高級なワインの多くが樽熟成してつくられるのは、それだけ好ましい変化をワインに与えるからです。
樽熟成によってどう変わるかは、オーク樽の新旧や大きさ、材質によって異なります。
ワインの風味は樽熟成でどう変わるのが。スペック表から読み取れる内容をご紹介します。
オーク樽熟成がワインの風味にもたらす影響を知れば、好みの味わいを選ぶヒントになるでしょう。
ワインの「オーク樽熟成」とは
ワインのオーク樽熟成、あるいは単に樽熟成とは、発酵の終わったワインをオーク樽に入れて保管することです。
その期間は短いもので6か月程度から、長いもので5年以上。長い時間をかけてワインの風味は変化します。
ワインの味は様々な要素で決まります。醸造法が与える影響の中でオーク樽熟成の影響は大きなものの一つです。それゆえワインの輸入元ホームページなどには、樽熟成に関する情報が記載されていることがあります。
それをヒントに、飲んだことのないワインでも風味をある程度推測することができるのです。
オーク樽の登場と容器としての役割
かつてワインは「アンフォラ」と呼ばれる土器に保管されていました。
4000年~5000年ほど前のものが、コーカサス地方(ジョージアのあたり)で見つかっているそうです。
しかしアンフォラは重く、なにより割れやすく脆い。なのでより頑丈で安全なオーク樽でワインを運搬することが、一般的になっていきます。
(ノイマーゲンのワイン船:Neumagener Weinschiff Wikipediaより引用)
上の写真は、ドイツのモーゼル地方、トリアー市のあたりで発掘されたもの。ノイマーゲン遺跡で見つかった3世紀初頭の彫刻で、船にこぎ手とワイン樽が載っているのが彫られています。遅くとも3世紀には、ワインをオーク樽に入れて船で輸送するのが一般的であったことがわかります。
重量の単位「t トン」の由来
ワインと船舶輸送の関係性は密接です。今は1000kgを意味する「トン(t)」という単位。もともと船の積載量を表すのに使われていました。これはボルドーワインの計量単位「トノー(tonneau)」に由来するといいます。
オーク樽熟成で変わるワインの風味
保管容器として使われ始めたオーク樽。次第に樽に入れることでワインに好ましい変化が起きることが分かっていきます。
その変化を知るには、他の容器と比較すると分かりやすいです。ワインの発酵・熟成に用いる他の容器とは、主にステンレスタンクとコンクリートタンクです。
容器による性質を比較する
発酵・熟成に用いる容器の性質を比較したのが下記の表です。
材質 | 風味の添加 | 酸素透過 | 再利用 | 温度調整 | 発酵温度 | サイズ |
---|---|---|---|---|---|---|
オーク樽 | 有(※) | 〇 | △ | △ | 低~高 | 小~中 |
ステンレスタンク | 無 | × | 〇 | 〇 | 低~高 | 中~大 |
コンクリートタンク | 無 | △ | 〇 | × | 低~中 | 中~大 |
※新旧で異なる
他の2つと比べるとオーク樽は、繰り返し使うことで性質が変わっていきます。同じようにワインをつくるには買いなおす必要があること。それからワインが蒸発して目減りすることなどから、最もランニングコストのかかる容器といえます。一方で導入コストは低めです。
赤ワインと白ワインで違う発酵と熟成
赤ワインの場合はブドウの果皮や種を漬けた状態で果汁を発酵させます。その後プレスでワインを分離して熟成の行程に移ります。
一方で白ワインは最初にプレスで果汁だけにして発酵させます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。▼
発酵の際には酵母の死骸である澱(おり)が沈殿します。
赤ワインの場合はプレスによって澱が除かれます。発酵容器と熟成容器は別です。
一方白ワインの場合は発酵の容器でそのまま熟成する場合もあります。時間とともに澱が分解されてワインに戻っていき、風味やコクを増すからです。この製法を「シュール・リー(澱の上)」と呼びます。
オーク樽熟成で添加される風味
オーク樽熟成することで樽材からその成分がワインに溶け出します。つまりワインの香りにオーク樽由来の香りが添加されるのです。
その成分は分析によって次のものと判明しています。
成分名 | 説明 |
---|---|
メチルオクタラクトン(オークラクトン) | ココナッツのような甘い香りの正体。状態によっては、土臭さや草の香りにもなり、それを決定づけるのはオーク樽を作る際の木材の乾燥度合い。また、樽製造時のローストが強いと減少する。アメリカンオークの方が含有量が多い。 |
バニリン | 天然バニラの香り。オーク材にもともと大量に含まれている。トーストが強いと減少する。ワインをアルコール発酵させると、アルコールと反応して無臭のバニラアルコールに変わる。そのため、白ワインでアルコール発酵した後、そのまま樽で熟成したものに比べ、ステンレス発酵・オーク樽熟成したものの方が、オークの香りは強くなる。 |
オイゲノール | クローブ(丁子)の香り。 |
グアヤコール | 炭のようなスモーキーな香り。正露丸や歯医者さんの香りともいわれる。オーク材に含まれるリグニンがトーストによって分解されてできる。 |
フルフラール、メチルフルフラール | どちらも糖や炭水化物の熱分解でできる。つまり樽製造時のトーストの過程で生まれる。アーモンドやキャラメル、バタースコッチのような香り。 |
エラジタンニン | オーク樽からは渋さのもとであるタンニンも溶出する。とはいえ、オーク樽熟成=渋いワインかといえばそうでもなく、先述の酸素供給の機能により |
樽熟成によってワインにより様々な風味を感じるようになり、複雑さが増します。それゆえ基本的には樽熟成でワインの評価は上がるのです。
感覚的に表すなら、樽熟成によってワインは「リッチに」「豪華な風味に」変化します。
これは赤ワイン・白ワイン・スパークリングワイン・ロゼワイン共通です。ただしスパークリングワインやロゼワインにおいて、これらの風味がハッキリ現れるつくりをしているものはめったにありません。
発酵容器によるヴァニラ香の強弱
白ワインの熟成にオーク樽を使う場合、樽発酵&樽熟成とステンレスタンク発酵&樽熟成を比べると、後者の方がより明確に樽香が現れます。
これは発酵の過程において樽の木目が酒石酸結晶で詰まるから。樽材がワインに触れる面積が少なくなり、結果として樽香は抑えられるのです。
例えばこの「アウスト」のシャルドネは、価格的に新樽比率はそう高くないものと思われます。(公式サイトを見る限り新樽比率は非公表)しかしステンレスタンク発酵&オーク樽熟成により、甘いヴァニラ香が顕著に現れています。
赤ワインの渋味をなめらかにする
渋味の変化において重要なのは、オーク樽の酸素透過性です。
バリック(225L 樽)にワインを入れて1年間熟成すると、1Lあたり20~40mgの酸素がワインに溶け込むといいます。その結果赤ワインは色素が安定しタンニンが和らぎます。
赤ワインは果皮や種子由来のタンニンを持ちます。その渋味としての刺激が強すぎるのは好ましくありません。オーク樽熟成はその渋味をなめらかにします。そのためオーク熟成するワインの割合は白ワインより赤ワインの方が高く、およそ1500円以上の赤ワインの大半は樽熟成しています。
新樽と古樽でワインの風味はどう違う?
オーク樽がワインに与える影響は一定ではありません。熟成に使うオーク樽が新品なのか何度か使ったものなのかで、風味の現れ方が異なります。
それゆえ表記されるのが「新樽比率」です。
新樽と古樽とは
何度か使用したオーク樽を古樽、あるいは旧樽と呼びます。
先述の風味添加や酸素透過の効果は、旧樽よりも新樽の方が強く現れます。2回目3回目とその効果は減っていき、やがて酸素は少し通すものの風味に影響を与えなくなります。
そういった古樽を「ニュートラルオーク」と呼びます。木目にワインの酸味成分である酒石酸結晶などが詰まっていくので、酸素の透過性も悪くなっていきます。
使い古した感のある古樽。性質は違うが劣っているわけではない。
「新樽比率25%」ってどういうこと?
新樽で熟成したワイン1樽と、旧樽で熟成したワインを3樽の比率でブレンド。そうすると「新樽比率25%」熟成のワインができあがります。1対1の割合でブレンドするなら「新樽比率50%」です。
この新樽比率を知れば、先述のオーク樽由来の香りがどれくらい強く現れているかを推測できます。
基本的には新樽比率が高いほど豪華な風味になりますが、強ければいいというものではありません。
樽香とブドウ由来の風味のバランスが大事
ブドウ本来の香りがあまり強くなりのに、高い新樽比率で熟成をすると、木の香りしか感じなくなってしまいます。これを「樽負け」と呼びます。ワインにとっては非常に不名誉なことです。
2万円のワインと3000円のワインではブドウの質が違います。同じ新樽比率100%熟成でも、風味の現れ方は大きく違うでしょう。
ブドウ本来の果実味を覆い隠すことなく、調和しつつも複雑味と豪華さを加える樽香が理想です。
ただしこれはバランスの問題なので、人によって感じ方が違います。ウイスキーがお好きな方などはもしかすると強い樽香を好む傾向にあるかもしれません。
「オーク樽熟成の風味」と聞いてピンとこない方は、まずは新樽熟成100%のワインを試してみて、そこからちょうどいいバランスまで下げていくのもいいでしょう。
ロバート・パーカーと新樽熟成
1990年から2000年代初頭にかけて。ワイン評論家ロバート・パーカーJr.の影響力は絶大でした。
彼が奨励し高い点数をつけるゆえに良く売れるワインのスタイル。その一つは新樽をふんだんにつかって熟成したものでした。
「パーカリゼーション」、ワインが画一的になるとの批判もありましたが、彼の功績は否定できません。その一つが不健全な臭いを持つワインが減ったことでした。
旧樽を使用する際に洗浄が不十分だと、望まない酵母や雑菌の繁殖により、ワインに欠陥香が生まれることがあります。それを防ぐ最も簡単な方法が、清潔な新樽で熟成させることです。
現在でこそ衛生管理の技術が上がり、樽に由来する欠陥ワインを口にする機会はないと言っていいでしょう。この点で新樽を使う意味は薄いです。それは「悪いワインは何か」がきちんと知れ渡ったということ。
パーカリゼーションはワインの平均値を押し上げたのでした。
オーク樽のサイズと樽香の強弱
樽熟成の効果は新樽かどうかが最も強く影響するように感じています。しかし他にも重要な要素はあります。
その一つがオーク樽のサイズです。
「バリック」とは
「バリック Barrique」とはオーク樽のサイズを表す用語で、一般的な小樽のことです。「ワイン樽」と聞いて思い浮かべるものはほぼバリックでしょう。
基本的にはボルドーで使われる225L、ワイン300本分のオーク樽のことを指します。
一方でブルゴーニュではほんの少しサイズの違う228Lの樽が伝統的に使われています。これは「ピエス Piece」と呼ばれます。
しかし単に「小樽」という意味で「バリック」と使われることも少なくありません。実際、ブルゴーニュワインで「バリック熟成」と表記されているものはたくさんあります。
オーク樽の大きさを表す用語
バリック、ピエス以外のサイズは、大きさや地域によりいろいろいな名称があります。ウイスキーに用いる樽の規格とは必ずしも一致しません。
ピエスより大きなサイズの樽は「600Lのオーク樽」のように数字で表されることが多いのですが、名称がつけられているものもあるので一例をご紹介します。
樽のサイズ | 名称 | 主な地域 |
---|---|---|
900L | トノー | ボルドー他 |
1000L | フードル/フーダー | アルザス/モーゼルなど |
1200L | シュトゥック | ラインガウなど |
2400L | ドッペルシュトゥック | ラインガウなど |
大樽ほど影響が小さくなる
樽の影響はワインが樽に触れている面積で強さが変わります。
大樽より小樽の方が単位量あたりの表面積が大きい。それゆえ樽熟成の効果は小樽の方が強く現れます。
これもまたどちらがいいというものではありません。
多くのワインの醸造情報を見ている限り、白ワインの方が大樽、それも旧樽で熟成させるものが多いように感じます。
ステンレスタンクのように完全に酸素を断つのではない。わずかに酸化させつつもフレッシュさを保ちたいときに大樽熟成を選ぶのでしょう。
どう違う?フレンチオークとアメリカンオーク
オーク樽の材質によってもワインの風味に与える影響は異なります。
ワインのスペックには主に「フレンチオーク」や「アメリカンオーク」のように表記されます。
この違いは産地というよりも、品種の違いによるものです。
そもそも「オーク」とは
オークとは、ブナ科コナラ属に属する樹木の一種。楢(ナラ)という木の仲間です。たまにオークを「樫」(かし)と訳されていることがありますが、これはちょっと間違い。樫は常緑樹、楢は落葉樹という違いがあります。
ワインの樽に使われるオークは3種類。ヨーロッパナラ(別名イングリッシュオーク)とツクバネガシ(別名セシルオーク)、それからホワイトオークです。前の二つをまとめて、その主な産地から「フレンチオーク」と呼び、ホワイトオークを「アメリカンオーク」と呼びます。
フレンチオークの方が高級?
一般的にアメリカンオークよりフレンチオークの樽の方が高価に取引されます。しかしそれは品質に由来する価格差ではありません。
「チロース」と呼ばれる繊維組織の密度が、アメリカンオークはフレンチオークに比べて高いのです。
するとどうなるか。板が水分を通しにくくなります。これゆえに、フレンチオークとアメリカンオークでは、1本の丸太から何枚の板材を切り出せるか、という歩留まりが異なってきます。
アメリカンオークの方が効率的に板材を切り出せるため、結果としてオーク樽の値段はアメリカンオークの方が安くなります。
オーク材の種類による風味の違い
アメリカンオーク(ホワイトオーク)はオークラクトンやバニリンをより多く含みます。そのためワインはより甘くトロピカルな風味となります。
逆にフレンチオーク、つまりヨーロッパナラやツクバネガシは比較するならオークラクトンやバニリンは少な目。ゆえに甘い香りは少し控え目です。その代わりエラジタンニンが多く、ワインの味わいの骨格がしっかりとした印象になります。
「アメリカ産ワインはアメリカンオーク」なんて単純なものではありません。むしろ高級品においては熟成にフレンチオークを使う例が圧倒的に多いです。
一方でスペインのリオハなどでは、熟成にアメリカンオークを使うのが典型です。
白ワインに感じるオーク樽熟成の風味
ワイン初心者の方が「樽熟成の風味を理解したい」と望むなら、まずは赤ワインより白ワインで違いを感じてみましょう。
同じ産地・価格帯のワインでオーク樽熟成のある/なしを比較するのが一番です。同じ生産者で樽熟成のある/なしをつくり分けているならば、それが最も分かりやすいでしょう。
樽熟成の有無を飲み比べる
南アフリカの「ブラハム」という生産者が、シュナン・ブランという品種でオーク樽の有無の両方をつくっています。
香りの質を比べることで、「オーク樽熟成することでどう香りが変わるか」を明確に感じ取ることができるでしょう。
オーク樽熟せいのぶんだけワインの価格は違いますが、ほぼブドウのグレードは同じと思っていいでしょう。ただしオーク樽熟成の方がその風味に負けないよう、より高い熟度で収穫しているものと思われます。それがアルコール度数の違いに現れています。
樽香と相性のいい品種、シャルドネ
白ブドウの中で樽熟成されるものが非常に多いのがシャルドネです。
シャルドネは「ニュートラルな品種」と呼ばれます。ブドウ品種由来の香りがそれほど強くなく、産地や醸造法の影響を強く受けるからです。ソーヴィニヨン・ブランのように「この品種ならこんな香り」というものがあまり明確ではありません。
それもあって樽熟成の香りと調和しやすい。リンゴ、柑橘、トロピカルフルーツ・・・。栽培環境で異なるフルーツの香りが樽香によくなじむのです。
フランスのシャブリにはたまにステンレスタンク発酵&熟成の1万円超えシャルドネがあります。しかしその他の地域においては、5千円以上のシャルドネはほとんどオーク樽熟成でつくられると考えていいでしょう。
リリースしたては「フルーツ香+樽香」とそれぞれを別に感じます。しかし熟成が進むとそれらの香りは混然一体となり、甘く奥行きがあり素晴らしく上品な香りに調和していきます。これもシャルドネが多くの人を引き付ける理由の一つです。
近年流行りの「かすかな樽熟成」
樽熟成の風味はワインを高そうな味に感じさせてくれます。一方でそれは世界中どこでもできる。フレンチオークやアメリカンオークを購入すればいいだけです。
「こんな生産国もあったんだ!」という珍しい国のシャルドネを買って飲んでみて、美味しいけれども以前飲んだシャルドネと瓜二つだったら、少しがっかりしませんか?「せっかく冒険してみたのに!」と。
またオーク樽の強い風味は、生の魚介との相性がイマイチ。生臭さを引き立てかねません。
それもあって新樽ではなくあえて古樽のみで熟成し、ほんのり樽香をつけていることをアピールするワインも現れ始めました。
樽香が強いよりは控えめな方が、ブドウ由来の香りを感じやすくなります。それが産地ならではの他との違いをアピールすることにつながります。
樽熟白ワインが美味しくするクリームソースや鶏肉
樽香の効いたワインをより楽しむなら、クリームソースやバターをつかった料理と一緒に飲むのがおすすめです。
樽熟成によってクリーミーになった口当たりと、乳製品によるまったりとした質感。その2つが調和してより風味豊かに感じます。
シンプルな味付けの鶏肉料理や豚肉料理には、しっかり樽香を感じるシャルドネがベストなことも多いです。
「肉には赤ワイン」と言いますが、たんぱくな鶏肉や豚肉には赤ワインの渋味は過剰に感じることも。控えめな脂身は白ワインの酸味がしっかり切ってくれるので、料理とワインがちょうどいい強さで消えていきます。
赤ワインに感じる樽熟成したタンニン
赤ワインにおいては、ブドウに由来するベリー系の香りにヴァニラのような樽香がよくなじんでいることが多いです。慣れないうちはそれらを別々に感じるのは少し難しいかもしれません。
しかしタンニンの質感の違いは感じ取りやすいはずです。
新樽熟成で変化する赤ワインのタンニン
新樽を用いて熟成したワインは、よりタンニンをまろやかに感じる傾向にあります。しかしタンニンの量が少なく穏やかなものと比較すると感じ方は別です。
より厚みのある口当たり。布に例えるならレースかシルクかベルベットか。同じ滑らかでも厚みをもったなめらかさに感じるのです。
そしてそれは飲みごたえや高級感につながります。
ただしタンニンの感じ方には酸味も大きく影響します。
ボルドーワインは新樽熟成を多く用いる傾向があります。それはもともとタンニンの豊富なカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったブドウ品種が中心だから。そして比較的涼しい気候ゆえにワインの酸味もある程度高く、フレッシュで力強いタンニンを感じやすいからです。
同じカベルネ・ソーヴィニヨン主体のブレンドだったとしても、カリフォルニア産やチリ産のものとはタンニンの感じ方が違います。後者の方がよりまろやかに感じるでしょう。
「樽熟成」を好みのワインを選ぶコンパスに
ワインはオーク樽熟成によって材質の香り成分が添加され、ヴァニラやココナッツのような甘く香ばしい香りを得ます。同時に木目を通した酸素接触で、クリーミーで滑らかな質感も獲得します。
その効果のほどは新樽比率やオーク樽の大きさ、樽材の種類などで変わります。
ワインの醸造、とりわけ熟成方法に関するスペックを知れば、飲まずともそのワインのおおよその風味を推測する指針となります。
完全に予想通りにはなりません。理論で近づくことはできても、最後は飲まねばわからない。だからこそ面白いのがワインです。
樽香の強さはワインにおいて重要なポイントで、好みはひとそれぞれ。強ければいいというものではありません。
自分好みのワインを選ぶにあたって、樽熟成がどう風味とリンクするのかの知識を、ワイン選びに大いに役立てましょう。
KATAYAMA
ちなみに筆者は、白ワインについては新樽比率0%の大樽熟成。赤ワインは新樽比率20ー40%くらいが好きです