にとって、これ以上ない選択となるはずです。
 
 

フリウラーノ 山系メシワイン

 
ものすごく乱暴にまとめると、イタリアの土着品種でつくる白ワインは料理の邪魔をしないようなスッキリ系が多いです。
 
なので幅広く料理とあうものが多い一方で、「この料理にあう1本は?」でその品種に絞りづらいところがあります。「確かにこのワインならそこそこ合いそうだけど、ほかにもありそう」というものです。
 
 
そこで選び方の方針として、そのワインが海のワインなのか山のワインなのかを考えてみましょう。どちらも「ミネラル」と表現される風味がありますが、その質は別。フリウラーノからはかんきつ系の風味の奥に鉱物的なミネラルを感じることが多いです。
だからこそ沿岸の料理よりは内陸の料理。まずは鶏肉や豚肉などの肉料理から考えてみまよう
 
 

ヴェルメンティーノ 海系メシワイン

 
ヴェルメンティーノも飲めばおなかが減ってくるワインです。
この品種も風味としてはかんきつが挙げられることが多いですが、ミネラルの質は塩味より。ちょっとしょっぱいようなほのかに苦いような、そんな味わいが料理を美味しく感じさせてくれるのです。
 

 
 
当然開けるべきは海の幸をつかった料理の時に。生魚よりは火を通してうまみが増した魚料理がいいでしょう
 
 

ネレッロ・マスカレーゼ ピノ・ノワール好きにとってコスパワイン

 
シチリア土着の「ネレッロ・マスカレーゼ」は、私のイメージはタンニン強めなピノ・ノワール。それほど果実味が抑制的で上品な酸味を持ち、口当たり軽くエレガントです。
 
ただし価格もピノ・ノワールに似ているところがあって、ネレッロ・マスカレーゼ100%でつくる「エトナ・ロッソ」はおおよそ5000円くらいから。それでも同じ価格帯のピノ・ノワールと比べたとき、風味のち密さや香りの複雑さ、余韻の長さで優ることが多いです。
 
 

興味のある州から選ぶのもアリ

 
上記のように、有名なブドウ品種の中にお気に入りがあれば、それと比較して我々ソムリエが提案することもできます。「私メルローが好きなんだけど、せっかくならイタリアでしかない品種でおすすめありますか?」のように。
 
一方で誰かしらのガイドがなければ、一般論だけではイタリアワインを飲み進めるのは結構難しいのが事実。つい銘柄として有名なものに安心をもとめがちかも。
 
 
頼れる人が周りにいないけど自分で考えたい場合。その州ごとの料理からお気に入りを見つけ、郷土料理からワインに目星をつけるのもいいでしょう。
大都市圏には「イタリア料理店」ではなく、「マルケ料理専門店」「シチリア料理専門店」などがあるはずです。イタリア料理・イタリアワインを全体でとらえるのではなく、州単位で吟味することをおすすめします。
 
 

見逃しがちな産地3 ポルトガル

 
ボルドーとイタリアの難しさをかけあわせたようなのがポルトガルワインです。なにしろ第2次世界大戦以降に鎖国状態だっただけあり、ほとんどが土着品種です。一部スペインと共通している程度。
 
さらにその品種をブレンドします。だからこの味わいは品種によるものなのか産地によるものなのかが判別できないのです。
 
 

ポルトガルワインを選ぶのはプロでも難しい

 
ここの地方はこういう気候要因があるから、適した品種は次の〇種類。だから赤ワインはこういうスタイル、白ワインはこういうスタイルになる
こういうものが確立していれば、あとは順に勉強していくだけ。品種名や地域の名前が耳慣れないものでも、飲んだことのないワインをある程度は味を想像して選ぶことができます。
 
 
しかしそういったわかりやすい法則が、どうやらまだないみたいなんですよね。少なくとも輸入元さんに話を聞く限りでは。傾向はあるのでしょうが、地域ごとを比較して文字で違いを説明できるほどのものじゃないのか。
 
ゆえに「ポルトガルワインはこのように楽しむべし」というのは現状わかりやすくご紹介することはできません。プロでも扱いにくい産地なのです。
しかしそれでもここに名前を挙げた理由、魅力はあります。
 
 

コストパフォーマンスの高さ

 
「コスパワイン」とは決して安いワインのことではありません。そのワインの品質や風味なり総合的に得られる満足が、価格に見合っているかそれ以上であることを意味します
 
「美味しい」という感情は非常に主観的なので、「このワイン、コスパ抜群です!」って言われたって「それ、あなたの意見ですよね?」となりませんか?味わいを数値化するのはほぼ不可能とはいえ、もう少し詳しい「コスパ抜群」の理由が欲しいものです。文字で「コスパ」を伝えるなら、品質や風味特性が語れるほどの明確な違いがワインに求められます
 
その違いがポルトガルワインにはあります。
後述しますがまずはバランス感。果実味や樽香の強さに振り切ったワインは少なく、ワイン評価誌やコンクールなどの視点で高く評価されそうなものが多いです。それはポルトガルワインを輸入するインポーターが多くないため、評価の高いワインを仕入れやすいのでしょう。
そのうえで果実味の凝縮度・香りのボリューム・余韻の長さといったブドウの質が要求されるポイントで、同価格帯の他国のワインより優れています
 
 
これはポルトガルの経済的な弱さによるものでしょう。国内に競争力のある工業が発達していないため、外貨の獲得手段に乏しいといいます。それゆえ人件費が低く、コストが抑えられるのです。
 
 

南の産地なのに過熟しにくい

 
ポルトガルワインに味わいのバランス感をもたらしているのが、まさにその特徴である土着品種。ポルトガルはヨーロッパでも南端に位置する温暖な国であるため、そこに根付いた品種は暖かい気候に適応しているのです。
 
 
近年ブルゴーニュではブドウの過熟が問題になっています。地球温暖化により、かつて問題だったブドウが十分に熟さないことは少なくなりました。今度は逆に早く熟しすぎるか糖度が上がりすぎて酸味が落ちてしまうことが問題になっています
寒い地方でもよく熟すというので選ばれてきた品種が、気候変動に適応できないのです。
 
ポルトガルにおいて気候変動の影響がどの程度か、情報を持っていません。しかしもともと暖かい気候でこそきちんと熟す品種です。適切な糖度・酸度において収穫するのは難しくないのでしょう。
アルコール13.5%で上品な酸味を持った赤ワインというのが、南の産地ポルトガルでは普通に見つかります。
 
決して「アルコール度数が低いからいいワイン」というわけではありませんが、飲み疲れしない軽やかさという魅力を持っています。
 
 

見逃しがちなワイン レッドブレンド

 
カリフォルニアのレッドブレンドも見直すべきワインです。特に2000~3000円前後の手頃な価格帯においては。
これもまた「コスパの高い」赤ワインだからです。
 
 

「レッドブレンド」「レッドワイン」とは

 
アメリカにおいて「カベルネ・ソーヴィニヨン」などワインのラベルにブドウ品種を記載するなら、75%以上その品種を使ってないといけません。
逆に75%未満なら品種名を表示できません。そういうものは「レッドブレンド」や「レッドワイン」と表示されることがあります。
「レッドブレンド」の場合は、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったボルドー系品種に加え、ジンファンデルなどカリフォルニアならではの品種がブレンドされることが多いです。
 
「オーパス・ワン」はカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が75%を超えていることも多いのですが、年によります。なので表記は「RED WINE」を選んでいます。
 

div>こういったものは「レッドワイン」だから売れているのではありません。高評価を受けた生産者の名前で売れているのです。

手頃な価格のブレンド赤ワインは、やはり味と価格の割に売り上げの伸びがよくありません。
 
 

レッドブレンドの魅力

 
果実味の凝縮感が高く、フルーツ感が前に出ている親しみやすいスタイルであること。そして同程度の凝縮感を持つワインと比べたとき、単一品種のワインよりも価格が安いこと
それがレッドブレンドの魅力だと考えます。
 
 
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローの品種名を表記したワインと味わいを比べると、渋味が少ないです。でも普段のみ価格のカリフォルニアワインに渋味って求められていないように感じています。何年も熟成させて飲むものじゃない、今飲みたいから買うものですし。

レッドブレンドのおすすめ銘柄

 
当店で扱っているレッドブレンドは、この4つが売れ筋です。最初の3つはそれぞれの価格帯で頭一つ抜けた濃密なフルーツ感と樽香を持ちます。
 

 

 

 
 
それに対してクロ・デュ・ヴァルは雰囲気が結構違います。フルーツ感主体で渋みがないのは共通ですが、酸味がほかの3つより明らかに高く、上品さがあります
 

 
ナパ・ヴァレーの安いカベルネ・ソーヴィニヨンを買える価格ではあります。しかし同価格帯のナパカベにこのワインの上品さを持つものはありません。
 
 

「飲みたいものが多すぎる」楽しみを

 
ワインのお買い物を楽しんでもらうこと。それが一番の願いです
 
今回ご紹介したものに、「あ、確かにこういったワイン、あまり飲まない/飲んだことないな」というものがあれば、それだけで記事を書いた甲斐があるというもの。
 
同じワインをリピートすることを否定はしません。「このワインさえあればほかにいらない!」というものが何度も飲める価格で見つけられたなら幸せです。
一方で「美味しいものが飲みたい。でも失敗したくない」その気持ちで妥協して飲んだことのあるワインを選ぶなら、楽しい買い物とは言えないはず。我々販売側の魅力的な提案が不足しているということです。
今回ご紹介したように、あまりインターネットで売れないワインの中にも、飲んでもらえれば満足してもらえるワインはたくさんあるのですから。
 
そして今回ご紹介できなかったものの中にも、知られていない高品質なワインはたくさんあります。文字数の都合と筆者の勉強不足によるものです。ワインに落ち度はありません。
 
 
「これでいっか」と選ぶより、予算オーバーしたショッピングカートから泣く泣く減らしていく方がワインのお買い物は楽しいはず。そうなるよう今後もありきたりじゃない提案をしていく所存です。
 
なので皆様も「ワインをブドウ品種で選ぶのは全てじゃない。他に美味しいものがあるかも?」と考えていただければと思います





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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