ワインの選び方

濃くないワイン 飲み飽きしない我が家の定番ワインを再検討

2024年8月30日

濃くないワイン 飲み飽きしない我が家の定番ワインを再検討
 
まとめ買いして何度も飲みたいワインって、突出したところのない味ではないでしょうか。
リピートしたくなる価格が大前提として、凝縮感もスッキリ感もほどほどな『濃くない』ワイン。
値上がりの続く昨今だからこそ、無理ない価格で飽きの来ないワインを探してみては?
3000円以下の個性が際立たないワインから、我が家の定番ワイン候補をご紹介します。
 

濃くないけれど秀逸なおすすめワイン7選

 
ワインのタイプと味わいで分類しながら、濃くないおすすめワインをご紹介します。
こういったワインは「どのように美味しいか」を言葉にするのが極めて難しいです。説明も「ない・ない・ない」でイマイチわかりづらいかも。後ほど詳しく言い訳させてください。
「ネット通販では不利と知っても仕入れたかったワイン」であることは間違いありません。年間何千種類と試飲するCOCOSバイヤーの舌を信頼いただけると幸いです。
 
 

日本ワインとして破格のコスパ!

酸っぱくない
重たくない
派手じゃない
 
ドイツで盛んに栽培されていた寒い気候に向いた品種として、北海道に早くから導入されていたケルナー。リースリングが片親ですが、リースリングほどの高い酸味はなくほどよいスッキリ感です。
無理に高そうな味にしようという意図を全く感じない、背伸びをしないフランクな味わい。濃くはないのに弱々しさは感じず、グイグイ飲んでしまうスムースさ。飲み終わったらすぐに次の1杯が欲しくなります。
北海道ワイン株式会社は創立100年を迎えた日本最大規模の生産者。1000円台ながら丁寧なブドウ栽培を感じる味わいは、この規模だからこそ実現するコスパです。
 
 

きっとこれが醸造家の普段飲みたい味

重たくない
渋すぎない
甘すぎない
 
「シラーズ」でつくる赤ワインはオーストラリアにとって最重要。特に南オーストラリア州には、バロッサ・ヴァレーやマクラーレン・ヴェイルといった銘醸地があります。アルコール度数高くパワフルでどっしりと重たい味わいが唯一無二で人気です。
 
そこから遠くないアデレードヒルズで、「シラーズ」のイメージとはちょっと違うワインがつくられています。きっとこのワイン、醸造家自身が飲みたいもの。いくら美味しくとも毎日はしんどいパワフルなシラーズ。それと対照的な軽快で渋味も少なくスムースなシラーズです。
 
かといってマーガレット・リヴァーなどでつくられているような、ローヌのシラーを想わせる「エレガント・シラーズ」というわけでもありません。今すぐ飲んで美味しい、緊張感のないタイプです。
 
 

相次ぐ中毒者

あまり酸っぱくない
重たくない
甘くない
 
なにを隠そう、COCOSで最初にこのワインの中毒者となったのは、代表の橋本です
ピノ・グリはアルザスやマールボロなどでは、口当たりに厚みがあって重ための白ワインになることが多いです。ドイツの高級グレードでもそうですが、2000円台の手頃なワインなのでスッキリ気味。イタリアのピノ・グリージョよりも風味豊かでキレのいい味わいに仕上がっています。
 
酸味は高い方ですが、リースリングほどではない。変に個性を主張しすぎない、「手のかからない優等生」的な味わいです。「ビックリするような美味しさ」では決してありません。「もうこれでいいや」的な、選ぶのに迷った時に選択したくなる味です。
 
 

樽シャルドネでも濃すぎずやさしい

酸っぱくない
重たくない
樽香強くない
 
オーク樽熟成したシャルドネといえば、どっしり力強い白ワインの代表格です。カリフォルニアにはアルコール14%を超えるパワフルなシャルドネがたくさんあり、高級感があって飲みごたえがあるので大人気。安いワインとの違いを明確に感じるからでしょう。
 
そういうワインもいいけど、たまには肩の力を抜いたワインを飲まない?
パステル調のシンプルなイラストが描かれたエチケットから、そんなメッセージが聞こえそうなこのワイン。高級ワインの産地ではないローダイだからこそ、何度も手に取ってもらえる価格と味を狙ったのでしょう。
アルコールは高くないけれど低くない。かといって酸味は高くない。それに樽香もやさしい仕上がりです。
 
 

濃くないバランス感はブレンドの妙

あまり渋くない
重たくない
適度なジューシーさ
 
ワインの産地はパール。南アフリカの中ではあまり高級ワインはつくられない、生産量の多い産地です。やや内陸部で暖かい気候なので、熟度の高いブドウを使って安くて濃いワインをつくろうと思えば可能でしょう。
 
ピノタージュはともかく、メルローもカベルネ・ソーヴィニヨンも濃厚ワインをつくれる品種です。でもラインナップのなかでエントリークラスにあたるこのワインを、あえて濃くないカジュアルな味わいに仕上げたかったのでしょう
アルコールの高さの割には重たさを感じない、フレッシュなフルーツ感が主体の親しみやすいワインです。
 
 

その名も「気楽に」飲むワイン

酸っぱくない
重たくない
香りが派手すぎない
 
ソーヴィニヨン・ブランが主体のワインですが、ニュージーランド/マールボロ産のものをイメージして飲むとギャップを感じるかも。それほど特徴的なグレープフルーツやハーブの派手な香りはありません。
ソーヴィニヨン・ブランの生き生きとした口当たりを活かしつつ、ミュスカで適度に甘い香りをもたせ、グルナッシュ・ブランで果実味に厚みをもたらす。いい意味で品種の個性を消しあっており、ほどよくスッキリ・ほどよくジューシー・ほどよく香りがいい白ワイン
「トランキル = リラックスしていこう」という名前通りのワインです。
 
 

アルコール高めなのに驚きのスムースさ

重たくない
渋くない
ジューシーだけど甘くない
 
「果実感豊かでジューシー」という意味では、例えばイタリアのプリミティーヴォ種やカリフォルニアのジンファンデル種の赤ワインが思い浮かびます。渋くないし酸っぱくない。でも甘味を感じるような果実感は、ちょっと飲み疲れする方もいるのでは?
 
このワインはエチケットに描かれる通り、ブドウを絞ってそのまま飲んでいるような果実感がウリ。でも甘い印象は控えめです。このあたりが地域性による目指すスタイルの違いでしょうか。
そして果皮からの抽出を穏やかにしているのか、14%のアルコールの割には重たくありません。意外なほど軽やかでスムース。試飲してそこに驚き、皆様に紹介したくなりました。
 
 

ネット通販では濃いワインが人気?

 
COCOS楽天市場店の売上ランキングを見ると、上位にランクインするワインはほとんどと言っていいほど濃厚系です。
違うとすればマールボロ産ソーヴィニヨン・ブランのような、果実味がハッキリして酸味が高いもの。どっしり重たい口当たりはありませんが、風味の明確さからある意味「濃い」と言えます。
 
濃厚なワインが良く売れるものだから、品揃えも濃厚系に偏ります。その理由を考察します。
 
 

ワインの風味が「濃い」とは

 
香りを嗅いで飲んだ時に「濃い」と感じるワインは、次のような特徴のうちいくつかを備えるものでしょう。
 

濃いワインの特徴

  • 香りのボリュームが大きい
  • 風味に凝縮感がある
  • 酸味が高く舌がキュっと締まる
  • タンニンの刺激が強い
  • 甘味が強い
  • 味わいにどっしりとした重量感がある
  • 余韻が長い

 

 
このうち多くは、低価格ワインに対して高級ワインが備える特徴と一致します。
値段の割に高級なワインの味がする。そりゃあ人気がでるというものです。
 
 

単品販売では「濃い」ワインが有利

 
そのワインの風味を言葉で表現することにおいて、特徴のある強い風味は言葉にしやすいです。
「ハチミツのような甘い香り」「研ぎ澄まされたシャープな酸味」「どっしりと力強い口当たり」・・・
もしも見た人が過去に「美味しい!」と感じたワインと共通する特徴ならば、「美味しそう」と思ってもらえるでしょう。
 
どんなワインでもその美味しさを言葉にできるに越したことはありません。とりわけネット通販は、飲んでもらったり売る人のノリと勢いでおすすめすることはできないのです。言葉で伝えることが求められます。
 
 

新商品を仕入れる際の選考基準

 
2024年8月末現在、当店は2700種類以上のワインを扱っています。日本のワインショップの中でもまあまあ多い方でしょう。
定番・王道のものから珍しいものまで、既に幅広く揃えています。
ゆえに新商品の仕入れには、「現在のラインナップに加える意味」を求めます
 
 
ワインの試飲会や輸入元の営業さんからの提案で試飲したとします。
まず第1には、その価格に対して味があっているかを判断します。
それをクリアしたものについて、第2にそのワインをお客様に「美味しそう」と思ってもらえるポイントを考えます。ネット通販なので言葉で伝えることが必須です。
最後に現在のラインナップの中に並べてみたと仮定して、他のワインではなくその1本を選ぶ理由があるかどうかです。
 
この選考段階をパスするのに、濃くないワインは不利です。
 
 

濃くない美味しさを言葉にする難しさ

 
ワインの風味はいろいろなフルーツや花などに例えられますが、その明確さ・感じやすさには当然程度があります。濃くないワインはその程度が弱いので、言葉にしたとて購入者に感じてもらえない恐れもあります。
「酸味は強くない、渋味は強くない、果実味も強くない・・・」のないない尽くしでは、味わいがイメージできず「美味しそう」とは思えません
 
正直冒頭で紹介したワインの中に、「美味しそう」と感じるものは少ないはず。「よくわからないなぁ」が正直なところでは?
 
 
飲食店で提供するワインなら、「言葉にしにくい美味しさだけど、飲んでもらえさえすれば喜んでもらえる」というワインにも価値があります。選択肢が少ない中からなら十分に選んでもらえるからです。「美味しい料理とお酒を提供してくれるだろう」という期待がある程度ないと、そもそもレストランには行かないのです。来店した時点でハードルを越えるだけの信頼があるのです。
一方で顔も知らないショップ店員が「美味しい」という感想を言うだけで、ネットでワインが売れるほど甘くはありません。
 
当店はあまりワインのセット販売は行わず、単品販売が中心です。そのような商品構成において、濃くないワインより濃いワインが人気なのは必然です。
 
 

「濃くなくて美味しい」をつくる難しさ

 
濃くないワイン = 薄いワイン でいいならつくれます。しかし「濃くなくて美味しい」ワインをつくるのは難しいです。
ピノ・ノワールをはじめとした品種で「薄旨」という言葉を聞くようになりました。だいたい5000円以上します。
濃くないワインを低価格で美味しくつくるのは難しいのです。
 
 

「濃厚」は七難隠す?

 
客単価4000円くらいの飲食店と、客単価1万円以上の飲食店。出てくる料理の味付けが明らかに違います。甘味・塩味・スパイスすべてにおいて、安いお店の方が強く効かせます。
調味料で強く味付けすれば、材料の質が高くないことや調理技術の拙さをある程度隠すことができるからです。高級レストランで「激辛フェア」なんて聞いたことがありません。
 
 
ワインにも同じことが言えるでしょう。濃厚で甘味を感じるような果実味は、ブドウを過熟気味に収穫することである程度表現できます。収量制限の緩さや栽培の粗さをカバーできるのです。プロのテイスターには通じなくとも、一般消費者が気にならないならコスト優先です。強い風味があれば、少々の雑味や口当たりの粗さが目立ちません。
 
その点で濃くないワインは誤魔化しが効きにくいのです。
 
 

「甘濃さ」と「酸っぱさ」の天秤

 
低価格の濃厚ワインの中には、ほんの少し糖分が残った状態で発酵を止めているものも多いです。その方が「甘濃い」印象になります。
それと正反対なワインをつくろうとしたとき、手っ取り早いのはブドウの収穫を早くすることです。ブドウは熟すにしたがって糖度を上げ酸度を下げます。早く収穫すれば低めのアルコールで酸味の高いワインがつくれます
 
 
しかし早摘みはワインに青臭い風味をもたらしたり、香りの乏しいワインになったりするリスクがあります。風味が弱ければ同じ酸度でも酸っぱさが目立ってしまうこともあります。単純に早く収穫すればいいってものじゃない。
酸味が落ちないままで風味の凝縮を待つ。それができるのは栽培条件に恵まれた畑です。
 
 

薄旨こそ求められるブドウの質

 
淡い口当たりながら美味しいワインをつくるには、ブドウの質が何より大事。ブドウの風味をなるだけ抽出しようとせずとも、軽やかながらきちんと個性のある風味を表現できるからです。
 
その「ブドウの質」には、限られた好条件の畑、単位面積あたりに実るブドウの量を制限する、樹齢の古い樹を用いるなどがつながります。もちろんこまめな畑仕事も。それらは同時にコストアップにもつながってしまいます。
 
 
健康志向の高まりから、世界的に一流レストランでの料理の味付けは油脂を抑えてライトになる傾向です。それにあわせてワインも、パワフルで濃いものより、程よい重量感で酸味がしっかりありながら風味豊かなものが求められます。
レストランだけの話ではありません。いつもの夕食こそヘルシーなメニューでないと生活習慣病が怖い。それにあわせたワインもまた、やたらと濃いものよりちょっと控えめなくらいがバランスいいのです。
 
 

定番の晩御飯ワインとして活躍する濃くないワイン

 
見つけにくく紹介しにくくつくるのが難しい「濃くない美味しいワイン」。
それを頑張って見つけるメリットはあります。特にお気に入りのワインを見つけたら何度もリピートする方はご検討ください。
 
メリットは大きく2つ。飽きにくいことと夕食に合わせやすいことです。
 
 

濃くないから飽きない

 
「主食」として文化に根付いている穀物・それを使った料理は、あまり風味の強くないものがほとんどです。
 
白米、食パンやフランスパン、うどん、そばなど。ラーメンのように濃い味の料理にすることもありますが、多くのものは比較的薄味。だから毎日のように食べても健康に悪くないのです。それだけでなくあまり飽きません。
毎日パスタを食べる人はいても、週5で濃厚カルボナーラを食べ続ける人はいないはずです。
 
 
毎日口にするものなら、濃くないものの方が飽きにくい。ワインも同じです。
ワインの品質としてバランスが大事なのは前提。そのうえで比較的穏やかな風味のワインの方が、何度もリピートしやすくなるはずです。
 
 

夕食時のワインとして

 
普段の夕食のメニューって、何日も前から決まっていることは稀ですよね。だって仕事終わりの夕方にスーパーによってから、特売でメニューを決めるのですから。もしくは冷蔵庫に買い置きしていた食材を見て組み立てるのですから。
それに家庭では、料理一品にワイン1種類をあわせるなんてことは非現実的です。一晩で飲むワインは、1種類かせいぜい飲みかけ含む2種類でしょう。それで夕食の間楽しめるものがいいです。
 
この料理にこのワインでバシっとあう。そんな100点のペアリングではありません。求められるのは「驚きはないけれど悪くない」程度の70点のペアリング。一般的な家庭の夕食に登るメニューに対して大崩れしないことです。
 
 
そうすれば夜の食卓でワインの存在感が消えていきます。高価なワインではないのですから、夕食が終わったときにワインの印象が残らなくてもいい。「今日も晩御飯が美味しかった」で十分なのです。
小難しいこと考えずに、いつでも飲みたいときにいつものワインを明ける。その選択労力の節約、「これでいーや」思考にハマるのです。
 
 
 

定番ワインの再検討に

 
たまに飲む高級ワインが大きく値上がりしても、そこまで生活に影響はないかもしれません。
しかし毎日のように飲む、週に3本4本の空けるワインが200円値上がりしたら、「他に美味しいワインないかな」の気持ちも湧いてくるはず。
 
この記事は「いつものワイン」が値上がりしちゃった方のために書きました。
 
 

ワインの値上がりはなぜ?

 
生産国の経済的な発展が続けば、基本的にワインは値上がりしていきます。昔からワインの価格改定は時々あり、為替相場によっては値下がりすることもありました。
 
しかし2020年以降は値上げ一辺倒。しかもかつてないペースで価格改定されます。その理由として挙げられるものは次の通り。
 
  • 2020年コロナウイルスの流行による流通の混乱
  • ウクライナ戦争によるエネルギー資源の高騰
  • スエズ運河の政情不安によるヨーロッパ方面からの輸入コスト増
  • 円安
 
コロナによる混乱が収まっていないわけではありません。ただ当時値上がりした輸送コストが下がりにくくいまま続いているというのはあるでしょう。
このようにワイナリーの出し値が上がっているだけでなく、様々な要因によりワインが高くなっています
この4年ほどで、1500円だったワインが2000円になり、2000円だったワインが3000円弱になり、5000円だったワインが8000円になり・・・・あくまで私のイメージですが、30%程度の値上げは珍しくありません。
 
 

お届けしたいのは明日への活力

 
ワインが値上がりすることを、私は取り組むべき問題だとは考えません。消費者の購買力が上がっていない、可処分所得が増えていないのが一番の問題なのです。
ワインが値上がりしても、「前は家飲みワイン3000円以下だったけれど、やっぱ5000円くらいは出さないと満足できないよね」となれば問題ないのです。
 
そのためには収入を増やす工夫をするよりありません。仕事を頑張る、資産運用を始める、副業に取り組む・・・方法は人それぞれですが、「今日より明るい明日のために工夫する」というのは同じです。
 
  
しかし「収入を増やしたい」という漠然とした目標のために頑張り続けることのできる人は稀です。
ワインと料理でほっと一息つける夕食は、その疲れた心の癒しにきっとなるはず
 
加えてもっと美味しいワインを飲むというのは、頑張る目標の一つとなりえるはずです
「ボーナスが増えたら、憧れのあのワインを飲む」
「収入を増やして普段飲みのワインの予算を300円グレードアップする」
 
 
単に美味しいワインを紹介するだけじゃない。期待して購入し味わうことで、ワインを通して明日への活力をお届けしたい
大げさかもしれませんが、ワインを仕事にする者としてそれが私の願いです。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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