ワインの法律

「国内製造ワイン」と「日本ワイン」の違いとは?日本のワイン法解説

2023年7月25日

「国産ワイン」と「日本ワイン」の違いとは?日本のワイン法解説
 
 
日本ワインとは、日本国内で栽培されたブドウのみでつくられたワインを言います。
それに対して「国内製造ワイン」は製造場所が日本というだけで、輸入原料も使用することができます。
このようにラベル表記のルールを定める目的は、日本でつくられるワインのブランド価値に裏付けを与えることです。
巷でよく目にするようになった「日本ワイン」のルールについてご紹介します。
 
 

ワインを最も多くつくる都道府県は?

 
47都道府県で最も多くのワインをつくるのはどこかご存知ですか?
山梨県?北海道?長野県?・・・
 
実は神奈川県なのです。
ブドウのイメージがないこの県がなぜ?それは「日本ワイン」ではなく「国内製造ワイン」の生産が多いから。その工場が固まっているからです。
 
 

生産量のエヴィデンス

 
上記の根拠は国税庁の資料です。ワインをつくって出荷すれば酒税を収める必要があります。
酒税は「1KL キロリットル」あたりでかかるので、厳密に製造量を報告する必要があります。
 
なるべく新しい資料としてはこちら。令和3年における都道府県別の酒税関係総括表です。
ただしこちらはワインを含む果実酒の総量です。
 
 
 
ワインだけに絞ると、少し古く平成30年の資料があります。
 
 
この資料によるとワインの製造量は、1位が神奈川県で2位が栃木県です。
 
 

まだまだ主流とは言えない日本ワイン

 
平成30年のデータにもとづくなら、国内製造ワインのうち日本ワインは2割程度
しかも日本ワインを含めた国内製造ワイン全体でも、日本のワイン流通のうちの30%にとどまります。70%は輸入ワインなのです。
  
最近でこそニュースなどで日本ワインの話題を目にすることは珍しくなくなってきました。平成30年から現在までの5年である程度製造量は増えているでしょう。しかし量の点から見れば、日本ワインはまだまだ発展途上だと言えます。
 
 

国内製造ワインとはどんなもの?

 
日本の原料ではなくわざわざ海外の原料でワインをつくるのは、純粋にコストダウンのためです。
スーパーなどで販売されている紙パックやペットボトルに入ったワイン。そういった低価格ワインが国内製造ワインです。
 
 

国内製造でカットできるコスト

 
ワインを輸入するにはその容器も輸入しないといけません。ワインの容器は主にガラス瓶です。円筒状のガラス瓶を四角いケース・四角いコンテナに入れて運ぶのですから、無駄なスペースも生じます。
 
 
それを効率化するための方法の一つが、ワインをタンクで輸入することです。「バルク輸送」などと呼ばれますが、液体だけ運んで日本で瓶詰するほうが効率的なのは間違いありません。
 
さらに効率化するなら、ブドウ果汁の状態で濃縮し、日本で戻して発酵させることです。フルーツジュースで目にする「濃縮還元」。それをワインの原料に用いるのです。
濃縮還元の過程でコストは生じますが、輸送コストが数分の1になることで元はとれるのでしょう。
原料果汁の供給元はチリが多いです。おおよそ地球の裏側から運んできても、日本でブドウを調達するより安いということです。
 
 

国内製造ワインの原料

 
国内製造ワインのつくり方に関するルールは非常にゆるいです。
 
輸入果汁のみを発酵させてつくる国内製造ワインもあります。
一方で他にも原料を使っているものもあります。輸入ワイン、輸入果汁や醸造アルコールを使っているものもあるのです。
 
 
そうして安くつくられたワインは、流通過程においても高級ワインのような温度管理は期待できません。保管状態が悪くても品質変化が起きないよう、あらかじめ加熱殺菌することもあります。だからものによっては酸化防止剤無添加で流通させることができるのです。
 
当然そのようなワインは風味で劣ります。
 
 

「日本ワイン」のルール制定

 
このような国内製造ワインにも需要があります。だから日本ワインよりもずっと多くの量、作り続けられています。
それに対して日本で育てたブドウから、世界に通用するワインづくりを志す人たちは何十年も前からいました。そうやってつくるワインは、安さを求めてつくるものとは明確に区別して販売する必要がある
 
そうして制定された名称が「日本ワイン」なのです。
 
 

日本ワインの表示ルール

 
日本ワインのラベルに産地や品種、ヴィンテージを表記する際にはルールがあります。
それはEUなどのワイン法に倣った『85%ルール』です。
 
 

85%ルール

 
国税庁のガイドラインによれば、次の条件のもと産地・品種・ヴィンテージの表記が可能です。
 
  • 表記産地で収穫されたブドウが85%以上で、収穫地と醸造地が同じ ⇒ 産地の表記が可能
  • その地域で収穫されたブドウが85%以上で、収穫地と醸造地が異なる ⇒ 「〇〇収穫」などの表記が可能
  • その地域で収穫されたブドウが85%未満の場合 ⇒ 「〇〇醸造」などの表記が可能
 
  • 単一品種を85%以上使用 ⇒ 「デラウェア」などの品種表記が可能
  • 2つの品種で85%以上を使用 ⇒ 多い順に2つの品種名を表記可能
  • 3つ以上の品種で85%以上を使用 ⇒ 割合を併記して多い順に表記可能
  • 単一ヴィンテージのブドウを85%以上使用 ⇒ ヴィンテージの表記が可能
 
これらはヨーロッパをはじめ多くの生産国で採用されているルールと類似しています
逆に言えば15%未満で表記外のものを混ぜることは許可されています。
 
例えば若いうちはタンニンが強くて飲みづらいワインに、熟成させた同じワインを少量加えるという話はたまに聞きます。
 
 

GIと地理的保護

 
GI = Geographical Indicationとは「地理的表示」と訳されます。いわばブランド産地であり、その目的を農林水産省はこう記しています。
「その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。」
 
 
 

互いの利益のために名称を保護する

 
産地のブランドというものは、長い年月をかけて官民一体となって築き上げるものです。
だからこそその名称を他者が不当に使用することは許されません
 
例えば日本でいくら美味しいシャルドネをつくったといっても、それを「シャブリみたいなワイン」として表記し販売してはいけないのです。
 
 
これは国交のある2国間で条約を結びます。
たとえばメキシコに対して日本は、「テキーラ」「メスカル」などの名称の蒸留酒をつくらせないことを約束し、その代わり「琉球」「薩摩」などの蒸留酒もメキシコでつくってはいけないことが定められています。
 
これは2国間の関係が断裂したとき破綻します。ロシア産のシャンパンが公然とつくられてしまうのです。
 
 

日本で定められた5つのGI

 
2023年現在、日本には5つのGIが定められています。
山梨、北海道、長野、山形、大阪です。
これに岩手が続こうとしているようです。
 
国税庁のHP上では、現在GIとして保護されているのは、先行して認められた山梨と北海道だけのようです。
 
 
しかしながら他のGI産地も追って認められることでしょう。
 
 

5つのGI産地

 
ブドウ自体は日本のいたるところで栽培されており、47都道府県の中でワイナリーがないのは佐賀県のみだそうです。※
そのなかでなぜ5つの件がGIとして認められたのか。国税庁HPに書かれたその理由を抜粋しながら、その特徴をよくあらわしているおすすめワインをご紹介します。
 
※日本ソムリエ協会 教本による
 
 

山梨県の選定理由(2013年認定)

 
  • 山梨県のワインには、さまざまな品種の特性があります。山梨ワインは、ブドウ本来の味や香りが引き立ち、爽やかな酸味が特徴となっています。白ワインは華やかな花や柑橘系の香りとブドウ果実のアロマを持ち、辛口と甘口のバランスが良い味わいです。赤ワインはブドウ由来のアロマと穏やかな渋味が特徴的です。さらに、ロゼワインはフルーティで軽やかな味わいを楽しめます。
  • 自然的要因:
    山梨県は山々に囲まれた地形で、最上川が流れています。ブドウ栽培に適した傾斜地と水はけの良い土壌があり、果実の肥大を抑制し味を濃縮させます。ブドウの生育期には晴天が多く、日照時間が十分に確保されます。冷涼な気温と昼夜の気温差の大きさは、ブドウに有機酸を蓄積させます。降水量は比較的少なく、健全なブドウの収穫を促しますが、冬季には積雪量が多いため湿度や雪対策が必要です。
  • 人的要因:
    山梨県では19世紀後半からブドウ栽培とワイン醸造が行われてきました。品種の改良や栽培方法の改善が進み、特にカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが定着し、本格的なワイン醸造が広まりました。組合や研究会の設立により、醸造技術の向上や品質向上に取り組んでいます。また、山梨県の地理的条件や気候を活かした取り組みも行われ、山梨ワインの特性の維持と向上に努めています。
 
(※要約しいています 原文:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/161216_besshi01.htm
 
 

GI Yamanashi のおすすめワイン

 
日本ワインの中心地である山梨県には、  全国最多の92軒のワイナリーがあります。(令和3年時点 ※)
 
山梨県のワインを代表する品種は甲州。逆に日本を代表するブドウといえど、質の高い甲州を生産できるのはほぼ山梨県のみです。
甲州については動画でも解説しております。
 
 
この動画でもご紹介しているこちらのワインは、樽熟成していないタイプで甲州の風味をストレートに感じることができます。
 
生産本数の14,000本というのは、日本ワインとしてはある程度の数があるものでしょう。それもあって比較的リーズナブルな価格で供給されています。
 
 
※国税庁の資料による 以下も同じ
 
 

北海道選定の理由(2018年認定)

 
  • 酒類の特性:
    白ワインは透明な色合いで豊かな香りと酸味、赤ワインは赤紫色でスパイスや果実の香りと穏やかな渋味があり、ロゼワインはフルーティで甘味と酸味のバランスが良い。
  • 自然的要因:
    北海道は冷涼な気候でブドウの生育に適しており、日照時間が長く気温の日較差が大きいため、糖度の高いブドウが育つ。湿度が低く降水量が少ないため、健全な状態でブドウを収穫できる。
  • 人的要因:
    明治時代からブドウ栽培とワイン製造が行われ、北海道の自然環境に適応した栽培方法が確立されている。北海道産ブドウを使用し、製法に関する条件を満たすことが求められる。
 
(※要約しいています 原文:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/1806_besshi01.htm
 
令和3年の時点で北海道には46軒のワイナリーがあります。
北海道のワインは現在取り扱いがございません。
 
 

長野県選定の理由(2021年認定)

 
  • 長野ワインはブドウ品種ごとの香味の特性がはっきりと現れます。赤ワインは濃い色調で、骨格のあるタンニンと適度な酸味を持ち、凝縮感の高い味わいです。白ワインはブドウの特徴香がよく表現され、フレッシュで酸味があります。プレミアムワインは華やかで気品のある香りと果実味の厚みがあり、しっかりとした余韻を楽しめます。
  • 自然的要因:
    長野県は山岳地帯で、少ない降水量と多くの日照時間が特徴です。冷涼な気候と昼夜の寒暖差の大きさがブドウの育成に適しており、白ワイン用ブドウは適度な有機酸と高い糖度を持ち、赤ワイン用ブドウは豊富なアントシアニンと高品質なブドウが育ちます。
  • 人的要因:
    長野県では長い歴史と伝統を持つブドウ栽培とワイン醸造が行われています。近年、ブティックワイナリーの設立や大手ワイナリーとの契約ブドウ栽培などが盛んで、ワイン産業が発展しています。また、信州ワインバレー構想の推進や研究機関による取り組みにより、ブドウ品種や醸造方法の研究が進み、長野ワインの特性を引き出す努力がなされています。
 
(※要約しいています 原文:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/1806_besshi01.htm
 
 

長野県産おすすめワイン

 
長野県のワイナリーは日本で2番目に多く、令和3年の時点で62軒あります。
 
長野県からはまだスタートして間もないワイナリーである「ル・ミリュウ」をご紹介します。
日本固有の品種である「竜眼」からつくるオレンジワインは、稀有な存在でしょう。
 

 
竜眼はヨーロッパ系ブドウほど糖度が上がりにくく、そのまま醸造したのでは個性に乏しいワインとなってしまいます。そこで果皮と一緒に醸し発酵を行うオレンジワインで、なるべく風味をしっかり抽出しているのです。
 
そうして出来上がったワインは、なかなか独特な風味を持ちながら、低アルコールなのに軽すぎません。
万人におすすめするわけではありませんが、日本ワインファンなら一度は口にすべきです。
 
 

山形県選定の理由(2021年認定)

 
  • 山形ワインはブドウ本来の味や香りが際立ち、爽やかな酸味による余韻が特徴です。白ワインは豊かな花や柑橘系の香りとブドウ果実由来のアロマが感じられ、辛口は鮮明な酸味と風味の調和、甘口は甘味と酸味のバランスが良く、どちらも爽やかな余韻があります。赤ワインはブドウ果実由来のアロマと穏やかな渋味を持ち、ロゼワインはフルーティで軽やかな味わいが特徴です。
  • 自然的要因:
    山形県は日本海に面し、奥羽山脈や出羽山地に囲まれた地形です。最上川流域ではブドウ栽培が盛んで、傾斜地の土壌と適度な水分ストレスがブドウの育成に適しています。日照時間はほどよく、晴天が多く昼と夜の気温差が大きいため、有機酸が蓄積されます。降水量は比較的少なく、ブドウの病害発生が抑制されますが、冬季には積雪があります。
  • 人的要因:
    山形県では19世紀後半からブドウ栽培が始まり、デラウェアへの改植や工夫を重ねて栽培面積が拡大しました。ワイン醸造も果実酒として始まりましたが、フィロキセラの被害により減少しました。1980年代から再びヴィニフェラ種の導入や技術の改善が進み、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネを用いた本格的なワイン醸造が拡大しました。ワイン酒造組合や研究会の設立により情報交換や技術向上に努め、若手葡萄酒産地研究会がワイン品質向上に取り組んでいます。
 
(※要約しいています 原文:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/161216_besshi01.htm
 
 

山形県産おすすめワイン

 
令和3年、山形県には19軒のワイナリーがあります。
山形県のワインはこの1本しか取り扱いはありませんが、この1本には間違いないです。
 
 
朝日町ワインの歴史は昭和19年からと非常に古く、第3セクターとして運営されてきました。それもあってワインの値ごろ感は素晴らしく、単純に2,000円前後の赤ワインとしておすすめできます。
 
 
ブドウは近隣農家さんから購入しているものと思われますが、それなりに凝縮度もあり、「薄くて酸っぱい」ではありません。
期待以上の複雑味を感じていただけるでしょう。
 
 

大阪府の選定理由(2021年認定)

 
  • 酒類の特性:
    大阪のワインはデラウェアなど食用ブドウを使用し、新鮮で美しいブドウを特徴としています。ワインは凝縮された果実味と穏やかな酸味、ほどよい旨味を感じることができ、食事との相性が良いです。デラウェアを原料としたワインは爽やかな香りと豊満な甘味が特徴で、早摘みと成熟時の違いにより変化が楽しめます。白ワインはフルーティーな香りと柔らかな味わい、赤ワインは芳醇な香りと柔らかな果実味があります。
     
  • 自然的要因:
    大阪府は日本列島の中央に位置し、大阪平野と大阪湾に囲まれています。周囲は山地であり、日照時間が豊富で排水や通風が良い条件です。主要なブドウ産地である河内地域では、日光が遮られず十分な日照時間が確保されます。大阪湾が季節風を遮り、安定した天候で温暖で降水量が少ないため、ブドウのベレーゾン期に健全な生育が可能です。この気候で育ったブドウを使用したワインは、果実味が凝縮され、穏やかな酸味や旨味があります。
     
  • 人的要因:
    大阪では明治時代からブドウ栽培が盛んになり、食用ブドウの栽培技術を活かして新鮮なブドウをワイン原料として使用しています。大阪は大消費地に近く、鉄道の開通により市場も拡大しました。食用ブドウの栽培面積が広がり、ワイン醸造も行われるようになりました。また、欧州種のブドウの栽培や品種の選定に取り組み、地域の気候風土に適したブドウを収穫できるよう努力してきました。近年では研究拠点の整備やワイン製造者との連携により、品質向上に取り組んでいます。
 
 
 

大阪府産のおすすめワイン

 
令和3年、大阪には8軒のワイナリーがあります。
大阪のワインを飲むならまずは上述の通りデラウェア。食用としてもポピュラーなブドウで、夏になるとスーパーでもよく見かけます。
 
 
デラウェア独特の何とも言えない垢ぬけない香りが、ブドウそのままにワインにも感じます。
 
飛鳥ワインのこのデラウェアは、非常にリーズナブルながらその特徴がわかりやすく現れています。
甘味をちょっと残した半辛口の仕上がりで、決して高いワインの味はしませんが、どこかほっとするような雰囲気です。
 
 

GI表記のないワインについて

 
長野、山形、大阪については、2021年にGIに認定されたばかりです。
さらに自動的にGI表記が可能になるわけでなく、申請して認められる必要があります。
それもあって、現時点で長野・山形・大阪のGIを表記しているワインはあまり見かけません
 
2021年、2022年ヴィンテージがリリースされるにしたがって、これら3府県のワインでもGI表記のものが増えていくものと思われます。
 
 

日本ワインブームのその先に

 
「こんなワイナリーが設立されました」「日本ワインのコンクールが開催されました」
日本ワインに関する様々な話題がメディアで取り上げられ、ブームを引き起こしている状態が5年ほど前から続いています。
 
そう、ブームです。この勢いはいずれ無くなり、多くのワイナリーが廃業することになるのはほぼ間違いないでしょう。
それ自体は自然なことです。市場原理のなかで劣ったものが淘汰され、優れたものだけが残る。それに良いも悪いもありません。
 
そのブームのあとで日本ワインがどれほどの地位を確立するのか。
それには日本ワインが抱える課題をどう克服していくかが大きく影響するはずです。
 
 

雨が多く凝縮度が低い

 
例えば山梨県の気候は、積算温度や日照時間の観点からすると、イタリアのトスカーナやカリフォルニアのローダイと同じくらい高温な気候です。
しかしながらそれらの産地のように、凝縮度の高い赤ワインを生産することは、現状できません。雨が多いからです。
 
 
地面に水分が多いと、ブドウは水を吸って実が膨れ、味わいの凝縮度が下がってしまいます。単純に糖度も下がります。なので日本ワインは補糖をしてアルコール度数を上げることが普通です。
全国的には比較的雨の少ない山梨ですら、ワイン産地としては降水量がかなり多いのです。
 
 
雨が多いことは同時にブドウにカビ系の病害が多いことを意味します。例えばフランスのアルザスと日本とでは、有機栽培に対する難易度が全く違うはずです。
 
それに海に囲まれた日本の夏は、暑い上に気温の日較差が小さい、つまり昼も暑くて夜も涼しくなりません。それはブドウの酸度が下がりやすいことを意味しており、上質なワインがつくりにくい環境であることを意味します。
 
「こんな厳しい環境でワインをつくっているのか」
海外の生産者が来日すると、まずそれに驚くといいます。
 
 

生産量の少なさ

 
主要なワイン生産国に比べ、ワイナリー1件あたりの畑の所有面積が小さいです。
その理由として、一部の例外を除いて一般の法人が農地を所有することを原則認めていないからです。
 
(※近年は変わってきているようです https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA01DW90R00C23A3000000/
 
国土のうち山岳地帯が多い日本は、畑に向いた土地が高価というのもあります。それに加えて法律的な制限から、「広大なブドウ畑を所有し大規模な生産を行う」という企業が生まれにくい土壌だったのです。
  
自社で畑を持てないなら契約農家から買えばいいのですが、それも簡単ではありません。
 
 

食用ブドウの方が儲かる

 
1.2億人の市場がある日本。食用ブドウの需要も高いです。
ゆえにワイン用のブドウをつくるよりも、生食用のブドウを育てた方が多くの場合儲かるという事情があります。
 
 
生食用よりワイン用のブドウの方が、高い糖度が要求されます。それには収量制限が必要ですが、収穫量が減れば収入が減ってしまうデメリットがあります。
 
各地のブドウ農家さんを説得してワインに適したブドウをつくってもらう苦労。よく耳にします。
 
買いブドウと自社ブドウ両方からワインをつくる大手生産者の場合、最高級品は基本自社畑のワインです。
それだけ契約農家のブドウ品質をコントロールすることは難しいのです。
 
 

日本ワインは割高

 
厳密には味わいの方向性が違うとはいえ、同じ価格帯で比較した場合。
それほど輸送費がかかっていないはずの日本ワインの方が、同等価格帯の輸入ワインに品質で劣ります
日本ワインは割高なのです。
 
その理由は生産量の少なさ。スケールメリットを発揮しづらいところにあります。
 
 
それに関連して醸造設備などのコスト高もあります。「ワイナリー向けの市場」というのがまだまだ小さいので、醸造設備や資材が輸入ばかりで割高になってしまうのです。
 
若いワイナリーの場合は、初期投資を回収するため、ワインの価格に借金返済費用を大きく乗せる必要があります。そんな若いワイナリーが多いこともまた、平均価格が高い理由です。
 
 

日本ワインの輸出を拡大するために

 
世界の市場から見たとき、日本ワインはまだまだ「超マイナー産地」の一つでしょう。
それくらい、日本ワインの輸出はごく一部に限られます。
 
そりゃあ1.2億人の市場を相手にするより、70億人の胃袋をターゲットにした方が可能性は広がります。しかし世界中のワインと価格で比較されたうえで存在感を示さなければ、選んで買ってもらうことはかないません
 
 
現状は日本ワインブームで、多くのワイナリーで輸出するだけの余剰生産量はありません。しかしこの先ブームが過ぎたとき、海外に輸出することができれば、その後も売り上げを伸ばせます。
そのためには世界市場で戦える味と価格であることが必須です。
 
世界で認められるための施策の一つがGIの認定、「日本のブランド産地であること」のお墨付きなのです
 
 

応援の気持ちも込めて日本ワインを飲もう

 
日本ワインはまだまだ黎明期です。
だから同じ価格で比べて輸入ワインより美味しくない、同じくらいの美味しさで比べて海外のワインの方が安いということが多いのは否めません。
 
しかし考えてもみてください。現在安定して美味しいワインをつくる歴史ある生産者も、そのスタートアップの数百年前はたいして美味しいワインをつくってなかったはずです。ラフィットだって最初は美味しくなかったはずです(たぶん)。それでもそのワインを飲んで経営を支えた消費者がいたからこそ、今日まで存続しているのです。
 
 
その当時と違うのは、現代においてワインは無数の選択肢があること。地元のワインだけでなく、世界中のワインが気軽に飲めることです。
 
生まれたばかりの幼児には大人の手助けが必要なように、若いワイナリーには消費者の支援が必要です
「日本ワインを応援する気持ちを込めて」
日本ワインの未来に期待する意図を込めて、あえて割高な日本ワインを飲んで10年後を楽しみにしませんか?
 
 
※参考文献
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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