
世界中で温暖化が進む中、注目を集めているのがローヌやラングドック・ルーション地方原産の品種です。暖かい畑でも上品な酸味を保てる適応力や、乾燥に強く環境負荷を軽減できる点で、国際品種にないメリットがあるからです。単に珍しいワインというだけでなく、ときに本家フランスを品質でしのぐことも。「良く知らないから・・・」と避けていてはもったいない、フランス国外で開花した南仏品種の魅力を紐解きます。
世界に羽ばたく南仏品種8選
今回はヨーロッパ以外の地域で栽培されている南仏品種のワインをご紹介します。その多くがブドウ品種の特性をピュアに表現しつつ、親しみやすく明るい果実味を持ちます。
品種の特性を気に入ったなら、改めてフランスのワインとも比較してみてはいかがでしょうか。
大分の暖かい気候でも酸を保つ
粒が小さく果皮が厚い性質を持つプティ・マンサンは、フランス南西地方の土着品種。風味の凝縮度だけでなくカビ耐性にも期待ができます。このワインはふっくらとした果実味とキレのいい酸味の両立が魅力。シャルドネでは表現できないバランス感で、風味豊かな白ワイン好きも満足な味わいでしょう。
透明感となめらかさでひたすら心地よい
南ローヌの主要品種であるグルナッシュ。暖かい気候でないと十分に熟さない代わりに、非常にアルコール度数が高いパワフルなワインにもなります。ローヌでは割とそういうパワフルなワインが多く、南アフリカのスワートランドの方がキレイ系が多い印象です。佐藤圭史さんがつくるこのグルナッシュもまた透明感があるタイプで、ブドウをやや早摘みしアルコールを抑えて酸を大事にしたタイプ。やさしく滑らかな口当たりは、ワインだけでずっと心地よく飲めます。
ローヌにはない軽やかさ
マルサンヌは北ローヌの白ブドウ品種。エルミタージュやクローズ・エルミタージュの白ワインに使われます。ローヌでは樽熟成したリッチなスタイルが多く、シャルドネのようなふくよかさとスケール感を持ちます。
それに対してこのタービルクのマルサンヌは全く違うスタイル。アルコール度数は低めに抑えられており、キレのいい酸味を持ちます。果皮に由来するだろう大人な雰囲気の苦みが特徴で、食中酒として料理を美味しくしてくれそうです。
カリフォルニアワインのイメージと違うのがいい!
醸造家のランダル・グラハム氏は、「他と一緒ではつまらない。新しいことがやりたい」という探求心豊かな人物。ピノ・ノワールでブルゴーニュの後追いをしても仕方ないと、当時カリフォルニアではメジャーでなかったローヌ品種に注力します。それもカリフォルニアワインのリッチでパワフルなスタイルとは真逆。アルコール度数を抑えた、上品で軽やかな味わいに仕上げます。
このワインも11.5%(2024VT)と軽やかなもの。グルナッシュ・ブランを主体としながら、ローヌにはないスタイルに仕上がっています。
品種の特性を忠実に
ヴィオニエの産地としては北ローヌの「コンドリュー」が有名で、多くの高級ワインがつくられます。黄桃やお花の香りを持つアロマティック品種。コンドリューでは樽熟成してつくられるため、樽のヴァニラ香と複雑に絡みあい、高級感のあるワインがつくられます。
それと比較すると、このソウマがつくるワインの香りはシンプル。しかし明るくよりハッキリとしたフルーツ感が全面に表現されています。酸味はあるけれども目立たない、果実味の豊かさが隠しているタイプです。
奥ゆかしさが日本らしい
例えば南アフリカやカリフォルニアのワインには、ハッキリとクリーンなフルーツ感を持ったワインがたくさんあります。一方でブルゴーニュやボルドーといったフランスの銘醸地、それから日本でも、フルーツが前に前にと出てくるワインは、そう多くありません。ワインに慣れ親しんだ人の中には、その奥ゆかしさ、押しつけがましくないところが好きという人も多いでしょう。
このマルスランもそう。ラングドック・ルーションで時折みかける、グルナッシュとカベルネ・ソーヴィニヨンの交配品種です。温暖な地域でもきちんと酸を保つのが特徴で、このワインにも熟しすぎていない上品なベリーの香りが現われています。
ただしドメーヌ・ボーがこのワインをつくるのは、2023VTが最後。翌年からは自社畑のブドウのみにするからです。手頃で上品なこのワインを楽しむのは今のうちに!
リッチなフルーツ感をより明るく
ルーサンヌはローヌにおいて、マルサンヌとセットのように扱われる品種。この2品種でブレンドされることが多く、あまり違いについて語られることはありません。
しかし先ほどのタービルクのワインとこちらは全く別の方向性. アルコール14%に達するほど完熟したブドウを使っており、その分だけリッチな完熟フルーツの風味が感じられます。ローヌのワインよりも明るくハッキリとしたフルーツの風味を感じ、気分を明るくしてくれるでしょう。
南アフリカでこそ大事にされる
サンソーは南仏で広く栽培されるブドウですが、割と「安いワイン用」のイメージがあります。タンニンが穏やかで熟成ポテンシャルのあるワインを造りづらいのが一つの理由でしょう。高級ワインはほとんどみかけません。
むしろ南アフリカでこそ中~高価格帯のワインがつくられています。南アフリカには比較的早くからサンソーが導入されており、古木が植わっている畑も残っています。
穏やかなタンニンによるスムースでやさしい口当たり。そこに古木ならではだろう上品な酸味と余韻の伸びが加わると、安くない金額を支払うに十分値する味わいとなります。
産地に「適した」「適していない」品種とは
ワインの風味はブドウの品種が何かで大きく左右されます。それゆえ消費者も好みの品種を目印にワインを選ぶ人が多いです。人気の品種を栽培したくなるのは当然です。
その一方で「その土地に適した品種を選択する」というのも非常に大切です。
産地に「適した」品種の条件とは
我々消費者の視点では、「そこで美味しいワインができるなら適した品種」と考えてしまいます。しかし生産者の視点で「土地に適した品種」とは次の条件です。
質が高い コストが低い 量が安定して多い
この「コストが低い」とは、主に病気にかかるリスクが低いということです。カビなどにかかるリスクが低ければ、それだけ防除に農薬を散布するコストも減らせ、収穫量も安定します。それは質の底上げにもつながるでしょう。
ヨーロッパの古い産地には、それぞれ「土着品種」と呼ばれるものがあります。今より栽培技術が低かった時代、病気に弱い品種では農家が立ち行かなくなってしまいます。なにより栽培のしやすさが優先され、現代の「土着品種」が残っていったのでしょう。


世界に羽ばたいた「国際品種」
明確な定義はありませんが、世界中で広く栽培されるものを「国際品種」と呼ぶことがあります。
具体的にはつぎのようなもの。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング。皆さまもよく目にし、口にしているものでしょう。
これらの品種は、南北アメリカやオーストラリア、南アフリカといった産地にも適応しました。ヨーロッパの移民が伝統産地と栽培条件の似た環境を探し、試行錯誤の末に生産を安定させていったのです。
これら国際品種は、リースリングを除きすべてフランス原産です。
ブドウの成熟とは
ブドウの収穫期前、粒の色が変わり生育が進むと、実は糖分を蓄え甘くなっていきます。それとともにリンゴ酸が分解され、酸味が低くなっていきます。
それはブドウの樹が繁殖するための戦略です。樹は動けませんので、種を動物に運んでもらう必要があります。種が未熟な状態では、実は酸っぱく硬くて魅力的ではありません。種が成長して繁殖の準備ができると、実を甘くして鳥や動物が食べたくなる状態にするのです。
糖度の上昇と酸度の低下はセットです。その進行には気温が大きく関係します。


適した品種を決める気温
高品質なワインをつくる上で重要なのは、適切に熟したブドウを収穫することです。およそ50年前より以前は、ブドウをいかに完熟させるかを工夫した時代でした。ドイツにおいて南向き急斜面の畑が良いとされてきたのは、安定してブドウが熟す条件が備わっているからです。


農作物が十分に生育する条件は、「積算温度」として考えられます。詳しいことは省きますが、ブドウ品種ごとに必要な暖かさが異なります。ニューワールドの産地において品種を選択する際、ヨーロッパのどの産地の気温に似ているかをヒントに、適した品種を選択していったのです。
変わってしまった気候条件
地球温暖化は、かつての良い畑の条件を変えてしまいつつあります。
ここ数十年、地球の気温は大きく上がりました。ブドウの生育期間は、北半球では4月1日から10月31日までの214日として計算されます。平均気温の上昇が仮に1度なら、積算温度は214度日も上昇するのです。
気温が上がればブドウは安定して熟すようになります。一方で雨のタイミングがずれたり、大雨の被害が増えたり、それによるカビ病リスクの増大を引き起こすこともあります。
何より近年問題視されているのが酸度の低下です。ブドウの糖度が上がりすぎ、酸度が下がってしまうのです。というのも国際品種は、シラーを除いてフランスの中でも比較的涼しい地域の原産。涼しい気候でも熟しやすい一方で、暑さに強い品種ではないのです。
ワインにおける「酸」の重要性
日本人は「酸味」という言葉に対する拒絶反応が強いと言われます。
酸っぱいだけのワインは誰も好みません。しかしワインにおいて酸は非常に重要な役割を果たしています。
気温上昇で酸が落ちることは、酸味が苦手な方にとっても望ましいことではありません。
酸は醸造を安定させる
醸造が健全に進むためには、果汁はある程度酸性寄りである方が望ましいです。
ワインの酸味成分は、主に酒石酸、リンゴ酸、クエン酸。これらの含有量とともに重要なのが、酸性度を表すpH(ピーエイチ)です。pHが低いほど酸性で、雑菌の繁殖が抑制されます。
また、発酵の際には酸化防止剤の働きをする亜硫酸が生成されます。この亜硫酸はpHが低いほどよく働く性質があります。


糖度が上がり酸度が低下した果汁の場合、発酵中に好ましくない酵母が働いたり、雑菌が繁殖するリスクが高いです。それはワインの風味を欠陥があるものに変えてしまいます。それゆえあらかじめ亜硫酸を添加したり、自然酵母ではなく培養酵母を使うなど、リスクを避ける醸造が選ばれます。瓶詰時にも清澄・濾過をしっかり行う必要があるでしょう。
だからといってワインの品質が下がるとは言い切れませんが、加工度の高い画一的な味わいになりがちです。
酸味は味わいの支え
酸味は醸造の健全性だけでなく、味わいにとってももちろん重要です。
そのワインが純粋に美味しいと感じるかどうかにおいて、味わいの「バランス」は非常に重要です。バランスとは感覚的な言葉ですが、果実味や甘味・酸味の強さにおいて均衡がとれているかどうか。どれか一つが突出していないかということです。赤ワインの場合はそれに渋味の強さも加わります。
この「バランスがいい」という評価は、ワインのタイプやスタイルによっても違いますし、各個人でも好みの差があります。しかし「酸味が弱くてバランスが良い」ということは基本的にありません。酸味が弱いと味わいがぼけて感じたり、もったり重たい印象になったりします。
酸味が苦手な人でも、酸味が弱いワインを探すことはおすすめしません。それより果実味が豊かなワインを探せば、相対的に酸味は控えめに感じ、好みのワインが見つかるでしょう。
温かい環境で有利な南仏品種
南フランスのワインについて、酸が高いイメージはないでしょう。むしろ果実味豊かで酸味は控えめな印象のものが多いです。
にもかかわらず、南仏品種は酸味を保つ点で注目されています。というのも暖かい気候に適応しており、温暖な環境でも一定の酸味は保ってくれるからです。
ピノ・ノワールやシャルドネという品種は、寒い環境でも熟しやすいのがメリットでもありデメリットでもあります。温暖化が進んだ地では、早く熟しすぎてしまい、結果として酸度が落ちてしまいがちです。
一方でグルナッシュやプティ・マンサン、サンソーなどの品種は、ある程度の暖かさがないと熟さないからこそ、過熟になりにくく、適切な酸味を持ったワインをつくりやすいのです。
これはイタリア品種の多くにも言えること。サンジョヴェーゼやフィアーノなどは、オーストラリアなどでも盛んに栽培され始めています。
考慮すべき水のサスティナビリティ
日本において非常に理解しにくい概念の一つ。それは節水がサスティナブルな活動であることです。実は水資源の保全は、世界的に無視できない問題となっています。
日本は水に恵まれた国
日本において、蛇口をひねると水道水が出てくるのは当たり前です。なので「水を節約するのが、お金の節約になる」は納得できても、「環境にやさしい」と言われてもピンときません。
その理由の一つは降水量。ブドウ栽培において適正な年間降水量は500-900mmと言われます。それに対して日本の平均的な降水量は、年間1500mmに達します。
しかし日本は国土が狭く、更に山岳部が多いため、雨が降っても多くは流れてしまいます。人口密度も高く、雨の多さだけで水資源の豊かな国ということはできません。そこをカバーしているのが浄水技術の高さです。
さらに国土の多くが、栄養が豊富で保水性も高い「黒ぼく土」で覆われています。作物を育てる際、保水性の高い土に多くの雨が降り、降らなくても農業用水は潤沢。だから水に恵まれているのです。
これは世界的には決して当たり前のことではありません。
ヨーロッパでは当たり前「灌漑禁止」
灌漑(かんがい)とは水やりのこと。ブドウに必要な水分を供給することです。通常は畑の畝の根本に穴の開いたホースを通し、必要に応じて水やりをします。


Shannonの畑
(Instagramより)
意外かもしれませんが、ヨーロッパの多くの国では、この灌漑が原則禁止されています。雨の量とタイミングはその地域のワインを特徴づける重要な要素。それを人工的に管理するのは、テロワール(その地域ならではの栽培環境)の改変にあたるという思想です。
ただし「原則」です。例えば根がまだ深くまで張っていない若木に対しては許可されていたり、極端に雨が少ない年には許可が下りたりと例外はあります。
容易ではない水資源の確保
こちらの記事で紹介されている、「Science of the Total Environment 2018 624」によれば、2040年までの間に、タウラジをつくる畑の41%で灌漑が必要になるそうです。タウラジとはナポリの近郊、イタリアのカンパーニャ州でつくられる赤ワインです。
気温が高くなると、土壌の水分の蒸散量も増えます。これまで灌漑なしでブドウを栽培できていたところも、それなしでは樹が枯れてしまうようになるのです。
水が足りないなら灌漑すればいいかというと、そんな簡単ではありません。その水はどこから入手するのかが問題です。
ブドウにとって水不足ということは、その地で栽培される農作物のほとんどが干ばつにさらされるということです。トマトやオリーブなどの栽培にも水が必要ななか、そう簡単にブドウ用の農業用水を確保することはできないでしょう。
灌漑が容易な地の条件
例えばアルゼンチンの「カファジャテ」地区のような、アンデス山脈のふもとの産地。そこは雪解け水が年中供給されるので、極めて乾燥した地域に関わらず、灌漑でブドウ栽培が安定します。
例えばオーストラリアのマレー・ダーリングやリヴァーランドなどの内陸部。非常に乾燥して雨の降らない気候ですが、大きな川のそばにあることと、「大鑽井盆地」であることによる豊富な地下水。それが灌漑のために十分な水を供給します。
ニューワールドのメジャーな産地は、「いかに農業用水を確保するか」も踏まえた立地であることです。
一方でヨーロッパの伝統産地は、灌漑しないことが標準です。そこで気候が変わったからといって、灌漑用水を準備するのは簡単ではありません。
水が少なくても大丈夫な仕立てや品種
世界の多くの産地で一般的な「垣根式栽培」。畝の上にワイヤーを吊り、それに這わせるように枝を伸ばします。
一方で「ブッシュヴァイン」と呼ばれる仕立て方があります。これは畝をつくらず、樹が自立するように剪定します。ただし栽培のお手入れは、垣根式栽培にくらべるとずっとコストが高いです。伸びる枝をかき分けるようにして作業をしないといけないので、栽培コストが高くなります。


実は垣根式栽培よりもブッシュヴァインの方が、乾燥に強いことが分かっています。一説には必要な水が1/3になる場合も。ブッシュヴァインは一般に、収量が自然と減る分だけブドウが高品質になると言われますが、環境貢献の点でも有利なのです。
ただしどんなブドウもブッシュヴァインにできるわけではありません。例えばシラーは枝が細くて柔らかく、ブッシュヴァインに仕立てるには向いていないといいます。
南仏品種は乾燥に強い
ローヌからラングドック・ルーション地方にかけての南仏は地中海性気候です。雨は冬にまとめて降り、ブドウの生育期間は乾燥しています。ゆえに健全なブドウが容易に栽培できることから、最もブドウ栽培に適した気候なのかもしれません。たとえばチリや南アフリカの一部、カリフォルニアや南オーストラリア州の一部も地中海性気候です。
そういった気候で生き抜いてきた品種だからでしょうか。グルナッシュやカリニャン、ムールヴェードルなどは、乾燥に強い品種です。水分不足を感じると、気孔を閉じて水分の蒸散を防ぐ性質が強いそうです。
それに対してピノ・ノワールやシャルドネ、メルローなどは乾燥に弱い品種です。適切な灌漑がないと枯れてしまったり、収量が減ってしまうでしょう。
水資源を節約するサスティナブルな栽培
乾燥に強いローヌ品種をブッシュヴァインで栽培するならば、必要な水の量が少なくてすみます。樹の樹齢が上がり根が地中深くまで伸びれば、結構乾燥した地域でも無灌漑(むかんがい)で栽培できるかもしれません。
それは限られた水資源を他に回せるということです。栽培に必要な水を減らすというのも、乾燥地域においては50年後、100年後も同じようにブドウ栽培を続けていくための、重要な取り組みです。
貴重な古木のワインも多い
南仏品種からつくられるワインの中には、非常に高い樹齢のものもあります。その一部はリーズナブルに楽しめるのが、他の品種にはなかなかない魅力です。
古木のワインほど高品質?
樹齢の高いブドウの樹からつくられるワインには、よく「ヴィエイユ・ヴィーニュ Vieille Vignes」の表記があります。よりブドウ・ワインの品質が高いと一般に認められているからです。
その理由の一つが収量です。若い木はたくさんの房をつける分、栄養が分散して風味の凝縮感に欠けがちです。一方で樹齢が高くなると自然と収穫量が減り、その分栄養が集中するのだと説明されます。
また樹齢の高い樹は地中深くに根を伸ばします。地表の猛暑の影響を受けにくく、適切な酸味を保つとも考えられます。
何以上が古木という定義はありません。しかし商業的な面でいうなら、ブドウの樹は20~30年程度で植え替えないと、収穫量が減って非効率だそうです。つまりそれ以上の樹齢になっても樹を残すのは品質追及のため。非効率でも上質なワインをつくるためです。
ヴィエイユ・ヴィーニュについてはこちらの記事で詳しく▼
植え替えられずに残ったゆえに
南アフリカやオーストラリア、カリフォルニアなどで、高い樹齢の南仏品種の畑がちらほらあります。これらは南仏品種だからこそ、植え替えられずに残されたのでしょう。
例えば樹齢80年の樹があったとします。その樹は第2次世界大戦の直後のころ、とても品質追及ができる情勢ではないころに植えたわけです。
その後ヴァラエタルワインの時代が到来しました。チリの手頃なワインを中心に、消費者は気に入った品種名をもとにワインを選びます。その時人気が爆発したのが、いわゆる国際品種のワインです。
その時代に国際品種に植え替えられた畑も多かったでしょう。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンの品種名があれば、より高価にワインを販売できるかもしれません。


国際品種に比べ、南仏品種はそれほど人気がありません。高い値付けもしにくいです。それでも植え替えられずに残ったのには理由があります。単にオーナーが好きな品種だったのかもしれません。乾燥した畑なので国際品種が植えられなかったというのも考えられます。不人気ゆえに放置されていた畑を、近年復活させたという話を聞くこともあります。
例えば先述のマルサンヌは樹齢もうすぐ100年。こんな貴重な樹からつくられるワインが普段飲みできる価格というのは驚きです。
「よく分からないから避ける」はもったいない
ワインを品種名で選ぶのは単純明快。国際品種の中にお気に入りがあるなら、それを買って飲む限りはそうそう失敗がありません。
それに対して南仏品種の中には、あなたが馴染みのない品種も多いでしょう。味わいのイメージが湧きづらく、購入に不安を覚えるかもしれません。
しかし今回ご紹介したように、南仏品種には多くのメリットがあります。暖かい地域への適応から、バランス感に優れた上品な酸味を備え、食事を引き立ててくれます。時に風味に深みのある古木のワインもあります。そして総じてリーズナブルで、場合によっては環境負荷の軽減にもつながります。
「よく知らないから」という理由だけで避けていてはもったいない。まずは今回ご紹介したようなものから、南仏品種の魅力を掘り下げてみてはいかがですか?









