Pick Up 生産者

【PickUp生産者】多様なワインの安心感が魅力!フリードリッヒ・ベッカー醸造所

2021年4月10日

 
ドイツ、南ファルツの生産者フリードリッヒ・ベッカー。
当店人気No.1ドイツワインをつくるベッカーの魅力の一つは、ラインナップの豊富さとハズレのない安心感です。
非常に多くの品種から、様々なレンジのワインをつくり、どれも相応に満足させてくれる。
そんなワインをどんな人が作っているのか、ご紹介していきましょう。
 
 

ベッカーのラインナップ

 
2021年4月25日現在、18種類
フリードリッヒ・ベッカー醸造所が作るワインのラインナップです。多い!
そして輸入元さまが日本に仕入れていても、当店ではまだ扱っていないものがさらに10種類程度あります。
 
当店の中では1つの生産者のワインとしては、あのコノスル26種類に次ぐ第2位。
生産規模が2桁は違うであろうワイナリーに匹敵しうる商品数を誇ります。
 
 
これだけ多くのワインを取り扱うのは、それぞれにしっかり特徴があるから。
味わいに違いがあり、おすすめのポイントがあり、飲んでほしいお客様の嗜好がある。
だからベッカーばかりこんなに多くのアイテムを販売しているのです。
 
これだけ種類が増える理由。
それは白ブドウ品種の豊富さと、ピノ・ノワールのグレードの多さです。
 
 

多種多様なブドウ品種

 
フリードリッヒ・ベッカー醸造所で栽培されている品種、私の調べられる範囲で列挙します。
何種類栽培しているか、先日あったインスタライブでは、現当主のフリッツ氏も把握していませんでした。
 
 
白ブドウから、リースリング、シャルドネ、ジルヴァーナー、ピノ・グリ(グラウアーブルグンダー)、ピノ・ブラン(ヴァイサーブルグンダー)、ゲヴェルツトラミネール、ゴールド・ムスカテラー、ゲルバー・ムスカテラー、ソーヴィニヨン・ブラン。
黒ブドウは、ピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)、ポルトギーザー、ドルンフェルダー、ピノ・ムニエ、カベルネ・ソーヴィニヨン(!)、メルロー(!)、シラー(!!)。
 
もちろんすべてが単一品種としてワインになっているわけではなく、いくつかはブレンドにのみ使われています。
なお、これらは日本未入荷のものも含みます。
 
 

多様な白ワインが楽しめる

 
今回主にご紹介したいベッカーの魅力は、特に白ワインのエントリークラスとその一つ上のクラスにおいて、いろいろな楽しみ方ができるという点です。
当店がただいま取り扱っている9種類、順番にご紹介します。
仕入れている理由を知って頂ければ、闇雲にラインナップを増やしたのではないことがわかって頂けるでしょう。
 
 

デア クライネ フリッツ リースリング

 
 
ベッカーのワインを飲むのが初めて、普段はワインをあまり飲まない、という方にまず飲んで頂くとしたら、2021年3月に入荷したばかりのこのワインで決まり!
ほんのり甘い味わいと親しみやすい風味、そしてドイツワインらしいスッキリとした後味。
 
 
ベッカーのみならず、ワインの入り口として強くおすすめできます。
 
 

フリードリッヒ ベッカー シャルドネ

 
 
シャルドネの白ワインのイメージと言えば、「ヴァニラのような甘い香りとパイナップルやマンゴーみたいな熟したフルーツの香りがして、飲みごたえのある白ワイン」。
カリフォルニアのシャルドネに多いこんなスタイルとは、全く似ても似つかないのが、このベッカーがつくるスタンダードクラスのシャルドネです。
冷涼産地のシャルドネをオーク樽を使わず醸造した、いわば「すっぴん」の味わい。
手ごろな価格帯のシャブリやブルゴーニュ・シャルドネとも少し似ていますが、「リースリング」と間違えても不思議じゃありません。
カラッと暑い一日の終わりに、気分をスッキリさせたいときに飲みたいです!
 
 

ベッカー シャルドネ ミネラル

 
 
一方でこちらのシャルドネは、完全に高級ブルゴーニュを意識したつくり
オークの新樽100%で熟成されており、香りのボリュームから高価なワインであることをうかがわせます。
同じシャルドネでも、買って飲むシチュエーションは全く異なるでしょう。
いいワインが集まりそうなワイン会に、エチケットを隠して持って行きたいワインです。
 
 

ベッカー ムシェルカルク リースリング

 
 
ベッカーの中ではミドルレンジにあたるリースリング。(スタンダードはココス未入荷、ハイレンジは日本未入荷)
「ムシェルカルク」と名付けられた言葉の意味は「貝殻石灰質土壌」。
このファルツ地方をはじめ、フランケン地方、バーデン地方でもみられる土壌です。
そのムシェルカルク土壌の特性がよく表れたリースリング。なんといってもギュッと引き締まったようなタイトな味わいが特徴です。
 
 
別にアルコール度数が高い訳ではなく、味わいは細身なのですが、鋭角的な酸はスケールの大きさを感じさせます。
万人に勧めたくなるワインというよりは、通をうならせたいとき、軽くびっくりさせたいときに開けるワインかなと感じています。
 
 

フリードリッヒ ベッカー シルヴァーナー 1L ボトル

 
 
ジルヴァーナーはドイツのいわば”安ブドウ”。
なかなか高品質なワインはつくりづらい代わりに、多収量品種で、醸造においてそれほど熟成期間を必要としません。
つまりワインは安いけど、安く早くつくれて早くお金になる
 
ワイナリーの黎明期、運転資金に余裕がなく、高品質なワインをつくっても高く売れるだけのブランド価値が育ってない頃。
このジルヴァーナーと、赤ワインのポルトギーザー(ココス未入荷)に助けられたと言います。
その当時の感謝を表しての、1000mlボトル。たくさん飲んでほしいとの思いからです。
 
ジルヴァーナーの香りや味わいはちょっと地味。それが料理の組み合わせの自由度に繋がっています。
特に魚介料理全般。ジルヴァーナーが邪魔することはほとんどありません。
私は「料理との相性なんて考えるの面倒な、普段の晩酌用食中酒」としてイチオシしています。
 
 

ベッカー グリューナー ジルヴァーナー アルテ レーベン

 
 
このワインはスポット商品、定番商品でないため売り切れの際はご了承ください。
「グリューナー・ジルヴァーナー」というのは、普通のジルヴァーナーと同じなのですが、昔の名称。
「グリューナー」じゃない「〇〇ジルヴァーナー」という土着品種もあるそうで、それと区別するためにわざわざつけています。
 
つまりさっきの1Lボトルと同じ品種。ただしこちらは「アルテレーベン」つまりブドウの樹の樹齢が高い。
それだけの違いで全く別物のワインと言っていいほど、スケール感が違います
 
 
1Lボトルのスタンダードは、良く冷やして料理と一緒にがおすすめ。
しかしこちらのアルテレーベンは、熟したフルーツの風味が出てくるくらい高めの温度(12~14℃)くらいがおすすめ
食べ物と合わないわけではないのですが、むしろワインだけで楽しんだ方が真価を感じられる。そう思わせるほどの凝縮感とバランスを持っています。
 
 

ベッカー グラウアー ブルグンダー

 
 
グラウアーブルグンダー、つまりピノ・グリは、リースリングやシャルドネに比べて酸味は穏やかに仕上がってます。
まったりとした厚みのある口当たりは、私は植物性油をつかった料理に好相性だと考えています。
天ぷらだとか、アヒージョだとか。
 
 
また、「さっぱり感」が抑えめなので、「少し肌寒さを感じるな」という季節の変わり目に飲みたいワインです。
 
 

ベッカー カルクメルゲル グラウアーブルグンダー

 
 
先ほどのものと比べて上級レンジの、同じグラウアーブルグンダー。
価格差は大きくはありませんが、これまた開ける機会は全く別のタイミングでしょう。
 
スタンダードのグラウアーブルグンダーは普通の白ワインですが、「カルクメルゲル」はロゼ色の白ワインです。
何を言っているかわからないですよね。写真をご覧ください。
 
 
え?ロゼかオレンジワインじゃないの?
 
ピノ・グリのような「グリ系品種」は、ブドウがピンク色・紫色に熟す「白ブドウ」です。
醸造時、ブドウを桶やタンクの中で破砕したあと、発酵が始まらないような低温でしばらく置いておきます。低温浸漬といいます。
果皮の色が果汁に移ってピンク色になってきたら、プレスで果皮・種と分けてしまい、ジュースのみを発酵させます。
 
果皮・種と一緒に発酵させるオレンジワインとは違い、渋味のもとであるタンニンはほとんど抽出されません。
なのでピンク色をしていますが、一応白ワインという分類なのです。(同じ製法で「ロゼ」として販売する生産者もいます)
 
このワインを飲んでほしい人は、ズバリ上記のウンチクを面白いと思ってくれそうな人
それだけでなく、味わいは意外と正統派に美味しいので、他にもいろいろな方にお勧めできます。
 
 

ベッカー リースリング & ゲヴェルツトラミナー

 
 
試飲会で初めてこのワインを飲んだ時、「この味わいに仕上げるのは、ズルイわ」と思ってしまいました。
 
ゲヴェルツトラミネールはライチやバラを思わせる非常にアロマティックな香りで有名。
しかしその香りが発達するくらい熟度を高めると、酸度が落ちやすい
なので酸味は控えめで、何杯か連続で飲むと飽きてしまうことがあります。
そのため上級者がプライベートでゲヴェルツトラミネールをボトルで飲むことは、あまりなんじゃないでしょうか。
 
しかしこのワインには51%のリースリングがブレンドされています。
アロマティックな香りはそのままに、後味のキレが加わりました。これはグイグイ飲めちゃいます!
初心者も玄人も満足するブレンド。だから「ズルイ!」「やられた!」と感じてすぐ仕入れました。
 
 

それぞれ個性があります!

 
それぞれのワインが明確なキャラクターをもった、違った魅力を備えたワインだと感じて頂けたでしょうか。
だから当店のラインナップがどんどん増えて、倉庫の保管スペースを大いに圧迫しています。
どれもおすすめしたいから!
 
それぞれが品種の特性だけでなく、ベッカーらしさを備えていると感じています。
ただその「ベッカーらしさ」が何かといえば、明確に言葉に表せるものではありません。
それはベッカーの白ワインが、天才肌というよりは秀才・優等生のようにつくられているからです。
作っている本人は、「優等生」っぽい雰囲気では決してないのですが。
 
 
それでは作り手、現当主のフリッツ氏に登場願いましょう。
 
 

フリッツは何つくらせても上手い!

 
ベッカー家の家督を継ぐ者は、代々「フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッカー」の名を引き継ぎます。
そのため彼もお父さんも「フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッカー」さん。
分かりやすくするため、息子の方は「フリッツ」の愛称で呼ばれます。
 
偉大な父を持つと、息子は比べられる宿命にあります。
特にベッカー・シニアのような一代でその名声を築いた人物の後だと、いい仕事をしたくらいじゃ「がっかりだ」の声が聞こえてくるもの。
 
 
しかしフリッツ氏にはその声が聞こえてきません。
ベッカー・シニアはまだお元気で畑に出ておられるのもあるでしょう。しかしワイナリーの仕事の主軸はフリッツ氏に移っています。
日本中、世界中にいる昔からのベッカーファンを満足させているのは、何より彼の腕前の証明でしょう。
 
 
「重要なメールの返信は遅いくせに、おちゃらけた内容のレスポンスはめちゃ早い」
「日本に送られてくるワイン、エチケット不良が多い」
輸入元からはそんな愚痴が聞こえてきますが、醸造家としての技術は確かなようです、よ?
 
 
 

ベッカーパパはすごい!

 
先述の通り、ベッカー・シニアはすごいんです。
この写真だけでも、その雰囲気が伝わってくるかもしれませんが、きちんとご紹介していきましょう。
 
 

ベッカー一族の家系

 
ベッカー家は南ファルツの地で代々続く農家でした。
名家だった証拠に、ベッカー氏のミドルネーム『ヴィルヘルム』は、プロイセンの王より下賜されたものだといいます。
 
 
それは1870年のこと。様々な国家の集合体であった当時のドイツ諸国連合とプロイセンが、ナポレオン3世率いるフランスとの戦争が起こります。
(普仏戦争:1870年7月19日~1871年5月10日)
 
ある時、プロイセンの王であったヴィルヘルム1世が、ベッカー家が所有する宿泊施設に滞在しました。
その際に、『ヴィルヘルム』を名乗ることが許されたのです。
 
ベッカー・シニアは、地元の協同組合の長を務める家の息子として生を受けました。
 
 

シュヴァイゲンの可能性に気づく

 
ベッカー・シニアがブルゴーニュを旅した際、特級畑の「クロ・ド・ヴージョ」を訪れます。
その際に気づきました。「ここの土壌って、ウチの畑とそっくりやん!?」
「ってことは、ウチでもこんな美味いピノ・ノワールつくれるんじゃね!?」
 
 
いや、パパはこんなキャラじゃないですね。
 
そこで地元シュヴァイゲン村でも高品質なピノ・ノワールをつくろうとしますが、反対されてしまいます。
 
 

甘口ワインの全盛期

 
1970年前後、当時は甘口ワインが大ブームとなっていたころです。
ただ糖度の高い白ワインを作れば、少々の品質に関係なく売れていった時代でした。
 
ワインの収穫量は、1ha(100m×100m)の畑から何リットル(通常はhl:ヘクトリットル 100倍)のワインが作られるかで表されます。
例えばブルゴーニュのグラン・クリュの一例として、35hl/ha以下でないといけない、という規定があります。
これはワインボトルに換算すると4700本ほどになります。
 
 
それに対して低価格の甘口ドイツワインは、平気で100hl/haを超える収量で作られていました。
とても土地の個性を反映した上質なワインなどできません。ただ甘いだけの深みのないワインです。
でも、それで売れて儲かっていたのです。
 
 

反対を押し切って独立

 
それでもベッカー・シニアは信念を捨てられませんでした。
この地で世界一エレガントなピノ・ノワールをつくる
そのためには質の高い豊富な酸を含んだブドウを収穫しないといけない。
 
その実現のために、実家から独立。0からのスタートを切りました。
 
 
周囲の貴腐ワインの生産者からは「そんな酸っぱいブドウばかり収穫してどうするんだ?」と笑われていました。
1973年のことです。
 
 

パパのすごさに皆が気づいた

 
独立当初から順風満帆だったわけではありません。
そもそも当時はベッカーが目指したブルゴーニュすら、今では考えられないほどワインは安く取引されていたのです。
高品質につくったワインに、それに見合った値段をつけられるようになるには、時間がかかります。
 
それでも次第にその品質はみなを納得させていきます。
 
ドイツで最も権威あるワイン雑誌『ゴーミヨ』
2001年~2009年までの8年間、最優秀赤ワイン賞を独占してしまったのです。
2006年には「ライジングスター賞」を受賞し、最大5つのブドウの房で表されるゴーミヨ誌の評価は、現在4つ房+。近い将来、5つ房の仲間入りを果たすかもしれません。
 
 

キツネのエチケットの由来

 
ベッカーのワインの象徴である、ブドウの樹とキツネのエチケット。
この由来はイソップ童話の「酸っぱいブドウとキツネ」のお話です。
 

Wikipediaより掲載

 
あるときキツネは、美味しそうに実ったブドウを見つけます。
しかしブドウは高い枝に垂れ下がっており、キツネは背伸びをしても飛び跳ねても届きません。
それゆえ諦めたと思われたくないキツネは、「あのブドウは酸っぱいからいらないや」と負け惜しみを言いました。

 
最初は「そんな酸っぱいブドウばかりつくって」と笑われたベッカーのワイン。
しかしその酸っぱいブドウからつくるピノ・ノワールで、ベッカーは世界が認めるワインとなりました
その経緯を皮肉って、このエチケットを採用したのです。
 
 

ベッカーパパの人柄

 
ベッカー・シニアは典型的な職人気質。
ドイツ語しかしゃべらず、寡黙。
そんな渋いおじさんが、先代フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッカーさんです。
 
輸入元の山野社長も、取引を始めた当初はなかなか仲良くなれず、苦労したとのこと。
 
 
それが他のスタッフも含めて何度も何度も訪問して、今ではこの表情。
特にお気に入りのグリューナー・ジルヴァーナーを手に、楽しそうです。
 
 

ベッカーワインの魅力

 
ベッカーワインの魅力のうち、重要なものの一つは、特に白ワインのバリエーションの豊かさです。
ただ単に様々な品種を栽培しているだけでなく、それぞれの個性が明確で、飲みたい場面がそれぞれ異なる
だからこそ、たくさん作られている白ワインを、片っ端から順に飲んでいく価値がある
 
そしてその中に一貫して”ベッカーらしさ”を感じられる
 
何を飲んでも美味しいその品質の高さは、フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッカー親子の腕前によるものでした。
一代でピノ・ノワールを中心に名声を築き上げたベッカーパパと、その名声を見事に引き継ぎつつあるフリッツ。
今度キツネのラベルのワインを飲むときは、ぜひこの親子の顔を思い浮かべながら飲んでみてください。
 
 
さて、実は今回語ることができなかった、ベッカーの魅力があります。
それはピノ・ノワールのラインナップの豊富さです。
3000円以下から5万円オーバーまで。幅の広いピノ・ノワールの魅力については、別の機会にご紹介すると致しましょう。
 
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




YouTubeバナー

-Pick Up 生産者
-, , ,