濃厚じゃない赤ワイン、すなわちピノ・ノワールではもったいない。ワインはもっと多様です。
味のタイプを言葉にするのが困難なものの中には、最後の一口まで心地よく飲めるものがたくさん。
果実味・渋味・酸味が突出しすぎない、『ちょうどいい』バランスだからです。
あなたの晩酌ワインを選ぶ基準が一つ増え、買い物がもっと楽しくなるはずです!
濃厚じゃない赤ワインはどんなもの?
「濃厚赤ワイン」というキーワードはワイン通販においてパワーワード。非常に需要があると感じています。
しかしワインの好みは人それぞれで、濃厚なのが苦手な方もいるでしょう。「冬は好きだけれど夏場は遠慮したい」という場合も。
では「濃厚じゃない赤ワイン」とはどんなもので、どうやって選べばいいのでしょう?
赤ワインを「濃い」と感じる要素とは
まず濃厚赤ワインの方から今一度整理します。赤ワインを濃厚に感じる要因は次の通り。
「濃厚ワイン」の特徴
香りのボリュームが豊か
完熟フルーツのアロマや樽香
果実味の密度が高い
☆口当たりに重量感がある
高いアルコール度数による力強さ
渋味が強い
これらの要素単独ではなく、複合的に合わさって脳に『濃厚!』と訴えかけてくるのです。
特に「重量感」がキーポイントです。
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「薄い」赤ワインはだいたい美味しくない
濃厚ワインが人気な背景には、薄くてあまり美味しくない赤ワインの経験があると考えます。
果実味が凝縮感に欠けると、バランスの問題で適度な酸味を酸っぱく感じてしまうことが多いです。ガツンと訴えかけてくるような明確な味がないなら、つい味わいの悪いところが気になってしまうものです。
ワインを濃厚につくるにはコストがかかります。安いワインには薄いものが少なくない。それが悪いイメージとなって「濃厚赤ワイン」を求めるのではないでしょうか。
濃くない赤ワインと言えばピノ・ノワール?
濃厚ワインを苦手とする方も多くいます。たいていは「どっしり力強いのは飲み疲れする」と言います。
そういう方がこぞって愛するのがピノ・ノワールです。
ピノ・ノワールは香り豊かで上品な味わいの品種です。温暖産地なら完熟フルーツのアロマと豊かな果実味を持ちます。高級品の中には渋味の強いものもあります。
しかしどっしり重量感があるピノ・ノワールはほぼありません。
ゆえに凝縮感を高めて丁寧につくられた高級品であっても、口当たりは軽やかでエレガントです。
ただしその分、基本的には酸味が高めです。この高い酸を苦手とする方もいるはずです。
ではピノ・ノワール以外の選択肢は何があるのでしょうか。
ない・ない・ないな「ちょうどいい赤ワイン」
「ちょうどいい赤ワイン」の味わいを言葉にするなら・・・・
- 果実味の凝縮感が高すぎない
- 渋味がないことはないが強すぎない
- 酸味は適度で酸っぱくない
- 口当たりは軽すぎない・重すぎない
そんな「ない」が並びます。
こういうワイン、味はなんとなく想像できても、言葉にするのが難しくありませんか?
私も苦心のうえ「ちょうどいい赤ワイン」と表現しましたが、最適という自信はありません。
(香り豊かなワインが苦手という人は聞いたことがないで、香り高さに「ちょうどいい」はないと考えます。)
「バランス」は超大事だけど意味がない
濃厚ワインのように濃くなく渋くなく重たくない。それでいてピノ・ノワールのように酸っぱくない。
つまりこれは「バランスがいい」ということ?そう簡単ではありません。
パワフルな果実味と重量感をしっかりとした渋味と酸味で支えていたら、それも「バランスがいい」です。
果実味・渋味・酸味どれもほどほどに控えめ。これも「バランスがいい」です。
バランスがいいワインは飲んで純粋に美味しく感じます。だからワインにとってはバランスはものすごく大事。
しかしそのバランス感は飲み手の嗜好に左右されます。そして数値化できるものでもありません。
それゆえ何とでも言えてしまう・どうにでも書けてしまいます。
販売側がわざわざ「このワインはバランスがイマイチですが・・・」なんて書きませんから。
それゆえ美味しいワインに「バランス」は必須ですが、ワイン選びにとって「バランス」という言葉に意味はないのです。
さあ困った。「ちょうどいい赤ワイン」はどう選びましょう?
ブドウ品種から選ぶ「ちょうどいい」赤ワイン
ワイン選びはブドウ品種が基本といえます。
「ちょうどいい」味わいを期待できるブドウ品種と、その代表的なワインをご紹介します。
温暖産地で酸味穏やかなピノ・ノワールを「ちょうどいい」と感じる方も多いでしょう。ただそれでは目新しさがないので、今回はあえてそれ以外。
「ちょうどいい」味わいを欲するシーンは、特別な日よりも日常でしょう。なので普段使いできる価格を意識して4000円以下で選びました。
ちょうどいいから飽きがこない?
「生産者名 + 品種名」というシンプルなワイン名が示すとおり、これは生産量の多いスタンダードワイン。だからこそ一部の愛好家だけじゃなくより多くの人に好かれる味を。そんな狙いが現れた「ちょうどいい」の集合体のような赤ワインです。
手頃なピノタージュは時に軽くなりすぎることもありますが、これは程よい質感となめらかさ。味わいでは決め手に欠けるので最初の1本は悩むでしょうが、きっといつの間にかリピートしてしまうことでしょう。
ステレンラストについてはこちらで詳しく▼
ポイント
サンソーとピノ・ノワールの交配で開発された南アフリカオリジナルのブドウ品種。ピュアな果実感が現れ、2000円以上くらいなら軽すぎることはありません。酸味はピノ・ノワールより穏やか。渋味もやや穏やかですが、カノンコップという生産者の上級クラスのようにしっかり抽出することもできます。
この味わいならお疲れ気味な日にも
赤系ベリーのアロマはどこか田舎っぽさをもって広がり、それが自宅でリラックスした気分に寄り添います。人によって渋味が穏やかすぎると感じるかもしれませんが、甘いニュアンスはほぼなく適度な重量感。「濃いワインは疲れる」感覚とは無縁です。
サンソーの特徴
サンソーは南フランスで広く栽培されている品種。暑く乾燥した環境に適応します。
収穫量の多い品種であり、風味がシンプルで軽いワインが大半ではあります。しかし稀に収量を絞ってつくられる高級品も。
フレッシュでフルーティーなベリー系の香りが特徴で、渋味は穏やかです。
スペインワインの新潮流として
スペイン産赤ワインは『力強く濃厚』というイメージが強いかも。そのイメージを覆す「メンシア」に注目が集まっています。ブルゴーニュのように畑ごとに風味の違いを感じるワインをつくるラウル・ペレスは、この品種の第一人者です!
メンシアの特徴
近年スペインで見直されつつある品種で、非常に香り高く、かつてはフルーティーでシンプルな赤ワイン・ロゼワインをつくるのにつかわれたり、補助品種をブレンドしていました。しかし近年では収量が抑えられる古木の畑から、熟成ポテンシャルのある高品質なワインがつくれることが分かってきました。どしっと重たい感じにならないのはピノ・ノワールと共通項。酸味はやや高めですが、その上品さが心地いいでしょう。
もっと「ちょうどいい」ワインを探す参考に
ブドウ品種で選ぶメリットは応用が容易なことです。上記のワインを飲んで「ちょうどいい」と感じたなら、同じ品種で他のワインを飲んでも、やはり"ちょうどいい"と感じる可能性が高い!
当店にサンソーとメンシアは他にそういくつもありませんが、他店にはいろいろとあるはず。気に入ったなら広げてみるといいでしょう。
生産者のスタイルで選ぶ「ちょうどいい」赤ワイン
ブドウ品種の特徴をある程度抑えてつくることもできます。ブレンドによって一つの品種の特徴が突出しないようにしたワインもあります。きっとそれは生産者がそんなワイン、「ちょうどいい赤ワイン」をつくりたいから、じゃないでしょうか。
生産者自身にとっても「飽きずに何度も飲みたい味」につくっているのでしょう。
”リパッソ”なのに濃くない・甘くない
ヴェネト州特産の「アマローネ」は濃厚な味わい。その多くがほのかに甘味を感じます。
それもあってか、アマローネの簡易版といえる「リパッソ」製法でつくる赤ワインは、甘濃いものが少なくありません。しかしこのワインはベッタリ甘いニュアンスはなし。「引き締まった」というほっではないものの適度な酸味と渋味が全体を「ちょうどいい」バランスにまとめており、夕食のお供として何度もリピートしたくなるワインです。
リパッソ製法についてはこちらで詳しく▼
気候と値段がもたらす「ちょうどいい」
カベルネ・ソーヴィニヨンといえば渋くて酸味も高いブドウの代表格。しかし日常使いを狙った味づくりとローダイの温暖な気候で、マイルドで穏やかな味わいに仕上げられています。渋くないし酸味も穏やか。そしてナパ・ヴァレー産のように甘濃くない。
こんなソフトなカベルネもあるんだ!
白ワインもブレンドして濃くない心地よさを
シラー、サンジョヴェーゼ、モンテプルチアーノというなかなか類をみない品種構成。濃厚な味わいを想像しやすい品種ですが、同シリーズの白ワインを少量ブレンドすることで適度な軽やかさをプラス。濃すぎず酸っぱすぎず、ちょうどいい塩梅に仕上がっています。風味も面白いチャレンジングなワインです。
「メルロー」ではなく「赤ワイン」!?
本拠地マールボロのみならず様々な地域で「親しみやすくシンプルに美味しいワイン」を目指すこの生産者。メルローなのに渋味穏やか、果実味も酸味も強すぎない、まさにど真ん中の味。
メルロー好きにはあえておすすめしません。むしろ「赤ワインを買いたいけど、どんな味がいいかすら決まっていない」という選び方迷子の方にこそ選んでほしい。
ぼんやりとした「赤ワイン」のイメージを期待してください。
濃厚さから離れることの面白さ
絶対に濃厚赤ワインがいいわけじゃない。でも他に好きなワインの味を聞かれて答え方がわからない。
中にはそんな方もいらっしゃるのでは?
ワインの味わいを言葉にするのは難しいです。味は定量化しずらく、しかも感じ方に個人差があるからです。
実際に今回ご紹介するワインは、当店でそうたくさん売れているわけではありません。それはワインが美味しくないからでは決してない。『言葉にして味のイメージを伝えにくい』からです。販売側の力不足に他なりません。
安心してください。「ちょうどいい」ということは「嫌われにくい」ということでもあります。
そのワインを味わえば、苦心のすえに「ちょうどいい」って言葉をあてはめたことを分かってもらえるでしょう。もっといい表現があればぜひ教えてください!