15年前と違いパーカーポイントの影響力はかなり弱くなりましたが、それでも100点は特別。
何十万円と高価すぎない限りは、入荷してすぐに売れていきます。
「いつか私も飲んでみたい」と思っても、3万円の買い物は躊躇するのが普通。
今から100点取りそうな生産者を知っておき、飛びつく準備をしてはいかがでしょうか。
パーカーポイントとは
パーカーポイントとは、ロバート・パーカーJr.氏が創刊した「ワインアドヴォケイト誌」にてワインのレビューにつけた100点満点の点数のことです。
現在パーカー氏は引退。複数のレビュアーが担当地域ごとにレビューをする体制となりましたが、「パーカーポイント」の名称は残っています。
ワインを点数で表すというわかりやすさと、「神の舌を持つ男」と呼ばれたパーカー氏への信頼で、一時期はワインの絶対的な指標のような扱いを受けていたのです。
パーカーポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しております。
広告の影響を排した評価誌
巷で販売されている雑誌を買って、何かしらの広告を目にしないときはありません。
雑誌の編集者にとって、お客様は購読者であり広告主なのです。
パーカー氏は広告主の利益が紙面上の評価に影響を与え、消費者の不利益につながっていると考えました。それゆえワインアドヴォケイト誌は創刊以来、一切の広告を掲載せず購読者からの収入によってのみ運営されています。
「誌」とは書きましたが、現在は紙面としては発行されておらず、WEB上の情報ポータルとして機能しています。
ワインの先物買いの指標に
こういったワイン評価誌が最も活躍する場が、ボルドー・プリムールです。
それはワインの先物買い。まだワインがシャトーで熟成中の段階で売買契約を結びます。そうすることで購入者は比較的安く入手できます。生産者は収入の見込みが立てやすくなります。
ボルドーの著名ワインは何十年物熟成が可能なようにつくられます。熟成中のワインからその未来を想像し品質を見抜くのは、並大抵ではない経験が必要です。
仮に素人が自分が買おうとするワインを試飲できたとて、美味しいかどうかさっぱりわからないのです。
だから特別な舌を持たないワイン商や輸入業者は、ワイン評価誌の点数を参考に仕入れを決めます。
「パーカー氏が認めたワインは間違いない」そうしてワインアドヴォケイトは信頼を得ていったのです。
高級ワインを買う指標に
高価なワインを買うときほど「失敗したくない」と考えるものです。
かといって試飲して買うことなんてほとんどの場合できません。生産量の限られるワインはなおさらです。
他の人が買って飲むのを待ち、感想を見て決める。それでは無くなってしまうかも。
そういう時に専門家のレビューを参考にするのは必然の流れ。
以前ほどの絶対的な影響力はなくなりました。それでも、数あるワイン評価誌で一番信頼を得ているのは、いまだにワインアドヴォケイトでしょう。
手ごろな100点ワインは争奪戦
ワインアドヴォケイトの採点基準では、90点を超えると「傑出した」ワインという評価です。
95点以下ならそんなに反応は強くありません。販売開始してすぐなくなるというほどではない。
95点を超えても価格や産地次第です。96、97点などの高得点でも、5万円するようではそう早くは動きません。
100点獲得したとて、10万円オーバーでは反応が鈍いこともあります。
しかし100点獲得しながらおよそ3万円以下。そのがんばったら手が出せそうな価格帯だと、蒸発するのは一瞬です。本当に迷っている暇はありません。
過去に販売した例だと、ルチアーノ・サンドローネのバローロ・レ・ヴィーニェ2016年、ケーク ブレッド セラーズ ダンシング ベアー ランチ 2016年(3万円強)などは、登録後1日以内に完売しました。
フラッチャネッロの2016年、まだ1本残っているけど、誰が見つけるかな?
100点取ることを見越した下見が大切
「100点のワインを飲んでみたい!」そう思ったとしても、何でもいいわけじゃないですよね?
せっかく買うなら自分の好みのタイプがいいに決まっています。
なら「優良ヴィンテージが来た時に100点とりそうなワイン」に目星をつけておくことが大切。パーカー100点を取れば値段は上がりますが、2倍3倍となるようなものではありません。
値上がりしたとして3万円くらいで収まるように。2万円くらいのワインの中から、パーカー100点を取りそうなものを予想しましょう。
パーカーポイント高得点がつく傾向
パーカー100点はそう簡単にはつきません。
過去に100点を獲得した産地。大半がボルドーやナパ・ヴァレーなどといった、「銘醸地」として誰もが知っているところが大半です。
銘醸地のプレミアムワインでありながら値ごろ感があるもの。
もうこれだけで見つけるのは難しそうですが、可能性がありそうなワインのスタイルを考察していきましょう。
パーカーポイントの採点基準
以前はパーカーポイントの採点基準がワインアドヴォケイトサイト上で公開されていました。現在はその箇所が削除されていますが、そう大きくは変わっていないでしょう。
ワインの持ち点・基本点
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50点
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ワインの色と外観
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5点
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アロマとブーケ
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15点
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風味と後味
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20点
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総合評価と熟成ポテンシャル
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10点
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ここで注目すべきは熟成ポテンシャルです。そのワインの未来にも期待して点数がつく部分です。
熟成したワインが100点を獲得することもありますが、そういったものは3万円じゃまず手が出ません。
非常に高い熟成ポテンシャルを持つ。それこそ飲み頃予想が50年後までなどと予想されるようなワイン。
ここからワインの目星をつけられそうです。
超高い熟成ポテンシャルのあるワインとは
50年後に美味しく飲めそうなワインの特徴としては、次のようなものが挙げられるでしょう。
・赤ワインならとても豊富なタンニン
・高い酸味
・凝縮度の高い甘口ワイン
この3つのうち、高い酸味は必須条件ではありますが、そもそも高級なワインの大半は高い酸味を持っています。酸味が高いから熟成するとは言えません。
他の2点に注目して、具体例を挙げていきます。
熟成能力が高い銘醸ワイン
非常に強いタンニンを持つワインとしてはいくつかの品種が挙げられますが、一番メジャーなものは「バローロ」「バルバレスコ」でしょう。
実際それらは、50年前のワインが割と出回ります。
他にはカベルネ・ソーヴィニヨンやサンジョヴェーゼなどの品種も挙げられます。産地としては、ボルドーとナパ・ヴァレー、そしてトスカーナ州。
タナやサグランティーノはタンニンが豊富ですが、2万円クラスのワインはほとんどつくられていません。
凝縮度の高い甘口ワインなら、まず貴腐ワインが挙げられます。その主な産地はソーテルヌ、トカイ、ドイツ。ドイツの中で絞るならモーゼルとラインガウでしょう。
この中で、ボルドーとナパ・ヴァレーに関しては、「美味しいものは高い」というカーストがしっかりしています。だからひょっこり手ごろなワインが100点を取ることはあまり考えられませんし、もし取ったら3万円をゆうに飛び越えていきます。
それに対して、「バローロ」「バルバレスコ」と、有名生産者を除いたトスカーナワインは、人気の点で数段劣ります。だから品質は高いのに、それほど争奪戦にならず価格も抑えめな生産者が存在します。
貴腐ワインの人気はそこからさらに数段劣ります。だから貴腐ワインの頂点に立つ「シャトー・ディケム」ですら、ハーフボトルなら3万円を楽々切ります。
現にこのような地域からはパーカー100点ワインがたくさん生まれています。
このあたりから高すぎないプレミアムワインに目星をつけるといいでしょう。
パーカー100点生産者から目星をつける
単純な話、過去にパーカーポイント100点をとったワインなら、また100点をとる見込みは十分あります。
現在のヴィンテージは100点でなくても、今のうちに飲んで傾向を確認しておくのは有意義でしょう。
一番の懸念は、パーカーポイント100点を機に人気が高まって、価格が予算を超えていってしまうことです。
フォントディ フラッチャネッロ デッラ ピエーヴェ
※執筆時点で1本在庫あり!
こちらも先述のとおり、2016年のフラッチャネッロ・デッラ・ピエーヴェでパーカーポイント100点をとっています。
他に2015、2018年で98点を獲得していますので、いい条件がそろったときの点数には期待できます。
またフォントディは「ヴィンサント」というデザートワインもつくっています。2009年が98点をとっていますので、こちらも100点の可能性があるといえるでしょう。
マーカス モリトール
※このワインは当然ながら完売です。
マーカス・モリトールはドイツ・モーゼル地方の生産者で、生産しているワインの種類がとんでもなく多いことが特徴です。パーカーポイントがついているだけで80種類近く!
そしてパーカーポイント100点を実に21度も獲得しています。2015年以降は毎年!(2022年10月時点)
ただし、すべてのワインが日本に入ってくるわけではありません。どれだけ確保できるかは輸入元様次第。
2020年ヴィンテージはおそらく2022年の末か年明けに入荷します。辛口で2種類パーカーポイント100点を獲得していますので、どちらか1種類でも入荷してほしいものです。
デーンホーフ
※このワイン自体はパーカーポイント95点
こちらもドイツの生産者で、ナーエ地方を代表するデーンホーフです。
このワインと畑違いのデルヒェンというワインが、2021年ヴィンテージでパーカーポイント100点を獲得しています。
そのほか5つのヴィンテージ・畑・クラスで100点をとっていますが、その多くはアイスワインなどの甘口ワイン。これから入ってくるとしたらデルヒェンは全力で仕入れたいところです。
カユース シラー バイオニック フロッグ
※このワインは当然ながら完売です。
ワシントン州でカルト的な人気を誇る「カユース」。
フラッグシップの「バイオニック・フロッグ」は、2010年、2014年にパーカーポイント100点を獲得しています。
非常に生産量が少なく、500ケースくらいの年もあります。
オルカ・インターナショナル様からの正規品が入荷するなら3万円以下で販売できる可能性がありますが、並行品となると倍以上しても不思議ではありません。
パーカーポイント100点を取らなかったとしても、登録して一瞬で完売するので、購入するのは簡単ではありません。
今後100点をとりそうなワインを予測する
正直、これは当たるも八卦当たらぬも八卦として読んでください。
筆者片山が予想する、10年以内くらいにパーカーポイント100点を取りそうな生産者とそのワインをピックアップしました。
指標として
○100点が何度も出ている地域
○パーカーポイント99点ないし98点を近年獲得したことがあり、100点はない
○最も評価の高いワインが2万円程度までの価格
これらの条件から選んでみました。
G.D.ヴァイラ バローロ ブリッコ デッレ ヴィオーレ
※こちらは下位キュヴェでパーカーポイント93+点(2018VT)
熟成能力に長けたバローロは、やはりパーカーポイント100点に近いワインだといえます。
当店で取り扱いがあり、トップキュヴェが2万円程度までで、今まで100点を取っていないという条件で予想するのが、G.D.ヴァイラ。
このバローロ ブリッコ デッレ ヴィオーレ(当店未入荷)のワインが2016年に98点を獲得しています。
プラーガー カマーグート&ボーデンシュタイン
※98点獲得の2020年は完売しました。
※このワインの2018年が98点を獲得。2020年は96点
プラーガーはオーストリアのヴァッハウで評価の高い生産者の一人。
プラーガーのワイン自体はパーカーポイント98点が過去最高ですが、同地域のFXピヒラーやニコライホーフという生産者はパーカーポイント100点を獲得しています。
グリューナー・フェルトリーナーよりもリースリングの方が高い点数がつきやすいようです。酸の高さから熟成能力に差があるからでしょう。
どうせなら点数も込みで楽しんで!
「点数を味わうわけじゃない。人の評価でワインの味は変わらない。」
常識的に考えたらそうでしょう。人の評価より自分の舌を信じる人の気持ちもわかりますし、憧れます。
でも大多数の一般愛好家の味覚は、それほど安定したものではありません。先入観、人の評価やレビューに大なり小なり影響を受けるのが普通です。
「みんなが美味しいというものだと、私も美味しく感じる」という素直な人もいれば、「ほんとにこの点数の価値はあるのか~?」とつい粗さがししてしまう人もいるでしょう。どちらも影響を受けています。
その先入観を排除できないのなら、どうせなら点数込みで楽しんでしまったほうがお得!「どっかのすごいワイン評論家が、これ以上ないといったワインだ!きっと何か感じさせてくれるものがあるだろう!」そう期待して飲んだ方が絶対楽しい。
自分にとって特別なワインを買うときの道しるべに、「パーカーポイント100点」を参考にしてみるのもいいでしょう。