最近じわじわと人気を増しているポルトガルワイン『ヴィーニョ・ヴェルデ』をご存知ですか?
知っている人は、暑くなる季節になると飲みたくなってくる、その爽やかさが魅力です。
近年はそれだけではありません。少しハイグレードなヴィーニョ・ヴェルデも日本に入ってくるようになりました。
じめっと暑い日本の夏を乗り切るのに、ヴィーニョ・ヴェルデは知って得するワインです!
ポルトガルワイン一年生
ポルトガルのワインは、馴染みのない土着品種をブレンドしてつくるため、あまり品種の特徴でワインを選ぶということができません。
かといって有名な産地も少なく、地域で説明するのも困難です。
実際、「私、ポルトガルワインに詳しいよ」というソムリエさんもあまりいないでしょう。
その選ぶ難しさを乗り越えて飲む価値が、ポルトガルワインには確かにあります。端的に言って、安くて美味しいんです。
とっつきにくいポルトガルワインをちょっとずつ学んでいく特集シリーズを『ポルトガルワイン一年生』と題しました。
その初回として「ポルトガルワインと言えばまずはこれでしょ!」と言える白ワイン、『ヴィーニョ・ヴェルデ』をご紹介します。
ヴィーニョ・ヴェルデとは
ヴィーニョ・ヴェルデはポルトガル北部のワイン産地名であり、そこでつくられるワインの名前です。
ヴィーニョ・ヴェルデに使われるブドウ品種はアルバリーニョの他、ローレイロ、アリン、アザール、トラジャドゥーラ、パデイロ、エスパデイロなど。認可されている品種は45種類もあります。
どれも土着品種で、聞いたことのない方がほとんどでしょう。これらの品種がブレンドされているのが通常です。品種は基本、気にする必要なし!
赤・白・スパークリング・ロゼいろいろつくられますが、微発泡タイプの白ワインが多いのも特徴です。
ヴィーニョ・ヴェルデの味わい
典型的なタイプである、白の微発泡ワインであるヴィーニョ・ヴェルデ。
その味わいを言葉にするなら次の通りです。
◎アロマはシトラス系や白い花を思わせるものだが、さほど強くない
◎フレッシュな酸味のある軽い口当たり
◎スパークリングワインとは言えない程度のやわらかなプチプチ感
◎ほんのり甘味を感じるものが多い
◎少し低いアルコール度数ゆえ、スルスル飲めてしまう
こういう味わいゆえに、数年間熟成させて飲むものではありません。
瓶詰したらすぐに飲むのが基本です。
「緑のワイン」と呼ばれる所以
「ヴィーニョ・ヴェルデ」を直訳するならば、「緑のワイン」。
この「緑」には「若々しい」「フレッシュな」という意味が込められています。
植生豊かで、深い緑が一面に広がるこの地域。
フレッシュで軽やかな、若々しいうちに楽しむワイン。
そんな意味合いを込めて「ヴィーニョ・ヴェルデ」と名付けられた。
名前の所以には諸説あるそうですが、上記がヴィーニョ・ヴェルデ協会の公式の見解だそうです。
かつては地元消費用ワイン
ヴィーニョ・ヴェルデは、基本的には地元消費用のワイン。
熟成させずにポルトガル国内ですぐに消費されていました。
日本に初めて輸入されたのは2005年。
愛知県で開催された「愛・地球博」において、ポルトガルのブースでお披露目されたのが最初だそうです。
現地で消費されているものは、まさに日常消費用の安いヴィーニョ・ヴェルデが中心。
しかしわざわざ日本までコストをかけて運ぶのですから、当然それなりに良いヴィーニョ・ヴェルデを選びます。
果たして、日本に輸入されてきたものは価格に比して美味しいものが多く、ヴィーニョ・ヴェルデの人気は一気に高まっていったのでした。
大量生産ゆえに・・・
ヴィーニョ・ヴェルデは地元消費用に低価格で取引されるものが中心でした。
安くつくるためには大量に生産する必要があり、ブドウの樹1本からとれるブドウの量を増やす必要があります。
その過剰な収量ゆえにブドウが完熟しにくく、酸が高く糖度が低い状態で収穫しているものも中にはあります。
逆に適切に収穫量を抑えた栽培をするなら、ヴィーニョ・ヴェルデでもブドウは十分に熟します。
そうして手間をかけてつくられたヴィーニョ・ヴェルデは、アルコール度数も低くはなく、熟成させても美味しいワインが出来上がります。
ガブ飲み系ヴィーニョ・ヴェルデ
こと低価格帯のヴィーニョ・ヴェルデにおいては、アルコールが低く(11.5%以下という規定)少し甘さを感じる微発泡のタイプが大半を占めます。
未熟なブドウを使うので、酸味が高い。その高い酸とバランスをとるべく、甘味を残すのです。
質のそう高くはないブドウを最大限美味しいワインにするべく、このスタイルに行きついたのでしょう。
しかしながら、1000円前後の手ごろな価格を考えると、十分楽しめる味わいです。
畏まって飲むワインでは決してありません。
ビールやチューハイ代わりに。何も考えずにグビグビ飲みたいときにピッタリです!
しっかり辛口がよければこちら!
ワンランク上のヴィーニョ・ヴェルデ
上級クラスのヴィーニョ・ヴェルデは、低価格帯のものとはここが違います。
・収量制限により完熟したブドウを使うこと
・故に甘味や炭酸などを付与しなくとも、バランスのとれたワインが出来上がること。
・アルバリーニョ種を使うことが多いこと
例えばこちらのワイン。
完熟したブドウからつくる辛口のため、アルコール度数がヴィーニョ・ヴェルデの規定値を超えていて、正式には名乗ることができません。
ただ、やはり味わいの方向性はヴィーニョ・ヴェルデ。泡や甘味を無くしてキリっとドライにしたイメージです。
アルバリーニョ種
スペインのリアスバイシャス地方でも栽培されるアルバリーニョ種。
湿気の多い環境でも病気になりにくく、力強い酸味が特徴です。
ブドウの粒が小さいため、凝縮感のあるワインになりやすく、シトラス系の風味や桃、バナナなどの香りを持ちます。
アルバリーニョ種のみでつくるヴィーニョ・ヴェルデは、「ヴィーニョ・ヴェルデ・アルバリーニョ」というブランド名となります。
通常のヴィーニョ・ヴェルデは、アルコール度数が最高11.5%という規定があります。
それに対してヴィーニョ・ヴェルデ・アルバリーニョは、アルコール度数が最低11.5%です。
このアルコール度数の違いが、カジュアルに楽しむがぶ飲みの雰囲気から、きちんとしたレストランで出てくるワインのような雰囲気に変えています。
メジャーなブドウに例えるなら、ソーヴィニヨン・ブランが近いでしょうか。
ソーヴィニヨン・ブランの青い風味を無くして、桃やはちみつなどの風味を加えたものが、アルバリーニョのイメージです。
ステンレスタンクのみで醸造した、キリっとしたシャブリにも近いところがあります。
“高級”ヴィーニョ・ヴェルデは、本当に高級?
その高級・上級なヴィーニョ・ヴェルデ・アルバリーニョにしても、2000円台半ばです。
ブルゴーニュワインの最低クラスの価格です。
そう、ヴィーニョ・ヴェルデは、コスパが高い!
これはポルトガルがEUの中でも経済的に弱い国で、人件費が安いこと。
ボジョレー・ヌーヴォーのように出来てすぐ消費されるため、資金回転率がいいこと。
それからヴィーニョ・ヴェルデの美味しさに気づいている人が少なく、争奪戦にならないからでしょう。
今年の夏こそ始めよう!ヴィーニョ・ヴェルデ
ヴィーニョ・ヴェルデのあるミーニョ地方は、日本と同じく海産物を多く消費する地域です。
そのスッキリとした風味は、シーフードをつかった料理とも相性抜群!
海でのレジャーが楽しくなる、夏のシーズンにピッタリです。
暑い時期こそ美味いヴィーニョ・ヴェルデ。今年から夏の風物詩にしましょう。