味見して買うのが難しいシャンパンは、選ぶのが難しいワインのひとつです。
プレゼントに買うなら、有名な銘柄が無難かもしれません。
でも自分が飲むために買うなら、レコルタン・マニピュランがつくるグラン・クリュのシャンパンが断然おすすめ。
なぜなら価格に対しての味わいがより満足できるものだから。その根拠を解説します。
さっくり解説 シャンパンとは
シャンパンとはフランスのシャンパーニュ地方でつくられるスパークリングワインのこと。
なので日本では「シャンパン」の表記が多いですが、「Champagne」のカタカナ表記は実は「シャンパーニュ」が推奨されています。
とはいえやっぱり「シャンパン」の方が通じやすいので、当ブログでは飲み物のことを指して「シャンパン」、ワインの生産地を指して「シャンパーニュ」で統一しております。
シャンパンの製法
シャンパンは「瓶内2次発酵」という製法でつくられます。
まず白ワインをつくり、アッサンブラージュ(ブレンド)した後で1本1本瓶に詰め、酵母とショ糖を加えてもう1回発酵させます。
その際に生じる炭酸ガスを閉じ込めるので、シュワシュワしたワインになるのです。
瓶内2次発酵の期間は長いほど上質とされます。
「シャンパン」と名乗るには15カ月以上、さらにヴィンテージを表記するには3年以上の瓶内2次発酵が必要です。
シャンパンにつかわれるブドウ
シャンパンに使われるブドウは、白ブドウのシャルドネ、黒ブドウのピノ・ノワールとピノ・ムニエの3品種がほとんど。
それらをブレンドして作るのが通常で、単一品種から作られることもあります。
厳密にはあと4品種認可されているのですが、めったに見かけません。
シャンパンの生産地区
シャンパーニュ地方で特に重要な産地は、3つ。
ランスの街を中心とした「モンターニュ・ド・ランス」
エペルネの街を含む「ヴァレ・ド・ラ・マルヌ」
エペルネの南に隣接する「コート・デ・ブラン」です。
このほかにコート・デ・セザンヌやコート・デ・バールなどの地区も南にあります。
これらは地質などの関係から、上記3地区に質で劣るの考えられています。
しかしながら低価格帯のシャンパンをつくるため、重要な産地です。
シャンパンの価格はどれくらい?
一般的にシャンパンの値段の目安は4000円からです。
シャンパンで最も有名な銘柄「モエ・エ・シャンドン」の主力「ブリュット・アンペリアル」が4000円台半ばから5000円前後。この辺りがいろいろな種類のシャンパンが手に入る、ボリュームゾーンです。
安いものだと2000円前後からもありますが、数えられるほどです。
「手ごろなシャンパン」といえば、ざっくりと4000~8000円くらい。
ラインナップの中の「中・上級クラス」がだいたい7000~1万円強。
その上に「プレステージ・シャンパン」と呼ばれる高級クラスがあります。
分かりやすいのは「ドン・ペリニヨン」。「ドンペリ」の略称で親しまれる、代表的な高級シャンパンです。
シャンパンが高価な理由
シャンパンは一般的に高価。
といいますか、安いものがありまりありません。
この理由の一つは、ブドウの取引価格が高いから。
シャンパーニュ地方のブドウ取引価格の目安は、1kgあたり6~6.5ユーロ。
まず原料が他の地域より高いのです。
あとはもちろん、ブランド料もあるでしょう。
世界一のスパークリングワインの産地であるプライドは、確実に価格に現れています。
シャンパンの生産者 代表的な2形態
今回のお話のキモとなりますので、シャンパンメーカーのスタイルを分類したもののうち、代表的な2つの名前は知っておいてください。
NM(ネゴシアン・マニピュラン)とRM(レコルタン・マニピュラン)です。
NM=ネゴシアン・マニピュランとは
ネゴシアン・マニピュランとは、購入したブドウと自社畑のブドウからシャンパンをつくる生産者のことです。
「シャンパン・メゾン」なんて呼び方をすることもあります。
シャンパンの銘柄で有名なものは、そのほとんどがNMのものです。
シャンパーニュ地方には、シャンパンをつくらないブドウ栽培者がたくさんいるので、ブドウを購入して生産規模を大きくすることがやりやすいのです。
というより、栽培と醸造の分業体制が、シャンパンの基本です。
RM=レコルタン・マニピュランとは
一方で自社畑のブドウのみからシャンパンをつくる生産者もいます。
このスタイルの生産者をレコルタン・マニピュランと呼びます。
全てが小規模な生産者です。
NMかRMかはどこでわかる?
実はシャンパンはワインのエチケットに、生産者の形態が書いてあります。
たいてい小さな文字なので注意しないと気付かないのですが、次にシャンパンを見かけたらぜひ注目してみてください。
NMとRMのシャンパン、どっちが美味しい?
実は、一般的にはNMのものの方が美味しいと言われています。
もちろん、RMにも優良生産者は多数いますが、一方で優良とはいえない生産者も多く、玉石混交なのです。
というのも、NMにはできてもRMには難しいことがたくさんあるからです。
小規模生産者では難しいこと
生産者の規模・資金力などの理由で、RMには難しいことがあります。
スケールメリット
分かりやすいのはスケールメリット。
やはり購入したブドウも併せてたくさんの量をつくった方が、1本あたりのコストは下げられます。
なので低価格帯のシャンパンはほとんどがNMのものです。
瓶内2次発酵の期間
また、シャンパンを製品化するのには時間がかかります。
先ほど瓶内2次発酵の規定期間が15か月、3年と申しましたが、収穫してからその間はお金にならないということです。
この期間は最低の値であり、実際にはもっと長く熟成されます。高級なシャンパンの中には10年以上熟成してから出荷されるものもあるのです。
資金繰りに余裕がないと、これほど長い熟成はできません。
リザーヴワイン
シャンパンの大半にはヴィンテージ表記がありません。
これは複数のヴィンテージのワインをアッサンブラージュするからです。
昨年以前から保管しているワインのことを「リザーヴワイン」と呼びます。
単一ヴィンテージでは表せない複雑さを出したり、ヴィンテージごとの味の差を小さくするためです。
毎年ある程度の量のワインを、シャンパンにせずに保管してリザーヴワインとするには、やはり資金力が必要です。
保管する場所やタンクも要求されます。
有名NMの中には、10を超えるヴィンテージのリザーヴワインをブレンドするなんてところもありますが、小規模RMに真似することは難しいでしょう。
低価格帯のシャンパンはNMがおすすめ
以上のような理由から、おおよそ5000円以下の低価格帯のシャンパンにおいては、NMの方が美味しいです。
スケールメリットが効いてくるからです。
そもそも5000円以下でRMはほとんどないのですが。
これで話が終わっては、タイトル詐欺ですよね。
ここから、あまり語られることのないシャンパーニュ地方の畑の話になります。
シャンパーニュ地方の畑のランク
シャンパーニュの畑は、その村単位で格付けされます。
ポイント
グラン・クリュの村
プルミエ・クリュの村
通常の村
この3つのランクがありますが、村単位ですので割と大雑把な区分です。
畑のランクでブドウの取引価格が決まる
何が違うかというとブドウの取引価格です。
グラン・クリュなら規定価格の100%。
プルミエ・クリュなら90~99%
通常の村なら80~89%
この価格でブドウが取引されます。
畑のランク差は何で生まれる?
栽培と醸造の分業体制を確立するには、お互いが安心してブドウを売り買いできるような仕組みが重要。
村単位でブドウの価格を分けたということは、「この村はだいたいどんな年でも、いいブドウを共有してくれる」という実績があったから。
プルミエ・クリュや普通の村とは区別する必要があるほど、質に差があったのです。
その理由にはシャンパーニュ地方の立地が関係します。
シャンパーニュは冷涼な気候
シャンパーニュ地方はブドウの栽培可能エリアのほぼ北限に位置します。
そのため非常に冷涼な大陸性気候。地球温暖化が進む前は、寒さが深刻でした。
夏から秋があまり気温が上がらなかったり雨が降ったりで、ブドウが十分に熟さないことがよくあったのです。
これが温暖な地域、ニューワールドの産地ならまず問題になりません。
ちょっと収穫を遅くすれば、ブドウの糖度は簡単に上げられるからです。
しかしシャンパーニュにおいてはブドウが毎年よく熟すのがいい畑の条件。
それは日当たりのいい南向きの斜面のような好立地に恵まれた、今のグラン・クリュの村でした。
シャンパーニュを特別たらしめる土壌
シャンパーニュ地方を特徴づけるものをもう一つ挙げるとすれば、チョーク質の石灰質土壌でしょう。
石灰の比率が非常に高いこの白い土が、シャンパンに適したブドウを育むと考えられています。
同じような土壌でなおかつブドウ栽培に向いている土地は、世界を探してもそう多くありません。
この土壌の比率が高いのが、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランの主要3地区であり、グラン・クリュの村、プルミエ・クリュの村は全てこの地区に位置します。
価格の安定と言えば聞こえはいいが・・・
グラン・クリュのブドウと、普通の村のブドウの価格が、わずか20%の違いしかないというのは、意外ではないでしょうか。
ブドウを売る方からすれば、ある程度高い価格が約束される一方で、とびきりいいブドウでもプレミアム価格で販売できないというデメリットもあるのです。
ブドウを高く売れないなら・・・
RMの多くが、もともとはブドウ生産者で、今の代か先代のときあたりにRMとして自社でシャンパンをつくりはじめています。
自分の畑でいいブドウが出来るところは熟知しているのですから、上質なブドウは売り払うより自分でシャンパンをつくりたいと思ったのです。
そんな中でも特に注目すべきは、グラン・クリュの村に畑を持っている生産者です。
実は大手メゾンもたくさん畑を持っている
NMはブドウを購入してはいるものの、自社で畑をもっていないわけではありません。
むしろ有名な大手NMは、たくさんのいい畑を持っています。
例えばモエ・エ・シャンドンのグループは1200haもの畑を所有しており、今も買い足しているといいます。
ヴーヴ・クリコは現在のグラン・クリュの村が制定される前から、その多くに自社畑を持っていたといいます。
大手メゾンこそ、条件のいいところに畑を持って自ら栽培することが、質のいいシャンパンをつくることにつながるのを知っているのです。
いいブドウばプレステージに使われる
大手のNMも多くのいいブドウ、特にグラン・クリュの村のブドウを仕入れています。
しかしそれらは主にプレステージ・シャンパンに使われます。
2万円前後からそれ以上の高級品になるのです。
5000円前後のスタンダード・シャンパンに使われるのは、自身のブランド価値を損なわない最低限のブドウでしょう。何百万本という膨大な数を生産する必要があるからです。
ここがねらい目!グラン・クリュの持ち主がつくるシャンパン
ここまでのお話しでもうわかったでしょう。
シャンパーニュでいいブドウが使われるのは、大手NMの高級シャンパンか、グラン・クリュの村に畑を持つRMのシャンパンです。
もちろん、RMは規模の小ささ故、大手NMほど贅沢な醸造はできません。
しかしシャンパンもワインの一種。最も大切なのはブドウの質です。
そしてRMのシャンパンは、価格はNMのスタンダードよりは高いものの、プレステージよりはずっと手ごろです。
ここが大事。
RMがつくるグラン・クリュのシャンパンは、味わいはプレステージ寄りなのに、価格はスタンダード寄り。
だからお買い得感があるのです。
ただし、知名度はほとんどのもので、ありません。
「知る人ぞ知る」というものばかりです。だからプレゼントしてもその価値をわかってもらえないかも。
RMのグラン・クリュ・シャンパンは、自分のために手に入れるべきものなのです。
以下に当店がおすすめする銘柄をピックアップしました。
グラン・クリュ ヴェルジィ村
グラン・クリュ アヴィズ村
グラン・クリュ ブジー村
グラン・クリュ ル・メニル・シュール・オジェ村