《生産者について》
ラーツ・ファミリー・ワインズは「シュナン・ブランとカベルネ・フランのスペシャリスト」をコンセプトに掲げるワイナリー。2000年設立とまだ若いながら、品種に特化することで世界に通じる名声を獲得しています。
ワイナリーがあるのはステレンボッシュ市の西側。畑を選ぶ際にあえて南向きの日当たりの良くない斜面を選ぶことで、強い日差しにも関わらず涼しい環境となりブドウは上質な酸味を蓄えます。
その味筋はやや玄人向け。香りや味わいに決して派手さはなく、あまり手頃なワインはラインナップしません。代わりに研ぎ澄まされたような美しい酸味と、硬質なミネラル感を備えます。この繊細さと緊張感が同居した味わいは唯一無二と言っていいでしょう。
《このワインについて》
ラーツの白のラインナップではミドルレンジにあたります。しかし私は上位クラスの「イーデン・ハイデンシティ」に勝るとも劣らないと感じています。イーデンは1万本/haの密植による低収量が美味しさの要因ですが、まだ樹齢が低い畑。それに対してこのワインは平均樹齢40年の畑からつくられます。
この樹齢の差によるものか、余韻の広がりはむしろこの「オールド・ヴァイン」の方が優れているように感じます。
ワインアドヴォケイトの評価では、2011-2022VTの間、10件のレビューがつきましたが90点を下回ったのはわずかに1回。安定して高評価を獲得しています。
《テイスティングノート》
2024年6月の試飲時点ではまだ閉じた印象があります。白桃や柑橘の皮、それにほのかなハチミツのアロマ。香りは飲み込んだ後の方が表現力豊かで、アニスやクローヴのようなスパイス感が鼻を抜けていきます。緊張感のある酸味はほのかに苦みを伴いますが、3年程度熟成することで消えそう。さらに厚みのある口当たりを獲得するでしょう。
今飲むのは少しもったいない。自宅のワインセラーで大切に育てる価値のあるワインだと考えます。
Raats Old Vine Chenin Blanc