ワインのつくり方

V.V. ヴィエイユ・ヴィーニュとは 古木のワインのメリットとは?

2023年5月2日

 V.V. ヴィエイユ・ヴィーニュとは 古木のワインのメリットとは?
 
 
「Vieilles Vignes」略してV.V.とは、そのワインが古木からつくられていることを意味します
樹齢の高いブドウの木からできるワインは高品質と言われますが、それはなぜでしょうか。
古い木は実るブドウが少なく生産効率が下がりますが、量より質を求める生産者は植え替えをしません。
若木と古木ではブドウはどう違うのか。V.V.のワインの魅力に迫ります。
 
 

ブドウの木の栽培サイクル

 
ブドウの木は1度植えればすぐにブドウを実らせるものでもなければ、いつまでも生き続けるわけでもありません。
定期的に植え替える必要があり、数年にわたって収穫できない期間があります。
 
 

ブドウの植樹から収穫まで

 
植樹からだいたい3年ほどで、ブドウが収穫できるようになります。
 
ブドウは種無しにする処理を行わない限り、1粒1粒に種を持ちます。しかし種からブドウの木を育てることは基本ありません。
ブドウは通常苗木から育てます。たいていは苗木業者から買ってきて植えます。たまに自分の畑の特にいい区画から枝をとって、樹を増やす生産者もいます。
 
 
ブドウは樹の成長に栄養を回しすぎると、ブドウの実をつけません。だからブドウを実らせて収穫できるようになるまで、3~5年と言われています
 
 

クローンとは

ブドウは自家受粉が可能、つまり樹が1本しかなくても繁殖可能です。しかし種から育てると、親となる樹と同じ性質を持つかどうかはわかりません。
ゆえに膨大な樹から選りすぐられた優れた1本から、枝を切って苗木とするのです。そうすると植樹したブドウの樹もその優れた性質を受け継ぎます。
同じ遺伝子を持つ樹を増やしていくので、「クローン」と呼ばれます。「ピノ・ノワール」のような同じブドウ品種の中にも様々なクローンがあり、樹勢や粒の大きさ、収穫量などの性質が違います。
 
 

ブドウの樹の寿命

 
ブドウの樹の寿命は、せいぜい100年程度です。
中には100年を超えて生き残る樹もあります。このワインのブドウの一部は、生産者いわく樹齢250年以上の樹のものだそうです。(筆者は眉唾に思っています。)
 
 
しかしよほど条件が揃わないかぎり、樹が病気などに負けて途中で枯れてしまいます。人間と同じで、若いうちは少々の病気も樹勢でごまかせたとしても、年をとってくると病気に負けてしまう傾向にあります。
 
したがって木としての寿命が来る前に植え替えが行われます。
 
 

植え替えサイクルは30年ほど

 
若いうちはブドウの樹に勢いがあり、たくさんの房を実らせます。
しかし樹齢が上がるにつれてその勢いは弱くなり、ブドウの収穫量が徐々に減ってきます
それはその畑におけるワインの生産量が減少していくことを意味します。
 
 
ブドウの植え替えには費用がかかります。もちろん苗木業者から苗木を買うコストもあります。しかしそれ以上に数年間その畑から収穫できなくなることが大きいでしょう。
ブドウの樹を引っこ抜いてすぐ植えられるわけではなく、通常は1,2年畑を休ませて状態を整えます。だからブドウの樹の植え替えて新しくするには5年程度は時間が必要です。
 
それを踏まえたうえでも、植え替えを行った方が栽培が効率的と言われる樹齢。商業的なスタンスで見たブドウの寿命は30年程度だと言われています。
 
ゆえに30年を超えて樹を植え替えないのは、目的があります。より高品質なワインをつくるためです。
 
 

古木はなぜ優れている

 
一般に同じ環境なら樹齢の低い樹よりも樹齢の高い樹からつくられた方が、ワインは高品質だと言われています。
だからそれを示すために「Vieilles Vignes = 古木」というフランス語表記があるのです。英語圏の「Old Vine オールドヴァイン」やドイツ語圏の「Alte Reben アルテ レーベン」も同じ意味です。
 
どうして古い樹からつくられるワインは品質が高いのでしょうか。
 
 

相対的にブドウに栄養が集中するから

 
1本のブドウの樹に実る房の数が少なくなるから、1粒1粒に栄養が集中して、ブドウが高品質になる。古木のメリットはこう説明されることが多いです。
 
 
植物は空気中の二酸化炭素と土中の水だけでは生育できません。土壌から様々な栄養を得る必要があります。その栄養が向かう先が多いのか少ないのか。そりゃあ少ない方が風味が詰まっていそうです。
 
ただし収穫量が半分になったからといって、ブドウの風味の密度が2倍とはいかないです。その生産地域のポテンシャルと、それを活かす醸造家の腕が必要。古木を残すことによって生産量が減り品質が上がった分、ワインを高く売ってそれでも満足してもらわないといけないのです。
 
 

地中深くに根を伸ばすから、酸味が落ちない

 
樹齢が上がるにつれて、一般に樹は地中深くまで根を伸ばします
根が深ければ、それだけ地中深くから水分を吸い上げます。地表付近と地中深く。真夏における水分の温度はずいぶん違うでしょう。
 
 
同じブドウ品種なら、冷涼な地域の方が一般に酸味は高いです。そのヴィンテージの天候が涼しい時もそうです。樹齢が高いことによっても、地表の猛暑を避けることができて、酸味をしっかりと保てることがあります。
 
同じ生産者のワインで比較して、スタンダードクラスは酸味が弱くベタっとしているのに、上級クラスは濃厚さの中に上品な酸味があるとします。アルコール度数が同じくらいなら、収穫時のブドウ糖度はほぼ同じだったはず。そうだとしたら果実味と酸味のバランスを分かつのは、樹齢かもしれません
 
 

地中深くに根を伸ばすから、土地の個性を反映する

 
表土、つまり畑の表面の土は、産地によってそう大きく変わるものではありません。岩石が風化してできる小さな砂や粘土。そこに植物が腐ってできる腐植が混ざったもの。そんな表土が数十センチから数メートル堆積しています。
斜面の畑は雨で表土が流されるので、厚みは少な目。一方で麓の平野部では表土が厚くなる傾向にあります。
 
レイダヴァレー、ウンドラーガ所有の畑

チリのとある畑を掘り返した穴。
主要生産国の土の色は、日本のものほど黒くないことが多いです。

 
だからワインの味わいに影響を与える「土壌」とは、通常は表土の下の部分を指します
「このワインの土壌は〇〇だから~」と結びつけられるのは、基本はある程度樹齢が上がってから。地中深くに根を伸ばしてこそ、土壌の特徴を表現するのです。
例外は表土のほとんどない斜面の畑です。
 
 

灌漑はワインの品質に悪影響?

 
灌漑(かんがい)とは端的に言えば水やりのこと。定期的に雨の降らない乾燥した地域でもワインを栽培するには、灌漑が必須です。
たいていはブドウの樹の根元に、小さな穴のあいたホースを通して水やりをします。
 
 
裏付けはなく筆者の推測なのですが、灌漑をすると根が地中深くに伸びにくいのではないでしょうか
 
樹が地中深くに根を伸ばすのは、水分や栄養を求めてです。必要があって伸ばすんです。
表土が厚く栄養豊富で、保水性があって適度な雨が降るなら、根は横に伸ばす方が効率的です。
地中深くでないと水が得られないから、深くまで根を張るんです。
 
となると灌漑によって地表から水を与えるのは、根が深くに伸びることを阻害するんじゃないかと推測します。
それがワインの質の低下にイコールでつながるかはわかりません。しかし場合によってはその土地の個性を表しにくくなるのかもしれません。
 
 
なおニューワールドの乾燥地域において無灌漑での栽培に挑戦する例がまま見られます。しかしその目的が品質のためなのか、それとも希少な水資源を守るためなのかは生産者によりけりです。
 
 

灌漑の可否について

ヨーロッパの歴史あるワイン生産国においては、多くの国で灌漑が原則禁止されています
「人工的に水分をコントロールするのは、テロワール・その土地の個性を破壊する行為だ」という考え方です。
ただし、まだ深くまで根が伸びていない若木に対してはOKだったり、干ばつの年にだけ時期を限定して許可されることもあります。

 
 

高樹齢の利点は収量制限と根の深さ

 
以上の通り古木のブドウの質が高いのは、一つに自然と収量制限されることで栄養が集中するから。もう一つにブドウが根を深く伸ばすから、地表の熱波を避けられ、されに土壌の特性を反映するからだと言われています。
 
ここで留意する点は、だからといって「樹齢の低いブドウは質が低い」とは言えないこと。若木から素晴らしいワインをつくっている例はいくらでもあります
それでも同じ畑なら樹齢が上がるにしたがってワインの品質が上がるのは間違いないようです。
 
では何年くらいから「高樹齢」と期待していいかというと、実は基準はありません。
 
 

「高樹齢」って何年から?

 
高樹齢の方がいいというのは共通認識であるのに、実は「何年から高樹齢」と法律で定義されているところはありません
だから「Vieilles Vignes」とラベルに表記しようと思えば、何にだってできるのです。
その理由は、一律で定義できないからです。
 
 

ブドウ品種によって違う

 
樹齢100年を超えるような古木であることがアピールされるワイン。ブドウ品種に大きく偏りがあります。
グルナッシュ(ガルナッチャ)、シラー(シラーズ)、ジンファンデル、テンプラニーリョ、リースリング・・・・
ピノ・ノワールも樹齢の話はよく目にしますが、70年80年はよく見かけても、100年超えはあまりありません。
 
対照的に樹齢の話をあまり聞かないのが、カベルネ・ソーヴィニヨンとソーヴィニヨン・ブラン。それからメルローも。
 
 
樹齢が上がることによる品質の向上が、それほど顕著ではない
もしくは樹齢が上がると病気に弱くなるなどの理由で、他と比べて早いサイクルで植え替えられる
このどちらかの理由だと推測します。
 
だから「カベルネ・ソーヴィニヨンで樹齢50年」と聞くと高樹齢なように感じ、「グルナッシュで80年」だと高いけど珍しさは感じない、といったところです。
 
 

仕立て方によっても違う

 
樹齢が100年を超えるような樹は、コンパクトな仕立て方をされていることが多いように感じます。
 
 
一般的に皆さんが「ブドウ畑」と聞いて想像されるのが「垣根仕立て」と呼ばれるもの。「VSP Vertical Shoot Positioning」といって、畝にそって針金を張ることでブドウがそれを支えとして蔦を上えと伸ばします。日照を効率的に浴びることができるので、収穫量を増やしやすく、メンテナンスや収穫もしやすい栽培法です。
 
 
大して「ブッシュヴァイン」という仕立て方は、特に乾燥地域によく見られます。ブドウが蔦を伸ばす長さが短く、樹も背丈が低いため、必要とする水の量が少ないのです。木と木の間隔を広くとるので、面積当たりの収穫量はVSPと比べてずっと少なくなります。
 
年間に樹を大きくしようとする活動が少ないからか。
あるいは乾燥地域ゆえに病虫害のリスクが小さいからか。
またあるいはブッシュヴァインを採用する地域は畑とする土地に余裕があり、面積当たりの収穫量は少なくても問題ないからなのか。
 
かなり高樹齢のブドウの樹の中には、ブッシュヴァインのものが少なくありません
南ローヌやカリフォルニアのローダイ、バロッサ・ヴァレーなどです。
 
 

接ぎ木の有無でも話は変わる

 
世界中ほとんどのブドウは、接ぎ木して栽培されます。アメリカ系ブドウの台木にヨーロッパ系ブドウを接ぎ木しているのです。
これは「フィロキセラ」と呼ばれるブドウの根に住み着くアブラムシの一種に対して、ヨーロッパ系ブドウは耐性がないからです。
 
ところが中にはヨーロッパ系ブドウを自根で栽培する生産者もいます。畑が砂質土壌やシスト、粘板岩などの特定の土壌の場合、フィロキセラが生育できないので接ぎ木の必要がないのです。
 
 
ニュージーランド、セントラル・オタゴの生産者リッポンは、自根でブドウを育てる一人。彼曰くアメリカ系ブドウの根は太くて短い。それに対してヨーロッパ系ブドウの根は細くて長い。ゆえに接ぎ木するのに比べ自根のブドウの方が、樹齢が若いうちから土壌の特性をワインに反映するのだといいます。

バロッサ・ヴァレーの『高樹齢』

 
私が知る限り唯一樹齢と呼び名が定義されているのが、南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーです。
 
 
バロッサ・ヴァレーはオーストラリアのワインにおける黎明期からブドウを植えられていた地域です。それもあって非常に高樹齢のブドウの樹が多く残っています。それにマーケティング的な価値を与え、貴重な畑を守る目的で、この「バロッサ古木憲章」がつくられました。
 
あくまで生産者団体によるものなので「ワイン法」というわけではありません。
ですが「125年以上」というカテゴリをつくったということは、樹齢100年と比べても有為な差があると生産者は考えていることの証でしょう。
 
 

『高樹齢』は定義できない

 
以上の通りそのブドウの樹が平均よりも樹齢が高いかどうかは、様々な要因で変わってきます。
だから「樹齢〇年以上が高樹齢」ということを定義することには、狭い範囲でしか意味がありません
「バロッサ古木憲章」も、バロッサ・ヴァレーの地で、そこで栽培されている品種に限るからこそ意味を持つのです。
 
同じ畑で比較するなら、樹齢が高い方がブドウは美味しいです
でも他の畑・他の品種で比較するなら、樹齢は必ずしも品質の優劣を示すものではありません。
 
 

『古木』だとワインはどう美味しい?

 
みなさまが一番気になるのは、「じゃあ樹齢が高いとワインはどう美味しいの?」じゃないでしょうか。
しかしこの答えは本当に、ない
いくつかのサイトを当たりましたが、あまり明確に示しているところはありません。
 
 

他のWEBサイトが示す高樹齢のメリット

 
高樹齢になるとワインはどう変わるのか。少しほかのHPをあたってみました。
 
フィラディスさんの「WINE COLUMN」によると、「ワインにもその複雑性が反映され」、「濃厚にな」り、「色が濃く、骨格がしっかりとしたワインとなる」
いくつか見た中ではこれが最も具体的な描写でした。
 
 
モトックスさんのWine-Linkでは、「古木からとれたブドウをつかうと複雑味が出る」とあります。
 
 
家ワイン」さんによると、単純に「ワインの質も上がる」との記述。
 
 
このように高樹齢による味の違いは、「複雑性が増す、つまりより多様な風味を感じるようになる」という見解が多いようです。
 
「濃厚 = フルボディ」というのは違いますが、樹齢が高いほどフルボディということはありません。
ただ、「風味が複雑になる」というのは、近しいことを感じています。
 
 

筆者による見解

 
樹齢が高いブドウからつくるワインは、レトロネーザルアロマのボリュームが増す。私は高樹齢の樹からつくるワインの特徴をそう感じています。
 
ワインをはじめとした飲食物から我々が感じる香りは2種類あります。口に含む前に鼻でクンクンして感じる香り(オルソネーザルアロマ)と、口に含んで飲みこんだ後に鼻を抜けていく香り(レトロネーザルアロマ)です。いわゆる「戻り香」です。
この戻り香が非常に強い傾向にあると感じるのです。
 
 
オルソネーザルアロマも価格が高い(≒樹齢が高い)ワインの方がボリュームがあるものが多いです。でも安いワインの中にも香りがしっかり立っているものは結構あります。私はそんなワインは、醸造家が発酵に使う酵母の選択が上手なのではと推測しています。
でも手ごろなワインで口に含んでからのアロマの方が強いものは、経験がありません。
 
 

見解を裏付けるワイン

 
上記の違いは教科書などに書いてあるものではなく、根拠は私の経験だけです。例外がないとは言いません。
しかしそう考えるに至ったワインは示せます。
 
例えばロワール、アンリ・ブルジョワがつくるこの2本
 
 
 
「ダンタン」は樹齢80年以上と、ソーヴィニヨン・ブランとしては例外的な高樹齢。しかし少なくとも開けたてのオルソネーザルのボリュームは、むしろ安い「レ・バロンヌ」の方が豊かなくらいなんです。
 
しかし「ダンタン」は口に含むとその風味が一気に広がります。「レ・バロンヌ」は飲む前に感じる印象とそう大きく変化はありません。この口で広がる風味が、古木に実るブドウのパワーなのではないかと考えています。
 
 
ひと昔前は、このボデガス・アタラヤの3兄弟でも同様の違いを感じました。
 
 
 
 
しかし近年のヴィンテージではレトロネーザルの違いはあまり感じません。「もしかして」と思って調べると、輸入元のワイン情報に樹齢の話は載らなくなっていました。
 
 

具体的に書かないのは不正確さを避けて

 
あまり具体的に書かない他の記事を批判するつもりはありません。
 
個人の体験に基づく確度の低い情報を書くか。
不正確さを避けて当たり障りのないことを書くか。
 
方針と立場の違いです。
 
どれが正しいかより、あなたがどう感じるかの方が大切
古木からつくるワインを飲むことによって。あるいは同じ生産者で若木と古木のワインを比較することで。
高樹齢のワインの美味しさをぜひ感じて、どの説明がしっくりくるかを考えてみてください。
 
 

古木の魅力を手ごろに感じるおすすめワイン

 
高い樹齢の樹からつくられる高級なワインは、たいてい「高樹齢」以外にも美味しい理由がたくさんあります。それに飲み比べに費用がかかりすぎます。
 
だからなるべく高樹齢でなるべく手ごろに試すことのできる、V.V.のワインをピックアップしました。
 
 

スリーがつくる高樹齢のワイン

 
 
カリフォルニアの生産者「スリー」は、つくる赤ワイン全て高樹齢なので、樹齢の差による比較には向きません。120年以上前に植樹された樹のブドウもつかっています
しかし「高樹齢ゆえの酸味」というのは感じていただきやすいです。
 
ジンファンデルはアルコール度数が上がりやすく、酸味は低くなりやすいブドウです。
このジンファンデルもしっかり熟してから収穫されるので、多くのヴィンテージでアルコール度数が15%を超えます。早摘みしているわけではありません。それなのに、ジンファンデルらしくない豊かな酸味を持ちます
  
「こんなのジンファンデルじゃない!」と、楽天市場で低評価レビューをもらってしまったほどです。
「ジンファンデルは濃厚で甘い風味を持って、酸味が低くまったりとしたワイン」そんなイメージをお持ちの方は、ぜひこのワインで覆されてください。
 
 

樹齢が「高い」と「とても高い」

 
同じ生産者の樹齢違いが比較できるならわかりやすい。
安い方のワイン、樹齢30~44年というのもまあまあ高いのですが、それで2000円強という価格は素晴らしい
 
 
この手ごろなレンジの方も、一部樽熟成しています。
この場合の樽熟成は、ワインに複雑味とボリューム感を少しだけプラスする目的。
 
でも上級クラスはしっかり樽をきかせている訳でもないのに、複雑味もボリューム感もはるかに上回るのが面白いところ。
 
 
1964年植樹なので、2023年時点で樹齢59年です。
風味のボリュームやレトロネーザルに大きな違いがあります。
 
一概に「樹齢による違い」だけとは言えませんが、ひょっとしたら値段以上の味わいの差が感じられます。
 
 

樹齢はワインの味わいを決める重要要素

 
私自身がワインの味わいに感じる以上に、生産者は樹齢にこだわります
それは同じワインを飲み続けている生産者にとって、樹齢の低い樹のワインと高いワインは全然違うということです。
 
 

ヴォギュエのこだわり

 
例えばブルゴーニュのコント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ。トップキュヴェの「ミュジニー V.V.」は、わざわざ「V.V.」と記載しているとおり、古木のブドウしか使いません。
 
 
でもヴォギュエも将来のために、畑の区画ごとにローテーションして徐々に植え替えを行っています。
 
じゃあ若木のブドウでできるワインはどうするかというと、格下げして「シャンボール ミュジニー プルミエ クリュ」(畑名なし)として販売するのです。
 
 
若木のブドウを「ミュジニーV.V.」に入れたって、文句をつけられる人はいません。だってV.V.に定義はないのですから。
でもヴォギュエ自身が「若木のブドウではミュジニーV.V.のブランドに相応しくない」と判断しているということ。格下げしたら値段がおよそ1/3になるというのに、品質を優先するのです。
 
 

樹齢に注目して選んでみよう

  
このように生産者は樹齢が高くなるとワインの品質が高くなると知っています
  
もちろん絶対ではありません。樹齢が低いのに美味しいワインもあれば、樹齢が高いのにイマイチなワインもいくらでもあります。
でも同じワインで比較するなら、樹齢が高くなるにつれ美味しくなっていきます。若い樹齢の木でつくるワインのほうがより顕著です。
 
 
樹齢の若い木からつくるワインを毎年飲んで、樹齢の上昇を定点観測するのもいいでしょう。
同一生産者の樹齢違いを、クラスの違いとして感じるのも面白いでしょう。
 
樹齢以外にも、品種や産地や仕立て方や、様々なファクターがあります。単純な数字では判断できません。
それでもブドウの樹の樹齢が美味しさを決める重要要素であることは確かです。ワイン選びに困ったときは、樹齢に注目して選んでみるのも、失敗の少ないワイン選びのコツと言えるでしょう。
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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