夜、仕事に疲れて帰宅した瞬間、あなたが求めているのはただ美味しいだけのワインではありません。
疲れた心を癒すために、どんなワインを選ぶべきか迷ったことはありませんか?
この記事では、疲れた日にピッタリのワインを選ぶ方法と、その一例をご紹介します。
一杯のワインで疲れを癒し、明日の活力をチャージしましょう。
疲れたときに飲みたくないワインとは?
「あ~今日も疲れたな。1杯飲んで寝よう」
そう思ってワインのストックを見て、なんとなくコレジャナイ感があってやめた。ビールやチューハイにした。
そんな経験はないでしょうか。
このワインを飲むにはちょっと元気が足りない。
そう感じてしまうのは、ワインの味わいのタイプとあなたの今の気分が一致していないからです。
疲れたときでも飲みたい癒しのワインを考察する前に、疲れたときには飲みたくないワインを考えてみましょう。
元気なときに飲みたいワインの特徴
元気なときはワインの様々な要素を受け止める心の余裕があります。高級ワインはそんなときにこそ開けたいものです。
では高級ワインは手頃なワインと比べ、どんな風味の違いがあるかというと、概ね次の通り。
高級ワインの特徴
- 香りにボリュームがあり複雑
- 風味の凝縮感がある
- 赤ワインなら渋味が強い
- 酸味が高いものが多い
- アルコール度数が高いものがやや多い
- 口当たりに厚みがあるものが多い
- 余韻が長く続く
こういった特徴があるワインは、飲んでいて「高そうな味」を感じさせてくれます。実際に高価なのですから、期待通りというわけです。
この高級感をいつでも楽しめるわけじゃないでしょう。残業で疲れた身体と心には強すぎるんです。
そんなときに「これでいいや」と缶ビールやチューハイに手が伸びがち。それは適度な"薄さ"がちょうどいいのでしょう。
疲れたときに飲みたくないワインの特徴
上記の高級なワインの特徴のうち、疲れているときには向かない要素を考察します。
まずは赤ワインの渋味でしょう。
しっかり口内を刺激するタンニンを持ったワインは、食事を引き立てる上で重要です。ワインに力強い印象を与えて飲みごたえのあるものとしますが、疲れたときにはそれが過剰。「飲むのに元気が必要なワイン」といえるでしょう。
高い酸味はシャキっと引き締まった上品な印象をワインに与えます。時に厳しさを感じさせる高い酸味を持つワインは、きっちりと向き合って飲みたいもの。これも「飲むのに元気が必要なワイン」だと考えます。
酸味の高さにおける好みは人それぞれです。自分の好みちょうどから上のものを避けると考えたらいいでしょう。
特に白ワインで注意が必要です。赤ワインは酸味が高いといっても、数値的にはおおよその白ワインよりは低いです。
赤ワインで酸味の低いものを重視しすぎると、どっしりとした口当たりのものが多くなります。ブドウの収穫を遅くすればそれだけ酸味は下がり、同時にブドウの糖度が上がります。糖度はアルコール度数に直結します。
高アルコールの濃厚でヘビーなワインも、疲れている日には気が進まないでしょう。
一方でほかの要素はあまり気にしなくていいかも。
香りが派手なのは迫ってくるような印象を受け、押しつけがましく感じる可能性もあります。同時にその芳醇な香りにうっとりする時間が、癒しとなることもあるでしょう。
明日の仕事もあるのにそんなにガブガブ飲むわけじゃないはず。だから余韻が長いことになんら支障はありません。
ただ、香りのボリュームや余韻の長さは、ワインの値段に結び付きやすいもの。手頃なワインには期待しすぎない方がいいでしょう。
疲れたときでも飲みたい癒しのワインとは?
上記の「元気なときこそ飲みたいワイン」の特徴を裏返していけば、疲れたときにも飲みたい優しいワインの特徴が浮かび上がってきます。
癒しのワインはどんな味わい?
こんな特徴を持つワインなら、残りHPがごくわずかな状態でも「よし、今日はこれにしよう」となるのではないでしょうか。
高級ワインの特徴
- 赤ワインでありながら渋味がほとんどない
- 酸味が高くなくて、丸くやわらかい印象
- 口当たりが軽いってほどではないが重たくもなく滑らか
- それほど高価でない
お気づきでしょうか。「ない」と表現されるのが特徴です。こういうワインは、流通量は別に少なくはないのですが、選び取るとは割と困難です。
ECで売りにくく選びにくいワイン
ワインをインターネットで買う上で、ワインを言葉で表現することは大切です。「このワインはどういう味わいなの?」「似たような価格のワインとどう違うの?」といった疑問がある程度は解消されないと、カートに入れるボタンを押してもらえないでしょう。
そのうえで上記のようなワインは、その特徴を言葉で表しにくいのです。「~ではない」を書き連ねても、結局よくわからないでしょう。
でも飲んだら美味しい。だから飲食店でのグラスワイン向けとも言えます。
「このワインを買うか否か」という状況には強い。でも「このワインを買うか否か、別のワインを買うか」という状況では選ばれにくいタイプなのです。
とはいえある程度の目安は示すことができます。
国際品種は癒し系ワインに向かない
まずは有名国際品種の単一ワインを除外します。
赤ワインのカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、そして白ワインのリースリングとソーヴィニヨン・ブランは酸味の高いものが多いです。
シャルドネは樽香をしっかり利かせた重厚なタイプからキリっと引き締まったタイプまで様々。ちょうどいい中間点のようなものを選びとるのは難しいです。
シラーはどっしりと重厚で渋いものが多いです。メルローはタイプによってはアリですが、選別が結構難しい。
高級ワインをつくることのできるこれら有名品種は、メリハリのある味わいであることが多いです。ふわっと柔らかな味わいを求めて探すのには向いていません。
癒し系ワインを選ぶ指標
ゆえに高価なワインはあまりないが生産量は多い品種がねらい目です。そういったワインは生産国で地元消費される割合が多いです。個性が強くない分、飽きずに飲み続けられる味わいということです。
複数品種をブレンドしてつくるワインの中にも可能性はあります。
もちろんすべてではありません。そのブレンドがどんな意図をもってつくられているのか。そのワインのコンセプトを見極めることが重要です。
この場合は国際品種をつかっていたとしても、その特徴を中和するような味づくりをしていれば、ちょうどいい味わいに仕上がることもあります。
いずれにせよテイスティングコメントの確認は必須。「力強い」「パワフル」「キリっと」といった表現が使われていないものの方がベター。読んでもイマイチ想像ができないくらいのものの方が、あなたのお疲れモードを優しく包んでくれるはずです。
疲れたときには甘いものが美味しい
上記のような特徴を備えた辛口ワインに加え、甘口ワインもご検討ください。
残業終わりにはつい駅ちかのコンビニでスイーツの誘惑に負けてしまう。
身体が甘いものを求めているのでしょう。
ワインも同じ。普段は辛口ワインばかり飲む人でも、疲れたときたまに飲む甘口ワインにほっとした経験はあるはず。
貴腐ワインのように濃厚な甘口ではない。半辛口~半甘口くらいのほどよい甘みが、お疲れモードを癒してくれるはずです。
癒しを求めて飲みたいワイン7選
渋くない、酸っぱくない、重たくない。そんな「中庸こそ寛容」と言わんばかりのワイン。
ECでの販売にあまり向いていないタイプであることは承知の上で、飲んでおいしかったから紹介したくて仕入れたものが大半です。
びっくりするような美味しさは期待しないでください。それでも価格に対して十分な、ほっとするような美味しさを味わわせてくれるでしょう。
嫌われにくい味はいい意味で"雑に"飲める
ステレンラストは玄人ではなく一般消費者に受けのいい味づくりが非常に上手な生産者。以前の記事でご紹介しているとおりです。
ダークブラウンのラベルの上級クラスは、濃厚で1口飲んでわかる美味しさ。それに対してこのスタンダードクラスは、飽きずに何度も飲んでもらうことを狙ったような、少し控えめな味わいです。「よし、このワインを飲もう」という選び方ではなく、「今日は真剣に味わう元気がないから、これにしとこう」と選ぶ。そんなある意味雑な楽しみ方でも、いつの間にかまた買っている。そんなワインだと感じています。
白の癒し系、有力候補の品種
癒し系の白ワインを探すうえで、ピノ・グリは真っ先に考えてほしい品種です。理由はその味わいにおける品種特性。
ピノ・グリは早摘みしなければ酸味は穏やなものが大半です。ステンレスタンクで発酵・熟成を行うものが多いので、品種特性としてコクがある味わいなのですが、その重量感は適度。植物性の油のようにまったり滑らかな口当たりが魅力です。
ただ同じような気候条件の地域間で、ワインごとの風味の差は他の品種に比べ小さ目です。ならば雑味を感じない範囲で手頃なほどありがたい。
トゥーリヴァーズがつくるピノ・グリは、通常はあまり目につきませんが、試飲販売すればよく売れるそうです。
予想外にチャーミングな軽やかさが好き!
カベルネ・フランにグルナッシュとシラー。普段ブドウ品種でワインを選んでおられる方には、想像しにくい構成じゃないでしょうか。
香りの華やかさや口当たりの軽やかさはカベルネ・フランらしさ。そこにグルナッシュが赤系果実の風味を加え、香りにシラーのスパイス感が少々。
愛する奥さんのためを思ってつくったというこのワイン。その想いは想像するほかありませんが、この味わいと価格から「常日頃からの心の支え」への感謝みたいなイメージではないでしょうか。
実はねらい目なブラン・ド・ノワール
「飲みごたえのある白ワイン」といえば、しっかり樽香の効いたシャルドネや、ローヌ品種などの高アルコールのワインを思い浮かべるのでは?
もう一つ選択肢があります。ブラン・ド・ノワール、つまり黒ブドウからつくる白ワインです。
ブドウを収穫したら果汁に果皮の色が移るまえにプレスし、果汁を果皮や種と分離します。
たとえ色は抽出されなくとも、果皮の色は味わいに影響を当たるのでしょう。白ブドウではなかなか表すことのできない、コクと飲みごたえを持ちます。
この滑らかな質感にびっくりでした。元気がないときはこのやさしいコクに包まれたい。
ジンファンデルなのに軽く上品
この価格帯のジンファンデルは、「手頃な価格なのにどっしり濃厚で甘い風味を持つ」という方向に競っている傾向があります。それは「手頃に濃厚なワインを飲みたい」という需要に応えるべくしてのこと。
そのヘビーさは疲れた身体には少し重たく感じるかも。でもこのスペシャリストは異なります。アルコールが低いわけではないのに、適度に軽やかで上品な酸味を持ちます。
とはいてジンファンデルでの高めの酸味ですので、全体からすると中程度から少し高いくらい。親しみやすさ満点のチャーミングな味わいです。
これなら小難しく考えず気軽に開けられそう!
控えめにアロマティックな香りに癒されて
うっとりするような甘い香りのブドウ品種といえばゲヴュルツトラミネール。ですがその香りが「強すぎる」と感じた経験はありませんか?特にお疲れモードのときはあそこまでの濃密さはいらない。
だからこそ9種類もの白ブドウをブレンドしたこのワイン。狙いは「いろいろブレンドしたら、その料理に対してなにかしらの品種がひっかかるだろう」というもの。加えてブドウ品種の個性が平均化され、豊かな甘い香りを持ちながら強すぎない絶妙な具合に仕上がっています。
このワインのお供はネコ動画で決まり!
「ネコ好きは多いから、かわいいラベルにしておけば売れるだろう」そんな短絡的な理由のエチケットではありません。
17世紀から先祖代々畑を受けついできた村の名は「カッツェンタル = 猫の谷」。そのブドウでアルザス伝統の半辛口ブレンドワイン「ジャンティ」をつくろう。そうしてつくられたほっとするような甘さの白ワイン。
このワインの味わいと癒しの定番であるネコ動画で、味覚からも視覚からも癒されましょう。
明日の癒しのために使いたい保存グッズ
夜も遅く明日も仕事というなら、1本まるまる飲んでしまうという方は少ないはず。
となれば明日の夜も美味しく飲めることは重要です。
しかし今回ご紹介したような渋くもなく酸っぱくもないワインには弱点があります。あまり日持ちが良くないのです。
酸とタンニンがワインを守る
ワインには亜硫酸が加えられていて、それが酸化防止剤として働きます。正確にはブドウのアルコール発酵でも自然と亜硫酸は生成されます。それを遠く離れた国まで輸送し数年後に飲むには自然の量では足りないため、必要に応じて加えているのです。
この亜硫酸は、ワインが酸性よりでpHが低いほどよく働きます。ゆえに酸味が高いワインの方が、抜栓後も風味の劣化がゆるやかです。
赤ワインのタンニンもまた抗酸化作用・還元作用を持ちます。これもワインを酸化から守る働きがあります。
渋味の強いワインは適度に空気に触れてからの方が、口当たりまろやかに美味しく感じることもあります。
保存グッズで美味しさキープ
今回ご紹介したような中庸な特徴の癒し系ワインには、高い酸も強いタンニンもありません。だから風味の劣化は他のワインに比べやや早いのです。
なので飲み残しを明日も美味しく楽しむため、ワインの保存グッズを積極的に使いましょう。
経験的にアルゴンガスとアンチオックスの併用が最も効果的です。
アルゴンガスは空気より重たい不活性ガスです。それを飲みかけのボトルに注入することで、ワインの表面を空気と触れにくくして、酸化を防ぎます。
それでも空気の遮断は完全ではありません。だからアンチオックスの酸素吸着フィルターでさらに酸化を防ぎます。
この酸素吸着フィルターは何年も持つ分、そんなに強力に酸化を防ぐわけではありません。でも比較実験をしたときは、どうしてかワインにいい影響を与えると経験しています。
保存グッズを上手に使えば、たとえ一人暮らしでも、平日に無理のない量のワインを最後まで美味しく楽しめるでしょう。
ワインを明日がんばる活力に
「よ~し、今日はあのワインを飲むぞ!」そうやって積極的に楽しむワインはもちろん素敵です。ただしそれにはエネルギー、元気が必要です。それが高級なワインであるならなおさら、週末に時間をかけて楽しみたいもの。
疲れて帰ってきた平日には、楽しみにして飲むようなワインは少し億劫に感じるかもしれません。そんな時は味わいの特徴が強すぎない、中庸なワインがあなたの心を癒してくれます。
自分の好みに応じてワインを選ぶのは、もちろん重要です。ただしあなたの気分はその時々で変化するはず。
今度ワインを選ぶときは、元気なとき用と疲れているとき用、両方のワインを選んでみては?