自宅に友人を招くから料理とワインでもてなしたい。さてどのように選びましょう?
好みや経験により美味しいと感じるワインは異なるので、100%の正解などありません。
相手のこととワインの役割を考えて選ぶその気持ちこそ、あなたの全力のおもてなし。
友人との楽しい時間により没頭できるような、ホームパーティーのおもてなしワインをご紹介します。
自宅飲み|人数と本数の想定
友人をもてなすワインを選ぶ上でまず前提条件を決めます。
人数が異なれば本数が変わりますし、本数が変われば選ぶべきワインも変わるからです。
今回は1人暮らしないし夫婦で暮らすあなたが、1人か2人の友人を招いて3、4人で食事を楽しむという想定をします。
時間は夜。自宅にて手料理でもてなすものとしましょう。
用意するワインは2本であるとします。
個人的に3,4人で2本は少ないなと感じるのですが、皆様にとっては375ml~500mlという量はいかがでしょうか。
ワイン以外のお酒を飲む場合もあるでしょうし、翌日のために早めにお開きするかもしれません。
本記事では簡潔化のために2本で考えたいと思います。
他人のワインの好みはわからないもの
同席するのが初めて家に招く友人であり、しかもワインの好みがよくわかっているなら、相手の好きなワインを用意すれば大いに喜んでもらえるでしょう。でもそんな想定はほぼ不可能です。
自身のワインの好みを明確に言葉にできる人は少ないでしょう。まして他人のワインの好みを把握するのは困難です。
長年にわたり何度も一緒にワインを飲む機会がある人で、ようやくなんとなくわかってくるようなものです。
それだけ一緒の食事を何度も重ねた友人だと、好みのワインに寄せすぎると同じようなものの繰り返しになりかねません。
よって友人の好みがわかってもわからなくても、そんなに深く考えすぎなくていいでしょう。
もちろん苦手とするワインのタイプがわかるなら、避けるに越したことはありません。
2本のワインそれぞれの役割とタイプ
ただ単にあなたが好きなワインを2本、思いついた順番に開ける。
1本目のワインと2本目のワインそれぞれに求められる味わいを考慮し、好みに合わせて選ぶ。
友人との食事の場にてどちらが満足度が高くなるかは明白でしょう。
では1本目と2本目の役割とは何でしょうか。
大前提 開けてすぐ美味しいこと
飲み頃であり開けてすぐその魅力を発揮してくれること。1本目も2本目もこれが大前提です。
グラスの中で風味を大きく変化させるワインも面白いです。でも抜栓2時間後にピークになるようなワインを飲むのはこのシーンじゃない。1本のワインをグラス2杯程度ずつ飲むなら、風味が変化する前に飲み終わってしまいます。
おおよそ4000円以下のワインについては、あまり飲み頃を気にする必要はありません。買った時が飲み頃です。
それ以上の価格帯について。アメリカワインのほとんどは若くても魅力を発揮してくれます。市場がそういう嗜好だからです。
フランスやイタリアのある程度高いワインで、ヴィンテージが現在の2~5年前のもの飲むなら気を付けましょう。その中にも今飲んで美味しいものも多いのですが、渋味や酸味が強すぎて顔をしかめるものも中にはあります。
マーカス・モリトールのワインなどはその典型ですね。
※ワインアドヴォケイトの飲み頃予想は2030年から
フードペアリングは考えすぎない方がいい
ワインを選ぶ方法の一つとして、つくる予定の料理と相性のいいものから選ぶという方法は人気です。しかし今回のような小規模な食事会では、フードペアリングはちょっと考える程度に留めることをおすすめします。
用意するワイン2本に対して、作る料理の品数はおそらくもっと多いであろうからです。
「この料理とは相性がいいけど、この料理には合わないだろう」
そんな風に考え始めるとキリがなく、悩んだ挙句に個性が控えめで無難なワインに落ち着くかもしれません。それはそれで悪くはないのですが、ワイン単体で美味しいものを選んだ方が「美味しかった」と記憶に残りやすいはずです。
「用意する料理のどれかと相性よければラッキー」
それくらい軽い気持ちで選ぶといいでしょう。相性悪かったら、料理の後に水を飲んでからワインを飲めばいいのですから。
セオリーとしてのワインを飲む順番
何本ものワインを飲むとき、その順番には目安となるセオリーがあります。
スパークリング ⇒ 白ワイン ⇒ロゼワイン ⇒ 赤ワイン ⇒ 甘口ワイン
白ワイン・赤ワインの中でも、口当たりが軽いものからどっしり力強いもの、ヴィンテージの若いものから古いものという順番が基本です。
濃い味付けの食べ物・飲み物のあとに薄い味付けのものを摂ると、印象が薄くなりますよね。それを防ぐために軽く繊細なものから力強いものへと並べるのです。
だから手頃な赤ワインと高価な白ワインの2本なら、白ワインを後にした方がいい場合もあります。
あくまで基本です。変えていけないというものではなく、「こだわりがないならこれに従っておけば無難」ととらえましょう。
1本目のワインに求められる役割
1本目のワインは食前酒としての役割と、軽めの前菜系お食事の邪魔をしないことが求められます。
大切な友人と積もる話があるなら、まずは乾杯しておしゃべりに興じたいもの。料理を食べ始める前にワインだけで楽しむアペリティフタイムがあってもいいでしょう。
そうなると料理を必要とせず単体で楽しめる味わいのワインがいい。
ワインを4、5本飲む予定なら、最初の1本は食前酒として空ける想定もいいでしょう。でも1本で食事の半ばまで通すなら、ある程度料理とのバランスも考えたいところ。
メニューが焼肉でもない限り、最初の料理からガッツリ味の濃い肉料理ということは少ない。最初は盛り置きできる冷菜や野菜料理、軽いものからスタートすることが多いはず。
そうなるとどっしり重たく力強い味わいのワインや、いきなり血糖値を上げてしまう甘口ワインは避けるべきです。
単体で楽しみやすいワインとは
人によって好みはあるでしょうが、次のようなワインは料理やアテなしでも楽しみやすいと考えます。
- 酸味や渋味が突出していない
- 樽熟成や品種特性によりコクがあってなめらか
- ほのかな甘みがある
食前酒として楽しまれるワインの代表はシャンパンです。シャンパンには通常、炭酸と味わいのバランスをとるため少し甘みが加えられています。
アルコール度数は低めなのですが、その甘みがボリューム感となって上記の条件を満たすのです。
2本目のワインに求められる条件とは
2本目のワインは食事の中盤、皆がほどよく酔ってきた状態で飲み始めます。
その状態で「お!このワインも美味しい!」と言ってもらうためには、風味や味わいにある程度の「派手さ」が欲しいところ。
「派手さ」とは抽象的な表現ですのでもう少しかみ砕くと、次のような特徴が挙げられます。
- 一口目からそのワインの味わいを理解しやすい
- 樽熟成に由来するリッチな香り
- 凝縮度が高くハッキリした味わい
繊細なワイン、抑制された風味、料理の邪魔をしない味わいなどは不適というわけです。
もう一つ条件を挙げるとすれば、温度が上がっても美味しいことです。
程よく酔いが回ってお腹もふくれてくれば、飲むペースはゆっくりとなります。グラスの中でワインの温度は上がり室温に近づきます。それでも大きくバランスが崩れないものがいい。
後半に赤ワインを飲むのは、白ワインよりは高い温度に適しているという理由も挙げられるでしょう。
友人の属性で分類する
ワインのことだけ考えていては、相手に心の底から喜んでもらうことはできません。
相手のことも考えないと。
おもてなしワインを用意するにあたり、2本であるなら「口に合わないから別のものを飲む」ということは難しい。ことさらに好みにあうものは狙わなくていいけど、好みから大きく外れすぎるものは避けたいのです。
冒頭にて他人の好みはわからない場合が多く、あまり考えなくていいと述べました。しかし飲用習慣などから推測できることはたくさんあります。
家に招くような友人なら、一緒にお酒を飲んだことはたくさんあるでしょう。それをヒントに考えてみましょう。
ワインの経験値によって珍しさ度合いを調整する
招く友人がワインは好きだけどそれほど本格的に飲んではいないなら、有名なブドウ品種・ある程度メジャーな産地の中から選ぶといいでしょう。
一方でワインに詳しくていろいろなものを飲んでおられる方なら、ベタなのを避けてちょっと珍しいものを用意した方が喜ばれるはずです。
人は慣れ親しんだ味わいに近い物を美味しいと感じる傾向があります。あまりに突飛なものは味わいを受け止めきれない、と言った方がいいかもしれません。
訓練されたコーヒーの審査員でも、他国に比べて自国のコーヒーを高く評価しすぎる傾向があると聞いたことがあります。
ワインは飲むけどいろいろなお酒の一つであり、たまにレストランなどで飲む程度。そんな友人の場合は、ベタなタイプの方が無難。その方がこれまで飲んできたであろうワインの中に、同じ品種で似た味わいのものが必ずあるはずです。
スパークリングワインならシャルドネかピノ・ノワール主体。白ワインならシャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、リースリング。赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、シラー、メルローなど。もう少し広げてもいいでしょうが、物珍しさはいらない。
それぞれに有名な産地の5番目以内くらいから選ぶことをおすすめします。
一方で詳しい方なら、同じタイプのもっと高価なワインもいろいろ飲んだことがあるはず。そういう方はきっと好奇心旺盛で、初めての味わいを歓迎すると考えます。
もちろんワインのクオリティーが十分高いことが前提で、ちょっと珍しいものを選ぶといいでしょう。品種として珍しいものもいいですが、あなたが選ぶのが難しいはず。品種はそう珍しくなくても産地が珍しいというものを狙ってみてはどうでしょうか。
ワインの価格はアドバイスできません
あなたと友人の懐具合は私にはわかりませんので、いくらくらいのワインが適切かを述べることはできません。
ヒントとしては、その友人と外食する場合の客単価でしょう。
その人とレストランでワインを飲んで食事をするなら、どれくらいの予算でちょうどいいと考えるか。なんとなくのイメージはあるはずです。
例えばそれが6000円なら、きっとそのお店のボトルワインは4000~5000円くらいだと推測します。となれば小売りでは2000~3000円も出さば同等グレードのワインが手に入ります。
しかしワインはやっぱりレストランで飲んだ方が美味しく感じるもの。それを鑑みて3000~4000円程度のワインを買えば、同じくらいの味わいを期待していいでしょう。
2本1組でおすすめするおもてなしワイン
ワインの価格帯とベタなもの/珍しいものという2つの軸で分類して、おもてなしワインを2本1組でご紹介します。
2本のワインはそれぞれの役割で独立して選んでおります。なのでもし条件に当てはまるワインをご存知なら、片方だけ差し替えていただいても問題はありません。
1本約4000円のベタで無難なおもてなしワイン
正統派なスパークリングワインと親しみやすいピノ・ノワールのコンビをご提案します。
10年前なら「南アフリカに美味しいスパークリングワインなんてあるの?」という人も多かったでしょうが、それも昔の話。当たり前に美味しいワインがたくさんあります。
かつてのイメージを変えてきた立役者の1本がこの「グラハムベック」。特にミレジメのブラン・ド・ブランが人気です。
昔に比べてずいぶん値上がりしてしまったのが悲しいところですが、むしろ今ようやく味に相応しい価格になったと言っていいはずです。
それほどワインに詳しくない友人となら、小難しさがないながら豪華な味わいのこのピノ・ノワール。
昔からのブルゴーニュワイン通の人には「風味の甘さがイヤ」と言われるかもしれませんが、そんなごく一部の人以外には喜んでもらえるでしょう。
1本約4000円の意外性があるおもてなしワイン
昔からいろいろなワインを飲んできた方だからこそ、昔はなかったワインでもてなしましょう。
ニューヨーク州のワインは近年になって日本に紹介され始めたもの。専門のインポーターも何社かあります。
ニューヨークというとマンハッタンのイメージが強いでしょうが、都心部ばかりではありません。カナダ国境の五大湖周辺までがニューヨーク州であり、田舎な地域も広いのです。
マンハッタン周辺に住む人をターゲットに、ワインツーリズムにも力を入れている地域です。
リースリングの産地としてニューヨーク州はまだ微々たるもの。取り扱っているワインショップの少ないので、飲んだことのないワイン通も多いはずです。
ドイツに比べると凝縮感や酸味は穏やかな点で、食前酒に向いているでしょう。
次の赤ワインの生産者はかなり有名ですが、このワインの発売自体はごく最近。
カリフォルニアのレッド・ブレンドは「手頃なのに濃厚で親しみやすい」という味わいのものが多いです。
しかしこのワインは全く逆のエレガント路線であり、フランスワイン好きも驚きとともに気に入るはずです。
クロ・デュ・ヴァルについてはこちらの記事で詳しく
1本約8000円のベタで無難なおもてなしワイン
年齢を重ねるほど「友人の家で飲む」という機会は少なくなっていくもの。
そんな時くらい奮発していいワインが飲みたい。でも高いからには高いなりの味わいを感じさせてほしい。
この2本ならその高い期待に大いに応えてくれるでしょう。
ニューワールドの樽熟成したシャルドネで5000円を超えると、高級感を感じるものがほとんどです。なにせ2000円台3000円台に山ほどワインがありますから。味わいに誰もが納得する差が出てないと、なかなか販売は伸びないでしょう。
カリフォルニア産にもたくさんいい銘柄があるので迷いますが、この1本を選んだ決め手はアルコール13%と低めであること。序盤の料理を圧倒しすぎない上品な味わいを期待しました。
セブンフラッグスが十分に風味のボリュームを持つので、2本目のワインはそれを上回る必要があります。
濃厚な赤ワインは渋味の強さが伴うこともありますが、そこは「大衆にウケる味」をつくるのが上手なジョエル・ゴット。豪華な味わいながら渋味を強く感じさせない滑らかな仕上がりです。
料理とのバランスが少し難しいかもしれません。食後酒として食べ終わってから楽しむのをメインにしてもいいでしょう。
1本約8000円で意外性があるおもてなしワイン
有名なブドウ品種の場合は、1本8000円といっても中価格帯。いくらでももっと高いワインがある場合が多いです。
でも意外性を求めるようなワインにおいては、その品種・その地域でトップクラスが狙えることもあります。
8000円予算でシャンパンを探すなら、「手頃ではない」くらいのものしか買えません。有名な生産者のスタンダードクラスや、知名度の低い生産者のちょっといいものです。
カリフォルニアのアンダーソン・ヴァレーは、日本ではまだまだ知名度が低いと言えるでしょう。しかしそこは近年注目を集めるスパークリングワインの産地であり、シャンパンメーカーのルイ・ロデレールが進出してつくるワインがこちらです。
以前の記事で多くの人がシャンパンと間違えたワインです。執筆時から値上がりが・・・
ワインに慣れ親しんだ友人を意識して、2本目のワインは濃厚さよりも上品さと華やかさを狙ってのこのワイン。
カベルネ・フランという品種は珍しくもなんともありませんが、それを単一でワインにするのはそう多くない。ロワールにはそこそこありますが、南アフリカでは珍しく、このクラスのものはさらに希少です。
フランらしい華やかな香りは、自然と皆を笑顔にすることでしょう。
ワインは人生を豊かにする道具
ワインは嗜好品ですので飲まなくても生きていけます。もっと手頃に酔って楽しくなれるお酒はいくらでもあります。
それでもみながたくさんあるお酒の中から選んでワインを飲むのは、好きだからです。
好きなものを仲のいい友人と一緒に楽しむから、その時間が心の栄養となるのです。
今度〇〇さんが来てくれるから、何食べてもらおう?どんなワインを用意したら喜んでもらえるかな?
そうやって考え悩む段階から、ワインはあなたを楽しくしてくれていませんか?イヤイヤ考えているのではないはずです。
楽しむすべを知っているひとにとって、ワインがあることで人生はちょっとだけ豊かになります。
このブログを通して「こういう選び方もあるんだ」と知り、ワインのことを考えるのがより楽しくなってもらえるとうれしいです。