ワインのできるところ

五大シャトーとは メドックを代表する61シャトー

2021年2月5日

 
ボルドー五大シャトー』という言葉を聞いたことがありますか?
「ボルドーは銘醸地で高級ワインの産地」そのイメージをけん引してきた5つの生産者をまとめてそう呼びます。
21世紀になった今も「高級ワインを安定的に供給する」という点において、右に出る生産者は現れません。
ボルドー五大シャトーを筆頭とした『格付けシャトー』と、五大シャトーの特異性についてご紹介します。
 
 

五大シャトー一覧

 
まずシャトーというのは城のこと。
ボルドーでは城が所有するブドウ畑でワインが作られていたため、「シャトー〇〇」という名前の生産者がほとんどです。
五大シャトーと呼ばれるのは次の5つのシャトーです。
 
人気テレビ番組「芸能人格付けチェック」に出題される高級ワインとして、これらのうちいくつかは過去に登場しています。
 
 

シャトー・ラフィット・ロートシルト

ポイヤック村
 
 

シャトー・ラトゥール

ポイヤック村
 
 

シャトー・マルゴー

マルゴー村
 
 

シャトー・ムートン・ロートシルト

ポイヤック村
 
 

シャトー・オー・ブリオン

ペサック・レオニャン村
 
 
それぞれのシャトーの特徴については、ネット上にいくらでも情報が転がっているので、ここではあえて述べません。
 
どうしてこの5つのシャトーだけが特別なのでしょうか。
それはボルドー、メドック地区の格付けにおいて、1級シャトーと定められていることです。
 
 

ボルドー格付けシャトーとは

 
ボルドーのメドック地区において、61のシャトーが1級~5級に格付けされています
この格付けが非常に重要な意味を持つ理由。
それは「とある評論家が分類した」とか「生産者団体が定めた」とかではなく、フランスのワイン法によって定められているということ。
それからその格付けが1855年から160年余りにわたって続くことです。
 
 

1855年にナポレオンⅢ世が定めた

 
1855年、パリで初めての万国博覧会が開催されることになりました。
 
 
500万人もの来場者が訪れる万博。諸外国から来る来場者は土産物を購入したいだろうし、フランスとしても外貨を獲得したい。
そこで展示されるボルドーワインを購入するための指標、ワインガイドとして、メドック地区のワインについてランク付け、格付けを行ったのです。
 
 

取引価格を参考に

 
ワインを格付けする際に何を指標とするか。
ナポレオンの命を受けてその格付けを行った者は、至極単純にワインの取引相場価格をもとにしました。
「高価に取引されるワイン = 高品質なワイン」であるとしたのです。
 
 
価格に応じて5つのランクに分類されたので、来場者は自身の予算に応じてワインのクラスを絞り込めたのです。
 
 
$格付けはシャトーに対して
 
当時のボルドーは、1つの生産者・シャトーがほぼ1銘柄のみをつくっていました。
現代のブルゴーニュみたいに、一人の生産者が何十ものワインをつくってはいません。
なのでその格付けは畑にではなくシャトーに対して与えられました。
 
 

当時の格付けは不変のまま

 
この1855年に定められた格付けは、2つの例外とシャトーの統合・分割を除いては160年余り変わっていません。
そして格付けシャトーは現代においても、この地区の高級ワインであり続けています。
メドック地区において格付けシャトーと同等以上の価格で取引される格付け外シャトーは数えるほどしかありません。
 
生産者からしても「どうして変える必要があるんだい?だれが格付けシャトーに入りたがっているというんだ?」という認識だといいます。
 
 

格付けシャトー一覧

 
格付けシャトーは一部の例外を除いて、オー・メドック地区のポイヤック村、サン・ジュリアン村、サン・テステフ村、マルゴー村の4つにあります。
 
その一覧については様々な文献やWebサイトに載っていますが、ドラジェ様のものがワインの画像も入っていてわかりやすいです
 
 
ワインの資格として有名な「ソムリエ」および「ワインエキスパート」の受験対策は、このメドック61シャトーを丸暗記するところからスタートと言っても過言ではないでしょう。
 
 

五大シャトーの特異性

 
高級ワインは世界にたくさんあります。
五大シャトーの相場、若いヴィンテージで6万~10万円くらいというのは、ブルゴーニュの準一流生産者がつくる有名グラン・クリュくらい。
世界一高価な『ロマネ・コンティ』を引き合いに出さずとも、シャンパーニュにもイタリアにもドイツにもナパ・ヴァレーにもオーストラリアにもニュージーランドにも、五大シャトーに匹敵する価格で取引されるワインはあります。
 
しかしそれでも五大シャトーが特別な理由。
それはこの価格の高級ワインを何十万本と作り続けていることです。
 
 

高級ワインをたくさんつくるのは難しい

 
極少量の最高級ワインをつくることは、資金力さえあればできなくはないでしょう。
ナパ・ヴァレーで有名醸造家と契約し、銘醸畑のブドウを購入すれば、パーカーポイント95点以上も十分狙えます。
数十億円規模の投資ができるなら、決して夢物語ではありません。
 
しかしそれは1000本単位の生産だからできること
五大シャトーのように数十万本をつくるだけの高品質なブドウも用意できなければ、それを売りさばけるだけの顧客も見込めません。
 
 
品質と人気に対して供給が少なければ、価格を引き上げることは簡単です。
しかし10万円のワインをそれだけの数購入してもらうには、確かなブランド力が必須なのです。
ワインは高いものをたくさん作ることは困難なのです。
 
 

五大シャトーの栽培面積と生産量

 
ボルドーのシャトーに非常に詳しいブログ「ろくでなしチャンのブログ」を参考に、五大シャトーの畑面積と年間の生産本数を記載します。
 
 

シャトー・ラフィット・ロートシルト

栽培面積:100ha
生産本数:18~30万本
 

シャトー・ラトゥール

栽培面積:48ha
生産本数:17.5万本
 

シャトー・マルゴー

栽培面積:82ha
生産本数:20万本
 

シャトー・ムートン・ロートシルト

栽培面積:75ha
生産本数:30万本
 

シャトー・オー・ブリオン

栽培面積:48.35ha
生産本数:17万本
 
 

生産本数が多いのは何がすごい?

 
五大シャトーのワインはこれだけの数が生産されているため、「希少で手に入らない」ということはありません。
ヴィンテージにこだわらなければいつでも手に入ります。
今の時代、スマホで検索してポチっとするだけです。(もちろん資金力があればですが)
 
つまりこの価格は希少価値によるものではないのです。
その味わいに対しての価格、それがやがてブランドとなり、この価格を支払うにふさわしいブランドだと皆が認めているからこそ、潤沢にものがありながら高価に取引されるのです。
 
 

みんなが知っていて飲んだことのあるワイン

 
高価であり、高価な理由に国家的な裏付けがあり、生産本数が多い。
だからこそ「みんなが知っているワイン」となり得ます。
それも「ある程度の人が口にしたことのある、みんな知っているワイン」です。
 
『ロマネ・コンティ』もみんなが耳にしたことのあるワインでしょうが、あまりに希少で高価ゆえに(年産6000本ほど)「知っているけど飲んだことがない」ワインとなってしまっているのと対照的です。
 
 

中国では通貨扱い!?

 
これは人から聞きかじったことなので、話半分に読んでください。
大阪人的に言う「知らんけど」ってやつです。
 
中国では五大シャトーのワインが通貨として扱われていると言います。
 
会社の大事な取引先の人に、便宜を図ってもらうべくお金を渡せば、当然贈収賄です。
そこでワインを贈るのです。
「〇〇さんにラフィットを何本もらった/贈った」と扱われるのです。
 
私の知人に中国人の方がいて、そのおばさんは銀行努めだといいます。
家のワインセラーには五大シャトーをはじめとした高級ワインがどっさりあり、それはすべて贈り物用だそうです。
 
 
実際に五大シャトーにとっても中国は大切なお客様。
なのでラフィットの2008年には、中国で縁起のいい数字とされている「八」が感じで刻印されています。
 
 
それだけ誰もが知って価値を認識しているワインだということです。
 
 

そんなワイナリーは五大シャトーだけ?

 
5万円を超えるワインを数十万本単位でつくれるのは、ほぼ五大シャトーだけと言ってもいいでしょう。
 
ブルゴーニュではまずありえません。
高価に取引されるグラン・クリュは、面積が狭いか分割所有されているからです。
 
シャンパーニュでは、たくさん作られているシャンパンはそれほど高価ではありませんし、高価なプレステージキュベは何十万本も作られてはいません。
 
少し前までは本当に五大シャトーのみでした。
 
 
近年はそこに「オーパス・ワン」が加わりました。
 
オーパス・ワンは最も有名なアメリカワイン。
オーパス・ワンには正規輸入元というのは存在せず、どの輸入元も購入できるのですが、昔からプロモーションに尽力されてきたのはエノテカさんです。
 
五大シャトーと肩を並べるまでに高騰してきました。
 
オーパス・ワンの生産本数は、英語版Wikipediaによれば年間30万本
 
 
五大シャトーは高級ワインを量産して販売できる。
その点でボルドーのみならず世界のワイン生産者の中でも頂点に君臨する存在です。
 
 

五大シャトーは飲むべき?

 
ワイン好きであるならば、経験値として五大シャトーは飲んでおいて損はないと私は思います。
 
ただし、五大シャトーはいずれも熟成を全的に作られています。
それも10年20年ではなく、なんなら100年後に飲んでも美味しいものを目指している感があります。
 
もちろん最新ヴィンテージでもそのスケール感は感じさせてくれますが、どうせ高い金額払うなら10年以上前のものを圧倒的におすすめします。
 
100年以上前から高級ワインだけをつくってきた。
質と量を天秤にかけて量の方を取る選択肢が常になかった。
その重みがワインにあらわれていることでしょう。
 
 

割と口にする機会はある?

 
1本買って飲むのはなかなか難しいでしょう。
しかしワインの催事がデパートで開催されるときなど(大阪の阪神ワイン祭みたいな)のイベントでは、20ml、30mlといったごく少量から有料試飲する機会があったりします。
 
 
エノマティックというワインの量り売り自動販売機のようなマシンを置いているお店では、お店によっては五大シャトーを入れていることもあります。
関東の事情には明るくないのですが、大阪ではTAKAMURAさんが一番でしょう。
 
(筆者確認時点では入っていませんでした)
 
2,3口分の少量で2000円3000円という価格は、冷静になってみればとんでもない価格。
しかし千円札数枚で世界最高峰を口にできるとなると、ワイン愛好家の財布のひもはいつのまにか緩んでいるのです。
 
 

バースデーヴィンテージに

 
五大シャトーは長く熟成させることを前提につくられるので、保管さえよければ40年後、50年後も美味しく飲めます
 
自分のバースデーヴィンテージのワインを飲むのは、ワイン愛好家としてテンションが上がることのひとつでしょう。
もともとの生産量が多い五大シャトーなら、結構前のものでも根気よく探せばたいてい手に入れることができます。
 
 
当然年月を経るほどワインは希少になり価格も上がっていきます。
しかし自分の収入も上がっていく予定なら、焦って手に入れなくてもいいでしょう。
 
私は生まれ年のシャトー・ムートン・ロートシルトはいつか手に入れると仕事に励んでいます。
 
 

ココスは五大シャトーを扱わないの?

 
当店は五大シャトーの取り扱いに積極的ではありません。
それは当店で買って頂くメリットが提示できないからです。
 
当店はあくまで零細企業です。
多くのお店で扱っているのと同じワインを扱って、最も手ごろな価格を提示することはなかなかできません。
温度管理された倉庫で保管してきちんと発送するなんて、ワインを扱う上では当たり前のこと。
それ以上のこととなると、みんなが知っているワインなら、あとは価格を安くするしか差別化できないのです。
 
値ごろ感のあるバックヴィンテージが見つかれば仕入れるかもしれませんが、「ワインショップなら五大シャトーは揃えとかないと」とは全く考えておりません。
 
なので五大シャトーが飲みたければ、どうぞ他のワインショップでご購入下さい。
 
当店はあまり知られていないけど本当に価値のあるワインを紹介して、それで喜んで頂くことに、存在価値を見出いしたいと思います。それが小さなセレクトショップの生き残る道だと考えています。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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