ワインを飲む理由の一つに人付き合いがある方は、きっと有名なワインの名前は知っておきたいもの。
「え?このワイン知らないの?」と言われないために何を憶えるべきか。教科書的な答えはありません。
とかく種類の多いワイン。筆者の独断で地域別に有名な銘柄をご紹介します。
ワインの種類と生産者と銘柄を整理して、高級ブランドワインをざっくりと知りましょう。
それは種類?生産者?銘柄?
「シャブリ」「ヴーヴ・クリコ」「サッシカイア」
どれも有名なワインですが、この違いは分かりますか?
それぞれワインの種類、生産者、銘柄の名称です。
ワインはとにかく種類が多いので、特定の生産者や銘柄を知らなくても、恥をかく状況は実はそんなにないでしょう。
でもこの3つを混同していると、話が食い違ってしまう可能性があります。
有名ワインを知っておくとこんなとき役立ちます
コネクションというのはビジネスにおいて非常に大事です。一緒に食事をしてお酒を飲むのは、相手と仲良くなる常套手段。
社会的ステータスが高い人の中には、ワインを好きで詳しい人もたくさんいます。別に同等レベルの知識はいらない。話についていくための最低限の知識があれば、親交を深める上で大変有利です。
ワインは小難しくて価格が高いのは事実。だからこそ「ワインについて語り合える」人は多くありません。だからこそ知っていれば、相手にとってあなたが「話せる人」に思ってもらえるはす。
全てを覚えることなんで誰にもできませんから、まずは有名どころから知っていくのが効率的です。
3つの違いを車に例えると・・・
「トヨタ」「日産」「本田」・・・。これらはメーカーであり「生産者」です。
「プリウス」「ティアナ」「フィット」・・・。これらは車名であり「銘柄」です。車種の中にも年式がありますが、これがワインのヴィンテージ(生産年)にあたると思ってください。同じ車種でもモデルがいくつもある場合がありますが、たとえ話なので割愛で。
そして「セダン」「SUV」「軽トラ」などが車のタイプであり種類です。「自家用普通乗用車」などの「車種」を分類した正式名称が別途存在します。実物を見なくても、その名称で大まかな車の形が想像できます。
ワインでこれに当たるのが、厳密には「原産地呼称」と呼ばれるものです。簡単にはワインの種類だと思ってください。
ヨーロッパの原産地呼称
先ほどの「シャブリ」というのが原産地呼称です。
ワインのエチケットに「Chablis」と表記されていれば、フランス、ブルゴーニュ地方のシャブリ地区で栽培される、シャルドネ100%でつくられた辛口白ワインであることが読み取れます。
産地の名称とワインのタイプがリンクしているのです。
このように決まっているのは、「昔からそうだった」という伝統と、産地としてのブランド保護のためです。
参考記事▼
ヨーロッパ以外の新興産地でこのような決まりはほぼありません。産地表記は単に生産地域を示すもので、ワインのタイプは規定しません。
なのでヨーロッパ以外に「有名産地」はあっても、「有名なワインの種類」はあまりないと言えます。
原産地呼称の目的
人気のブランドには偽物が現れます。
「シャブリ」が人気なら、他の地域で「シャブリタイプのワインです」と言って販売する例がありました。それではシャブリの生産者にも間違って購入する消費者にとっても不利益です。
それゆえ各国政府が認定したブランド産地名称は、商取引のある他国の製造物に勝手に使うことはできません。
有名な事例ですと、「シャンパン Champagne」の名称は、日本でバンド名にも使うことはできないのです。
(それゆえ戦争を開始したロシアでは使えてしまいます)
有名な原産地呼称は幅が広い
一口に「シャブリ」といっても様々。2000円台の手頃なものから5万円以上の高級品まで様々です。
シャブリをつくる多くの生産者がいて、それぞれがいくつもの銘柄をつくっているからです。
有名な原産地呼称は知っておくに越したことはありません。多く生産され消費される、多くの人に愛される理由があるからです。
しかしこと高級ブランドワインの話のネタにはなりにくいです。
なので今回は有名で高級なブランドワインの銘柄と、それをつくる生産者に的を絞ってご紹介します。
そのワインが有名である理由
ワインが有名になる経緯はいくつかあります。
なぜ多くのワイン好きが、あるいはワインを好きじゃない人も含めてそれを知っているのか。
その理由をいくつか考察してみます。
理由1 どこでも見かけるから
一つ目のケースはそこが超大規模生産者である例です。
例えば自転車のマークが目印の「コノスル」などはその最たるものでしょう。スーパーどころかコンビニにも売っています。
販路が広く、目に触れ口にする機会が多い。加えて「コノスル」という短い名称とブランディング戦略も上手いのでしょう。
ただしこれは「ブラックサンダーはみな知っている」というようなもの。あくまで日常消費用のワインとして認知度が高いのであり、会話のネタになることは少ないでしょう。
理由2 ワイン評価誌の高評価
ワインアドヴォケイト、ワインスペクテーター、デキャンター、ジェームズ・サックリング・・・・
そういったワイン評価誌で高得点を獲ったことがきっかけで有名になった生産者も数多くいます。この場合は銘柄よりも生産者が有名になるケースが多いです。
きっと高評価を得た当初に飲んだのは、結構なワイン好きのみでごく一部の人たち。しかしその品質が確かであり常に期待に応えるから、口づてに評判が広まり有名になっていったのでしょう。
そういう生産者の中には生産量がわずかであるところも少なくありません。
中にはお金を払えば入手できるというものではない銘柄も。飲むには知識やコネ、運が必要なこともあるからこそ、話のネタになります。
理由3 プロモーションによって
3つ目の理由はプロモーション活動の成果によってです。本来、商品の認知拡大には広告などのプロモーション活動が欠かせません。
ワイナリーは消費国に現地法人を設立して、あるいは輸入業者を通して、認知とブランドイメージ向上のための活動を行います。そう多くはありませんが、ワインの広告を目にする機会はあるはずです。
ただしワインの生産者は企業としてそう大きくないところが非常に多く、自ら世界的にプロモーションを行えるメーカーは限られます。
この場合は特定の銘柄やシリーズ名が有名になります。
例えばシャンパンの一つ「ベル・エポック」。美しいエチケットとともに有名な銘柄です。一方でその生産者が「ペリエ・ジュエ」であることや、スタンダードクラスとして「グラン・ブリュット」をつくっていることなどを知っている人はぐっと少なくなるでしょう。
理由4 昔からその地を代表する生産者だから
上記の3つに比べるとあいまいな理由です。
昔からその地域でトップのポジションだった。その地域のワインとして初めの方に名前が挙がる。
そういったものにワイン誌の評価などが複合的に作用して、ワイン歴の長い人の間ではかなり知名度が高い。
一方でワインにあまり詳しくない人には知名度が高くない。特に高級ワインの生産者はそういう傾向があります。
例えばブルゴーニュの「アルマン・ルソー」や、トスカーナの「カーゼ・バッセ」などの生産者。ソムリエやワイン好きならまず知っていても、ワインを飲まない人はまず聞いたことがないでしょう。
メジャーかレアかで分ける
これからご紹介する有名ワインについては、2つのグループに分類してみました
○生産量が多くブランド力のあるメジャーな有名ワイン
○生産量が少なく評価が高いレアな有名ワイン
基準としては最新ヴィンテージの正規品がネット通販でだいたいいつでも手に入るかどうか。獲得競争になってないのに高価安定するワインこそ、本当に知っておきたいワインと言えるでしょう。
「このワインは有名かどうか」それに明確な基準など当然ありません。あくまで感覚的なものであることをご了承ください。
地域別有名ワイン フランス ボルドー
ボルドーは生産者名=ワイン名というのが基本的です。
「シャトー・マルゴー」というワインの銘柄をつくるのは、「シャトー・マルゴー」という生産者。「セカンドワイン」というものもありますが、生産量の割に銘柄数が少ない傾向。他と比べるなら分かりやすいと言えます。
セカンドワインについてはこちらで詳しく▼
フランス政府による格付け
ボルドーが特殊なのは、フランス政府による生産者の格付けがある点です。
1855年のパリ万博に際して、各国の来客が手土産としてどのワインを買って帰るべきかを分かりやすくする。その目的でメドック地区の一部の優良生産者に対して1級から5級に分類されました。「メドック61シャトー」などと呼ばれます。
メドック地区以外にも形態は異なりますが格付けがあります。各地域でその最上位となる生産者はどれも有名です。
ボルドーの有名生産者=銘柄
ボルドーの地区別に有名生産者を一覧にします。
シャトー・ディケムは甘口の貴腐ワインで、それ以外は赤ワインです。
地区 | ワイナリー/ワイン名 | およその最低価格 | タイプ |
メドック/ポイヤック | シャトー・ラフィット・ロートシルト | 約10万円 | メジャー |
メドック/ポイヤック | シャトー・ラトゥール | 約9万円 | メジャー |
メドック/ポイヤック | シャトー・ムートン・ロートシルト | 約8万円 | メジャー |
メドック/マルゴー | シャトー・マルゴー | 約8万円 | メジャー |
ペサック・レオニャン | シャトー・オー・ブリオン | 約7万円 | メジャー |
サン・テミリオン | シャトー・オーゾンヌ | 約7万円 | メジャー |
サン・テミリオン | シャトー・シュヴァル・ブラン | 約9万円 | メジャー |
ポムロール | シャトー・ペトリュス | 約50万円 | レア |
ポムロール | ル・パン | 約60万円 | レア |
ソーテルヌ | シャトー・ディケム | 約6万円 | メジャー |
この中でポムロールのシャトー・ペトリュスとル・パン、特にル・パンは生産量がごく僅か。レアワインです。この価格差は希少価値によるもので、評価に大きな優劣があるわけではありません。
上記のワインの一例▼
地域別有名ワイン フランス ブルゴーニュ
ワインを勉強しはじめた方にとって、ブルゴーニュワインの全体像をつかむのはかなり大変です。
まずは有名な生産者とその代表銘柄を覚えるのが現実的ですが、それを飲み進めるのはワインが高価すぎて現実的ではありません。
ブルゴーニュは生産者と畑
ブルゴーニュでは生産者と畑が別々です。一つの畑をいくつもの生産者が分割所有します。さらに一つの生産者がいくつもの畑を所有しています。
生産者と畑のかけ算で銘柄数が膨大にあり、そのほとんどが少量生産。ゆえに人気の高い銘柄の価格は青天井です。
メジャーかレアかの分類も簡単ではありません。
例えば「ルロワ」という生産者。代表銘柄である特級畑ワインの「ミュジニー」「シャンベルタン」「リシュブール」などは希少でとびきり高価です。
一方で生産ワインの幅が広く、「コトー・ブルギニヨン」などの銘柄は6000円前後。高島屋にいけばだいたいいつでも置いてあります。
「これが看板ワインだ」と生産者が言っているわけではないものもあります。代表銘柄は参考程度に考えてください。
ブルゴーニュの有名生産者とその代表銘柄
生産者名 | 代表銘柄 | タイプ |
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ | ロマネ・コンティ | 赤ワイン |
ルロワ(ドメーヌ・ルロワ、メゾン・ルロワ、ドメーヌ・ドーヴネ) | ミュジニー、シャンベルタン、リシュブール | 赤ワイン |
エマニュエル・ルジェ | ヴォーヌ・ロマネ1級クロ・パラントゥ | 赤ワイン |
コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ | ミュジニーV.V. | 赤ワイン |
アルマン・ルソー | シャンベルタン | 赤ワイン |
ジョルジュ・ルーミエ | ミュジニー | 赤ワイン |
メオ・カミュゼ | リシュブール | 赤ワイン |
ルフレーヴ | シュヴァリエ・モンラッシェ | 白ワイン |
コデュ・デュリ | コルトン・シャルルマーニュ(?) | 白ワイン |
コント・ラフォン | モンラッシェ(?) | 白ワイン |
※?マークをつけたものについては異論があるかも。この銘柄が1番高価でしょうが、その生産者が最も多く畑を所有している場所とは違います。
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地域別有名ワイン フランス シャンパーニュ
シャンパーニュの有名生産者こそ、典型的な「プロモーションにより有名である」タイプです。全て生産量の多い大規模生産者です。
それもあって、「ワインに関心が高くない層」への知名度は、他の地域を圧倒します。
一方で小規模生産者の中にも有名と言えるシャンパンメーカーがいます。
ワイン通、シャンパン通だけに知名度の高い生産者です。相手にとってあなたを「ワインに詳しい人」と印象付けたいなら、覚えておくべきでしょう。
シャンパーニュの大規模な有名生産者と代表銘柄
ここでご紹介するのは全てメジャーな銘柄です。代表銘柄が最も高価とは限らず、むしろたくさん生産している手頃な銘柄であることが多いです。
当店で取り扱いがあるものについては商品リンクを挿入しています。
生産者名 | 代表銘柄 |
モエ・エ・シャンドン | ブリュット・アンペリアル |
ドン・ペリニヨン | ドン・ペリニヨン・ヴィンテージ |
ヴーヴ・クリコ | イエローラベル(ポンサルダン・ブリュット) |
クリュッグ | グラン・キュヴェ |
マム | コルドン・ルージュ |
ボランジェ | スペシャル・キュヴェ |
テタンジェ | ブリュット・レゼルヴ |
ニコラ・フィアット | レゼルヴ・エクスクルーシヴ・ブリュット |
ペリエ・ジュエ | ベル・エポック |
ルイ・ロデレール | クリスタル |
参考記事▼
シャンパーニュの小規模な有名生産者
シャンパーニュ地方は栽培と醸造の分業体制が基本です。大きな生産者が多くのブドウ栽培農家から買い取ってシャンパンをつくります。
一方で中には自社で育てたブドウを自分でシャンパンにする生産者もいます。レコルタン・マニピュラン(RM)と呼びます。
必然的に生産量は少なります。その上で存在感を示そうとするので、個性的な味わいのシャンパンが多い傾向にあります。
レアで手に入りにくい、あるいは定価よりずっと高価に販売される銘柄もあります。
生産者名 | 代表銘柄 |
ジャック・セロス | イニシャル・ブリュット |
エグリ・ウーリエ | ブリュット・トラディション・グラン・クリュ |
アグラパール | 7クリュ |
フレデリック・サヴァール | ルーヴェルチュール |
※上級ワインは単一畑でつくっている例が多いため、代表ワインの判断が難しいです。よく見かける銘柄をご紹介しています。
ワインの一例▼
地域別有名ワイン フランス その他
上記3つ以外の産地にも、たくさんの有名生産者・有名ワインがあります。しかし産地ごとの数はそう多いわけではありません。
ワインのタイプとあわせて覚えておくといいでしょう。
北ローヌの有名生産者
北ローヌの2大産地は、コート・ロティとエルミタージュです。
どちらもシラーを主体にエレガントかつパワフルな赤ワインをつくります。
コート・ロティで特に有名なのが「E.ギガル」。実はそれほど歴史の長い生産者ではなく70年余りなのですが、間違いなくここを代表する生産者。「ムーリーヌ」「ランドンヌ」「デュルク」という3つの畑からそれぞれつくられるコート・ロティは、定価7万円という高級品です。
エルミタージュをつくる生産者で有名なのが「シャプティエ」。パーカーポイント100点を40回以上獲得しているという、ひと際輝かしい評価を受けるワイナリーです。
両方のワイナリーに共通するのは、生産量が多くて1000円台の手頃なワインから高級品まで幅広く手掛けていること。ギガルはエルミタージュもつくっていますし、シャプティエもコート・ロティをつくっています。
産地をけん引する高品質ワインもつくりながら、多くの人の目に触れるワインもつくる。それゆえの知名度です。つまりどちらも生産者としてはメジャーです。
南ローヌの有名生産者
南ローヌの銘醸地といえばシャトーヌフ・デュ・パプ。
このワインでとりわけ人気が高いのが「シャトー・ラヤス」です。ここ4、5年で楽天の市場価格は3倍ほどにはなったでしょうか。生産量が少ないレアワインであるがゆえ、高騰が激しいです。
嘘か本当かわかりませんが、「シャトー・ラヤスの醸造所はとびきり汚いのに出来上がるワインは素晴らしい」という話を聞きます。
アルザスの有名ワイン
アルザスのワインを1本だけ挙げるとするならば、「クロ・サン・テューヌ」でしょう。
「トリンバック」という生産者が200年前から所有している区画で、リースリング100%でつくられます。
なので「クロ・サン・テューヌ」は畑の区画名であり、ワイン名。
年産およそ7000本なのでとびきり少ないほどではないのですが、需要が高くあまり見かけません。レアなワインです。
ロワールの有名ワイン
ロワール地方は東西に細長く広がる産地。場所により主力となるブドウ品種が異なります。
ここで有名ワインとして取り上げるのは2本。
まずは「シレックス」。これは「ディディエ・ダグノー」という生産者がプイィ・フュメという産地でソーヴィニヨン・ブラン100%からつくる辛口白ワインです。
「シレックス」とは本来土壌の名前で、この産地に広く広がります。なので他の生産者のワインにも「シレックス」の表記がみられることはあるのですが、「シレックスといえばダグノー」というほどの知名度。ワインの評価の現れでしょう。
もう一つは「クロ・ド・ラ・クーレ・ド・セラン」。生産者は「ニコラ・ジョリー」で、ビオディナミという栽培法をワインで実践した第一人者の一人。ブルゴーニュ地方でご紹介したルロワやルフレーヴも、ニコラ・ジョリーから教わったそうです。
シュナン・ブラン100%からつくられる「サヴニエール」という産地のワインなのですが、彼のワインが独特かつ高品質なので、その中に「クーレ・ド・セラン」という産地区分が彼のためにつくられたほどです。
地域別有名ワイン イタリア トスカーナ
イタリアにもたくさんの有名ワインがあります。ワインの銘柄や生産者単位で最も有名なものが多い地域はトスカーナ州でしょう。
ある程度生産量の多い生産者が多いのが特徴です。
有名なスーパータスカンのワイン
この地にはイタリアで最も有名なワインの原産地呼称である「キアンティ」があります。
そのキアンティなど伝統ワインの規定に囚われず高品質なワインを追求したワイン「スーパー・トスカーナ(スーパータスカン)」。その中で評論家の高評価を持って世界に名が知れ渡ったものがいくつかあります。
全てエレガントで引き締まった味わいの赤ワインです。
生産者 | 銘柄 | 分類 |
テヌーテ・サン・グイド | サッシカイア | メジャー |
アンティノリ | ティニャネロ | メジャー |
アンティノリ | ソライア | メジャー |
テヌータ・デル・オルネライア | オルネライア | メジャー |
ルーチェ・デッラ・ヴィーテ | ルーチェ | メジャー |
ワインの一例▼
ブルネッロを脱退した「ソルデラ」
トスカーナ州の伝統高級ワインといえば、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。
その最高峰の価格で取引されながら、2013年にはその協会を脱退し「ブルネッロ」を名乗らなくなったワイン。
それがカーゼ・バッセがつくる「ソルデラ」です。コストを度外視したつくりのため、10haの畑からわずか15000本しか生産されません。
昔からこのワインをご存知の方は、2012年に起きた事件「元従業員が逆恨みによってワイナリーに侵入し、5ヴィンテージ分のワインを流出させた」ということを記憶されているかもしれませんね。
地域別有名ワイン イタリア ピエモンテ
ピエモンテ州のワインといえば「バローロ」「バルバレスコ」という原産地呼称が有名。ともにネッビオーロ種100%でつくられる赤ワインです。
トップクラスに多くのタンニンを含む赤ワインの一つで、高い熟成能力を持ちます。なので今でも1970年代、80年代のワインが割と簡単に手に入ります。
特にバローロはブルゴーニュ的な生産、畑ごとのワインを少量ずつ多種類つくる傾向があります。
なので覚えるならば生産者の名前です。
ピエモンテ州の有名生産者
ピエモンテのみならず『イタリアワインの帝王』とさえ呼ばれることのあるのが「ガヤ GAJA」。たまに「ガイヤ」と表記されることもあります。
単一畑のバローロもいくつかつくっており、それらの方が高価なのですが、代表するワインは「バルバレスコ」。20年程度ではまだまだ飲み頃を迎えません。
ただし全体の生産量自体は多く、またトスカーナ州でもワインをつくっています。銘柄にこだわらなければ「ちょっと高価なワイン」くらいで楽しめます。
おそらく最高額で取引されるバローロをつくるのは、「ジャコモ・コンテルノ」
代表作は良作年のみにつくられパーカーポイント100点を何度も獲得した「バローロ・リゼルヴァ・モンフォルティーノ」。
ただしどのワインも高級品であり生産量も多くありません。幅広いワイン好きが知っている生産者ではなく、「バローロ好きの憧れ」というポジションです。
地域別有名ワイン イタリア ヴェネト
ヴェネト州の高級ワインといえば、ブドウを陰干ししてつくる原産地呼称「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」が有名。単に「アマローネ」と呼ばれることが多いです。
レーズンのような風味のある濃厚な赤ワインです。
参考記事▼
アマローネの有名生産者
アマローネに関してはその名前が強くて、生産者でとびきり有名なところは少ないです。
その中で有名な生産者は「ベルターニ」「クインタレッリ」「マァジ」あたりでしょう。
ベルターニとマァジは手頃なワインからつくっており生産量が多いです。一方でクインタレッリはあまり大きくないため、全体的に高価。
アマローネは4万円ほどと高価です。
地域別有名ワイン スペイン
スペインで10万円を超えるような高級ワインはそう多くありません。
私の知る限りでは「ウニコ」「ピングス」の2銘柄です。
スペインの有名銘柄
『スペインの至宝』と呼ばれる「ウニコ」は、ヴェガ・シシリアという生産者がつくるトップキュヴェ。良作年のみに生産されます。ただし「リベラ・デル・デュエロ」という産地のパイオニアであるため広い畑を所有しており、ある程度の生産量はあります。
「尊敬する生産者」として例えばドイツのフリードッヒ・ベッカーが名前を挙げるなど、目標とされるワイナリーといえます。
そのウニコの畑に隣接しているのが「ピングス」の畑。生産者「ドミニオ・デ・ピングス」はヴェガ・シシリアと違ってまだ1代目と歴史の浅い生産者ではありますが、パーカーポイント100点を4度も獲得。生産量の少なさゆえに、取引価格はときにウニコを超えます。
地域別有名ワイン ドイツ
ドイツワインはブルゴーニュ以上に銘柄の把握が難解です。
高級ワインについては基本リースリングによる白ワインです。シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)でつくる赤ワインも知名度と評価を上げてきてはいますが、世界的な視点での「有名ワイン」ということになると、まだ一歩届かないでしょう。
ブルゴーニュと同様に一つの生産者がいくつもの畑のワインをつくり、一つの畑を複数の生産者が分割所有します。
しかも収穫時のブドウ糖度による分類があります。
これらの組み合わせでワイン名が決まるため、他国に比べ大変長い名称となります。ソムリエでも毛嫌いする人が多いほどです。
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ドイツの有名生産者と代表銘柄
ドイツで特に高級なワインということであればこの2本。どちらもモーゼル地方のワインです。
1つ目は「エゴン・ミュラー」という生産者がつくる「シャルツホフベルガー・リースリング・トロッケンベーレンアウスレーゼ」。1本100万円を超えるような高級貴腐ワインです。「シャルツホフベルガー」というのが畑の名前。
非常にレアでインターネットでは売り切れている姿すらほぼ見かけません。
2つ目は「J.J.プリュム」という生産者がつくる「ヴェーレナー・ゾンネンウーア・リースリング・トロッケンベーレンアウスレーゼ」。これも貴腐ワインで、上記に近いような値段で取引されます。
糖度等級を落とせば、そう無茶な価格ではありません。
地域別有名ワイン アメリカ ナパ・ヴァレー
アメリカでワインづくりの歴史が始まったのはずいぶん昔です。一方でフランスに対抗しうる高品質ワインの産地として地位を確立したのは、1976年のパリテイスティング事件以降でしょう。
その際に出品されたアメリカ産のワインの多くは、ナパ・ヴァレーのワイナリーがつくったものでした。
それもあってアメリカの有名ワイナリーはナパ・ヴァレーに多いです。先行者利益の一つといえるでしょう。他の地域にも優良ワイナリーがたくさんできてきているので、あと20年30年とすれば勢力図は変わっているかもしれません。
ダントツの知名度 オーパス・ワン
アメリカどころか世界を見渡してもトップクラスの知名度といえる高級赤ワイン、「オーパス・ワン」。
生産者の名前が「オーパス・ワン・ワイナリー」なので、オーパス・ワンはワイン名でもありワイナリー名でもあります。
その評価もさることながら、ワイナリーの始まりが知名度の要因。ボルドーのメドック1級シャトーである「シャトー・ムートン・ロートシルト」と、ナパ・ヴァレーの有名ワイナリー「ロバート・モンダヴィ」のジョイントベンチャーだからです。
他にも「オーパス・ワン(作品第1号)」という短い名前も覚えやすいからでしょう。「サザエさん」にも登場するほどです。
ノリスケが「良いワインもらったんですよー!」と、めちゃめちゃ気軽にオーパスワン持ってきて開けてた。
そんなノリスケなら大歓迎です🥹 pic.twitter.com/2hTNdAN1xP
— ワイン@飲み専🍷keis (@winenomuhito) April 2, 2023
ナパ・ヴァレーの有名生産者
ナパ・ヴァレーの有名生産者も2つのタイプに分類することができます。
一つはレア。専門誌の高評価によって知名度が上がり、生産量の少なさゆえに愛好家が追い求めるタイプです。あまりに高額であるため、「カルトワイン」と呼ばれることもあります。一例として挙げる生産者は次の通り。
「スクリーミング・イーグル」「ハーラン・エステート」「コルギン」「ハンドレッド・エーカー」「コングスガード」「ケンゾーエステート」など。
ただしこれらも「高級ワイン好きの間では有名」という程度でしょう。目に触れる機会自体が少ないため、長年のワイン好きでも知らない人はたくさんいると思います。
参考記事▼
もう片方は「メジャー」と言いたいところですが、そこまで大規模な生産者はあまりありません。どちらかというと「老舗」という表現が適当。主力のカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインが1万円~5万円くらいのところが多いです。
ある程度の生産量があるため入手は難しくありません。一例として挙げる生産者は次の通り。
「ロバート・モンダヴィ」「シャトー・モンテレーナ」「クロ・デュ・ヴァル」「シェーファー」「スタッグス・リープ・ワインセラーズ」「トレフェッセン」など。
参考記事▼
地域別有名ワイン アメリカ カリフォルニア(ナパを除く)
ナパを除くカリフォルニア、ひいてはアメリカの生産者で、広く名前がしられているところはあまりありません。
次の2軒が有名なのは早くから日本に流通していたのが大きいでしょう。高級ワインもつくっていますが、比較的手ごろな価格帯からワインをつくっています。
ピノ・ノワール&シャルドネの有名生産者
ブルゴーニュ品種の生産者としてカリフォルニアで有名なのは、「カレラ」と「オー・ボン・クリマ」でしょう。
どちらもブルゴーニュで修行して、パイオニアとして産地を切り開いたワイナリーです。
「カレラ」の創設者ジョシュ・ジェンセン氏は、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティで修行して帰国。セントラル・コーストの北部にワイナリーを1975年に設立しました。
「オー・ボン・クリマ」のジム・クレンデネン氏は、アンリ・ジャイエに師事してワインを学びます。彼がセントラル・コーストの南部にワイナリーを構えたのは1982年のことでした。
ピノ・ノワールを主力としながらシャルドネも高品質なこの2生産者は、知名度も人気も非常に高いです。
地域別有名ワイン オーストラリア
オーストラリアにてリーズナブルなワインとして有名な生産者はいくつかあります。
「イエロー・テイル」「デ・ボルトリ」「ジェイコブス・クリーク」などがそれにあたります。
しかし高級ワインとなると圧倒的な一強でしょう。「ペンフォールズ」という生産者がつくる「グランジ」です。
高級ワインとしてのグランジの特異性
何かしらの理由で希少価値がないと、高品質なワインといってもなかなか10万円を超えません。その希少性を伝えるには、「ここでしかつくれないから少量生産」というのが分かりやすい。「ロマネ・コンティ」は1.814haの畑からしかつくれないので希少なのです。
そうなると小さな地域、単一の畑からつくられるものの方が、希少性をアピールしやすい。
「グランジ」が特異だというのは、地域を跨いだブレンドである点です。南オーストラリア州の銘醸地、何か所ものブドウを使います。生産本数は公開されないものの、「たくさんつくれそう」。なのに10万円前後の高値で取引されるのは、「ペンフォールズ」という生産者に対する信頼です。
シラーズを主体につくられるフルボディの赤ワインで、何十年先でも美味しく飲めるでしょう。
「推しのワイン」がある方がかっこいい!
ワインを提案する者として有名ワインを称賛する意味はあまりないと考えます。私が紹介するまでもなく知名度が高いのですから。
全てではないものの多くのワインを口にしたことがあります。やっぱり今回ご紹介したようなワインは美味しいです。
レアなものは評論家が絶賛し顧客を納得させてきただけあって、やっぱり素晴らしい。
メジャーなものはその生産量を販売し続けるために、消費者が求める味を追求している。
ただし多くの場合、知名度が高くない同等のワインに比べてなかなかに割高です。
「ワイン通の話にあわせられるように」と無理に高い金額を出して飲んでみる。ワインが好みのタイプであるならいいですが、そうでないならおすすめしません。渋味が苦手な人がボルドーの有名ワインを若いうちに飲んで、美味しいと感じるとは思えないからです。
それよりも心からおすすめしたいと思える、知名度の低いワインを知っていた方がずっと話のタネになります。味わいだけじゃない、そのワインならではのエピソードや背景が語れるならなおさらです。
「高いワインを買うなら、失敗したくないから有名ワインを選ぼう」その気持ちも分かります。
でもあなたがおすすめするワインを知人と一緒に飲んで、「こんなワインあったんだ!とっても美味しいね」と言ってもらえた方がうれしくないですか?
ほとんど誰も知らない、あなただけの「推しワイン」があったほうが、私はかっこいいと思います。