ワインの選び方

寒い日は飲みごたえ重視!3000円で選ぶフルボディの濃厚赤ワイン

2022年11月15日

 
「フルボディの赤ワインが飲みたい!」
そう考える方の期待するものは、どっしり舌に感じる重量感からくる飲みごたえじゃないでしょうか。
「フルボディ」の厳密な定義はありませんが、こういう要望を満たすワインなら選び方があります。
飲んでみて「思ってたのと違う!」とならないコツと、3000円前後でおすすめの赤ワインをご紹介します。
 
 

ワインの「フルボディ」とは

 
ワインはとかく種類が多い。同じ銘柄でもヴィンテージで味が違います。
だから「同じ味のものを何度も飲む」ということはそんなに多くありません。いろいろな銘柄を楽しんでおられる方が多いでしょう。
 
だからこそ「初めて買うワインの味の傾向が知りたい」というのがだれしも願うこと。
金額も量もあるので、缶ビールのように「とりあえず買って飲んでみたらいいじゃん」とはなりません。
 
ワインの味わいを表すべく頻繁に使われる指標が「ボディ」です
 
 

「フルボディ」なワインとは

 
かなり乱暴に一言でまとめるなら、「フルボディ」なワインとは「濃い」ワインです。
 
WSETというワインとお酒に関する教育機関では、ボディを「口当たりのことで様々な要素から総合的に判断する」と定義しています。
その主要な要素とは次の通り。
 

ポイント

アルコール度数
風味の凝縮感
舌で感じる重量感
 
これらの要素をすべて強く感じるワインは「濃い」と感じるので、「濃厚ワイン」と「フルボディのワイン」は同じような意味に使われることもあります。
 
 

人が感覚で判断しているもの

 
ライトボディとミディアムボディ、ミディアムボディとフルボディの間に、明確なラインはありません
その表記をした人が判断して決めています。
 
もちろん訓練を積んだプロが判断しています。それでも決して数字に基づく明確な判断ではありません。極論、「なんとなく」です。
 
 
ワインは高価なものほど香りや風味のボリュームは豊かな傾向にあります。
1000円の「フルボディ」表記のワインと、30000円の「フルボディ」表記のワイン。同じ濃さに感じるわけがありません。
 
ここで言いたいのは、「そのワインについて味を想像するとき、ボディ表記はそんなにアテにならない」ということです。
 
 

フルボディのワインが飲みたいときとは?

 
それほどアテにならないにも関わらず、「フルボディのワイン」を飲みたいとしたら。
きっと過去に飲んで「美味しい!」と感じたワインの多くが「フルボディ」表記だったのでしょう。
そして過去に飲んだワインに似たタイプのものを飲みたいのでしょう。
 
ではそれはどんな気分のときでしょうか。どんなシチュエーションでしょうか。
 
 

たくさんの人で1本をシェアするとき

 
ワイン1本は750mlです。
グラスワイン1杯分は通常100ml~125mlほど。1本は6~7杯分です。つまり6~7人で飲んだら1人1杯でなくなっちゃうということ。
 
 
飲み足りなければもっと開ければいい。でもそのワインの印象は薄くなってしまいます。
「楽しかったけど何飲んだっけ?味覚えてないや」でもいいんですが、ワイン好きとしてはさみしい。
そんなとき、風味が強くて個性がはっきりしていれば、記憶に残りやすいものでしょう
 
そういった味わいを「フルボディのワイン」に期待しているのではないでしょうか。
 
 

少しずつ、数日に分けて飲むとき

 
日本人は基本的にお酒に弱いです。ワインをたくさん飲むと翌朝しんどい。そんな方も少なくないでしょう。
ワインは飲みたいけど、明日も仕事だから少しにしたい。でも物足りなさを我慢したくはない
 
 
そんなときに求めるのは、少量で満足できる飲みごたえ。その飲みごたえにつながる重要なポイントは、舌の上で感じる重量感でしょう。
できれば余韻も長い方がいいのですが、安くて余韻の長いワインはとても見つけにくいです。
 
1本のワインを3日、4日に分けて飲むから、「フルボディのワイン」がいいと感じるのではないでしょうか。
 
 

フルボディの赤ワインを見極めるポイント

 
先述のように「フルボディ」に明確な指標がないため、極論飲んでみるまであなたが求めている味わいかどうかわかりません。
でも「こんなワインは期待できる」というものはあります。
逆に「こんなワインは予想より軽いかも」というものも。
 
フルボディのワインを探すポイントをご紹介します。
 
 

まずはブドウ品種

 
ワイン選びの基本。まずはブドウ品種で検討をつけましょう。ただし、ブドウ品種のみでフルボディであることが決まるものはないと思ってください。
 
代表的なブドウ品種で、フルボディの赤ワインをつくりやすいものは次のとおり。
 
  • シラー(シラーズ)
  • テンプラリーニョ
  • モナストレル(ムールヴェードル)
  • ジンファンデル
  • プリミティーヴォ
  • グルナッシュ(ガルナッチャ)
  • マルベック
 
そしてフルボディのワインがあまりないので避けるべきなのがこちら。
 
  • ピノ・ノワール(1万円以下)
  • カベルネ・フラン
  • ネッビオーロ
 
最後に意外と期待と違うものに当たりやすい品種が次の通り
 
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • メルロー
  • サンジョヴェーゼ
 
 

晩熟品種にご注意

 
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローはボルドーの品種です。そしてボルドーは温暖な産地ではなく雨も多いため、その年の天候によってはブドウが熟しにくいことがあります。その結果、上品な酸味をもった軽めの口当たりの赤ワインになり、「ミディアムボディ」表記されることも多いのです。アルコール度数が13.5%までにとどまることもしばしば。
そのボルドーのスタイルを目指して、どっしりとした味わいのワインにあえてしない生産者は、ニューワールドにもたくさんいます。
 
カベルネ・ソーヴィニヨンはそれほどアルコール度数が上がりやすい品種ではありません。メルローも同じです。
アルコール14%を超えていたら、期待通りどっしりフルボディの赤ワインでしょう。でも14%未満なら要注意です。
 
 
サンジョヴェーゼは本来、酸味もタンニンも強い晩熟な品種です。だからイタリアのトスカーナのような、高温で乾燥した環境が必要なのです。
非常に長命な素晴らしいフルボディのワインも作れます。しかし現地の人が日常的に飲みたいのは、そんな若いうちは渋すぎるワインじゃないでしょう
日常消費の価格帯のサンジョヴェーゼは、「濃くて渋くてパワフル」というものは少ないです。
 
 

アルコール度数14%

 
フルボディかどうかのひとつの目安が、アルコール度数14%を超えているかどうかです。ただしこれも絶対ではありません。
 
収穫期に雨が降らない気候なら、単純に収穫を遅くさえすればブドウの糖度は上がり、出来上がるワインのアルコール度数は上がります。それが大量生産の安いワインでもです。そして地球温暖化の影響で、それは益々容易になっています。
 
 
ただし単位面積当たりの収穫量を多くしすぎると、風味の成熟が追いつきません。そういったワインは、アルコールは高いはずなのに風味は薄く感じます。安いワインに多いです。
 
高いワインでフルボディが期待できる品種、かつアルコール度数が14%を超えているものを選べば、ほぼ失敗なく飲みごたえのあるワインがチョイスできるでしょう。「高いワイン」とは、ざっくり3000円程度です。
 
 

3000円で選ぶフルボディの赤ワイン

 
白ワインにおいても「フルボディ」といった表記は使われますが、やはりイメージするのは赤ワインが多いでしょう。
上記のような特徴を備えた、3000円前後のフルボディの赤ワインをピックアップしました。
 
ミディアムボディのワイン、2000円のものを2日で飲んでいる方であれば、フルボディのワイン3000円のものを3日で飲むのとお財布的には変わりません。
アルコール度数は1%くらい高めかもしれませんが、摂取アルコール量はむしろ少なくなり健康的です。
 
つい飲む量が増えがちな方は、これからご紹介するワインで「飲みごたえのあるものを少しだけ」を試してみはいかがでしょうか。
 
 

典型的な「バロッサ・シラーズ」の飲みごたえ

 
トルブレックは私の中で「典型的なバロッサ・シラーズ」です。
バロッサ・ヴァレーは雨がもともと少なく、降る時期が冬に集中しています。だから「ブドウがある程度熟したら、雨が降る前に収穫しないと」という心配は全くありません。(雨が降ったらカビが生えたり味が薄まるリスクがあります。)ワインメーカーの考える「完熟」までしっかり待って収穫できるのです。
だからこのワインのアルコール度数は、今の2020年も次の2021年も15%。しっかり飲みごたえのある高さです。
早く収穫することであえて軽く上品なスタイルに仕上げるつくりが流行り始めているなかで、創業時からのスタイルをしっかり守っているトルブレック。『濃い』ワインという期待をまず裏切りません。
 
 

試飲販売にめちゃ強い!

 
大阪梅田の阪神百貨店では、年に2回「阪神ワイン祭」という試飲販売イベントが行われます。1000種類近いワインが試飲できます。輸入元さんごとにブースが出るのですが、このサン・マルツァーノがつくる「コレッツィオーネ チンクアンタ」を見なかった年はないんじゃないでしょうか。
 
 
プリミティーヴォのよく熟した風味が、小さなプラスチックカップの一口に満たない試飲でも、ワイン好きのハートを虜にしているんです。
 
 

マルベックはブレンドでも単一でも

 
ヴェレノージはマルケ州の伝統ワイン「ロッソ・ピチェーノ」で大きくなった生産者です。
モンテプルチアーノとサンジョヴェーゼというブドウをブレンドしてつくられるワインで、決して「めちゃ濃厚」というものではありません。確かに果実味主体のワインではあるのですが、同時にほどよく酸味もあります。カジュアルに飲めるワインとしてのバランス感を重視してつくる生産者が大半で、ヴェレノージも主力はそのタイプです。
だからこそこのワインは挑戦的。カベルネやメルローといった国際品種をブレンドするのもそうですが、おそらくブドウをかなり遅摘みしています。だからこその押し寄せるような甘やかな果実感。触ると弾けるようなやわらかく熟れたベリーを思わせる風味があります。
一口飲めばあなたの記憶に印象的に刻まるはずです!
ヴェレノージについてはこちらの記事で詳しく!
 
 

「スラムダンク」のような強烈なインパクト

 
「プティ・シラー」はシラーとはまた別の品種。これもどちらかというとブレンドされることが多く、ワインに濃い色合いや力強い味わいを与えるべく使われます。
渋みも強い品種ですが、渋み弱めのジンファンデルとブレンドして中和しています。
14.8%のアルコールは、しっかりブドウが熟していることの証。味わいの重たさもそうですが、風味の凝縮感をしっかり感じるフルボディの赤ワインです。
 
 
 

アルコール16%の凝縮感

 
世界で最もブドウ畑が広いスペイン。そのなかで最も多く栽培されているのがテンプラニーリョです。
ただしスペインのワイン生産量は1位ではなく、年にもよりますがだいたい4位。畑は多いのにブドウが穫れる量は少ない。その理由を語られることはあまりありませんが、おそらく温暖で雨が少ないため、樹をまばらにしか植えられないのでしょう。
 
 
面積当たりの生産量が少なく水も限られるため、スペインワインは手ごろなものから力強い味わいのワインが非常に多いです。この「トリデンテ テンプラニーリョ」もその一つ。
テンプラニーリョは力強い味わいを生みやすいブドウで渋味も強いです。アルコール度数も高くなりやすく、このワインは何と16%表記(2016VT)。このワインは樽熟成をしっかりしているため、渋味が尖って感じることはありません。
濃厚でなめらか。そんな表現がぴったり当てはまるワインです。
 
 

実まで赤くなる突然変異種

ラ アタラヤ デル カミーノ 2020 ボデガス アタラヤ
 
ガルナッチャ(フランス名:グルナッシュ)が突然変異したガルナッチャ・ティントレラは、熟すと果皮だけでなく果肉まで赤くなるブドウ品種。それだけ風味豊かで濃厚な果実味を持つワインが出来上がります。よく熟したレッドチェリーのような果実感を感じます。
 
 
このワインはまず色が濃い!特濃!
グラスの向こう側が容易に見通せない色合いで、まず見た目から濃厚です。味わいもその見た目を裏切るものではなく、ともかく緻密に風味が詰まっています。飲み込んだ後に鼻を抜けていく香りもボリューム豊か。
濃厚ワインのラスボス的な存在です。
 
 

フルボディのワインを使い分ける

 
先ほどフルボディの赤ワインを飲むシーンとして、複数人で分けるのと、複数日で飲むことを提案しました。
ワインのタイプにより向き/不向きがあります
 
 

渋みの強いものは複数日向き

 
渋みのもとタンニンは、ワインを酸素から守る働きがあります
一方でそういうワインは、開けたては渋みが強くて苦手に感じる場合もあります。
30分、1時間と時間がたてばまろやかになることもあるのですが、もし4、5人で飲むとしたらまろやかになる前になくなってしまいますよね。
 
 
だから渋みの強いフルボディのワインは、何日かに分けて飲む方がおすすめです。
ただし、こういうタイプは3000円くらいの濃厚ワインの中では少数派です。
 
 

酸味の低いものはみんなでその日のうちに

 
濃厚なワインは丈夫で味が変わりにくいイメージがあります。しかし案外日持ちしない場合もあります。
その代表格が酸味の低いワインです。
 
酸味が低いことと、ワインのpH、酸性度が高いことはイコールではありませんが、関係します。そしてpHが高いとワインに含まれている亜硫酸が働きにくいことがわかっています。つまり酸化に弱いのです。
 
 
だから酸味も渋みも少ない濃厚ワインを2、3日持ち越すと、味わいのバランスが崩れたり香りが弱くなってしまったりということもあります。
何人かでその日のうちに飲み切ってあげるのが、そのワインの一番の楽しみ方なのかもしれません。
 
 

飲みごたえのあるワインを使いこなす

 
ワイン通とは、いかに高級ワインを飲みつくすかでも、いかにウンチクを語れるかでもないと考えます。
自分が、一緒に飲む仲間が、今一番心地よく感じるワインを予算に応じて適切にチョイスできることです。
上手にワインを楽しめる人が、「ワイン通」なんじゃないでしょうか
 
ワインのミディアム/フルボディという言葉に振り回されず、あなたが本当に求めている味わいのワインを楽しんでいただけることを願います。
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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