ワインの選び方

南北で対決!品種・価格別カリフォルニアワインのおすすめ銘柄

2023年9月5日

南北で対決!品種・価格別カリフォルニアワインのおすすめ銘柄
 
カリフォルニアは広く様々な気候があるため、ブドウ品種ごとに適した地域で美味しいワインがつくられます。
ブドウ品種からワインを選ぶ方にとって、期待通りのワインを選びやすいのがその魅力の一つ。
品種と価格帯ごとに選ぶ地域を知れば、よりハズレなくワインを選ぶことができます。
人気の3品種について注目すべき産地とおすすめワインを、サン・フランシスコより南北に分けてご紹介します。
 
 

目次

カリフォルニアワインが人気の理由

 
当店にて本数ベースで最も多くのワインが売れる地域はカリフォルニアです
他店のことはわかりかねますが、人気の生産地域であることは間違いない。
その理由は推測するほかありませんが、いわゆる「かりやすいワイン」であることが大きな要因だと考えています。
 
 

品種で選びやすいカリフォルニアワイン

 
有名なブドウ品種の特徴を知って、自分の好みにあうものを選ぶ
ブドウ品種を基準にするのが、無数にあるワインの中から買いたいものを選ぶ上で、現状もっともわかりやすく効果的な方法です。
 
ただしどの品種でも、その品種"らしい"ワインと"らしくない"ワインが存在します
味わいの多様性はワインの大きな魅力です。その品種"らしくなく"て高品質なワインもたくさんあります。でも"らしくない"ことをわかって買わないと「思ってたのと違う!」となる可能性もあります。
 

 
感覚的ですが、カリフォルニアワインはその"らしくない"ワインが、他の地域にくらべ少な目です
ゆえに未飲のワインをブドウ品種で選んだとしても、後悔のある結果にはなりにくいのです。
 
 

ヴィンテージの安定感

 
ワインは生産年によって味が変わります。だからこそほとんどのワインにヴィンテージ表記があるのです。
ただし「味が変わる」といってもその程度は様々です。
 
 
この点で「カリフォルニアワインは」と大きく括るのは難しいのですが、特に手ごろな価格帯においてはヴィンテージ差が少ない傾向です。これは気に入った味わいのワインが、2年後3年後もあまり変わらず入手できるということ。
味が変わらないのを「安心できる」と感じるか「つまらない」ととらえるか。両方の方がいるはずです。前者の方にとってヨーロッパのワインより、カリフォルニアをはじめとしたニューワールドのワインがおすすめな理由を次にご紹介します。
 
 

ヴィンテージ差の要因

 
味が違う要因として大きなものが、雨の量とタイミングです。ブドウの生育期のなかでいつどれくらいの雨が降ったのか。それにより果実味の凝縮度や酸味の高さをはじめ様々な影響が現れます。特に収穫期に雨が降ると品質低下につながります。
 
 
ヨーロッパの古くからの生産国では、灌漑(水やり)が原則禁止されているところが少なくありません。これは「その年の天候もワインの個性であり、灌漑はその個性を破壊する」という考え方です。水やりをしなくてもブドウを栽培できる程度の雨は降るからという理由もあるでしょう。
 
南北アメリカやオセアニアのようなニューワールドに畑をひらく際、安定した気候のところを選んでブドウが植えられました。安定した気候とは、ブドウの生育期にあまり雨が降らず、冬場にまとまって雨が降るとても都合のいい気候です。
ブドウの生育にとって降水がやや少ないくらいの方が、病害のリスクが減って栽培は容易なのです。水が少なすぎると木は枯れてしまいますが、灌漑で補うことができます。
 

木の根元に通してある黒いホースから水が供給されます。

 
水の供給を栽培者がコントロールできるなら、ブドウの品質はより安定します。結果としてニューワールドの乾燥地域の方が、ヨーロッパのワインに比べてヴィンテージによる差が小さい傾向にあるのです。
 
 

ネット通販での購入のしやすさ

 
ブドウ品種の特徴が概ね基本通りに表現されている
ヴィンテージによる味わいの差が比較的少ない
 
これらの理由から、初めて見るカリフォルニアワインでもある程度はどんな味わいか予測できます。そう大きくは外れません。
ブドウ品種と産地表記、それから価格。そこから判断しやすいのです。
 
 
当店はほとんどセットワインを販売しておりません。なので1本1本選んで購入される方に多くご利用いただいているわけで、そういう方にとってカリフォルニアワインは期待通りのものを買えるという安心感がある。それが選ばれている理由ではないかと推測しています。
 
カリフォルニアにも品種の典型的な味わいから外れたワインだってあります。そのようなワインを貶すわけではありませんが、純粋にバイヤーの好みじゃないというのもあって、取り扱っておりません。
 
 
選びやすさと安心感。その「分かりやすさ」が、少なくとも当店においてはカリフォルニアワインが大人気である理由だと考えています。
ではその典型的な味わいとはどんなものか。普段から飲んでおられる方も、あまり手を出さない品種・価格帯というのはあるはず。
具体的なワインを紹介する前に、味わいが変わる要因を説明します。
 
 

カリフォルニアの気候は南北より東西

 
南は暑く北は寒い。日本に住んでいるとそれが常識かもしれません。
世界的に見ても、赤道に近いほど暑くて緯度が高いほど寒いのは原則です。でも様々な理由で例外もあります。
 
カリフォルニアにおいて気候を左右するのは、南北よりも東西です
 
 

海に近いほど涼しい

 
カリフォルニア州においては、基本的に海からの距離が近いほど涼しいです。カリフォルニアの沿岸を流れる海流は北から流れてくる寒流。だから海から流れ込む風は冷たく、その風の影響を受けるかどうかが畑の寒暖を決めます。その要因が南北の緯度の影響よりも強いのです。
さらに標高などの地形要因が加わります。
 
 
例えばカリフォルニア北部のソノマ・カウンティとナパ・カウンティは西と東で隣接しています。比較すると内陸側のナパ・カウンティの方がより温暖で、栽培されているブドウ品種の構成も異なります。
ソノマ・カウンティの中でも、海からの風が通り抜ける地域と山脈に遮られる地域では気候が違います。前者の例がピノ・ノワールの産地「ペタルマ・ギャップ」などですし、後者の「アレキサンダー・ヴァレー」などはカベルネ・ソーヴィニヨンが盛んに栽培されます。
 
有名なワイン産地よりももっと内陸に行くと、さらに高温地帯です。ネバダ州との境にある「デスバレー」は地球上でもっとも高温になる地域の一つ。56.7℃を記録したこともあるそうです。
 
 

ノースコーストとセントラルコースト

 
カリフォルニアの内陸部は、多くのブドウ品種にとって気温が高すぎる・乾燥しすぎることが多いです。
ゆえに上質なワインが多くつくられるのは沿岸部。大きな地域としてのくくりで、「ノースコースト」と「セントラルコースト」と呼ばれる地域です。
これらはカリフォルニア州の中心都市であるサン・フランシスコを境に、ほぼ南北で隣接しています。
 
 
サン・フランシスコの経済規模は巨大です。この2つの地域にとって、たくさんワインを飲んでくれる・高級なワインを買ってくれる巨大な市場がすぐそばにあるのです。
実際にサン・フランシスコから週末にドライブ。片道2~3時間でワイナリーに出向いてワインを直接購入するという人も少なくないそうです。
 
 

より細かな産地で覚える

 
地域で分類はしましたが、「ノースコーストの特徴は~」と説明することはできません。そこに属する産地の特徴が、あまりに様々だからです。
とはいえ細かく紹介しすぎるとわかりづらくなってしまうでしょう。お勉強したいわけではなく、好みにあうワインを買いたいのですから。
なのでピックアップしてご紹介します。
 
  • 代表的なブドウ品種(カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネ)
  • 3,000円前後の普段飲み価格、1万円弱の特別なワイン
 
これらで分類して、その品種・価格ごとに注目すべき産地とワインをご紹介します。
 

「California」表記のワインについて

ワインの産地表記は広いエリアほど手ごろで、狭いエリアほど高価になる傾向があります。
2,000円くらいの手ごろなワインは、ほとんどが「California」表記です。カリフォルニア州全域から、地域をまたいでブドウを調達している場合は、この表記になります。
でも本当に全域からブドウを購入していることは稀です。生産規模が大きくなければ、そのワイナリー周辺に畑があるのが普通。なので「California」表記であっても地域性があるワインもご紹介いたします。

 
 

普段飲み価格のカベルネ・ソーヴィニヨン

 
カベルネ・ソーヴィニヨンはカリフォルニアにて最大の栽培面積を誇ります。その中から2本だけピックアップするとか、主観抜きには到底できません。「同じくらいの値段でこっちの方が美味しいよ!」というご意見もあるかとは思いますので選考基準を。
 
  • よく熟した風味を持つ凝縮した果実味と香ばしい樽香
  • 酸味はやや抑えられ、親しみやすさがある
  • タンニンはよくこなれており、なめらかな口当たり
 
他の国ではなくカリフォルニアでカベルネを探すなら、期待するポイントはこのようなところじゃないでしょうか。
別の地域にもこのようなワインはあります。逆にカリフォルニアにも違ったタイプのカベルネはつくられています。
しかしこのようなタイプのカベルネ・ソーヴィニヨンを一番見つけやすいのは、確実にカリフォルニアです。
 
 

【北 ナパ・ヴァレー他】親しみやすい果実感全開!

 

 
ジアポーザをつくるマイケル・ポーザン・ワイナリーは、年産10万ケースとなかなかの規模のワイナリー。ゆえにブドウの調達先は広く持っているのですが、本拠地はナパ・ヴァレーにあり、ワインもノースコーストのものが中心。
このワインも「California」表記ながらブドウの40%はナパ・ヴァレーのものです。
 
 
このワインには親しみやすいフルーツ感が全面に表現されています。連想させるフルーツとしては、黒色ベリーほど完熟した感じではなく、赤色のベリーも感じます。先述のこの価格帯でカベルネに求める要素。それを全て十分に備えながら過剰ではない。そのバランス感覚が見事で、「消費者に求められる味」を追求しているように感じられます。
 
 

【南 パソ・ロブレス】食事時に飲むならこちらがベター

 

 
このワインの産地「パソ・ロブレス」は、セントラル・コーストの中の「サン・ルイ・オビスポ・カウンティ」にあります。南側に位置する産地であり日照は強いのでしょうが、海からの風の影響で特に夜間は冷え込むといいます。昼夜の寒暖差があるとブドウがよく熟しながらも酸味が保たれ、タンニンも豊かになります
 
 
この「ポストマーク」、酸味や渋みが高いというほどではありませんが、先ほどのジアポーザに比べるなら豊か。こういったワインは食事時に飲むことでより魅力を発揮します
このワインはダックホーン傘下のブランド。ダックホーンはそう安くないワインを年間100万ケース生産する巨大ワイナリーグループです。そこがつくる普及価格帯のワインなので、決して「玄人受け」という雰囲気ではありません。広く受ける味づくりは先ほどのワインと同じですが、比べて飲むなら地域の違いが感じられるでしょう。
 
 

普段飲み価格のピノ・ノワール

 
カリフォルニア産のピノ・ノワールを選ぶ理由は何でしょうか?価格だけで考えるなら、チリ産の方が安いのはみなご存知でしょう。
期待するポイントはきっと次のとおり。
 
  • 甘いフルーツを想わせる親しみやすい果実感
  • ボリューム感がある香り
  • 穏やかな渋みとシルキーな口当たり
  • 他の品種に比べたときの軽やかな口当たり
 
濃厚さや力強さを求めるならピノ・ノワールじゃなくていい。ピノ・ノワールとして適切な果実味・酸味のバランスに仕上げるには、冷涼な地域の畑を選択するのが重要です。
 
 

カリ・ピノは甘い!?

他の生産国に対するカリフォルニア産ピノ・ノワールの特徴は、風味にまずフルーツ感が表れることだと考えます。
一昔前に「カリ・ピノ」といえば、そのフルーツ感と樽香が行き過ぎたような、べったりと甘くバランスの悪いものも多くありました。
しかし近年はより生産地の選択が進んだのか、上品な酸味を持つバランスのいいものがほとんど。べったり甘いものは探さないと見つけられません。
それでも甘いフルーツを想わせる果実味をハッキリ感じるのは特徴としてあり、それは親しみやすさにつながっています。

 
 

【北 メンドシーノ・カウンティ】この品種らしい上品さを確定させる産地

 

 
ノースコースト内でピノ・ノワールの銘醸地として有名なのは「ソノマ」です。ただし「ソノマ」が示すものはいろいろあってややこしい。「ソノマ・カウンティ」内に「ソノマ・コースト」という産地があり、その中に「ロシアン・リヴァー・ヴァレー」などのより小さな区画があります。
しかも必ずしもピノ・ノワールの繊細さが表れているとは限りません。ソノマ・カウンティ内のピノ・ノワールの中には、アルコール14.5%に達するようなパワフルなものも時折みられます。
 
その点ノースコーストの北端あたり、海岸沿いにある「メンドシーノ・カウンティ」は、全域が冷涼地帯。スパークリングワインの生産が盛んなほどです。ここから選ぶことで「思ってたピノ・ノワールと違う!」というのは防ぎやすいでしょう
ソノマコースト産の方が種類は豊富です。産地の名前がある程度頭に入ってきたら、次にソノマを探求していくと面白いでしょう。
 
 

【南 サンタ・マリア・ヴァレー】パイオニアだからこその値ごろ感

 

 
カリフォルニアの沿岸沿いには、だいたいの地域に山脈があります。なので海からの風はまず山脈を超えて入ってきます。
それに対してサンタバーバラのあたりは、海方向に開けた平地であり、冷たい風が直接流れ込みます
 
Google Earthによるサンタ・バーバラの航空写真。奥の太平洋側に山脈がない
 
この地のパイオニア的な生産者が有名な「オー・ボン・クリマ」であり、早い時期に設立したからこそ畑を確保しやすかったという事情があるのでしょう。知名度の割には最近設立のワイナリーに比べて割安感があります。
  
輸入元や日本限定ラベルの関係で、3,000円台に「サンタ・バーバラ」「ミッション・ラベル」「ツバキ・ラベル」の3つのピノ・ノワールがあります。
イメージとしては「サンタ・バーバラ」が樽香強め。「ツバキ・ラベル」が樽香抑えて酸味高め。「ミッション・ラベル」がその中間のように感じます。
 
 

普段飲み価格のシャルドネ

ヴァニラを思わせる甘い樽香が豊かに香る、酸味穏やかな白ワイン
多くの方が持つカリフォルニア産シャルドネに対するイメージは、このようなものではないでしょうか。当店ではこのイメージ通りのシャルドネが圧倒的に人気です。
 
  • 値段に対して香りのボリュームや複雑さが高い。
  • 味わいが濃厚なので飲みごたえがある。
 
これらがリピートしたくなる理由でしょう。
 
 
一方で「違いが感じにくい」というデメリットもあります。樽香という醸造由来の要素が強いので、ブドウの違いがあまりあらわれないのです。だからこそ、「お気に入りを見つけたらそれをリピートする」という楽しみ方が多いのでしょう。
このイメージに当てはまらないシャルドネも徐々に増えてきてはいますが、もう少し上の価格帯であることが多いです。
 
 

【北 ナパ・ヴァレー】飲みごたえと安定感は抜群!

 

 
シャルドネはともかくカリフォルニア全域で栽培されているので、とくに普段飲みの価格帯の「California」だとどこのブドウを使っているか、本当にわかりません。そして割と味わいのバリエーションがあります。
でも「ナパ・ヴァレー」&「3,000円以下」だとどうでしょうか。「凝縮感と甘い樽香があり、飲みごたえのあるスタイル」がほとんどです。
ナパ・ヴァレーにはいろいろなスタイルのシャルドネがありますが、3,000円以下にキリっと上品なものはほぼないのです。
 
 
ナパ・ヴァレーはブドウの取引価格が高いのですが、それで2,000円台前半で購入できるコスパはちょっと意味がわかりません。
 
 

【南 モントレー】一歩引いた控えめさで飲み飽きない

 

 
「モントレー」という生産地域は結構広く、上級のワインはもっと狭いエリアの産地表示が一般的。
「モントレー」表記される3,000円程度のワインは、ナパと比べると控えめな味わい。凝縮感や樽香が少し弱めなので、バランスとして酸味が少し豊かに感じます。
 
高そうな味に感じるのはナパの方です。でも食後ではなく夕食を食べながらワインを飲む方にはこちらをおすすめします。ほどよく控えめな味わいだからこそ、料理の味もよりバランスよく感じられるはずです。
 
 

特別な日のカベルネ・ソーヴィニヨン

 
8,000~10,000円。普段飲み価格の2~3倍出すと、カベルネ・ソーヴィニヨンはやや雰囲気が変わります。
ただしこの価格帯は決して「カリフォルニアの高級なカベルネ・ソーヴィニヨン」とは言えません。5万円10万円クラスのものがたくさんつくられているからです。
なので「少量生産の希少なワイン」というよりは、「ブドウの質にこだわりながら量産しました」という認識の方が正しいでしょう。
 
 
香りのボリュームや複雑さ、余韻の長さが増すのは、おおよその品種・地域のワインと同じです。アルコール度数も3,000円前後のワインと有為な差はないでしょう。ワインの雰囲気が変わるのは果実味・酸味・渋味のバランスです
果実の凝縮感はどのカベルネ・ソーヴィニヨンも共通して持ちます。そのうえで酸味や渋味が豊かなワインの割合が増えてきます
 
ワインの専門家が品質の点で評価するなら、高価なものが高品質なのは当たり前です。だからといって飲み比べたとき「私は安い方が好き」と感じる人がいても不思議ではありません。
 
 

【北 アレキサンダー・ヴァレー】じっくり味わいたい上品さ

 

 
カベルネ・ソーヴィニョンの産地としてはナパ・ヴァレーが有名ですが、ナパ・ヴァレーにはいろいろなスタイルのカベルネがあります。
産地とスタイルを結び付けて覚えるなら、マヤカマス山脈を挟んで西側、「アレキサンダーヴァレー」をおすすめします。
 
 
ナパよりは冷涼なソノマ。そのソノマの中で温暖地域に当たるのがアレキサンダーヴァレーです。冷涼といってもワインの味わいから細身な印象は受けません。凝縮感のあるフルボディな味わいを支える酸味をよりしっかり感じる引き締まっていて筋肉質な味わいで、「酸っぱい」と感じることはまずないでしょう。
 
非常に存在感のあるワインなので、飲み込んだ後、次の一口までの時間が自然と空きます。大切な友人・知人と過ごす時間をより充実したものにするのに、次の一口への「溜め」はちょうどいいはずです。
 
 

【南 ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ】渋味が強いからこそ熟成して美味い!

 

 
サンタ・バーバラといえば「オー・ボン・クリマ」をはじめとしてピノ・ノワールやシャルドネをつくる生産者の多い冷涼な産地。その内陸部にある「ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ」は、このカウンティの中では温暖で寒暖差もあります。ゆえにそこでつくられるカベルネ・ソーヴィニヨンは豊かな渋味を持ちます
  
強い渋みを苦手とする人は多いでしょう。ワイン飲み始めの方ならなおさらです。
そういう方にこそ知っておいていただきたい。渋味には強さだけでなく、質の違いがあります。そして熟成でまろやかになります
 
 
このワインは10年以上の熟成によって、タンニンの刺激は穏やかになり、口当たりの厚みとして感じられます。いわゆる「ベルベットのような」と表現されるものです。ベルベットとは布の一種。学校の体育館、ステージ脇の緞帳に使われることが多いです。
なめらかさを表す言葉として「シルクのような」というのもよく使われます。口当たりの表現としてベルベットはシルクよりも厚みを感じるということです。
 
 

特別な日のピノ・ノワール

 
カベルネ・ソーヴィニヨンと違って、ピノ・ノワールは価格帯が変わってもそのスタイルに大きな違いはないように感じます。しいて言うならベタっと甘いものが3,000円くらいには少しあるけど、10,000円ではほぼない、という違いでしょう。
 
特徴としては畑名が表記されたものが増えるという点でしょうか。同じ生産者が同じ地域でつくるワインでも、畑がちょっと離れていたら有意な違いのあるワインが出来上がる。ピノ・ノワールやシャルドネはこの違いをよく感じるので、1本気に入ったらその生産者のシリーズを飲み進める楽しみがあります。
 
 

【北 アンダーソン・ヴァレー】風味は違っても楽しみ方は共通

 

 
先ほどの「ジラソーレ ピノ ノワール」と同じメンドシーノ・カウンティ。その中で最も有名な「アンダーソン・ヴァレー」の畑からつくられるピノ・ノワールです。
もちろん冷涼な産地。上品な酸味を持ちますが、甘やかな果実感を持つという点ではやはり「カリフォルニア産らしさ」を備えています
 
 
フェイラはソノマ・コーストを中心にかなり多種類のピノ・ノワール&シャルドネをつくる生産者です。どのワインも決して安くはありませんが、「比べて飲む楽しみ」という点ではブルゴーニュワインに通じるところがあります
有名な畑をいろいろ手掛けているので、他の生産者と同じ畑のピノ・ノワールで比べるというのも面白いでしょう。
 
 

【南 サンタ・リタ・ヒルズ】アルコールが高いのにハッとするような美味しさ

 

 
ワインの香りはアルコール度数が高いほど感じにくくなると言われています。ゆえに香りのボリューム感が大きな魅力であるピノ・ノワールにおいて、通常なら14.5%のアルコール度数は高すぎです。
アルコールが高いということは、ブドウの糖度が高くなるまで待って収穫したということ。通常はそれほど遅く収穫すると酸味が落ちてしまうものですが、このワインからはしっかりと上品な酸味を感じます。
 
 
サンタ・リタ・ヒルズはサンタ・バーバラ・カウンティの西側にあり、特に海風の冷却効果を受ける地域。だからこそ酸味を保ったままブドウの糖度が上がるのを待つことができるのでしょう。
果実味も酸味も高いことによる、一口目からの鮮烈な美味しさがあり、この価格を十分に納得させてくれます。
 
 

特別な日のシャルドネ

 
シャルドネもカベルネ・ソーヴィニヨンと同様、普及価格帯と中価格帯でスタイルが違います
高価なシャルドネは上品で豊かな酸味を持ちます。それにともなってかしっかりと樽香を感じるワインでも、甘いニュアンスは控えめ。引き締まった印象の香りが支配的です。
酸味が高いと言ってもその分果実味の凝縮感が高いので、酸っぱいと感じることはないでしょう。
 
3,000円クラスはブルゴーニュグラスでも白ワイングラスでもOKでしょう。でも1万円のクラスを飲むならブルゴーニュグラス、できればオークドシャルドネ専用グラスを用意したいところ。グラスからあふれ出るような香りのボリュームがあります。
その分だけ抜栓したてはフルーツの香りが上がってこないことがあります。空気に触れることで数分~十数分で目覚めるでしょう。
 
 

【北 カーネロス】一口で感じる高級感!立体感が違う

 

 
「カーネロス」という生産地区はナパ・ヴァレーとソノマ・コーストにまたがって広がります。太平洋からはある程度の距離はあるのですが、サン・パブロ湾に面しているため海からの冷却効果を受けます。なのでナパ・ヴァレーでは最も冷涼ですが、ソノマ・コーストの涼しいところと比べると温暖です。
 
ここは高級なシャルドネが多くつくられる地区で、5,000~20,000円くらいの価格帯が豊富です。豊かな果実味と樽香、それを支える十分な酸味というバランスはおおむね共通しているように感じます。
一方で2万円以上のより高級な価格帯になると、ソノマ・コースト内の冷涼地区の方が多くの銘柄が見つかります。
 
豊かな酸味が味わいを立体的に感じさせてくれる。このワインを飲むとそれを強く感じます。逆にこのワインの後で3,000円のシャルドネを飲むと、味わいが平坦に感じてしまうほど。比べれば言葉で語る以上の違いを感じます。
 
 

【南 サンタ・リタ・ヒルズ周辺】いろいろなシャルドネと比べたくなる繊細さ

 

 
ノースコーストと比べると、セントラル・コーストの高級シャルドネはまだそれほど多くはありません。5,000円前後は多いのですが、1万円前後となると急に少なくなる印象です。
 
このワインは産地表記としては「サンタ・バーバラ」ですが、生産者としては主にそのサブリージョン「サンタ・リタ・ヒルズ」のワインを手がけています。このワインも主にサンタ・リタ・ヒルズのシャルドネを使っているものと考えられます。
「カーネロス」と比べるならその味わいは細身でスマート。アルコール度数の割には、どっしりとした印象は弱めです。
 
その分だけ果実や樽香といった分かりやすい風味以外のもの、ミネラル感がよく表れています。
3,000円くらいのシャルドネに感じる明快な風味が好きな方には、むしろ物足りないかもしれません。一方でカリフォルニアに限らずいろいろな国のシャルドネを楽しむ方には、その繊細さが心地よく感じるでしょう
 
 

思った通りのワインが楽しめる安心感を

 
「飲んで美味しかったものを買う」一見それが一番確実なように感じますが、ことワインについてはそうとも言い切れません。
 
ヴィンテージが違えば味わいが大きく変わる場合もあります。
店頭の試飲なら、プラカップとワイングラスで大きく印象が変わることが多いでしょう。
そもそも試飲販売に向いた値段・価格のワイン以外は、試飲の機会はありません
初めて飲むときと2回目以降でも感じ方が変わるのが常です。
レアなワインの場合は売り切れもあり得ますし、ネットで買えないワインもあります。
 
 
ワインを楽しむうえでは、飲んだことのないワインを何かを頼りに買うということがどうしても必要です
それは信頼しているソムリエさんだったり、TVなどのメディアで紹介されたものだったり、評価誌のレビューだったり、そして自分の知識と判断力だったり・・・
 
その中で「思ってたのと違ってがっかり」という体験が、次の「そうそう、こういうのを飲みたかった!」につながるもの。それは間違いなく自分で選んだ場合でしょう。
 
 
ワインを選ぶのは難しいです。外した時の金銭的ダメージも大きい。でもコツをつかんできたら楽しいです。
好みのブドウ品種を見つけるのが1歩目なら、2歩目としておすすめするのがカリフォルニアワイン代表品種と著名産地、それから価格をセットにして典型的なスタイルを知っていくのはいかがでしょうか。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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