「高くないワインのおすすめなら、厳選する前にまずは試してみる!」そんな方のため、今回は小難しいこと抜きに直感的に美味しいワインを集めました。美味しさの方向性が好みにあうなら、価格以上の満足を与えてくれるでしょう。他との違いが際立つお買い得銘柄を参考に、旨安コスパワインを見つける楽しさを味わいましょう。
ウンチク抜きにお買い得な赤ワイン5選
今回のワインは前提知識を抜きにお買い得に感じるワインを選びました。純粋に味と値段で勝負!
「ワインが高価な産地〇〇にしては・・・」
「この生産者のトップワインは〇万円で・・・」
そういった話は一切ありません。
ただしワインには好みがあります。なので「美味しさの方向性」として、味わいのタイプを表記します。好みに応じてお選びください。
甘く香ばしい風味がグイグイ迫ってくる
美味しさの方向性
甘くロースティーな香りのボリュームとなめらかで濃厚な味わい
熟成に使うオーク樽をヘビーローストして、コーヒーの焙煎香のような風味をつけたこのワイン。濃厚でクリーミーな味わいに、香ばしい風味がよくマッチしています。意外性が面白い!
コーヒー風味の赤ワインというのは、南アフリカにて時折見かけます。ピノタージュという品種でつくられることが多いです。しかしフランスで、しかもメルローにてというのは他に知りません。
その物珍しさもありますが、純粋にこの価格の赤ワインとして優秀。風味の凝縮感と口当たりの滑らかさはなかなかのものです。
見た目に裏切られる薄旨系
美味しさの方向性
渋味も酸味もソフトなやさしい味わい
ちょっと濃いめのロゼワインくらい、淡い色合い。味わいもソフトで渋味は全くなく軽やか。「上品系」というには酸味穏やかの癒し系。なのに重いボトルというギャップ!
この生産者は主にプロセッコをつくっており、ロゼ用にピノ・ノワールを栽培しています。その一部を赤ワインとして瓶詰しているのではないかと推測します。
高そうな味はしませんが、やさしい口当たりゆえに飲み疲れせずスイスイ入っていく。それが魅力です。
干しブドウ風味のパワフルさ
美味しさの方向性
タンニン豊かで力強いのに、甘やかで親しみやすい
風味の凝縮感だけでなく、豊富なタンニンゆえに、少量でも飲みごたえ抜群なこのワイン。なのにフレンドリーな雰囲気があるのは、レーズンのような甘い風味があるから。
「パッシート」という、収穫したブドウを陰干ししてから仕込む製法は人気があります。手頃な価格でも甘濃い風味になるからです。まったりなめらかなワインが多い中で、こちらは例外的な量のタンニンを持ちます。サンジョヴェーゼもタンニンが多いほか、サグランティーノが特に渋味が強い品種がからです。
そんな渋いワインを飲みやすくするのが、ウンブリア州で伝統的に行われてきたこの製法だそうです。


ただひたすら濃くて滑らか
美味しさの方向性
期待を上回るほど濃くてなめらかで甘香ばしい
発売時が美味しさのピーク。そんな開けたてから単純明快な、フルーツと樽香の風味が広がります。渋味がほとんどなく、まったりとスムースでひっかかりの無い味わいです。
ちょっと暴論ですが、カリフォルニアの安い赤ワインに、渋味は不要だと思いませんか?熟成させるはずもなく、今美味しいのが重要。料理との相性を語るなら他の国で探せばいい。ならカベルネ・ソーヴィニヨン100%でなくていいんです。このワインのように、補助品種を使うからこその濃厚さが味わえる。「レッドブレンド」はお買い得で賢い選択です。
飲んで気分が明るくなりそう!
美味しさの方向性
ひたすらシンプルでピュアなフルーツ感
風味が複雑なことが高いワインの条件なら、これは間違いなく安ワイン。でもシンプルながらに満足度が高いのは、みずみずしく透明感のある果実味と全体のバランスでしょう。
このワインのオーナーはフランスのレストラングループ。そこで飲まれるリーズナブルなワインを目指してつくられています。だからこそ濃すぎないたくさん飲んでもらえそうな味。ワインをあまり飲まない人でも親しみやすい、明快なフルーツ感に設計しているのでしょう。
「これ!」と決めたら何度もリピートする方に特におすすめです。


ウンチク抜きにお買い得な白ワイン3選
白ワインも単純明快なワイン単体の美味しさでえらびました。
夕食を引き立てるような繊細なワインはもちろん素晴らしいです。一方で中にはワイン単体だと他と違いがわかりにくいものも。
そうではない、個性際立つ主役として楽しめる3本です。
ピチピチフレッシュで止まらない!
美味しさの方向性
フレッシュで高い酸味と軽い味わい、ほのかな甘味
手頃なワインの多いヴィーニョ・ヴェルデの中で、そこそこ安くてクリーンさが際立つのがこちら。酸っぱさとバランスをとる甘味がある微発泡なので、つい飲みすぎちゃう!
このフレッシュな味わいが最も美味しく感じるのは、やはり夏。でもそれ以外の季節で悪いことはありません。酸味が高いといってもドイツのリースリングほどではなく、甘味も少しあるのでフレンドリー。アルコールが低いことも手伝い、ワインだけでもビールのような勢いで楽しめちゃいます。
よくある味だけれど優秀!
美味しさの方向性
凝縮感のある果実味を適度な酸味が支える
よく熟したフルーツの風味を、一口目から口いっぱいに感じます。軽すぎず重すぎずのバランスに整える酸味が優秀で、何度も飲みたくなる飽きの来ない味です。
正直このワインはイタリアによくある味筋。やや果実味寄りのバランス感で、「抜群」ではないけれども「優秀」。試飲会で飲んで「美味しいのだが、言葉で違いを示しづらい」と仕入れに悩みました。しかし「絶対売れます!」という営業さんの猛プッシュ!1年目からそこそこ売れて、だんだんリピーターが定着していきそうです。
ただものじゃない雰囲気を感じる!
美味しさの方向性
明るい果実味と上品な酸味に、複雑さを添える樽香
「バランスがいい」と言葉にしても説得力がありませんが、やっぱりワインには最重要。明るいフルーツ感を支える上品な酸味、控えめな樽香のバランスが、醸造家の腕を感じさせます。
それもそのはず。ブシャール・フィンレイソンといえば、南アフリカにおいてブルゴーニュ品種の開拓者です。パイオニアであるハミルトン・ラッセルの初代醸造長として腕をふるい、シャルドネとピノ・ノワールに精通。ボリューミーな濃厚シャルドネではなく、上品さが際立つ味筋。それでいて「控えめ」という言葉はあまり当てはまらない、メリハリのある美味しさです。
一口目から直感的に美味しいワインとは
今回はタイトルの通り、一口目から感じる直感的な美味しさで、お買い得ワインを選びました。
単に美味しいワイン、良いワインではありません。この方針は、今回選ばなかったタイプのワインと対比することで、よく分かっていただけるでしょう。
直感的に美味しいワイン以外にも、良質なワインはたくさんあります。
一口目から美味しい飲み頃ワイン
直感的に美味しいワインであるためには、開けたてから豊かな香りが立ち上ることが大切です。つまり買った時が飲み頃のワインであるということです。
割と手頃なワインの中にも、開けたては本領を発揮しないタイプのワインもあります。抜栓1時間2時間と経過してから。あるいは2-3年熟成させることでぐっと良くなる。そういうワインも当然評価されるべきであり、美味しさだけでなく面白さもあります。


今回は熟成してこそ飲むべきワインは外しました。熟成して良くなるものはあるでしょう。しかし今開けて「もったいない」と感じるようなものはありません。あなたの飲みたいときに飲むのが正解です。
繊細さや複雑さより凝縮感
香りにも味わいにも濃厚さを感じる方が、より直感的な美味しさと言えるでしょう。
風味が強すぎず、繊細で料理に寄り添うような味わいのワインが、近年のトレンドです。
一方で一口目から美味しく個性際立つ味わいとしては、果実味豊かなタイプが有利。口の中でふわっと広がる風味に驚き、その価格を確認してさらに驚いていただく。そのためには1本飲み切ったとき心地よい、軽快なワインは不利なのです。


一般的に風味の複雑さは良いワインの条件ですが、ここでは必ずしも利点ではないでしょう。5本目にご紹介した「クライン・オーランジェリー」などのように、シンプルながらもハッキリとしたフルーツの香りを感じる方が「直感的」です。
比べてではなくその1本で価値がある
世の中には比べてこそ価値があるというワインも存在します。
ある意味その代表格がブルゴーニュワイン。
「道一本挟んだ隣の畑とは、ワインの風味や格が違う」
いわゆる「テロワール」の表現を楽しむのがブルゴーニュワインの付加価値です。単なる美味しさ以上の、比較して感じる共通点・相違点を楽しめる。その面白さ・奥深さゆえに、「コスパ」という言葉は一切無視されています。


そのほかにも、同じ畑の同じブドウを使いながら、醸造法で違いを表現するワインもあります。
こういった「比べてこそ価値がある」というワインは、特に知的好奇心の強い方にはとても喜んでいただけるでしょう。
今回はそういう比べての面白さではない、この1本単体における満足度の高さで選びました。
安さの理由に知識が要らない
例えば現在、「シャブリで3000円」と聞けば、相場観のある人は「安い!」と判断します。これは「シャブリの村名格ワインは、最近5000円程度はする」というのと比べてです。
ワインの産地やスタイルの相場と比べて安い。あるいは有名高級ワインをつくる生産者が手掛ける、手頃な価格のワイン。このお買い得感は知識があるからこそ判断できることです。
今回のワインはそういう「ブランド」に頼りません。もし銘柄を隠して飲んでもらったら、価格予想を実売価格が下回るだろう。そんなワインばかりを選んだつもりです。
同じスタイルのワインで一番
一番美味しいワインなんて決められません。なぜなら「美味しい」という感情は個人の好みや経験に基づくものだから。スタイルが違えば比較できないからです。
例えるならかつ丼とうな丼の美味しさを比べても意味がないのと同じです。


しかし「濃厚で口当たりなめらかなタイプ」というように、ワインの味筋で括ればある程度比較ができます。このタイプなら、より濃厚で渋味が穏やかか目立たず、なめらかさを持つものが良いワインです。その上で価格との兼ね合いでバランスポイントを探ります。
今回選んだワインには、概ね同じようなタイプの別の銘柄もあります。同じようなワインがあるなかで、筆者の感覚として「これが最も価格に対して美味しい」と感じたのが、今回ご紹介したワインです。
その感覚はワインのバイヤーとして自信をもっておりますが、あくまで筆者の主観。金銭感覚も違います。同じように感じていただけるとは限りませんが、そこはもう言葉ではどうしようもないことです。
つい誰かに教えたくなる旨安ワインを
私が大阪人だというのもあるでしょうか。価格以上に自分を喜ばせてくれるワインは、一人でも多くの人に教えたくなります。
高価で希少、もう手に入らないワインが美味しかったと話す。人によっては自慢と受け取られます。
それが安くて容易に入手できるなら、相手にとって有益な情報です。
ある調査によると、ワイン選びの際にはよく知らない専門家よりも、身近な誰かの意見をより参考にするそうです。あなたのおすすめが強いのです。


いろいろワインを飲んで、リーズナブルながら美味しいワインを発掘するのも楽しいです。さらにそれを知人に教えて「こないだのワイン美味しかったよ!」と喜んでもらえる満足は格別です。
身近にワイン好きを増やして飲みの場をもっと面白くするため、誰かに教えたくなる旨安ワインを探してみませんか?








