むわぁっっと蒸し暑い日本の夏、この季節は冷蔵庫でキンキンに冷やしたリッタードイツワインで決まり!
リーズナブルで料理も選ばず、飲みたい時が飲み頃なワインがお手頃なら、言うことありませんよね。
普通のワインよりちょっと大きめ、1Lボトルのワインが今美味い理由。
毎日でも飲みたくなるそのワケを、4つの「やすい」でご紹介します。
ドイツでは1Lボトルで飲む
ワインは1本750ml。これはボトルの形がいろいろでも基本変わりませんよね。
その理由はイギリスにあります。
歴史的に最もワインを消費していたイギリスとの貿易では、4.5Lを1とする「ガロン」という単位を使用していたため、1箱(12本)でちょうど2ガロンとなる750mlのボトルだと計算上都合が良かったのです。
ただそれは昔イギリスへ輸出をしていたときの名残です。
現在のドイツの家庭消費用としてはむしろ1Lワインの方が一般的で、現地生産者のほとんどがリリースしていると言われます。
なぜか。
それは1Lワインには4つの「やすい」が込められているからです。
1Lボトルは「○○やすい」!
今回ご紹介するドイツワイン3種。販売していながらつい個人買いして晩酌に飲みたくなっちゃう、その理由は4つの「〇〇やすい」です。その4つとは
1.飲み進めやすい
2.食事と合わせやすい
3.使いやすい
4.価格が安い
飲み進めやすい
飲み進めやすいということは、飲んだ時に「心地よい」と思える快感と、「もっと欲しい」と思える一種の“物足りなさ”の両方があるということです。
ただこの点においては、ドイツのワインは両方とも満たしている場合が多いです。
なぜなら冷涼な気候のドイツで造られる白ワインは、しっかりとした酸味を持つことが特徴だからです。人間は酸っぱさを感じると自然と他の味わいを求めるので、すでに「もっと欲しい」を誘発させる素養が備わっているわけです。
今回ご紹介のワインは、それぞれ酸味をしっかり備えながら、対となる「心地よい」要素も際立っています。
合わせやすい
「料理とワインが合う」という表現には細かく言うと2通りの意味があります。
「これしかない」という組み合わせと「外さない」という組み合わせです。
気軽に開けたいワインの場合、一つのワインでいろんな料理を楽しむ場面の方が圧倒的に多いため、今回考えるべきは「外さない」組み合わせの方でしょう。
組み合わせを考えるうえで、スパークリングワインはよく「合わせやすい」と言われることが多いです。
その理由は、ワインに含まれている炭酸が、料理の油脂や旨味でこってりした口の中をさっぱりさせる効果を持つからです。そのため、スパークリングワインは「外さない」食べ合わせの定番とされています。
そういう意味では、いろんな料理が出てくる家庭や居酒屋で、ビールやハイボールが好まれるのは確かに妥当かもしれません。
そして今回の1Lワインは全てドイツのワイン。
1と同じ理由で、ドイツワインの特徴である“しっかりとしてキレイな酸味”は、スパークリングのようなさっぱりさせる効果を持ちます。
ワインだからといっておしゃれな料理は必要ありません。それこそ家庭や居酒屋でも出てきそうな餃子や唐揚げ、焼き鳥などと一緒でもいい。
餃子は酢醤油で食べることが多いですし、唐揚げや焼き鳥はレモンを絞ることがありますよね。そのレモンの代わりにワインでさっぱりさせるイメージです。
一方で酸味の中に適度な甘みが入ったワインは、辛味をまろやかにしてくれます。
そのため、辛口カレー、麻婆豆腐、エビチリなどのようなスパイシーな料理とは特に「外さない」組み合わせです。
使いやすい
今回ご紹介の1Lボトルのワインに関しては、4つの点で使い勝手が非常に良いです。
一つ目は全てスクリューキャップを使っていることです。
気軽に開けたいという場面においては、キャップシールを剥がす手間やコルクを折る心配がないスクリューキャップの方がはるかに便利です。
開けたあと、飲み切らなくても簡単に栓ができます。横向きでも漏れる心配がないので、冷蔵庫のドアポケットがいっぱいでも、寝かせて保管できます。これ結構重要!
それに野外にも持っていきやすいです。
二つ目は準備の少なさです。
味わい的に料理をあまり選ばないこと、厳密な温度管理が必要ないことから、その時の気分で開けられます。白ワインのなかには冷蔵庫の温度だと冷えすぎで、15分ほどして美味しくなってくるものもあります。
このワインにはそんな気を使わなくていい。カリカリっとキャップを開けてジャバジャバっとそそいでハイおいしい!
夕方やお風呂上がりなどに突然飲みたい気分になったら、冷蔵庫から出してすぐに開け、ありあわせのものとクイっといくのもいいですね。
三つめは1000mlという絶妙な量です。
ワインの「グラス1杯」は通常100~125ml。750mlなら6~7杯で、2人で飲むとしたら一人3杯くらいです。
「飲み進めやすい」という味わい上、ついついいつもより飲む量が増えてしまうもの。750mlボトルだと物足りなく感じるかもしれませんが、1000mlだとスルスル飲んで"ちょうどいい"。
この味わいにとって1000mlという量が絶妙なんです。
四つ目は容量は大きいのにボトルはあまり大きくない点です。
この写真は、一般的なスパークリングワインのボトルと並べて撮ってみました。
肩の部分が太いだけで、ボトルの太さも高さも大して変わらないことが分かります。
なので容量が大きいからといって冷蔵庫で邪魔になることはありません。多少は重たいかもしれませんが、分厚いガラスをつかった瓶より軽量です。
冷やしやすく扱いやすい点で使いやすいのです。
価格が安い
新世界やイタリア・スペインなどには1000円前半で良いものがゴロゴロ転がっていることを考えると、今回のドイツワインはデイリーで使うには少し高く感じる方もいるかもしれません。
しかしよく考えてみて下さい。
1L=1000mlでこの値段なんです。普段飲んでいるワインは750mlです。
イメージしやすいように、普段飲んでいる750mlにこれらのワインを詰めたとしたら、いくらになるのかを計算してみましょう。
750mlに換算した価格
クラス…1,270円
コッホ…1,303円
マイアーラー…1,584円
全部1000円台半ば!実はコスパにおいてもイタリアやスペインの安旨ワインと同等レベルなんです。
この4つの「やすい」を備えたたっぷりボトルのドイツワイン。それぞれについて詳しくご紹介します。
クラス リースリング クーベーアー トロッケン
ラインガウで造られるこのワイン。リースリングを使います。この品種は冷涼な気候を好みますが、寒い地域らしい線の細いワインが多いです。一方でこのワインはドイツというよりむしろイタリアのようなわかりやすい果実感があり、これがまさにこのワインの「心地よさ」です。
造り手は「マティアス・クラス」という生産者です。マティアスは実家のワイナリーを継いで数年のため、雑誌にまだ見つかっていない無名生産者ですが、修業先は「バート」、「シュロス・ラインハルツハウゼン」、「シュロス・フォルラーツ」のような有名ワイナリーの醸造責任者を歴任しています。
クラスは収量制限のこだわりが非常に強いです。一つの枝に実る房数を減らす「グリーンハーベスト」だけでなく、枝に残された房でさえも、その半分を切り落とします。この手法は現地でも知っている人は多いですが、手間とコストがかかりすぎるのでやっている人は非常に少ないです。しかしその効果として凝縮した健全なブドウを使用できます。マティアスは「全ての等級でベストを尽くす」のが信条とのことで、手間のかかった収量制限のブドウを、一番カジュアルであるこのワインにも使っています。
果実感も酸味もギュッと詰まってはきはきとしています。リースリングという澄ました美人さんが多い中で、にぱっと親しみやすそうな明るい子がいるような、そんなワインです。
ジルヴァーナー クーベーアー トロッケン 1L 2020 ベルンハルト コッホ
ファルツの「ベルンハルト・コッホ」のジルヴァーナーを使ったワインです。ジルヴァーナーは共通して果実感は控えめで、硬水のミネラルウォーターや石のような無機物的な要素をよく感じます。特にカジュアル帯のジルヴァーナーは軽やかでこざっぱりとしたワインが多いです。
一方でこのワインは香りが非常に華やかで口当たりも柔らかいのが「心地よさ」の特徴。口数も表情も少ない親父の集団の中に一人、笑顔の可愛いお兄さんがいる感覚です。それでいてジルヴァーナーらしいスッキリとした味わいは”フルーティで軽やかな辛口日本酒"を想起させます。実際の日本酒のようなメロンっぽさはないですが、代わりに青リンゴのような爽やかな果実を感じます。
実はコッホのワインの管理は、日本人女性の坂田千恵さんという方が務めています。栽培からワイン造りまで総括しているのはオーナーのベルンハルト・コッホ氏と息子のアレクサンダー氏ですが、試飲は常にこの3人で行い、意見交換をしているそうです。「日本人の好みに寄せてくれている!?」と考えるのは少し都合が良すぎるかもしれませんが、それでもそう考えずにはいられない、不思議なジルヴァーナーです。
リースリング クーベーアー ファインヘルプ 1L 2020 マイアーラー
モーゼルの「マイアーラー」という生産者の造るリースリングのワイン。このワインは「ファインヘルプ」という表示のあるやや甘口のワインです。甘味というのは「心地よさ」に直結しますが、ファインヘルプは「名乗るのにどのくらい糖度が必要なのか」が決められていない表示方法なので、どれくらい甘くするかは生産者のさじ加減となります。
甘味は酸味の質と量によって感じ方が変わるので、糖度と酸度のバランスが非常に重要です。もっと言えば、ブドウは熟せば熟すほど酸味が減って甘味が増えていくので、ブドウの熟し具合の見極めが大事になります。
今回のワインの造り手マティアス・マイアーラーは40歳前後の中堅層ですが、ワイナリーを継いで数年経った26歳の時点ですでに、「ベスト・ヤング・ワインメーカー」に選出される才能の持ち主です。
そんな彼のファインヘルプ。彼はこのワインにもしっかりと完熟したブドウを使っているそうです。しかし彼はさらにこう続けています。「完熟しているブドウは使うけど、過熟したブドウは使わないよ。果実の甘さと酸のバランスを大切にしているからね。」
その言葉通り味わいを見ても、甘味を感じつつ、キレイな酸味と、グレープフルーツのような酸味に通じる果実味が甘味を引き締めてくれています。“甘いワイン”というよりかは“甘酸っぱいワイン”と呼ぶべき、れっきとした食中酒でしょう。
日本の暑い夏にリッタードイツワインを!
「日本の暑い夏にはドイツワイン」というのは、個人的にはもっと流行っても良いんじゃないかと感じます。ドイツワインというポイントだけで考えても魅力だらけですが、“1Lボトル”という容器は、ワインをより身近な存在にしてくれるのではないでしょうか。
4つの「〇〇やすい」で気軽に開けられて気軽に開けられるドイツの1Lワインで、差し迫る日本の過酷な夏を乗り切りましょう。